ビルの外壁にある送水口に消防車がホースをつなぎ、上の階の放水口まで水を送り込むのが連結送水管です。送水口でどれだけの圧力をかければ、いちばん条件の悪い放水口のノズルで必要な勢いが出るのか。この送水口での圧力を設計送水圧力と呼びます。
国の規則は設計送水圧力の意味と、1メガパスカルを超えるときの配管の強さを決めていますが、上限の数値は書いていません。大阪市消防局の運用基準は上限を1.5メガパスカルとし、計算に使う水量や、送水口・ホースの損失の見込み方まで決めています。
この記事では、国の基準と大阪市の運用を分けて読み、東大阪市・堺市の運用基準とも比べます。
大阪市で12階建てのビルの連結送水管を計画しています。
設計送水圧力はどこまで上げてよいのでしょうか。
大阪市の運用基準では上限が1.5メガパスカルです。
東大阪市と堺市は1.6メガパスカルです。
計算の条件も市ごとに決まっているのですか?
はい、水量と送水口・ホースの損失の見込み方まで決めています。
国の規則から順に見ていきましょう。
- 国の規則第31条第5号ロは、設計送水圧力をノズルの先端で0.6メガパスカル以上になるように送水したときの送水口の圧力と定め、1メガパスカルを超えるときに強い管や継手を求めていますが、上限の数値はありません
- 大阪市は上限を1.5メガパスカルとし、立管ごとに800リットル毎分(双口形は1,600リットル毎分)、送水口は等価管長38.3メートル、ホースは8メートルとして計算させます(◆)
- 東大阪市は上限1.6メガパスカルで、送水口の損失を4.7メートル、ホースを2本で8メートルとし、メーカー等の数値があればそちらを使います(▲)
- 堺市も上限1.6メガパスカルで、隣接する2の階に放水口がある場合は1,600リットル毎分とし、送水口が複数あるバイパス接続では送水口ごとに1.6メガパスカル以下とします(★)
- 上限は中継ポンプの位置の決め方にもつながります。最新の内容は管轄の消防署で確認します
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目次
国の規則は設計送水圧力をどう決めているのか

ロ (略)ただし、配管の設計送水圧力(ノズルの先端における放水圧力が〇・六メガパスカル(略)以上となるように送水した場合における送水口における圧力をいう。以下この号において同じ。)が一メガパスカルを超える場合には、(略)
チ 配管の耐圧力は、当該配管の設計送水圧力の一・五倍以上の水圧を加えた場合において当該水圧に耐えるものであること。(略)
八 消防用ホース及び配管の摩擦損失計算は、消防庁長官が定める基準によること。
- 設計送水圧力とは、ノズルの先端で0.6メガパスカル以上になるように送水したときの、送水口での圧力のこと
- 設計送水圧力が1メガパスカルを超えるときは、スケジュール40以上の鋼管などの強い管や、呼び圧力16K以上の管継手などを使うこと(ロ・ハ)
- ホースと配管の摩擦損失計算は、消防庁長官が定める基準によること(第8号)
ノズルで0.6メガパスカルを出すには、送水口から放水口までの高さの差と、配管・送水口・ホースで失われる圧力を上乗せして送る必要があります。高い建物ほど送水口の圧力は上がり、消防車のポンプや配管にかかる負担も大きくなります。送水口に高圧の目印を付ける各地の決まりは津市の送水口の高圧表示の記事で比べています。
国の規則には、設計送水圧力の上限がないのですね。
はい、上限の数値は運用基準で決まります。
大阪市の書き方を見てみましょう。
大阪市は設計送水圧力をどう計算させているのか

(1) 配管の単位摩擦損失水頭は、使用する配管の種類及び呼びに応じ、第9章「配管の摩擦損失水頭の基準」によること
(2) 摩擦損失計算は、立管ごとに、800リットル毎分(双口形の放水口が設けられるものにあっては、1,600リットル毎分)の水量が流れるものとして行うこと
