無窓階かどうかは、消防法施行規則が「階」ごとに開口部の大きさと面積を数えて決めます。
ところが渡り廊下でつながった棟や、壁で行き来できない区画に分かれた階は、どこまでを一つの階として数えるのかが条文だけでは決まりません。
津市の予防事務審査検査基準は、その数え方を別記1に7つの建物の形として図付きでまとめています。
そのうち渡り廊下・区画・セットバック・吹抜け・庇の扱いを国の条文までたどり、鈴鹿市・埼玉県央広域・四日市市・堺市の基準と比べます。
津市で、渡り廊下で2棟がつながった工場の増築を担当することになりました。
無窓階かどうかを棟ごとに見ればよいのか、迷っています。
消防用設備等の設置単位が同一棟になるなら、つながった階は2棟分を合算して数えます。
まず一棟か別棟かを先に決めるのがポイントです。
階の中が壁で仕切られている場合も、扱いが変わるのでしょうか。
そこは消防本部によって書き方が分かれるところです。
津市の別記1を軸に、ほかの本部の審査基準と並べて見ていきましょう。
- 無窓階は消防法施行令第10条第1項第5号と消防法施行規則第5条の5で「階」ごとに判定する決まりで、渡り廊下や間仕切りがあるときの数え方は各消防本部の基準が補っている
- 津市は、設置単位が同一棟となる渡り廊下でつながった階は各棟の階を合算し、つながっていない階は棟ごとに判定し、結果が割れたら実態で判断するとしている
- 行き来できない区画がある階は、津市・鈴鹿市(▲)・堺市は階全体で判定し、令第8条の区画なら区画ごととする一方、四日市市は開口部のない耐火構造などの壁で区画されていれば区画ごとに判定するとしている
- 庇の先が隣地境界まで1m未満なら庇のすぐ上の階の窓は数えないが、津市は幅1m以上のバルコニーが道路等に面する上の階と、人が歩ける強度の屋上がある後退した階は数えられるとしている
- 吹抜けがある階は床のある部分で数えるのが5本部に共通で、外気に開放された庇の下は津市・鈴鹿市・埼玉県央広域・四日市市とも無窓階の判定の床面積から外せる扱いになっている
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目次
国の規則は無窓階をどんな単位で判定しているのか

まず国の条文で、判定の単位と数える開口部を確かめます。
(略)無窓階(建築物の地上階のうち、総務省令で定める避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階をいう。以下同じ。)(略)
消防法施行規則 第5条の5第1項
令第十条第一項第五号の総務省令で定める避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階は、十一階以上の階にあつては直径五十センチメートル以上の円が内接することができる開口部の面積の合計が当該階の床面積の三十分の一を超える階(以下「普通階」という。)以外の階、十階以下の階にあつては直径一メートル以上の円が内接することができる開口部又はその幅及び高さがそれぞれ七十五センチメートル以上及び一・二メートル以上の開口部を二以上有する普通階以外の階とする。
同条第2項第2号
開口部は、道又は道に通ずる幅員一メートル以上の通路その他の空地に面したものであること。
規則第5条の5は、直径50cm以上の円が入る開口部の面積の合計が床面積の30分の1を超える階を「普通階」とし、10階以下の階ではさらに直径1m以上の円が入る開口部か幅75cm以上・高さ1.2m以上の開口部が2以上あることを求め、それ以外の階を無窓階としています。
開口部は、道か、道に通じる幅1m以上の通路その他の空地に面していなければなりません(第2項第2号)。
ただ、渡り廊下で棟がつながったときや、階の中が壁で仕切られたとき、上の階が後退したときに、どの開口部をどの床面積に対して数えるかは条文に書かれていません。
なお津市の基準1-9と埼玉県央広域の基準は条番号を「第5条の3」、四日市市は「第5条の2」と書いていますが、現行のe-Govでは第5条の5に置かれているので、条文を開くときは現行の番号で確かめてください。
階ごとの判定なのは分かりましたが、棟や区画が絡むと急に分からなくなります。
そこを補うのが各本部の基準です。
津市は別記1に7つの形を図付きで並べています。
津市では渡り廊下でつないだ棟の階をどう数えるのか

