共同住宅の廊下が外気に開放されていると、その建物は「開放型特定共同住宅等」として扱われることがあります。
廊下の前に機械式駐車場やメッシュフェンスがあると、廊下の開放性はどう見られるのでしょうか。
この記事では、吹田市消防本部の質疑応答集 第20節(特定共同住宅等)の問7・問9・問10を、堺市・鈴鹿市・埼玉県央広域の審査基準と並べて読みます。
書かれていることと、読み取れなかったことを分けて解説します。
廊下の前に駐車場があるマンションは、開放型として認められるのでしょうか?
吹田市の質疑応答集に、離隔の数字が書かれています。
市によって数字や書き方が違うのですか?
堺市や鈴鹿市とは、書き方が違う点があります。
順に見ていきましょう。
- 開放型の廊下や階段室等は、国の告示により他の建築物等の外壁との中心線から1m以上離れていることが必要とされています(堺市の審査基準の説明)
- 吹田市は、機械式駐車場の前面について、建築物に該当せず外壁等がなければ1m以上の離隔で開放とみなすと答え、建築物に該当する駐輪場等には2m以上を求めています
- T字型の共用廊下は、接続部分から2m以内の範囲を開放条件に適合させれば、接続部分も開放として扱えます
- メッシュフェンス等は開放率80%以上を確保すれば開放として扱え、堺市の審査基準にも同じ80%の数字があります
- 鈴鹿市と埼玉県央広域は、壁のない多段方式の機械式駐車場を1m未満の位置にないものとして扱う書き方で、吹田市の離隔の書き方とは違います
▼

目次
開放型の廊下は国の法令でどこまで決まっているのか

廊下の隣にある建物との距離について、堺市の審査基準は告示を次のように説明しています。
問題は、廊下の前にあるのが「隣の建物」ではなく、機械式駐車場や駐輪場、フェンスだった場合です。告示の数字だけでは、その扱いは決まりません。ここから先は、各本部が運用で示しています。
省令には、廊下の距離の数字は書かれていないのですね。
はい、数字は告示に書かれています。
前にある物の扱いは、本部ごとの運用に分かれます。
吹田市は廊下の前の機械式駐車場をどう扱うのか

- 機械式駐車場が建築物に該当せず、外壁等がない場合は、1m以上の離隔があれば開放しているとみなします。
- 駐輪場等であっても建築物に該当している場合は、2m以上の離隔が必要です。
- どんなときに「建築物に該当する」のか、離隔をどこからどこまで測るのかは、答の文面に書かれていません。このページに図もありません。
| 廊下の前にあるもの(吹田市の答7) | 必要な離隔 |
|---|---|
| 建築物に該当せず、外壁等がない機械式駐車場 | 1m以上 |
| 建築物に該当している駐輪場等 | 2m以上 |
建築物に該当するかどうかの判断や、測り方は、吹田市の質疑応答集からは分かりません。離隔の測り方を断定せず、設計の段階で消防署に確かめるのが確実です。
建築物かどうかで、必要な離隔が1mから2mに変わるのですね。
はい、答7はそう分けています。
ただし測り方までは書かれていません。
T字型の廊下や階段、メッシュフェンスはどう扱うのか

(1)階段部分
太線部分が開放条件に適合している場合、点線部分も開放として取扱ってさしつかえない。ただし、共用廊下の腰壁以上の高さの部分を開放とすること。
(2)T字型の共用廊下部分
共用廊下の接続部分から2m以内の範囲を開放条件に適合させた場合、接続部分を開放として取扱ってさしつかえない。ただし、共用廊下の腰壁以上の高さの部分を開放とすること。
どちらも条件は共通で、共用廊下の腰壁以上の高さの部分を開放とすることです。質疑応答集のページ(p5)の図には、階段とT字型廊下の位置関係と、2mの寸法が描かれています。 次は、問10のメッシュフェンスです。
メッシュフェンス等の開放率を80%以上確保した場合、その部分を開放として取扱ってさしつかえない。
手すり等の上端に防犯のために設けられる格子の開放率が80%以上あれば、当該部分を外気に面する部分として取り扱うことができる。
堺市の防犯格子や駐輪場の扱いは、堺市の開放型の判定を扱った記事でくわしく解説しています。
開放率は、堺市と同じ80%なのですね。
はい、数字は同じ80%です。
ただし対象のフェンスの場面は、同じとは限りません。
堺市・鈴鹿市・埼玉県央広域と比べて何が違うのか

