危険物の製造所や一般取扱所では、可燃性の蒸気がたまるおそれのある場所で火花を出す機器を使ってはいけないと政令が決めています。
四日市市消防本部は令和7年3月1日に、非防爆のタブレットなどを製造所等で使うためのガイドラインを公表しました。
ガス検知器での確認、異常時の退避、予防規程への記載までが並び、その一部は給油取扱所向けの国の通知から借りています。
ガイドラインの中身を国の通知とつき合わせ、借りている部分と、その後に国が改めた部分を整理します。
四日市市の工場で、点検の記録をタブレットで付けたいという話が出ています。
危険物の一般取扱所の中でも持ち込んでよいのか分かりません。
四日市市消防本部が非防爆携帯型電子機器のガイドラインを出しています。
使える場所の確かめ方と、異常時の動き方が書いてあります。
国からも似た通知が出ていると聞きましたが、どちらを見ればよいのでしょうか。
四日市市のガイドラインのあとに、国の通知は2回改正されています。
両方を並べて、どこが同じでどこが違うかを順に見ていきましょう。
- 危険物の規制に関する政令第24条第13号は、可燃性の蒸気などが滞留するおそれのある場所で火花を発する機械器具を使わないよう求めている
- 四日市市のガイドライン(令和7年3月1日)は、ガス検知器で蒸気がないと容易に確かめられることか、十分な換気で蒸気が滞留しない室内であることを条件に挙げている
- 検知器が反応したら直ちに使うのをやめて退避し、すぐに逃げられないときは外部と完全に遮断できるBOXに入れて退避するとしている
- 落下防止・作業中の同時操作の禁止・予防規程の添付書類の3項目は、給油取扱所向けの平成30年 消防危第154号とほぼ同じ文で、規格に適合した機器の扱いも154号のとおりとしている
- 国はその後、製造所と一般取扱所について令和7年6月の消防危第140号を出し、12月の第253号と令和8年3月の第59号で検知器の要件と屋内の扱いを改めている
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目次
危険物施設ではなぜタブレットをそのまま使えないのか

危険物の施設では、蒸気がたまるおそれのある場所でこうした機器を使うことを政令が止めています。
可燃性の液体、可燃性の蒸気若しくは可燃性のガスがもれ、若しくは滞留するおそれのある場所又は可燃性の微粉が著しく浮遊するおそれのある場所では、電線と電気器具とを完全に接続し、かつ、火花を発する機械器具、工具、履物等を使用しないこと。
製造所等の危険場所で防爆構造を適用する範囲
・「引火点が40℃未満の危険物を貯蔵し又は取り扱う場合」
・「引火点が40℃以上の危険物であっても、その可燃性液体を当該引火点以上の状態で貯蔵し又は取り扱う場合」
・「可燃性微粉が滞留するおそれのある場合」
(略)可燃性蒸気等が滞留していない状態を確認すること等、非防爆携帯型電子機器を安全に活用するための本ガイドラインを策定するものである。
政令第24条第13号は製造所等に共通する基準で、蒸気などが滞留するおそれのある場所では火花を発する機械器具を使わないよう求めています。
四日市市のガイドラインは冒頭で、防爆構造が求められる範囲を引火点40℃未満の危険物を扱う場合などの3つの場合として示しています。
そのうえで、可燃性の蒸気が滞留していないことを確かめるなどして、非防爆の機器を安全に使うための手順をまとめたと目的を書いています。
まず、タブレットを持ち込みたい施設で扱う危険物の引火点と、扱うときの温度を一覧にしておくと、ガイドラインのどこが関係するかが見えてきます。
うちの一般取扱所は灯油を加熱して使っているので、引火点以上で扱っているかもしれません。
それなら引火点が40℃以上でも防爆の範囲に入りえます。
扱う温度を設備の担当者に確かめておきましょう。
四日市市のガイドラインは何を確かめれば使えるとしているのか

検知器で確かめる方法と、換気で蒸気をためない方法の2つが並んでいます。
防爆構造の適用範囲においては、下記内容を講ずること。
ア 設置された固定ガス検知器又は非防爆携帯型電子機器の操作者自らが携帯するポータブルガス検知器等により、可燃性蒸気等がないことが容易に確認できること。
イ 十分な換気排気が常時行われ、可燃性蒸気等が滞留するおそれのない室内等であること(例として、爆発下限値(LEL)の25%未満を保持等)。なお、空調設備により定温に保たれた屋内貯蔵所で常時換気が困難であり、かつ非防爆携帯型電子機器の操作者自らが携帯するポータブルガス検知器により、可燃性蒸気等がないことが容易に確認できる場合はこの限りでない。
アは、壁などに付いた固定ガス検知器か、操作する人が自分で持つポータブルのガス検知器で、蒸気がないことをすぐ確かめられることを求めています。
イは、換気と排気が常に十分に行われ、蒸気が滞留しない室内などであることで、例として爆発下限値の25%未満を保つことを挙げています。
イのなお書きは、空調で温度を一定に保っていて常に換気するのが難しい屋内貯蔵所でも、操作する人が携帯の検知器で蒸気がないと容易に確かめられるならイによらなくてよいとしています。
本文は「下記内容を講ずること」とアとイを並べているので、検知器の用意と換気設備の運転状況の確かめ方を、両方そろえて準備しておくのが確実です。
壁に固定の検知器があれば、携帯の検知器はなくてもよいということでしょうか。
ガイドラインのアは「又は」なので、固定式で容易に確かめられるならその書き方です。
ただ国の通知は携帯を求めているので、後半で違いを見ましょう。
ガス検知器が反応したら何をすると書いてあるのか