(3) 送水口の摩擦損失水頭は、使用する配管の種類及び呼びに応じ(2)により算出した流量(4.(1)ただし書を適用し2個の放水口(双口形のものを除く。)ごとに1の立管とした場合は、1,600リットル毎分)における摩擦損失水頭値と送水口の等価管長38.3メートルとの積による数値とすること
(4) ホースの摩擦損失水頭は、8メートルあるものとして行うこと
1 配管の単位摩擦損失水頭は、配管の摩擦損失の基準第2によるほか、管の基準内径の絶対値については、別表9-1によること。なお、配管の種類及び呼びごとの主な流量に対する摩擦損失水頭を、参考までに別表9-2に示す。
- 規則第31条第8号で、ホースと配管の摩擦損失計算は消防庁長官が定める基準による
- 大阪市の第3 2◆で、設計送水圧力の算定は「次による」とし、上限を1.5メガパスカルとする
- 2(1)で、配管の単位摩擦損失水頭は第9章に渡す。第9章は、告示(平成20年消防庁告示第32号)の第2によるほか、管の基準内径を別表9-1で決めている
- 2(2)で、流す水量を立管ごとに800リットル毎分(双口形の放水口なら1,600リットル毎分)とする
- 2(3)で、送水口の損失を(2)の流量での摩擦損失水頭値 × 等価管長38.3メートルとする(第3 4(1)ただし書で2個の放水口ごとに1本の立管にしたときは1,600リットル毎分)
- 2(4)で、ホースの損失を8メートルとして見込む
こうして見込んだ損失に、送水口から放水口までの高さの差とノズルでの0.6メガパスカルを合わせたものが、規則の定義どおりの設計送水圧力になります。それが1.5メガパスカルに収まるように、配管の太さや立管の分け方を決めていきます。
送水口の損失は、配管の長さに置き換えて計算するのですね。
はい、等価管長38.3メートルに単位摩擦損失水頭を掛けます。
流量の取り方にも注意が要ります。
上限1.5メガパスカルは立管の太さとポンプの位置にどう関わるのか

(1) 各階に2個以上の放水口(双口形は1個とみなす。)が設置される場合、当該放水口にいたる立管は、それぞれ別に設けること。ただし、10階以下の部分にあっては、2個の放水口(双口形のものを除く。)ごとに1の立管とすることができる。
(3) 地階を除く階数が11以上の建築物に設ける立管の口径は、管の呼びで125ミリメートル以上とすること。ただし、2により算定された設計送水圧力が1.5メガパスカル以下の場合はこの限りでない。
次に、高い建物で途中に設ける加圧送水装置(中継ポンプ)です。規則第31条第6号イは、高さ70メートルを超える建物に加圧送水装置を求めています。大阪市は第6 加圧送水装置等で、その置き場所と計算を決めています。
加圧送水装置の設置場所は、地盤面からの高さが70メートル以下の位置に、屋内消火栓設備の基準(第4.1)を準用して設けるものとする。ただし、設計送水圧力を1.5メガパスカルとし、加圧送水装置への押込み圧力が0.1メガパスカル以上となる場合は、70メートルを超える位置に設置することができる。
4 中継ポンプの全揚程◆
中継ポンプの必要全揚程を算定する際は、第3.2.(1)、(3)及び(4)の例によるほか、次による。
(1) 全揚程の算定にあたっては、中継ポンプの一次側に設けられる放水口のうち送水口からの圧力損失が最大となる放水口において、ノズルの先端における放水圧力が0.6メガパスカルとなる設計送水圧力により送水した場合に、中継ポンプにかかる押込み圧力を加算することができる。
(2) 摩擦損失計算は、放水口のホース接続口1個当り800リットル毎分の水量が流れるものとして行うこと
- 第6 2◆で、中継ポンプは原則として地盤面から70メートル以下に置く。ただし、設計送水圧力を1.5メガパスカルとして、ポンプへの押込み圧力が0.1メガパスカル以上になるなら、70メートルを超える位置にも置ける
- 第6 4◆で、中継ポンプの全揚程は第3 2の(1)・(3)・(4)の例による。つまり単位摩擦損失水頭(第9章)、送水口の等価管長38.3メートル、ホース8メートルを借りる
- 借りなかった第3 2(2)(立管ごとに800リットル毎分)の代わりに、第6 4(2)で放水口のホース接続口1個当たり800リットル毎分と決め直している
