窓が道路ではなく、中庭や川沿い、公園に面している建物があります。
消防法令では、外から入れる窓が足りない階を無窓階と呼び、消火器や屋内消火栓設備、自動火災報知設備などの基準が厳しくなります。
窓が有効に数えられるかは、その窓が「道又は道に通ずる幅員1メートル以上の通路その他の空地」に面しているかで分かれます。
この記事では、堺市消防局の審査基準が「通路その他空地」として扱う場所を国の基準と分けて読み、鈴鹿市と埼玉県央広域消防本部の基準とも比べます。
堺市で4階建ての事務所を管理しています。
裏側の窓は川の護岸に面しています。
川側の窓が無窓階の判定で数えられるかは、川沿いの空地しだいです。
堺市は目安を図で示しています。
中庭に面した窓も、同じように考えるのですか。
中庭は5つの条件がそろうときに限られます。
順に見ていきましょう。
- 国の消防法施行規則第5条の5第2項第2号は、10階以下の階の開口部が道又は道に通ずる幅員1メートル以上の通路その他の空地に面することを求めています。11階以上の階には第2号はかかりません
- 堺市の審査基準は、公園・屋上や傾斜地などの広場・低い樹木やへい・傾斜地と河川敷・中庭の5つを「通路その他空地」として扱えるとしています
- 河川敷は図で、幅2〜3メートルの河川敷が建物の地盤面から高さ5メートル以内にあり、道などに通じていれば認めてもよいとしています。川の水面そのものは原則として認めていません
- 中庭は5つの条件がすべてそろう場合だけです。条件のうち2つは、同じ第5の1(2)の「大型開口部」の定義と、開口部の必要面積を借りています
- 鈴鹿市と埼玉県央広域も中庭や河川敷を挙げていますが、中庭の条件の書き方や樹木の扱いに違いがあります
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目次
国の基準では無窓階の開口部はどこに面していればよいのか

2 前項の開口部は、次の各号(十一階以上の階の開口部にあつては、第二号を除く。)に適合するものでなければならない。
一 床面から開口部の下端までの高さは、一・二メートル以内であること。
二 開口部は、道又は道に通ずる幅員一メートル以上の通路その他の空地に面したものであること。
三 開口部は、格子その他の内部から容易に避難することを妨げる構造を有しないものであり、かつ、外部から開放し、又は容易に破壊することにより進入できるものであること。
四 開口部は、開口のため常時良好な状態に維持されているものであること。
第2項第2号が、この記事の主題です。開口部は道か、道に通じる幅1メートル以上の通路、その他の空地に面していなければなりません。外から消防隊が近づける場所に面しているか、という条件です。
括弧書きのとおり、11階以上の階の開口部には第2号がかかりません。高い階ははしご車などで外から近づくのが前提ではないため、面している場所は問われない仕組みです。
ただ、国の規則は「その他の空地」に何が入るかまでは書いていません。公園や中庭、川沿いの空地をどう扱うかは、各消防本部の基準で補われています。無窓階になると何が変わるかは無窓階の基準の記事で解説しています。
11階以上なら、窓の前が中庭でも関係ないのですね。
はい、第2号がかかるのは10階以下です。
ふつうの中低層の建物で問題になります。
堺市は通路その他空地としてどんな場所を認めているのか