退避の仕方に加えて、計器室からの連絡や遠隔の制御まで挙げているのが特徴です。
(2)可燃性蒸気等の発生異常時における安全措置については、下記内容等を施設の形態に応じて講ずること。
ア ガス検知器等が反応した場合は、非防爆携帯型電子機器の使用を直ちに中止し、非危険場所又は内圧室等の安全が確保された場所に直ちに退避すること。なお、迅速な退避が困難となる場合は、非防爆携帯型電子機器を外部と完全に遮断できるBOX等に投入して退避すること。
イ 計器室等で可燃性蒸気等の発生を覚知した際、非防爆携帯型電子機器の操作者に対しスピーカー等により即座に連絡すること。
ウ 計器室等からの遠隔操作により、非防爆携帯型電子機器本体にインターロック等の制御機能を備えること。
(3)事業所全体で非防爆携帯型電子機器の管理体制を整えること。
ア 非防爆携帯型電子機器をリスト等に整備しておくこと。
イ 各非防爆携帯型電子機器をどの危険場所で使用するかを、管理側及び操作側の双方が周知しておくこと。
アは、検知器が反応したら使うのを直ちにやめ、非危険場所か内圧室などの安全な場所へすぐに退避するとしています。
すぐに逃げにくい場所では、機器を外部と完全に遮断できるBOXなどに入れてから退避するという、ガイドライン独自の書き方が入っています。
イとウは、計器室で蒸気の発生に気づいたときにスピーカーなどで操作する人へ知らせることと、遠隔で機器を止めるインターロックなどの制御を備えることで、いずれも「施設の形態に応じて」講じるものとされています。
(3)の機器のリストと、どの危険場所で使うかを管理側と操作側の双方が知っておくことは、タブレットを買う前に表の形で作っておくと、そのまま社内の手順書に使えます。
うちは計器室から現場まで遠いので、スピーカーで知らせる仕組みはありません。
イとウは施設の形態に応じて講じるものとされています。
代わりの連絡手段をどうするかを、所轄の消防署と相談しておきましょう。
給油取扱所の通知からどこを借りているのか

2(4)は通知の名前と番号を挙げていて、3の項目は通知とほぼ同じ文です。
1 給油空地等で使用する携帯型電子機器は、防爆構造のもの又は下記のいずれかの規格に適合するものとすること。(1)国際電気標準会議規格(IEC)60950-1(2)日本工業規格(JIS)C 6950-1(3)国際電気標準会議規格(IEC)62368-1(4)日本工業規格(JIS)C 62368-1
2 給油空地等における携帯型電子機器の使用は、業務上必要な範囲において、以下の点に留意して行うこと。(1)携帯型電子機器の落下防止措置を講ずること(肩掛け紐付きカバー等)。(2)危険物の取扱作業中の者が同時に携帯型電子機器の操作を行わないこと。(略)
3 次の(1)から(3)に掲げる事項について、予防規程の添付書類等で明らかにすること。(略)
つながりは次の順でたどれます。
- ガイドライン2(4)は「154号通知のとおり」として、IEC60950-1など4つの規格のどれかに適合する機器は使用可能で、2(1)から(3)の措置をとらなくてもよいと書いています
- ところが154号の1は「給油空地等で使用する」機器についての文で、製造所や一般取扱所を対象にした通知ではありません
- ガイドライン3(3)の落下防止(肩掛け紐付きカバー等)と3(4)の作業中の同時操作の禁止は、154号の2(1)(2)とほぼ同じ文です
- ガイドライン3(7)の予防規程の添付書類で明らかにするア〜ウ(仕様と保護措置・用途と使う場所と管理体制・災害時に取るべき措置)は、154号の3(1)〜(3)とほぼ同じで、末尾の危険物の規制に関する規則第60条の2第1項第11号(災害その他の非常の場合に取るべき措置)も同じです
- ガイドライン3(7)のただし書の「社内規定等に定めがある場合は予防規程から委任できる」は154号にはなく、154号の「予防規程の認可申請に機器の仕様書を添付させる」はガイドラインにはありません
市販のタブレットはたいていIECの規格に合っていると聞きますが、それで足りるわけではないのですね。
154号はもともと給油取扱所のための通知です。
工場の中で使うなら、事前に消防本部へ扱いを確かめるのが安全です。
国の通知が後から出たいま何を確かめればよいのか

