スプリンクラー設備のある建物では、浴室や機械室などヘッドを付けない部分を補助散水栓で守ることがあります。
国の規則は補助散水栓の置き場所やホースの長さを定めていますが、配管をどこから取るかまでは書いていません。
鈴鹿市消防本部の審査基準は、流水検知装置のどちら側から分岐するかを、湿式・乾式・ヘッドのない階の3つに分けて決めています。
鈴鹿市の配管の決まりを国の規則から順にたどり、埼玉県央広域・津市・四日市市・大阪市・堺市と比べます。
鈴鹿市で管理しているビルの改修で、補助散水栓の配管を引き直す計画が出ています。
どこから配管を分けてもよいものなのでしょうか。
どこからでもよいわけではなく、鈴鹿市の審査基準に分岐の位置が書かれています。
スプリンクラー設備が湿式か乾式かで、つなぎ方が変わります。
うちの建物には、スプリンクラーヘッドのない階もあります。
その場合は、条件をそろえれば5階層までを一つの系統にまとめられます。
まず国の規則がどこまで決めているかから見ていきます。
- 国の規則は補助散水栓の置き場所・性能・ホースの長さを定め、自動警報装置は補助散水栓の開閉弁の開放でも警報を発するものとしているが、配管の分岐先は定めていない
- 鈴鹿市は、湿式のスプリンクラー設備なら各階の流水検知装置等の二次側配管から32A以上で分岐するとしている
- 乾式や予作動式の設備では、補助散水栓だけのための専用の湿式流水検知装置の二次側から分岐する(埼玉県央広域・四日市市・大阪市・堺市も同じ趣旨)
- ヘッドを設けない階は、地上と地下を分ける・自動火災報知設備・階ごとの止水弁・リミッタースイッチの4条件で5階層以下を一つの系統にできる
- 有効に放水できる範囲は鈴鹿市が放水距離10m、接続の太さと放水圧力の上限は消防本部ごとに違う
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目次
国の規則は補助散水栓の配管について何を決めているのか

細かな基準は施行規則第13条の6第4項に並んでいます。
令第12条第2項第8号の規定により、補助散水栓をスプリンクラー設備に設ける場合にあつては、次に定めるところによらなければならない。
一 補助散水栓は、防火対象物の階ごとに、その階の各部分から一のホース接続口までの水平距離が十五メートル以下となるように設けること。(略)
二 (略)それぞれのノズルの先端において、放水圧力が〇・二五メガパスカル以上で、かつ、放水量が六十リットル毎分以上の性能のものとすること。
六 ロ 補助散水栓を設置する階における消防用ホースの長さは、補助散水栓のホース接続口からの水平距離が十五メートルの範囲内の当該階の各部分に有効に放水することができる長さとすること。(略)
イ スプリンクラーヘッドの開放又は補助散水栓の開閉弁の開放により警報を発するものとすること。
ロ 発信部は、各階(ラック式倉庫にあつては、配管の系統)又は放水区域ごとに設けるものとし、当該発信部には、流水検知装置又は圧力検知装置を用いること。
第13条の6第4項は、補助散水栓を各部分から水平距離15m以下に置くこと、ノズルの先で0.25MPa以上・60リットル毎分以上を出すこと、表示や赤色の灯火、ホースの長さなどを定めています。
一方、第14条第1項第4号イは、自動警報装置がヘッドの開放だけでなく補助散水栓の開閉弁の開放でも警報を発するものとし、ロで発信部を各階ごとに設けるとしています。
規則を条ごとに確かめても、補助散水栓の配管を流水検知装置のどちら側から取るかという規定は見当たりません。
そこで各消防本部が、審査基準で分岐の位置を具体的に決めています。
改修の図面では、補助散水栓の配管がどの流水検知装置の先につながっているかを、まず系統図で確かめます。
補助散水栓を開けたときにも、警報が鳴る決まりなのですね。
はい、規則は開閉弁の開放でも警報を発するものとしています。
そのつなぎ方を、鈴鹿市は湿式と乾式に分けて決めています。
鈴鹿市では湿式と乾式で補助散水栓の配管をどこから分岐するのか