ここでは先に、同じ基準の設置単位の項を一つ借りています。
● 渡り廊下で接続された階は、各棟の階を合算した形で有効開口部算定を行う。
● 渡り廊下で接続されていない階は、それぞれの棟の階ごとに有効開口部算定を行う。この結果、それぞれの棟の階ごとの判定が異なったときは、実態により判定する。
⑴が使えるのは「設置単位が同一棟となる場合」だけで、その判断は同じ基準の1-3「消防用設備等の設置単位の判断基準」に借りています。
1-3の第2は、建築物どうしが渡り廊下などでつながっていれば原則として一棟とし、渡り廊下の用途・幅員・構造などの条件に合うときだけ別棟として扱えるとしています。
一棟になるときは、渡り廊下がつながった階(別記1の図では1階)を両棟の床面積と開口部の合計で判定し、つながっていない2階より上は棟ごとに判定します。
棟ごとの結果が分かれたときは「実態により判定する」とだけ書かれ、どちらに寄せるかは決まっていないので、図面の段階で所轄の消防署に判定の仕方を確かめてください。
- 消防法施行令第10条第1項第5号と消防法施行規則第5条の5が、無窓階を「階」ごとに判定すると決める
- 津市の基準1-9が開口部の判断基準を置き、別記1に建物の形ごとの扱いを並べる
- 別記1⑴は「設置単位が同一棟」のときだけ使い、一棟か別棟かは1-3の第2(渡り廊下でつながれば原則一棟)で決める
- 一棟なら、つながった階は合算・つながらない階は棟ごと・結果が割れたら実態で判定する
うちの工場は1階の渡り廊下だけでつながっているので、1階は合算になりそうです。
その前に、渡り廊下が別棟の条件に当たらないかを1-3で確かめておきましょう。
別棟になれば、棟ごとの判定で足ります。
行き来できない区画がある階は階全体で判定するのか

ここは消防本部によって結論が分かれます。
● 階全体で有効開口部算定を行う。(消防法施行令第8条の区画に該当する場合は、当該区画ごとに有効開口部算定を行う。)
※ 階全体で普通階と判定された場合は、各区画ごとに普通階の要件を満たすか、各区画間に連絡通路、扉を設けることが望ましい。
例外は、壁が令第8条の区画(開口部のない耐火構造の床又は壁など)に当たるときで、その部分は別の防火対象物とみなされるので区画ごとに判定します。
階全体で普通階になっても、各区画で普通階の要件を満たすか、区画の間に連絡通路や扉を設けることが「望ましい」とされています。
鈴鹿市は同じ考え方を▲(行政指導)の項として書き、区画ごとに開口部が2以上ないときは平均して開口部を設け、間仕切壁にも往来できる開口部を設けるとし、トイレ・油庫や占有者が異なるテナント区画などは除くとしています。
四日市市は、開口部のない耐火構造または容易に破壊できない構造の壁で区画されていれば区画ごとに判定するとしているので、同じ間取りでも所在地によって結論が変わりえます。
| 消防本部 | 令第8条の区画で分かれた部分 | それ以外の壁で行き来できない部分 |
|---|---|---|
| 津市 | 区画ごとに判定 | 階全体で判定(各区画で普通階の要件を満たすか、連絡通路・扉を設けることが望ましい) |
| 鈴鹿市 | 開口部の合計が床面積の30分の1以下なら、その部分を無窓階として扱う(2⑸ア) | 部分を合わせて判定し、平均して開口部を設け、間仕切壁に往来できる開口部を設ける(2⑸イ▲) |
| 埼玉県央広域(鴻巣市) | 無窓階の項に記載なし | 無窓階の項に記載なし |
| 四日市市 | 開口部のない耐火構造又は容易に破壊できない構造の壁で区画されていれば区画ごとに判定(5(2)) | 同左(壁の構造で決まる) |
| 堺市 | 区画ごとに判定(4(3)) | 階全体の面積で判定し、区画ごとに平均して開口部を設ける(4(3)なお書き) |
通知そのものは今回確認できていないため、どちらの書き方が通知に沿うかはここでは判断しません。
テナントごとに壁で仕切った店舗ビルだと、どの本部の考え方かで判定が変わるのですね。
まず壁が令第8条の区画に当たるかを確かめるのが先です。
当たらなければ、所在地の基準で階全体か区画ごとかを読み分けてください。
庇やセットバックがあると上の階の窓は数えられるのか

別記1の⑶と⑷は、庇がその空地をさえぎるか、後退した屋上が空地になるかを決めています。
⑶ 庇、バルコニー等の突起物により隣地境界からの有効幅員が確保できない場合
● 突起物より下階(1、2階)の開口部は有効開口部算定可とする。
● 突起物部分がバルコニー等で、その有効幅員が1m以上、かつ、当該バルコニー等が道路又は道路に通ずる敷地等に面していれば、突起物より上階(4~6階)の開口部は有効開口部算定可とする。
⑷ 建物の上階がセットバックしている場合
● 2階屋上部分の強度(人が歩行できる程度以上)があれば、3~5階の開口部も有効開口部算定可とする。
⑶の図は、隣地境界から1m以上の通路がある建物で、3階の床の高さに庇が出て境界まで1m未満になった例です。
庇より下の1・2階の窓は数えられますが、庇のすぐ上の3階は数えられず、4階の高さに幅1m以上のバルコニーがあって道路等に面していれば、その上の4〜6階は数えられます。
⑷は、2階の屋上に人が歩ける程度以上の強度があれば、後退した3〜5階の窓も数えられるとしています。
鈴鹿市(4⑴)と堺市(2(3))も庇の先端から1m以上の空地があるかで庇より上の窓を数えるかを分け、鈴鹿市・埼玉県央広域・四日市市・堺市はいずれも建築物の屋上を「通路その他の空地」に含めているので、設計図では庇の出と屋上の構造を必ず確かめてください。
2階の屋上がふだん人の上がらない屋根だと、歩けるかどうかで判定が変わりそうです。
津市は「人が歩行できる程度以上」と書いているので、屋上の構造を図面で示せるようにしておきましょう。
改修で屋上の仕上げを変えるときも、この判定が変わらないかを見てください。
吹抜けや庇の下の床面積はどう数えるのか

