消防法の排煙設備は、天井から下がる垂れ壁などの防煙壁で床を区切り、その区画(防煙区画)ごとに煙を外へ出す設備です。吹き抜けや売場の広い空間では、ふだんは天井に収まり、火災のときだけ降りてくる可動式の防煙壁が使われることがあります。
国の規則は防煙壁を「不燃材料で造り、又は覆われたもの」と決めていますが、可動式についての細かい条件は書いていません。堺市消防局の審査基準は、ここに作動後に床から1.8m以上の空間を残すことや、排煙機・感知器・シャッター・換気空調設備との連動を★の基準として足しています。
この記事では、国の基準と堺市の運用を分けて読み、大阪市の運用基準とも比べます。
堺市で店舗の吹き抜けに排煙設備を付ける計画です。
固定の垂れ壁は見た目が悪いので、可動式にしたいと考えています。
可動式の防煙壁は使えます。
ただ堺市の審査基準には★の条件が3つあります。
国の規則には書いていない条件ですか?
はい、堺市が上乗せしている指導の基準です。
シャッターや空調の連動もあわせて見ていきましょう。
- 国の規則第30条第1号イは、防煙壁を不燃材料で造り、又は覆われたものとし、垂れ壁なら天井面から50cm(地下街は80cm)以上としています
- 堺市は、防煙壁を耐火構造又は不燃材料とし、アルミニウムやガラス(線入り・網入りを除く)は認めないと書いています
- 可動式の防煙壁は、火災時に確実に作動し、作動後に床面から1.8m以上の空間を残し、排煙機の起動と感知器の作動に連動することが条件です(★)
- 防火・防煙シャッターで区画するときは両側の防煙区画の起動装置と連動して閉鎖し、排煙機が起動したら換気空調設備を止めることも求めています(★)
- 大阪市は防煙壁の材料は同じ書き方で、防煙壁の開口部には連動して閉まる特定防火設備を求めています(◆)。東大阪市の公開資料に排煙設備の基準はありません。最新の内容は管轄の消防署で確認します
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目次
国の規則は防煙壁と防煙区画をどう決めているのか

一方で、防煙壁が固定式か可動式かについては、規則は何も書いていません。可動式でも「同等以上の煙の流動を妨げる効力」があればよい、という書き方です。
なお堺市の審査基準は、Ⅰ 概要で建築基準法で排煙設備が免除される構造などにしても、消防法の排煙設備は免除されないと注意しています。この記事は消防法の排煙設備の話です。防煙区画を階ごとにまとめる扱いは鴻巣市の防煙区画の記事で比べています。
国の規則には、可動式の防煙壁の条件はないのですね。
はい、形と材料と広さだけです。
堺市はここに★の条件を足しています。
堺市では防煙壁の材料をどう読むのか

イ 防煙壁は、耐火構造又は不燃材料(アルミニウム、ガラス(線入り、網入りガラスを除く。)等加熱により容易に変形又は破損するものを除く。)によるものとすること。
このイには★が付いていません。堺市の凡例では、★は堺市消防局として防火安全性の向上を図ることを目的として定めた指導基準です。印のないイは、国の規則の「不燃材料」の読み方を示した項目と読めます。
同じ審査基準のⅠ 概要 2 用語の意義(3)も、防煙壁を同じ除外つきで定義しています。また(8)は、空気流入口に設ける垂れ壁(可動式のものを含む。)を排煙設備の付属設備に数えていて、可動式の垂れ壁も排煙設備の一部として扱う書き方です。
ガラスの垂れ壁でも、網入りなら防煙壁にできるのですね。
はい、線入り・網入りは除外の対象外です。
アルミの垂れ壁は堺市では使えません。
堺市で可動式の防煙壁を付けるときの3つの条件とは

(ア) 防煙壁は、材質・構造等が火災時に有効かつ確実に作動しなければならないこと。
(イ) 防煙壁の作動後、床面から1.8m 以上の空間を確保し、避難上支障のないものとすること。
(ウ) 排煙機の起動及び感知器の作動と連動して作動すること。
- 令第28条第2項第1号は、排煙設備を煙を有効に排除することができるものとしている
- 規則第30条第1号イは、防煙壁を不燃材料で造り、又は覆われたものとし、防煙区画を500平方メートル以下としている(可動式かどうかは書いていない)
- 堺市の第20 Ⅱ 1は、令第28条第2項第1号の規定に「よるほか」として、(1)防煙区画のア〜エを足している
- イで、防煙壁の材料からアルミニウムやガラス(線入り・網入りを除く)を除いている
- ウ★で、可動式の場合に確実な作動・作動後の床面から1.8m以上の空間・排煙機と感知器への連動の3つを足している
(ウ)は「排煙機の起動及び感知器の作動と連動」なので、排煙機が動いたときにも、感知器が働いたときにも降りるように組む書き方と読めます。国の規則第30条第4号ロ(イ)も、排煙設備の自動起動装置を自動火災報知設備の感知器の作動などと連動して起動するものとしていて、防煙壁の作動をこれにそろえる形です。
可動防煙壁は、建築基準法の定期検査でも作動を確かめる対象です。検査の見どころは可動防煙壁の定期検査の記事で解説しています。
降りきったあとも、下に1.8m以上あけておくのですね。
はい、作動後の床面からの高さです。
天井高と防煙壁の長さを図面で確かめます。
シャッターで防煙区画をつくるときと換気空調設備はどう連動させるのか

