ビルの屋上に非常用の発電機や冷温水発生器を置くと、燃料の量によっては少量危険物の基準がかかります。
火災予防条例は少量危険物の置き場を屋外と屋内に分けて基準を定めていますが、屋上という置き場を名指しした条文はありません。
津市消防本部の指導運用指針は、そこに屋上空地型という扱いを設け、条件がそろえば屋内の構造基準を適用しないことができるとしています。
指針の条件を条例の条文と1つずつ突き合わせ、燃料タンクと蓄電池設備の扱いまで順にたどります。
津市にあるビルの屋上に非常用発電機を増やす計画があり、燃料タンクも屋上に置くことになりそうです。
少量危険物になると、屋上に専用の部屋を作らないといけないのでしょうか。
条例の屋内の基準をそのまま当てると、不燃材料の壁や防火戸が要る形になります。
津市の指針には、屋上ならではの別の扱いが用意されています。
部屋を作らずに済む道があるのですね。
はい、ただし建物の高さ31mや燃料の引火点などの条件がそろったときだけです。
まず条例が屋内の置き場に何を求めているかから見ていきます。
- 指定数量未満の危険物の基準は消防法第9条の4で市町村条例に委ねられ、火災予防条例は少量危険物の置き場を屋外(第31条の3)と屋内(第31条の3の2)に分けて定めている
- 津市の指針 第3 6は、条件のすべてに適合する屋上の置き場について、条例第31条の3の2を適用しないことができ、一の貯蔵取扱場所として扱えるとしている
- 条件は建物の高さ31mを超える部分に設けないこと・引火点40度以上の危険物・耐火構造の建物の屋上に固定することなど
- 発電設備等はキュービクルに収め、高さ0.15m以上の囲いとためます又は油分離槽、周囲に幅1m以上の屋上空地を設ける
- 燃料タンクは全数量を受ける防油堤と1mの屋上空地、蓄電池設備は規格への適合を前提に31m・耐火構造・1mの条件で扱う
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目次
屋上の発電機と燃料タンクは少量危険物の基準でどう扱われるのか

その根拠になっているのが消防法第9条の4です。
危険物についてその危険性を勘案して政令で定める数量(以下「指定数量」という。)未満の危険物(略)の貯蔵及び取扱いの技術上の基準は、市町村条例でこれを定める。
2 指定数量未満の危険物(略)を貯蔵し、又は取り扱う場所の位置、構造及び設備の技術上の基準(略)は、市町村条例で定める。
建築物の屋上に空地を設ける貯蔵取扱場所においては、次の各号に掲げる条件のすべてに適合する場合には、条例第31条の3の2の規定は適用しないことができるものとし、かつ、適合する当該場所は、一の貯蔵取扱場所として扱うことができる。
火災予防条例(例)は、指定数量の5分の1以上指定数量未満の危険物の置き場を、屋外(第31条の3)と屋内(第31条の3の2)に分けて基準を定めています。
第31条の3の2は、壁・柱・床・天井を不燃材料にすること、窓と出入口の防火戸、床の傾斜とためます、採光・照明・換気の設備など6つの号を並べています。
津市の指針がその適用を外せると書いているので、屋上の置き場にも本来は屋内の基準がかかる前提で書かれていると読めます。
たとえば軽油は第二石油類(非水溶性)で指定数量が1,000リットルなので、200リットル以上から少量危険物になります。
計画が出たら、まず燃料タンクの容量と1日の最大使用量から指定数量の何倍になるかを出してもらうところから始めます。
屋上でも、何もしなければ屋内と同じ壁や防火戸が求められるということですか。
指針の書き方からはそう読めます。
だから屋上空地型の条件に当てはまるかを、計画の最初に確かめておくことが大切です。
屋上空地型を使えるのはどんな建物と燃料なのか

指針の第3 6の(1)から(4)です。
(1) 貯蔵取扱場所は、建築物の高さ31メートルを超える部分には設けないこと。
(2) 危険物は、引火点40度以上の危険物(当該引火点以上での取り扱いがないものに限る。)であること。
(3) 貯蔵し、又は取り扱う設備(以下「設備」という。)は、次に掲げるものであること。
ア 発電設備、ボイラー、バーナー等の消費設備(以下「発電設備等」という。)
イ 上記アへ危険物を供給する燃料タンク、タンク等の貯蔵設備(以下「貯蔵設備」という。)
(4) 設備は、壁、柱、床、はり及び屋根が耐火構造である建築物の屋上に固定すること。
高さ31mを超える部分には置けないので、それより高いビルの屋上はこの扱いの外になります。
燃料は引火点40度以上に限られ、消防法別表第一は灯油・軽油などの第二石油類を引火点21度以上70度未満、重油などの第三石油類を70度以上200度未満としています。
第二石油類の範囲には40度より低い引火点も含まれるので、使う燃料の引火点を安全データシートで確かめます。
設備は発電設備・ボイラー・バーナー等の消費設備と、そこへ燃料を送るタンク等に限られ、建物は壁・柱・床・はり・屋根がすべて耐火構造であることが求められます。
燃料の種類と建物の高さで、最初にふるい分けられるわけですね。
そうです。
設計図の建物高さと燃料の引火点を、見積もりの前にそろえておいてください。
発電機のキュービクルのまわりには何を設けるのか