ア 国又は地方公共団体等の管理する公園で将来にわたって空地の状態が維持されるもの。
イ 道又は道に通じる幅員1m以上の通路に通じることができる広場(屋上、傾斜地、階段状の部分等)で避難及び消火活動が有効にできるもの。(第5-4図、第5-5図参照)
ウ 1m以内の空地又は通路にある樹木(高さが概ね50cm以下のものに限る。)、へい及びその他工作物で避難及び消火活動に支障のないもの。
エ 傾斜地及び河川敷で避難及び消火活動が有効にできるもの。(第5-6図参照)
イは、道や幅1メートル以上の通路に通じることができる広場です。括弧書きで屋上、傾斜地、階段状の部分が挙がっています。第5-4図では、下の階の屋上に面した上の階の外壁も、有効な開口部として扱える面として描かれています。
ウは、空地や通路にある高さおおむね50センチメートル以下の樹木やへい、その他の工作物で、避難と消火活動に支障のないものです。低い植え込み程度なら、空地の扱いを妨げないということです。
エの河川敷は、第5-6図に目安があります。図の注記(PDFのページ画像で確認)では、幅2〜3メートルの河川敷が、建物の地盤面から高さ5メートル以内にあり、道又はその他の空地に通じている場合は認めてもよいとしています。
反対に、河川そのものに面する窓は原則として認められず、常に水が流れていない場合や水深の浅い場合も認められないと書かれています。
川の水面に面した窓は、だめなのですね。
はい、原則として認められません。
川沿いに歩ける河川敷があるかが分かれ目です。
堺市で中庭に面した窓を有効な開口部にする5つの条件は何か

(ア) 中庭から道に通じる出入り口の幅員は、1m以上であること。
(イ) 中庭から道に通じる部分は、廊下又は通路であること。
(ウ) 中庭から道に通じる部分の歩行距離は、20m以下であり、かつ、直接見通しができるものであること。
(エ) 道に面する外壁に2以上の大型開口部があること。
(オ) 道に面する外壁の開口部で必要面積の1/2以上を確保できること。
(エ)と(オ)は、中庭の外側、つまり道に面する外壁の条件です。ここで使われている「大型開口部」と「必要面積」は、オの中では定義されていません。
- 消防法施行規則第5条の5第2項第2号で、10階以下の階の開口部は道か幅1メートル以上の通路その他の空地に面していることが必要になる
- 中庭がその「通路その他空地」に当たるかを、堺市の審査基準第5 2(2)オで引く
- オの(ア)〜(ウ)で、中庭から道へ出る出入口の幅1メートル以上、廊下か通路であること、歩行距離20メートル以下で直接見通せることを確かめる
- オの(エ)の「大型開口部」は、同じ第5の1(2)の定義を借りる。直径1メートルの円が入るか、幅75センチメートル以上・高さ1.2メートル以上の開口部で、それが道に面する外壁に2つ以上あるかを数える
- オの(オ)の「必要面積」は、第5 1が示す床面積の30分の1を超える開口部の面積のことと読める。その2分の1以上を道に面する外壁だけで確保できるかを確かめ、5つがそろえば中庭も空地として扱える
なお、(オ)の「必要面積」がどの数字を指すかを堺市の文はそれ以上書いていません。第5 1の割合から決まる面積と読むのが自然ですが、計算の前提は管轄の消防署で確かめるのが安全です。
中庭の窓だけで足りる、とはならないのですね。
はい、道側の外壁で半分以上を確保するのが条件です。
大型開口部の数も道側で数えます。
堺市で庇の上の窓や河川敷はどう確かめるのか

庇が通路の上に張り出すと、上の階の窓の前に消防隊がはしごを掛ける場所がなくなります。庇の先にさらに1メートルの空地があるかで、上の階の窓の扱いが変わるという考え方です。 河川敷に面する窓は、第5-6図の目安に沿って次の点を図面で確かめます。
- 窓の前にあるのが河川の水面か、歩ける河川敷か(水面だけなら原則として認められない)
- 河川敷の幅が2〜3メートルあるか
- 河川敷が建物の地盤面から高さ5メートル以内にあるか
- 河川敷が道又はその他の空地に通じているか(行き止まりでないか)
庇の先に1メートルあれば、上の階の窓も数えられるのですね。
はい、1メートル未満なら庇の下の窓だけです。
敷地境界線までを測りましょう。
鈴鹿市や埼玉県央広域と比べると堺市の扱いは何が違うのか