接続の太さと、湿式・乾式それぞれの分岐の位置が並んでいます。
ア 補助散水栓への接続 呼び径32A以上とする。
イ 湿式の流水検知装置等を用いるスプリンクラー設備に補助散水栓を設ける場合 各階の流水検知装置等の二次側配管から分岐をして設置する。
ウ 乾式の流水検知装置又は予作動式流水検知装置を用いるスプリンクラー設備に補助散水栓を設ける場合 補助散水栓専用の湿式流水検知装置の二次側配管から分岐をして設置する。
イは、湿式の設備なら補助散水栓の配管を各階の流水検知装置等の二次側、つまりヘッドへ向かう側の配管から分けるとしています。
二次側から取れば、補助散水栓を開いたときもその階の流水検知装置を水が通ることになります。
ウは、乾式や予作動式の設備では、ヘッド側の流水検知装置の二次側からは取らず、補助散水栓だけのための専用の湿式流水検知装置を設けてその二次側から分けるとしています。
接続は32A以上で、この(3)の項目には鈴鹿市が行政指導の印にしている▲がなく、法令の解釈として書かれています(原本の画像で確認)。
凍結対策で乾式を選んでいる駐車場や倉庫に補助散水栓を足すときは、専用の湿式の弁を置く場所を先に決めておきます。
乾式の設備だと、補助散水栓のために弁をもう一つ置くことになるのですね。
そうです、専用の湿式の弁から分けます。
ヘッドのない階が続く建物には、まとめ方の決まりもあります。
ヘッドのない階を5階層まとめて一つの系統にできるのはどんなときか

鈴鹿市はこの場合に限り、階ごとに弁を置かず複数の階をまとめる方法を認めています。
スプリンクラーヘッドを設けない階(当該階のすべてが省令第13条第3項に規定する部分等である階)に補助散水栓を設置して警戒する場合
次の条件のすべてに適合する場合は、5階層以下を一の補助散水栓専用の流水検知装置の二次側配管から分岐して差し支えない。
(ア)地上と地下部分を別系統とする。
(イ)補助散水栓で警戒する部分は、自動火災報知設備により有効に警戒されている。
(ウ)補助散水栓の一次側には、階ごとに止水弁を設置する。
(エ)放水した補助散水栓が確認できるように、各補助散水栓にリミッタースイッチ等を設ける。
対象は、施行規則第13条第3項でヘッドを要しないとされる部分などだけでできていて、ヘッドが1つもない階です。
地上と地下を別の系統にし、補助散水栓で守る部分を自動火災報知設備で警戒し、各階の補助散水栓の手前に止水弁を置きます。
さらに、どの階の補助散水栓から放水したかが分かるよう、各補助散水栓にリミッタースイッチ等を付けることが4つ目の条件です。
一つの流水検知装置に5つの階がぶら下がるので、作動の表示だけでは放水した階を絞れないことが、この条件の背景と読めます(理由までは書かれていません)。
設計図にこの方式が出てきたら、4つの条件が図面と仕様書のどこに書かれているかを一つずつ印を付けて確かめます。
つまり地下の機械室の階は、地上の階と同じ系統にはできないのですね。
はい、地上と地下は別系統にするのが1つ目の条件です。
この条件の数は、消防本部によって3つと4つに分かれます。
補助散水栓が各部分に有効に放水できるとはどこまで届けばよいのか

鈴鹿市は、この「有効に放水できる」を間仕切壁の回り込みまで含めて説明しています。
(1)エ(イ) 消防用ホースの規格省令に規定する呼称25のもので長さ20mのものとする。▲
(2)ウ 省令第13条の6第4項第6号ロに規定する「各部分に有効に放水することができる」とは、スプリンクラーヘッドが設けられていない部分について、間仕切壁等により放水できない部分が生じないよう、消防用ホースを延長する経路、消防用ホースの長さ及び放水距離を考慮し、有効に消火できるよう設けることをいう。(第3-40図参照)この場合の放水距離は、10mとする。▲
鈴鹿市の第3-40図は、ホースを廊下に沿って延ばした長さをL1、ノズルから先の放水距離をL2とし、ヘッドのない部分までL1+L2以下になるよう設けるとしています。
ホースは呼称25で長さ20m、放水距離は10mで、どちらにも行政指導を示す▲が付いています。
埼玉県央広域も同じ図と文で、放水距離は「おおむね10m」です。
大阪市は、ヘッドのない部分の各部分から補助散水栓まで歩行距離がホースの長さ以下とし、超える部分が10m以下で有効に放水できるならよいとしています。
堺市は屋内消火栓の基準を借りて、2号消火栓と同じ概ね10m程度の放水距離を加えた範囲で考えます。
機械室や浴室の奥まで、間仕切壁を回り込んだホースの経路と残りの10mが届くかを、平面図に線を引いて確かめます。
直線で15m以内でも、壁を回り込むと届かない部屋があるかもしれませんね。
そこを見るために、鈴鹿市はホースの経路まで考えるよう書いています。
最後に、ほかの消防本部との違いを表で並べます。
接続の太さや放水圧力の上限は消防本部でどう違うのか