キュービクルのまわりに求められるものは(5)に並んでいます。
ア 発電設備等は、キュービクル(鋼板で造られた外箱をいう。)に収納するものとし、当該キュービクルの周囲には、危険物の流出防止のため高さ0.15メートル以上の囲いを設け、かつ、ためます又は油分離槽を設けること。ただし、当該キュービクル自体の敷居高等により同等の流出防止が図られる構造の場合には、上記の囲い又は油分離槽は設けないことができる。
イ 発電設備等は、点検のできる空間を確保してキュービクル内に設置すること。
ウ キュービクルの内部には、危険物を取り扱うために必要な採光、照明及び換気の設備又は機器を設けること。
エ キュービクルの周囲(略)には、幅1メートル以上の空地(以下「屋上空地」という。)を保有すること。ただし(略)当該壁(特定自閉防火戸以外の開口部を有しないものに限る。)及び柱を耐火構造とすることにより、屋上空地の幅を当該耐火構造の壁及び柱までの距離とすることができる。
条例第31条の3の2の号と並べてみると、指針の項目は屋内の基準と同じ目的のものを屋上向けに組み直した形に見えます(指針がこの対応を明記しているわけではありません)。
| 項目 | 条例第31条の3の2(屋内) | 津市の屋上空地型 |
|---|---|---|
| 囲い方 | 壁・柱・床・天井を不燃材料(第1号)、窓と出入口に防火戸(第2号) | 鋼板のキュービクルに収納し、耐火構造の建物の屋上に固定 |
| 漏れた油 | 浸透しない床・傾斜・ためます(第3号) | 高さ0.15m以上の囲い+ためます又は油分離槽(敷居高等で同等なら不要) |
| 採光・照明・換気 | 採光・照明・換気の設備(第5号) | キュービクルの内部に設備又は機器 |
| まわりの空き | 定めなし | 幅1m以上の屋上空地(壁際は開口部のない耐火構造の壁・柱まで) |
既存の屋上で1mが取れないときは、その壁を開口部のない耐火構造にできるかが分かれ目になるので、壁の構造と扉の種類を図面で確かめます。
つまり部屋を作る代わりに、箱と囲いと1mの空きで守る考え方ですね。
そのとおりです。
キュービクルの敷居の高さで流出を止める構造なら、囲いや油分離槽を設けないことができる場合もあります。
屋上の燃料タンクと防油堤はどうするのか

タンク本体は、条例の少量危険物のタンクの基準を借りる形です。
ア 燃料タンク(略)は、条例第31条の4(第10号の規定を除く。)の基準及び配管にあっては条例第31条の2第2項第9号の基準に適合すること。また、燃料タンクは、第3の6(5)アに規定するキュービクル内に設けることができること。
イ 貯蔵設備の周囲には、幅1メートル以上の屋上空地を保有すること。
ウ 貯蔵設備には、危険物の流出防止のため、貯蔵する危険物の全数量を収納できる容量以上の不燃性の材料で造った防油堤を設けること。ただし、キュービクル内に設ける燃料タンクは除く。
エ ウの防油堤には、その内部の滞水を外部に排水するため、水抜口を設け、これを開閉する弁等を防油堤の外部に設けること。
借りている条文をたどると、次の順になります。
- 指針(6)アが、燃料タンクに条例第31条の4の基準を当てる(第10号だけを除く)
- 条例(例)第31条の4第2項第10号は、液体の危険物のタンクの周囲に流出を防止する有効な措置を求める号である
- 指針(6)ウが、その代わりに全数量を収納できる不燃性の防油堤を求める(キュービクル内のタンクは除く)
- 配管は条例第31条の2第2項第9号(十分な強度と最大常用圧力の1.5倍の水圧試験など)による
| 距離 | 屋内の区画された室 | 屋上(耐火構造の屋上・キュービクル収納) |
|---|---|---|
| 発電設備と燃料タンク | 1m以上 | 1m以上 |
| 発電設備と壁 | 概ね1m以上 | 1m以上 |
| 燃料タンクと壁・燃料タンクから | 0.5m以上 | 1m以上 |
発電設備の第12条はこれを準用し、たき口を内燃機関と読み替えています。
津市の指針は、キュービクルの外に置く燃料タンクをこの「油温が著しく上昇するおそれのない燃料タンク」と扱い、1m以上を指導するとしています(指針は津市の条例の第3条第1項第17号ウとして引いています)。
タンクをキュービクルの中に入れるか外に置くかで防油堤の要否が変わるので、配置案を2通り描いてもらって比べるとよいでしょう。
タンクを箱の中に入れれば、防油堤はいらなくなるのですか。
指針はキュービクル内のタンクを防油堤の対象から除いています。
その場合もキュービクルの囲いなどの流出防止は(5)アのとおり必要です。
屋上に蓄電池設備を置くときも同じ条件で考えてよいのか