カ 芝生、地被植物等で、避難及び消火活動が有効にできるもの。この場合において、開口部の前面にある0.5mを超える樹木は、避難及び消火活動に支障があるものとみなす。(第4-11図参照)
キ 周囲が建物で囲われた中庭等で当該中庭等から通じる通路等があり、次の(ア)から(ウ)までに適合するもの(第4-12図参照)
(ア) 中庭から道に通じる通路及び出入口の幅員が1m以上あるもの
(イ) 中庭に面する部分以外の外壁に2か所以上の消火活動上有効な開口部があるもの
(ウ) 中庭に面する部分以外の外壁の有効開口部で必要面積の2分の1以上を確保できるもの
埼玉県央広域の審査基準も、ほぼ同じ形で並べています。
カ 樹木、芝生、地被植物等で、避難及び消火活動が有効にできるもの(昭和50年6月16消防安第65号)(第4-9図参照)
キ 周囲が建物で囲われている中庭等で当該中庭等から通じる通路等があり、次のすべてに適合するもの(第4-10図参照)
(ア) 中庭から道に通じる通路及び出入口の幅員は、1m以上であること。
(イ) 中庭に面する部分以外の外壁に2以上の大型開口部があること。
(ウ) 中庭に面する部分以外の外壁の有効開口部で必要面積の2分の1以上を確保できること。
| 項目 | 堺市 | 鈴鹿市 | 埼玉県央広域 |
|---|---|---|---|
| 公園 | 国・地方公共団体等が管理し将来も空地のもの | 敷地外の公園で将来も空地が確実なもの | 国・地方公共団体等が管理し将来も空地のもの |
| 樹木 | 高さおおむね50cm以下に限る | 開口部の前面の0.5mを超える樹木は支障ありとみなす | 開口部の前面の樹木は支障ありとする図 |
| 河川敷の目安(図) | 幅2〜3m・地盤面から高さ5m以内・道等に通じる | 傾斜地及び河川敷で有効なもの | 幅1m以上の河川敷を描いた図 |
| 中庭の条件の数 | 5つ | 3つ | 3つ |
| 中庭から道への通り道 | 出入口1m以上・廊下又は通路・歩行距離20m以下で見通し | 通路と出入口1m以上 | 通路と出入口1m以上 |
| 外側の外壁の条件 | 道に面する外壁に大型開口部2以上・必要面積の2分の1以上 | 中庭に面する部分以外の外壁に有効な開口部2か所以上・2分の1以上 | 中庭に面する部分以外の外壁に大型開口部2以上・2分の1以上 |
| 庇 | 先端から1m以上の空地で上の階も有効 | 先端から1m以上の空地で2階・3階も有効 | (イの広場等に「ひさし」を含む) |
なお、大阪市消防局の「消防用設備等の設置に係る運用基準」と東大阪市消防局が公開している6つの運用基準は設備ごとの基準で、無窓階の判定の節は見当たりません。両市で中庭や川沿いの建物を判定するときは、管轄の消防署に相談することになります。堺市の窓ガラスの扱いは堺市の防犯フィルムの記事で解説しています。
同じ中庭でも、市によって条件の数が違うのですね。
はい、堺市は5つ、鈴鹿市と埼玉県央広域は3つです。
建物のある市の基準で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず川側の窓の前の河川敷を測ります。
中庭側の窓の数え方も見直してみます!
堺市では、借りた定義まで読んで数えるのが決め手です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第1章 総則 4 凡例、第2章 第1節 第5 無窓階の取扱い(柱書・1(2)・2(2)ア〜オ・2(3)、第5-4図〜第5-8図) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第2章 第4 無窓階の取り扱い 4 幅員 ⑴・⑵・⑶
- 埼玉県央広域消防本部「消防用設備等に関する審査基準」第2章 第4 無窓階の取り扱い(オ〜キ、第4-8図・第4-9図)
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行令 第10条第1項第5号、消防法施行規則 第5条の5(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および堺市・鈴鹿市・埼玉県央広域消防本部・大阪市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。各資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。個々の建物が無窓階に当たるかは、所轄の消防署にご確認ください。