- 第6 4(1)で、送水口から送った水がポンプを押す力(押込み圧力)を全揚程の計算に加算できる
中継ポンプの計算でも、送水口の38.3メートルを使うのですね。
はい、第3 2の(1)(3)(4)を借りる書き方です。
流量だけは接続口1個当たりに変わります。
東大阪市は送水口とホースの損失をどう見込んでいるのか

ア 設計送水圧力の上限は1.6メガパスカルとすること。
イ ホースの摩擦損失水頭は、2本で8メートルとすること。ただし、メーカー、仕様等により摩擦損失水頭が定められている場合は、当該摩擦損失水頭とすること。
ウ 送水口の摩擦損失水頭は、4.7メートルとすること。ただし、メーカー、仕様等により摩擦損失水頭が定められている場合は、当該摩擦損失水頭とすること。
エ 立管ごとに800リットル毎分(双口形の放水口が設けられるものにあっては、1,600リットル毎分)の流量があるものとすること。
- 上限は1.6メガパスカルで、大阪市の1.5メガパスカルより0.1メガパスカル高い
- 送水口の損失は、大阪市が等価管長38.3メートル × 単位摩擦損失水頭で求めるのに対し、東大阪市は4.7メートルという水頭の数値そのもので示している
- ホースの損失は、大阪市の8メートルと同じ数値だが、東大阪市は「2本で」と書いている
- 送水口とホースは、メーカーや仕様で摩擦損失水頭が決まっていれば、その数値を使うただし書がある
- 流量の条件(立管ごとに800リットル毎分、双口形は1,600リットル毎分)は大阪市と同じ
東大阪市は送水口の損失が4.7メートルと決まっているのですね。
はい、メーカーの数値があればそちらが優先です。
大阪市とは見込み方の形が違います。
堺市は設計送水圧力の計算条件をどう決めているのか

ア ノズルの先端における放水圧力(以下「ノズル先端圧力」という。)及び放水量による設定条件は、それぞれ0.6MPa、800ℓ/min とすること。なお、隣接する2の階に放水口がある場合は1600ℓ/min を当該配管の流量として摩擦損失計算を行うこと。
イ 摩擦損失計算で用いる摩擦損失水頭等は、第2 屋内消火栓設備Ⅱ.8.(2).イを準用するほか、配管の摩擦損失水頭の数値は第22-1表、第22-2表、第22-3表によること。
ウ ホースの摩擦損失水頭は8.0m あるものとして摩擦損失計算を行うこと。
エ 設計送水圧力の上限は1.6MPa とすること。
オ バイパス接続する防火対象物にあっては、それぞれの送水口から最遠となる放水口の設計送水圧力を求めること。この場合、それぞれの送水口の設計送水圧力は、1.6MPa 以下であること。
- 規則第31条第8号の摩擦損失計算は、摩擦損失基準(平成20年12月26日消防庁告示第32号)によるほか、(4)による(摩擦損失基準の告示名・番号は第2 屋内消火栓設備の8で定義)
- アで、ノズル先端圧力0.6メガパスカル・800リットル毎分とし、隣接する2の階に放水口がある場合は1,600リットル毎分を配管の流量とする
- イで、管継手とバルブ類の摩擦損失水頭は第2 屋内消火栓設備のⅡ 8 (2) イを準用し、第2-10表から第2-16表による(認定品は認定時の申請値)
- 同じイで、配管そのものの摩擦損失水頭は、連結送水管の節にある第22-1表から第22-3表による
- ウでホースを8.0メートル、エで上限を1.6メガパスカルとし、オで送水口が複数あるバイパス接続は、送水口ごとに最遠の放水口で計算して1.6メガパスカル以下とする
流量を1,600リットル毎分にする条件は、大阪市・東大阪市が「双口形の放水口が設けられるもの」と書くのに対し、堺市は「隣接する2の階に放水口がある場合」と書いていて、書き方が違います。(4)には、大阪市の38.3メートルや東大阪市の4.7メートルのような送水口だけを取り出した数値は書かれていません。
堺市は高層階等の加圧送水装置(ブースターポンプ)についても、Ⅱ 2(3)イで送水口の設計送水圧力を1.6メガパスカル以下に設定し、ノズル先端で0.6メガパスカル以上得られる位置に設けるとしていて、東大阪市と同じ圧力の条件で書いています。3市を比べると次のとおりです。