その通知はさらに2回改正され、いまの形は令和8年3月26日の改正後のものです。
製造所又は一般取扱所について、次の条件を満たす場所は、政令第24条第13号に規定する(略)場所に該当しないものと取り扱うこととして、差し支えないこと。
⑴ 可燃性蒸気等(略)の濃度が25%LEL(LEL:爆発下限界濃度)未満であると認められる場所(以下「非危険場所」という。)であること。(略)
⑵ 予防規程(略)又は自主行動計画等(略)に必要事項を定めることにより、次に掲げる事項が確保されること。
ア 非危険場所に出入りする者が次を遵守すること。
(ア) 非危険場所において電気機械器具等(略)を使用するときは、当該電気機械器具等の使用者は、次の要件を満たす可燃性蒸気等の検知器を携帯し、当該検知器を常時稼働させることで安全を確認すること。(略)
国の140号は最初は屋外の場所に限っていましたが、第59号の改正でこの条件が外れ、屋内の非危険場所では換気設備で適切に換気できていることを確かめる対策を求める形になりました。
検知器は使う人が携帯して常に動かすこととされ、第253号の改正で指示精度が±10%LEL以内で1%LEL以下の数値を表示できること、警報の設定値が25%LEL以下であることが加わり、防爆構造と落下防止も要件に入っています。
警報が鳴ったときは電源を切って退避させ、退避場所と退避経路を事前に決めておくこと、教育訓練を受けた人以外が機器を持って非危険場所に入るのを禁止することも書かれています。
四日市市のガイドラインは国の通知より前に出たもので、ガイドラインと国の通知の両方を並べて社内の手順を作り、どちらに沿えばよいかを四日市市消防本部に確かめておくのが確実です。
| 項目 | 四日市市ガイドライン(令和7年3月) | 国 140号(第59号改正後) | 国 80号(屋内貯蔵所) | 国 154号(給油取扱所) |
|---|---|---|---|---|
| 対象 | 製造所等の防爆構造の適用範囲 | 製造所・一般取扱所 | 屋内貯蔵所の内部 | 給油空地等 |
| 使える場所 | 検知器で容易に確認できること・十分な換気(例 25%LEL未満の保持) | 25%LEL未満と評価された非危険場所・屋内は換気の確認 | 詰替え等をしない・換気設備が正常に稼働 | 防爆構造か規格に適合する機器 |
| 検知器 | 固定式又は携帯式 | 携帯して常時稼働・精度や警報値などの要件 | 防爆構造の検知機を常時稼働 | 記載なし |
| 異常時 | 直ちに中止して退避・BOXに入れて退避・スピーカー連絡・インターロック | 電源を遮断して退避・退避場所と経路を事前に決める | 停止して電源を遮断し屋外へ退避 | 直ちに使用を中止 |
| 人と書類 | 機器のリスト・教育・予防規程の添付書類(社内規定へ委任可) | 教育訓練を受けた者以外の持込み禁止・予防規程又は自主行動計画等 | 記載なし(消防機関が資料で確認) | 予防規程の添付書類・認可申請に仕様書 |
つまり、検知器の性能と退避のルールは、国の通知の新しい要件まで見ておくべきなのですね。
はい、検知器を買う前に警報の設定値と表示の細かさを仕様書で確かめましょう。
予防規程の変更が要るかどうかも、あわせて相談しておくと安心です。
よくある質問
まとめ
使う場所の一覧と退避の手順を作ってから、消防本部に相談します!
予防規程の書き直しが要るかどうかも、早めの相談で見通しが立ちます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令 第9条第1項第17号・第24条第13号・第37条、危険物の規制に関する規則 第60条の2第1項第11号(e-Gov法令検索)
- 四日市市消防本部「製造所等における非防爆携帯型電子機器使用に係るガイドライン」令和7年3月1日
- 消防庁危険物保安室長「給油取扱所において携帯型電子機器を使用する場合の留意事項等について」平成30年8月20日 消防危第154号
- 消防庁危険物保安室長「屋内貯蔵所において電気機械器具等を使用する場合の運用について」令和6年3月29日 消防危第80号
- 消防庁危険物保安室長「製造所又は一般取扱所において電気機械器具等を使用する場合の運用について」令和7年6月30日 消防危第140号(令和7年12月17日 消防危第253号・令和8年3月26日 消防危第59号で一部改正)
※本記事は四日市市消防本部が公表しているガイドラインと、危険物関係の法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。表は要旨を自分の言葉でまとめたもので、国の通知の検知器の要件などは抜粋しています。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





