凍結のおそれがある倉庫や駐車場では、配管に水を張らない乾式や予作動式のスプリンクラー設備が選ばれます。
このとき国の規則は、水源の計算に使うヘッドの個数を1.5倍にするよう定めていますが、端数や一部だけ乾式の建物の数え方までは書いていません。
鴻巣市・桶川市・北本市を受け持つ埼玉県央広域消防本部の審査基準は、そこに切り上げやラック式倉庫の特例を書き足しています。
国の条文がどの個数を借りているかを順にたどり、鈴鹿市・津市・堺市・大阪市・四日市市の書き方と比べます。
鴻巣市にある倉庫の一角が冬に冷え込むので、そこだけ乾式のスプリンクラーにする話が出ています。
水源やポンプが大きくなると聞いて、費用が心配です。
乾式は計算に使うヘッドの個数が1.5倍になるので、水源もポンプも大きくなりやすいです。
ただ、一部だけ乾式の場合の数え方は消防本部ごとに書き方が違います。
同じ国の規則なのに、消防本部によって数え方が変わるのですね。
規則が書いていないすき間を、審査基準がそれぞれ埋めているからです。
まず国の規則が何を1.5倍にしているのかから見ていきます。
- 消防法施行規則第13条の6第1項は、乾式又は予作動式の流水検知装置があるスプリンクラー設備について、標準型ヘッドと側壁型ヘッドの表の個数を1.5倍にして水源を計算させている
- ポンプの吐出量は第14条が第13条の6第2項を、第2項が第1項第1号を借りる二段の借用で、同じ1.5倍の個数を使う
- 規則に書かれていない端数は、埼玉県央広域・津市・堺市が小数点以下切り上げと明記している
- 湿式と乾式が混ざる設備は、埼玉県央広域と鈴鹿市が方式ごとに計算した最大の値、堺市は乾式部分が小さければ表の個数のままとしている
- ラック式倉庫の乾式は、埼玉県央広域が国の指針と同じ要件で政令第32条を適用し30個・20個にできるとしている
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目次
乾式や予作動式のスプリンクラーはなぜ個数を1.5倍にするのか

その個数を決めているのが、消防法施行規則第13条の6第1項です。
閉鎖型スプリンクラーヘッドのうち標準型ヘッドを用いる場合は、次の表の上欄に掲げる防火対象物の区分に応じ、スプリンクラーヘッドの設置個数が同表の下欄に定める個数(乾式又は予作動式の流水検知装置が設けられているスプリンクラー設備にあつては、当該下欄に定める個数に一・五を乗じて得た個数。以下この号において同じ。)以上であるときにあつては当該同表の下欄に定める個数(略)に、それぞれ一・六立方メートル(略)を乗じて得た量とすること。
乾式は配管の中が空気なので、ヘッドが開いてから水が届くまでに時間がかかり、そのぶん多くのヘッドが開くと見込まれています。
同じ1.5倍は第3号の側壁型ヘッドにも書かれています。
一方、第2号の小区画型ヘッドには1.5倍の規定がありません。
まず自分の建物のヘッドがどの種別で、どの方式の流水検知装置につながるのかを図面で確かめるところから始めます。
水が届くのが遅いぶん、多めに開く前提で水を用意するのですね。
そのとおりです。
小区画型ヘッドには割り増しが無いので、ヘッドの種別を先に確かめてください。
ポンプの吐出量にも1.5倍は効くのか