| 項目 | 大阪市 | 東大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|---|
| 上限 | 1.5メガパスカル | 1.6メガパスカル | 1.6メガパスカル |
| 流量 | 立管ごとに800リットル毎分(双口形は1,600リットル毎分) | 大阪市と同じ | 800リットル毎分(隣接する2の階に放水口があれば1,600リットル毎分) |
| 送水口の損失 | 単位摩擦損失水頭 × 等価管長38.3メートル | 4.7メートル(メーカー等の数値があればそれ) | 送水口だけの数値は(4)になし |
| ホースの損失 | 8メートル | 2本で8メートル(メーカー等の数値があればそれ) | 8.0メートル |
| 単位摩擦損失水頭 | 第9章(告示の第2・別表9-1) | 損失計算の基準告示による | 第22-1表〜第22-3表・屋内消火栓設備の表を準用 |
| 中継ポンプの位置 | 70メートル以下が原則、1.5メガパスカルで押込み0.1メガパスカル以上なら超えても可 | 送水口1.6メガパスカル以下で0.6メガパスカルを得られる位置 | 送水口1.6メガパスカル以下でノズル先端0.6メガパスカル以上を得られる位置 |
| 記号 | ◆=行政指導 | ▲=法令基準に行政指導を加えた基準 | ★=堺市消防局の指導基準 |
- 建物の市を確かめ、上限が1.5メガパスカルか1.6メガパスカルかを最初に押さえる
- 流量の条件(立管ごとか、双口形か、隣接する2の階か)を市の書き方どおりに当てはめる
- 送水口とホースの損失を市の数値で見込む(東大阪市はメーカー等の数値があればそれを使う)
- 上限を超えそうなら、配管の太さ・立管の分け方・中継ポンプの位置を見直し、所轄の消防署と事前に協議する
同じ大阪府内でも、上限も送水口の見込み方も違うのですね。
はい、大阪市だけが1.5メガパスカルです。
計算書を作る前に市の基準を確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず市ごとの上限を確かめてから計算書を作ります。
送水口の損失の見込み方も合わせます!
◆や▲や★の指導基準なので所轄の消防署との事前協議が要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」凡例、第5章 第3節 連結送水管 第3 配管等 2・4、第6 加圧送水装置等 2・4、第9章 配管の摩擦損失水頭 第1・第2 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局「連結送水管の設置に係る運用基準」凡例・用語の定義、Ⅱ 細目 4 配管等 ⑷ 配管等の摩擦損失計算、5 加圧送水装置 ⑶ 設置場所 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」凡例、第22 連結送水管 Ⅱ 細目 1 (4) 配管等の摩擦損失計算等(設計送水圧力)・2 (3) 加圧送水装置、第2 屋内消火栓設備 Ⅱ 細目 8 配管等の摩擦損失計算等 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 消防法施行令 第29条/消防法施行規則 第31条(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および大阪市・東大阪市・堺市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。各資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。配管の摩擦損失計算の基準(告示)の計算式や、配管の種類ごとの単位摩擦損失水頭の表の数値は本記事では扱っていないので、設計時に所轄の消防署とあわせてご確認ください。