さらに、Ⅱ 細目の最後に、換気空調設備についての★の項目があります。
可動式の防煙壁(ウ)、シャッター(エ)、換気空調設備(3)は、いずれも排煙機や起動装置が動いたときに、ほかの設備がそろって動くことを求める★の基準です。設計の段階で、どの信号でどの設備が動くかを連動の一覧にまとめておくと、所轄との協議が進めやすくなります。
シャッターも空調も、排煙と一緒に動くようにするのですね。
はい、起動装置や排煙機の信号でそろって動く形です。
連動の一覧を先に作っておきましょう。
大阪市や東大阪市では同じ扱いなのか

(2) 防煙壁は、不燃材料(アルミニウム、ガラス(線入り、網入りガラスを除く。)等加熱により容易に変形又は破損するものを除く。)で造り、又は覆われたものとすること
(3) 防煙壁に開口部を設ける場合は、常時閉鎖式又は煙感知器の作動若しくは排煙機の起動と連動して閉鎖する特定防火設備を設けること◆
大阪市には、防煙壁に開口部を設けるときの◆の項目があり、常時閉鎖式か、煙感知器の作動・排煙機の起動と連動して閉鎖する特定防火設備を求めています。開口部をふさぐ設備を連動させる考え方は、堺市のエ(シャッター)と近い書き方です。
一方で、大阪市の排煙設備の節には、可動式の防煙壁の条件(1.8mなど)や換気空調設備の停止の項目は見当たりません。用語の意義で、附属設備に「給気口に設ける垂れ壁(可動式のものを含む。)」を含める点は堺市と同じです。
東大阪市消防局が公開している運用基準(6つの資料)には、排煙設備の節がありません。東大阪市で計画するときは、東大阪市消防局に直接確認します。
3市を比べると次のとおりです。
| 項目 | 堺市 | 大阪市 | 東大阪市 |
|---|---|---|---|
| 防煙壁の材料 | 耐火構造又は不燃材料(アルミニウム・ガラスは除く。線入り・網入りガラスは除外の対象外) | 不燃材料で造り又は覆う(除くものは堺市と同じ) | 公開資料に排煙設備の基準なし |
| 可動式の防煙壁 | 確実な作動・作動後に床面から1.8m以上・排煙機の起動及び感知器の作動と連動(★) | 排煙設備の節に項目は見当たらない | 同上 |
| 開口部・シャッター | シャッターは両側の防煙区画の起動装置と連動して閉鎖(★) | 防煙壁の開口部は常時閉鎖式又は煙感知器・排煙機と連動して閉鎖する特定防火設備(◆) | 同上 |
| 換気空調設備 | 排煙機の起動と連動して停止(★) | 排煙設備の節に項目は見当たらない | 同上 |
| 記号の意味 | ★=堺市の指導基準 | ◆=行政指導 | ― |
- 防煙区画(500平方メートル以下)の線を平面図に引き、どこを固定の垂れ壁、どこを可動式やシャッターにするかを決める
- 防煙壁の材料がアルミニウムやガラス(線入り・網入りを除く)でないことを仕様書で確かめる
- 可動式の部分は、断面図で作動後の下端から床面まで1.8m以上あるかを確かめる
- 可動式の防煙壁・シャッター・換気空調設備について、排煙機・感知器・起動装置のどの信号で動くかを連動の一覧にまとめ、所轄の消防署と事前に協議する
大阪市は材料は同じで、可動式の1.8mの項目はないのですね。
はい、材料は同じで、連動の書き方が違います。
東大阪市は消防局に直接確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず断面図で防煙壁の下に1.8m以上残るかを確かめます。
連動の一覧も設計者と作ります!
★の指導基準なので所轄の消防署との事前協議が要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第1章 総則 4 凡例、第20 排煙設備 Ⅰ 概要 2 用語の意義 (3)・(8)、3 建築基準法に基づき設置される排煙設備等との関連 (1)、Ⅱ 細目 1 排煙設備 柱書・(1) 防煙区画 イ〜エ、3 換気空調設備 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」凡例、第5章 第1節 排煙設備 第1 用語の意義 8・第2 設置方法 1 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局「消防用設備等の運用基準」(公開資料6件) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行令 第28条/消防法施行規則 第30条(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および堺市・大阪市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。各資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。建築基準法上の防煙壁や可動防煙壁の扱いは本記事では扱っていないので、設計者・建築確認の審査機関とあわせてご確認ください。