特に5階層をまとめる条件の数と、ノズルの放水圧力の上限が分かれます。
(3)イ 補助散水栓の配管は、各階の流水検知装置の二次側配管から分岐設置すること。ただし、スプリンクラーヘッドを設けない階に補助散水栓を設置する場合で、次による場合は、5階層以下を一の流水検知装置から分岐することができる。
(ア)地上と地下部分を別系統とすること。(イ)補助散水栓で警戒する部分は、自動火災報知設備により有効に警戒されていること。(ウ)補助散水栓の一次側には階ごとに仕切弁を設置すること。
(4)減圧措置 補助散水栓はノズルの先端における放水圧力が0.7MPaを超えないための措置を講じること。
| 項目 | 鈴鹿市 | 埼玉県央広域 | 津市 | 四日市市 | 大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 湿式の分岐 | 各階の流水検知装置等の二次側 | 同じ | 同じ | 同じ(圧力検知装置も含む) | 同じ | 同じ★ |
| 乾式・予作動式 | 専用の湿式流水検知装置 | 同じ | 二次側から分岐しない | 専用の流水検知装置等 | 専用の湿式流水検知装置(予作動式の湿式等はリミットスイッチ等で例外◆) | 専用の湿式流水検知装置等★ |
| 接続の太さ | 32A以上 | 25A以上 | 立上り管32A以上 | この節に記載なし | この節に記載なし | 25A以上(枝管からは32A以上)★ |
| ヘッドのない階を5階層まとめる | 4条件 | 4条件 | 3条件(リミッタースイッチなし) | 3条件(自動火災報知設備の条件に下線) | 記載なし | 記載なし |
| 放水の届く範囲 | 放水距離10m▲ | おおむね10m▲ | 国と同じ文 | この節に記載なし | 歩行距離がホース長以下(超える部分10m以下なら可) | 放水距離 概ね10m程度(屋内消火栓の2号消火栓の例) |
| ノズルの放水圧力の上限 | 1.0MPa | 1.0MPa● | 0.7MPa | この節に記載なし | 1MPa(ヘッドと合わせて)◆ | この節に記載なし |
津市と四日市市は5階層をまとめる条件を3つにしていて、鈴鹿市と埼玉県央広域が加えているリミッタースイッチの条件がありません。
大阪市と堺市の補助散水栓の節には、5階層をまとめる定め自体が見当たりません。
放水圧力の上限は、鈴鹿市と埼玉県央広域が1.0MPa、津市が0.7MPaです。
表の記号は、鈴鹿市と埼玉県央広域の▲・四日市市の下線・大阪市の◆・堺市の★が各本部の行政指導の印、埼玉県央広域の●は法令の基準に行政指導を加えたものの印で、津市の基準には記号がありません。
建物が管轄の境に近いときや、他市の設計例を流用するときは、表のどの行が変わるかを先に確かめます。
同じ三重県でも、鈴鹿市と津市で放水圧力の上限が違うのですね。
そうなんです、減圧の設定値も管轄で変わります。
改修の見積もりを取る前に、どの基準で設計するかを業者とそろえておくと安心です。
よくある質問
まとめ
系統図に補助散水栓の分岐の位置を書き込んで、鈴鹿市消防本部に相談してみます!
どの流水検知装置の先につなぐかが分かる図があれば、協議が早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第12条第2項第8号(e-Gov法令検索)
- 消防法施行規則 第13条の6第4項・第14条第1項第4号(e-Gov法令検索)
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第4章 第3 スプリンクラー設備 13 補助散水栓 https://www.city.suzuka.lg.jp/shobo/1012943/1016101/index.html
- 埼玉県央広域消防本部「埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準」第3 スプリンクラー設備 14 補助散水栓 https://www.ken-o.or.jp/notifiappli/equipment-style/page-9867/
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」5-3 スプリンクラー設備 16 補助散水栓 https://www.info.city.tsu.mie.jp/kurashi/bousai_kyuukyuu_shoubou/1003213/1003292/index.html
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」スプリンクラー設備(3)補助散水栓・(6)補助散水栓 https://yokkaichisyoubou.jp/sys/wp-content/uploads/2024/04/0041.pdf
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第1章 第3節 閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備 第10 補助散水栓 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第4 スプリンクラー設備 Ⅱ(5)補助散水栓 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
※本記事は鈴鹿市消防本部・埼玉県央広域消防本部・津市消防本部・四日市市消防本部・大阪市消防局・堺市消防局が公表している基準と、消防法施行令・施行規則に基づく一般的な解説です。各基準の文章と記号は原本の画像で確かめ、長い部分は(略)で省きました。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