a 平屋建ての開放性のある駐輪場
b 平面(青空)駐車場
c 地下1段型機械装置
(イ) 離隔の規定を適用する場合
地上2段以上の機械装置
(ア) 多段方式の機械式駐車場(廊下及び階段室に面して壁が設けられていないものに限る。次の(イ)において同じ。)
(イ) カーポート、サイクルポート
(ウ) 不燃材料で造られたメッシュフェンス、ネットフェンス等
(ア) 多段方式の機械式駐車場(廊下及び階段室に面して壁が設けられていないものに限る。次の(イ)において同じ。)
(イ) カーポート、サイクルポート
(ウ) 不燃材料で造られたメッシュフェンス、ネットフェンス等
| 本部 | 機械式駐車場の前面の書き方 | 根拠 |
|---|---|---|
| 吹田市 | 建築物に該当せず外壁等がなければ1m以上の離隔で開放とみなす/建築物に該当する駐輪場等は2m以上 | 質疑応答集 第20節 問7 |
| 堺市 | 地下1段型の機械装置は離隔の規定を適用しない/地上2段以上の機械装置は適用する | 審査基準 第4 2 (2) ア |
| 鈴鹿市 | 壁のない多段方式の機械式駐車場は、1m未満の位置にないものとして扱って差し支えない | 審査基準 第5章 第5 (2) イ |
| 埼玉県央広域 | 鈴鹿市と同じ項目(壁のない多段方式の機械式駐車場など) | 審査基準 第5 2 ウ |
ただし、どの本部も廊下の開放性の最終判断は個別の建物で行います。同じ結論になるか、違う結論になるかは、条文の書き方からは決められません。堺市が、同じ建物の駐車場の外壁を「他の建築物等の外壁」に準じて扱うとしていることなども、吹田市の質疑応答集には書かれていません。
吹田市は離隔を求める書き方で、鈴鹿市は外す書き方なのですね。
はい、書き方が逆の向きです。
結論が同じかは、個別の建物で確認します。
明日から自分の建物で何を確かめればよいのか

- 図面と現地で、廊下の前に何があるか(機械式駐車場・駐輪場・フェンスなど)を確かめます。
- それが建築物に該当するかを、建築の担当と消防署に確かめます。ここで離隔が1m以上か2m以上かが変わります。
- 離隔の測り方(廊下のどこから測るか)を、消防署に確かめます。質疑応答集には書かれていません。
- メッシュフェンスは、製品の仕様で開放率80%以上かを確かめます。
建築物かどうかの確認が、最初の分かれ道なのですね。
はい、そこで離隔の数字が変わります。
測り方まで消防署で確認しておきましょう。
よくある質問
まとめ
まず廊下の前にあるものを確かめます。
そのうえで消防署に相談します!
離隔の測り方は設計の前に確認しましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 吹田市消防本部「消防用設備等設置指導等に関する質疑応答集」第20節 特定共同住宅等(総務省令40号)問7・問9・問10 https://www.city.suita.osaka.jp/anzen/1017917/1017954/1044807.html
- 堺市消防局「消防同意・消防用設備等審査基準」特定共同住宅等 第4 2 開放型特定共同住宅等 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準 第5章 特定共同住宅等 第5 構造類型 https://www.city.suzuka.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/016/106/005.5.pdf
- 埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準 第5 構造類型 https://www.ken-o.or.jp/wp/wp-content/uploads/2025/04/d1133ca69689ce7f473955987e7f0856.pdf
- 特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成17年総務省令第40号)第2条(e-Gov法令検索)、特定共同住宅等の構造類型を定める件(平成17年消防庁告示第3号)
※本記事は公表されている法令および吹田市・堺市・鈴鹿市・埼玉県央広域消防本部の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。各資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。個々の建物の扱いは、構造や設備によって変わります。