吐出量の条文は、別の条から個数を借りてくる形になっています。
ポンプの吐出量は、前条第二項第一号から第四号までのスプリンクラーヘッドの個数に九十リットル毎分(略)を乗じて得た量以上の量とすること。
消防法施行規則 第13条の6第2項第1号(抜粋)
閉鎖型スプリンクラーヘッドのうち標準型ヘッド 前項第一号に定めるところにより算出した個数のスプリンクラーヘッドを同時に使用した場合に(略)放水することができる性能
乾式又は予作動式の流水検知装置が設けられているスプリンクラー設備の水源水量及びポンプ吐出量を求める場合は、個数欄に定める個数に1.5を乗じて得た個数(小数点以下切り上げ)とする。
条文の借り方を順にたどると、次の3段になります。
- 第14条第1項第11号ハ(イ)は、吐出量を「第13条の6第2項第1号から第4号までの個数」に90リットル毎分を掛けて求めるとしている
- 第13条の6第2項第1号は、標準型ヘッドの個数を「前項第1号に定めるところにより算出した個数」としている
- 第13条の6第1項第1号のかっこ書きが、乾式と予作動式の個数を1.5倍にしている
吐出量を見積もるときは、水源と同じ1.5倍の個数を使うと覚えておけば迷いません。
水槽だけでなく、ポンプの大きさにも1.5倍が効いてくるわけですね。
はい、見積もりではポンプと水槽の両方が大きくなる前提で比べてください。
湿式で済む範囲を広げられないかも、あわせて検討するとよいです。
1.5倍して端数が出たらどうするのか

規則の条文には、この端数をどう扱うかが書かれていません。
乾式流水検知装置又は予作動式流水検知装置が設けられている場合には(略)個数に1.5を乗じて得た個数とされているが、結果が小数点以下の数値を含む場合にあっては、小数点以下を切り上げ整数とすること。◆④
埼玉県央広域は第3-9表の備考1に「小数点以下切り上げ」と書き、津市も吐出量の表の備考2で切り上げとしています。
堺市の◆は、消防庁の通知等を参考に定めた指導基準の印です。
たとえば表の個数が15個の建物で乾式にすると、22.5個は23個になり、水源は23×1.6=36.8㎥、吐出量は23×90=2,070リットル毎分です。
切り捨てて22個で計算すると35.2㎥・1,980リットル毎分となり足りなくなるので、設計図書の計算書で端数の扱いを見ておきます。
つまり半端な0.5個は、まるごと1個として数えるのですね。
そうです。
計算書の個数が小数のまま残っていたら、切り上げてあるかを業者さんに確かめてください。
建物の一部だけが乾式のときは何個で計算するのか

この混ざった設備の個数について、規則は特に書いていません。
一のスプリンクラー設備に、異なる種別のヘッド又は方式が用いられる場合のポンプの吐出量は、それぞれのヘッド又は方式ごとに第3-9表に基づき計算した値のうち、最大の値となる吐出量とすること。
湿式スプリンクラー設備の一部に乾式流水検知装置又は予作動式流水検知装置が設けられている場合において、当該流水検知装置の二次側に設置されたヘッドの個数のうち、最も大きい値に1.5を乗じた数値が(略)表中に規定する個数以下である場合には、吐出量を求めるヘッドの設置個数は(略)表中に規定する個数とすること。★
埼玉県央広域は3⑴ウの吐出量と4⑵の水源の両方で、方式ごとに計算した最大の値とすると書いています。
鈴鹿市も2⑴エと3⑵で同じ書き方です。
堺市は★(堺市消防局が独自に定めた指導基準)として、乾式部分が小さいときの例を示しています。
表の個数が10個の建物で、乾式の弁の先にヘッドが6個しかなければ、6個×1.5=9個で10個以下なので、計算は表の10個のままです。
大阪市は特例として、規格の特例を受けた予作動式(湿式等)を「乾式又は予作動式」として扱わないことができるとしています。
うちの倉庫も乾式にするのは一角だけなので、全体が1.5倍になるとは限らないのですね。
方式ごとに計算した結果を並べて、大きい方で足りているかを見ます。
乾式の範囲を図面に色分けしてもらうと、計算の確認が楽になります。
ラック式倉庫の乾式は30個や20個で足りるのか