規格への適合が入口になっている点が、発電設備と違います。
(1) 次のアからウのいずれかに適合する場合においては、条例第31条の2第2項第7号、条例第31条の3第2項第2号の規定は適用しないことができる。(略)
(2) 建築物の屋上に設置する場合において、(1)に適合するもの、かつ、次のアからエに掲げる条件のすべてに適合する場合には、条例第31条の3の2の規定は適用しないことができるものとし、適合する当該場所は、一の貯蔵取扱場所として扱うことができる。
ア 貯蔵取扱場所は、建築物の高さ31メートルを超える部分には設けないこと。
イ 壁、柱、床、はり及び屋根が耐火構造である建築物の屋上に固定すること。
ウ 蓄電池設備は、キュービクル又はコンテナ(以下キュービクル等)に収納されていること。
エ キュービクル等の周囲には、幅1メートル以上の屋上空地を保有すること。(略)
(4) 複数の蓄電池設備をまとめて一の貯蔵取扱場所として扱う場合には、キュービクル等間の離隔距離は不要とする。
(1)は、指針が挙げる規格(JIS C 4441やIEC 62619など)に適合する蓄電池設備について、電気設備を電気工作物の法令の例によるとした条例第31条の2第2項第7号と、屋外の液状の危険物の設備の囲いを定めた第31条の3第2項第2号を適用しないことができるとしています。
屋上に置くときの条件は、31m・耐火構造の屋上に固定・キュービクル等に収納・幅1m以上の屋上空地の4つで、発電設備等にあった引火点や囲いの条件は並んでいません。
複数台をまとめて一の場所とするときは、キュービクル等の間を離さなくてよいとされています。
容量によっては火災予防条例(例)第13条の蓄電池設備の基準も別にかかるので、少量危険物の扱いと設備の基準の両方を確かめます。
蓄電池は燃料と違って、規格の書類がそろっているかが入口になるのですね。
はい、メーカーの規格適合を示す書類と屋上の配置図をそろえてください。
そのうえで早めに消防本部へ相談すると、手戻りが減ります。
よくある質問
まとめ
建物の高さと燃料の引火点を確かめてから、屋上空地を取った配置図を作ってもらいます!
キュービクルの囲いと防油堤まで描いた図があれば、協議も早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法 第9条の4・別表第一(e-Gov法令検索)
- 危険物の規制に関する政令 別表第三(e-Gov法令検索)
- 火災予防条例(例)第3条・第12条・第13条・第31条の2・第31条の3・第31条の3の2・第31条の4・第46条(昭和36年11月22日 自消甲予発第73号 消防庁長官通知)
- 津市消防本部「少量危険物及び指定可燃物の規制に関する指導運用指針」(令和5年11月改訂版)第3 6・7・10、6-1図・6-2図 https://www.info.city.tsu.mie.jp/kurashi/bousai_kyuukyuu_shoubou/1003213/1003292/1003295.html
- 埼玉県央広域事務組合火災予防条例 第31条の3の2
- 鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準(鈴鹿市消防本部)・四日市市消防同意事務審査基準(四日市市消防本部)・埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準(埼玉県央広域消防本部)・消防用設備等の設置に係る運用基準(大阪市消防局)・堺市消防同意・消防用設備等審査基準(堺市消防局)
※本記事は津市消防本部が公表している指導運用指針と、消防法・火災予防条例(例)に基づく一般的な解説です。指針の文章は原本の画像で確かめ、長い部分は(略)で省きました。津市火災予防条例の条番号は、指針が引用している範囲でのみ記載しています。「見当たらない」としたものは、各本部の消防用設備等の基準を検索した範囲の結果で、少量危険物の別の資料に定めがある可能性はあります。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