別記1の⑹と⑺は、吹抜けと庇の下の扱いです。
⑹ 吹抜けが存する場合
● 2階の有効開口部算定に際し、吹抜けに面する開口部は有効開口部算定不可とする。
⑺ 庇がある場合
● 左図の場合、有効開口部算定はa-b、b-c、c-d、d-a面で行う。この場合の無窓階、普通階に係る階床面積は、庇の下部の用途に関わらず、a、b、c、dで囲まれた部分として差し支えない。
● 2階におけるb-c面の有効開口部算定については、⑶によること。
⑹は、2階の判定で吹抜けに面する開口部を数えないとし、図でも吹抜け側の窓と床のある側の窓を塗り分けています。
鈴鹿市(2⑷)・埼玉県央広域(2⑶)・四日市市(5(1))・堺市(4(2))は、床面積はその階の床がある部分とし、開口部はその床がある部分の外壁の開口部の合計とすると書き、埼玉県央広域と四日市市は昭和50年6月16日消防安第65号を挙げています。
⑺は、庇がある建物の開口部を庇を除いた外周のa-b・b-c・c-d・d-aの面で数え、床面積は庇の下の用途にかかわらずa・b・c・dで囲まれた部分としてよいとし、2階のb-c面は⑶に戻って判定するとしています。
鈴鹿市(2⑶)・埼玉県央広域(1⑶)・四日市市(5(3))も、外気に十分開放された部分は建築基準法上の床面積に入っていても無窓階の判定では除いて数えるとし、県央広域と四日市市は倉庫の前の庇を例に挙げているので、求積図とは別に判定用の床面積を出しておいてください。
| 論点 | 津市 | 鈴鹿市 | 埼玉県央広域 | 四日市市 | 堺市 |
|---|---|---|---|---|---|
| 渡り廊下でつながった同一棟 | つながった階は合算・ほかは棟ごと(⑴) | 記載なし | 記載なし | 記載なし | 記載なし |
| 行き来できない区画 | 階全体(令第8条の区画は区画ごと) | 合わせて判定(▲) | 記載なし | 耐火構造等の壁なら区画ごと | 階全体(令第8条の区画は区画ごと) |
| 庇の上の窓 | 境界まで1m未満なら庇のすぐ上の階は数えない(⑶) | 先端から1mの空地がなければ2・3階は数えない | 屋上・ひさし等を空地に含める | 屋上等を空地に含める | 先端から1m以上の空地があれば上の窓も数える |
| 吹抜け | 吹抜けに面する開口部は数えない(⑹) | 床のある部分で数える | 床のある部分で数える | 床のある部分で数える | 床のある部分で数える |
| 外気に開放された庇の下 | abcdで囲まれた部分でよい(⑺) | 床面積に算入しない | 除いて判定 | 除いて判定 | 該当の項は見当たらず |
つまり、床のない吹抜けと外に開いた庇の下は、判定の床面積から外れるということですね。
そのとおりで、そのぶん判定用の床面積が小さくなり、要る開口部の面積も変わります。
求積図の段階で、別に出しておきましょう。
よくある質問
まとめ
渡り廊下と区画の扱いを、設置単位の判断と一緒に図面へ書き込みます!
判定用の床面積と開口部の一覧を先に作っておくと、消防署との協議が早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第8条・第10条第1項第5号、消防法施行規則 第5条の5(e-Gov法令検索)
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」1-9 避難上又は消火活動上有効な開口部の判断基準・別記1、1-3 消防用設備等の設置単位の判断基準
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第2章 第4 無窓階の取り扱い
- 埼玉県央広域消防本部「消防用設備等に関する審査基準」第2章 第4 無窓階の取り扱い
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」第4 無窓階(有窓階)の判定
- 堺市消防局 消防用設備等の技術基準 第5 無窓階の取扱い
※本記事は各消防本部が公表している審査基準等と、消防法令に基づく一般的な解説です。表は要旨を自分の言葉でまとめたもので、「記載なし」「見当たらず」としたものは各本部の公表資料の無窓階の項を確認した範囲の結果です。大阪市・東大阪市・行田市・羽生市は、手元の公表資料に無窓階の項が無いため比較に含めていません。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