乾式にすると、この個数も1.5倍になります。
乾式の流水検知装置を用いるスプリンクラー設備の同時開放個数については(略)1.5を乗じて得た個数とされているが、次の要件を満たす場合にあっては、令第32条の規定を適用し、ラック式倉庫のうち等級がⅠ、Ⅱ及びⅢのものにあっては30、等級がⅣのものにあっては20とすることができる。
⑴ ラック等の部分及び天井部分に設けるスプリンクラーヘッドの感度種別は、1種のものであること。
⑵ 水平遮へい板が(略)設けられていること。
乾式の同時開放個数は1.5倍とされているが、ラック等の部分と天井部分のヘッドが感度種別1種で、水平遮へい板が省令第13条の5第5項第4号により設けられている場合は、政令第32条を適用し、等級Ⅰ・Ⅱ・Ⅲは30、等級Ⅳは20とすることができる。
埼玉県央広域の12は国の指針と同じ要件を並べ、行政指導の▲も付いていない特例として載せています。
鈴鹿市は「ガイドライン別添第4第7による」と書き、堺市はラック式倉庫のヘッドを国の指針により設置する◆の項目にしています。
等級Ⅲで感度1種・水平遮へい板ありなら、表の24個×1.5=36個が30個になり、水源は30×2.28=68.4㎥、吐出量は30×130=3,900リットル毎分です(36個のままだと82.08㎥・4,680リットル毎分)。
ただし令32条の特例なので、使えるかどうかは計画の早い段階で消防本部と協議して決めます。
| 消防本部 | 1.5倍の端数 | 湿式と乾式が混ざるとき | ラック式倉庫の乾式 |
|---|---|---|---|
| 埼玉県央広域(鴻巣市・桶川市・北本市) | 小数点以下切り上げ(水源と吐出量) | 方式ごとに計算した最大の値 | 令32条で30個・20個(感度1種+水平遮へい板) |
| 鈴鹿市 | 記載なし | 方式ごとに計算した最大の値 | 国の指針の別添第4第7による |
| 津市 | 小数点以下切り上げ(吐出量の表) | ヘッドの種別ごとの最大(方式の記載なし) | 記載なし |
| 堺市 | 小数点以下切り上げ◆ | 乾式部分×1.5が表の個数以下なら表の個数★ | 国の指針により設置◆ |
| 大阪市 | 記載なし | 種別ごとの最大/規格の特例を受けた予作動式は乾式扱いしないことができる | 記載なし |
| 四日市市 | 記載なし | 記載なし | 記載なし |
感度1種のヘッドと水平遮へい板がそろっているかで、水源の大きさがかなり変わりますね。
はい、特例を使うなら事前協議の段階で2つの要件を図面に示しておくことが大切です。
倉庫の等級も、収納物から先に確かめておきましょう。
よくある質問
まとめ
乾式にする範囲を図面で色分けしてから、1.5倍の個数で水槽とポンプを見積もってもらいます!
端数の切り上げと方式ごとの計算が書かれた計算書なら、協議も早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 埼玉県央広域消防本部「埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準」第4章 第3 スプリンクラー設備 3⑴ウ・4⑵・第3-9表、第3の4 ラック式倉庫に用いるスプリンクラー設備 12 https://www.ken-o.or.jp/notifiappli/equipment-style/page-9867/
- 消防法施行規則 第13条の6・第14条(e-Gov法令検索)
- 平成10年7月24日消防予第119号「ラック式倉庫の防火安全対策ガイドラインについて」別添第4 7
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第4章 第3 スプリンクラー設備 2⑴エ・3⑵、第3の4 ラック式倉庫等に用いるスプリンクラー設備 12 https://www.city.suzuka.lg.jp/shobo/1012943/1016101/index.html
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」5-3 スプリンクラー設備 https://www.info.city.tsu.mie.jp/kurashi/bousai_kyuukyuu_shoubou/1003213/1003292/index.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第4 スプリンクラー設備 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第3節 閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」 審査基準・告示・ガイドラインのページ
※本記事は埼玉県央広域消防本部などが公表している審査基準と、消防法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。審査基準の文章は要旨を自分の言葉でまとめた部分があり、各本部の記号(埼玉県央広域の▲●、堺市の◆★)は原本の画像で確かめました。「記載なし」としたものは、各本部の資料のうち確認できた節の範囲の結果です。東大阪市は今回確認した資料にスプリンクラー設備の節が無かったため、比較に入れていません。計算例は条文と審査基準の数字を当てはめたもので、実際の個数は設計内容によって変わります。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。





