店や事務所を開く前に、消防が消防用設備等を調べる「検査」があります。国の法令では、この検査を受ける防火対象物は、用途と延べ面積などで決まっています。
ところが八尾市の火災予防条例には、国の線の外側にも使用開始前の検査を求めるように読める規定があります。
この記事では、八尾市条例第65条第2項を、大阪市・東大阪市・堺市・豊中市・吹田市の条例と並べて読みます。
条文に書かれていることと、公開資料から確かめられなかったことを分けて解説します。
店を開く前に消防の検査があると聞きました。
小さな店でも受けるのでしょうか?
国の検査は政令で定める建物だけです。
八尾市の条例の規定を読んでみましょう。
大阪府内でも違います。
豊中市と吹田市の条例には、検査の項が見当たりませんでした。
この記事の結論
- 国の検査は、消防法施行令第35条が挙げる政令で定める防火対象物が対象で、延べ面積300平方メートル未満の物品販売店舗は当たりません
- 八尾市条例第65条第2項は、消防用設備等を設置しなければならない防火対象物に、使用開始前の消防長の検査を求めています
- ただし書は、国の検査を受ける消防用設備等を除くとしており、同じ設備を二重に検査する書き方ではありません
- 大阪市・東大阪市・堺市にも同じ型の第2項があり、豊中市と吹田市の条例本文には検査の項が見当たりませんでした
- 使用開始の届出の期限は7日前ですが、第2項の検査の申請の様式や期限は、八尾市の規則に見当たりませんでした
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国の法令で消防の検査を受けるのはどんな建物なのか
消防用設備等を設置したときの届出と検査は、
消防法第17条の3の2が定めています。対象は「特定防火対象物その他の政令で定めるもの」で、建物の範囲は政令が決めています。
まず法の条文です。
消防法 第17条の3の2 第十七条第一項の防火対象物のうち特定防火対象物その他の政令で定めるものの関係者は、(略)消防用設備等又は特殊消防用設備等(政令で定めるものを除く。)を設置したときは、総務省令で定めるところにより、その旨を消防長又は消防署長に届け出て、検査を受けなければならない。
この「政令で定めるもの」を並べているのが、消防法施行令の第35条です。物品販売店舗などの(四)項は、第1項第2号に出てきます。
消防法施行令 第35条 第1項 第2号(抜粋) 別表第一(一)項、(二)項イからハまで、(三)項、(四)項、(六)項イ(4)、ハ及びニ、(九)項イ、(十六)項イ、(十六の二)項並びに(十六の三)項に掲げる防火対象物(前号ロ及びハに掲げるものを除く。)で、延べ面積が三百平方メートル以上のもの
(四)項の店舗は、延べ面積が
300平方メートル以上で、はじめてこの号に入ります。つまり
延べ面積300平方メートル未満の物品販売店舗は、第2号の対象になりません。
第3号は特定防火対象物以外を消防長が指定する形で、(四)項は並んでいません。第4号は避難階以外の階に用途部分があって階段が足りない建物を挙げるので、この記事では、避難階(1階)だけの店舗として考えます。
もう一つ、国の検査から外れる設備があります。第2項です。
消防法施行令 第35条 第2項 法第十七条の三の二の政令で定める消防用設備等又は法第十七条第三項に規定する特殊消防用設備等(以下「特殊消防用設備等」という。)は、簡易消火用具及び非常警報器具とする。
簡易消火用具は、水バケツ・水槽・乾燥砂・膨張ひる石で、非常警報器具は警鐘・携帯用拡声器・手動式サイレンなどです(令第7条で確認)。
消火器は簡易消火用具と別に並んでいるので、この第2項には入っていません。
消防法施行令 第7条 第2項 第1号 消火器及び次に掲げる簡易消火用具
イ 水バケツ ロ 水槽 ハ 乾燥砂 ニ 膨張ひる石
小さな店は、国の検査の対象にならないことがあるのですね。
はい、(四)項は延べ面積300平方メートル以上から対象です。
その外側を、八尾市の条例がどう扱うかを見ましょう。
八尾市の条例は検査の対象をどこまで広げているのか
八尾市の条例で検査を定めているのは、第65条の第2項です。八尾市は例規集で条例の全文を公開しています。
八尾市火災予防条例 第65条 第2項 第5章及び令第2章第3節の規定により消防用設備等を設置しなければならない防火対象物は、使用開始前に、消防長の行う検査を受けなければならない。ただし、法第17条の3の2の規定により消防長の検査を受けなければならない消防用設備等を除くものとする。
この条文から、次の三点が読み取れます。
- 対象は「消防用設備等を設置しなければならない防火対象物」で、延べ面積などの線は条文に書かれていません。
- 「令第2章第3節」は、政令の第8条から第33条の2までです。消火器具を定める第10条も、この節に入っています(e-Govで確認)。第5章は、条例の付加基準の章です。
- ただし書は、法第17条の3の2の規定により検査を受けなければならない消防用設備等を除いています。
国の検査と見比べるために、延べ面積200㎡・1階建ての物品販売店舗((四)項)を例にします(この記事の仮定です)。消火器具を設置する建物の線は、政令第10条が定めています。
消防法施行令 第10条 第1項 第2号(抜粋) 次に掲げる防火対象物で、延べ面積が百五十平方メートル以上のもの
イ 別表第一(一)項ロ、(四)項、(五)項、(六)項イ(4)、ハ及びニ、(九)項並びに(十二)項から(十四)項までに掲げる防火対象物
| 見るところ | 根拠の条文 | この例((四)項・延べ200㎡)では |
| 消火器具の設置 | 令第10条第1項第2号イ(延べ面積150平方メートル以上) | 設置が必要 |
| 国の検査 | 令第35条第1項第2号(延べ面積300平方メートル以上) | 当たらない |
| 八尾市条例の検査 | 条例第65条第2項 | 設置しなければならない防火対象物に当たると読める |
国の検査の線(300㎡)には届かなくても、消火器を置く義務はあるので、八尾市の第2項の文言には当てはまります。
条文の文言の上では、国の線の外側まで検査の対象が広がっていることになります。
さらに、ただし書は「法第17条の3の2の規定により検査を受けなければならない」設備を除くだけです。令第35条第2項が国の検査から外した簡易消火用具や非常警報器具は、文言の上では除かれていません。
ただし、八尾市の例規集や公開資料のうち、この検査の対象や進め方を書いた文書は、読んだ範囲では見当たりませんでした。
実際にどの建物・どの設備を検査しているかは、この記事では断定しません。
はい、条文には面積の線がありません。
実際の扱いは消防署で確認しましょう。
使用開始の届出と検査はどう関係しているのか
同じ第65条の第1項は、使用開始の届出を定めています。検査の第2項とセットで置かれた条文です。
八尾市火災予防条例 第65条 第1項 令別表第1に掲げる防火対象物(同表(19)項及び(20)項に掲げるものを除く。)をそれぞれの用途に使用しようとする者は、あらかじめ、その旨を消防長に届け出なければならない。
条例本文は「あらかじめ」と書くだけで、日数は書いていません。期限は、市の規則が定めています。
八尾市火災予防条例施行規則 第8条 条例第65条第1項の規定により届出を行う者は、使用開始の日の7日前までに、第3号様式(階数が6以上又は棟数が2以上の防火対象物にあつては、第3号様式及び第4号様式)による届出書正副2通を消防長に提出しなければならない。
届出は、
使用開始の日の7日前までに、規則の様式で消防長に出します。一方、第2項の検査については、条例にも規則にも
申請の様式や期限を定めた条文は見当たりませんでした。規則で「検査」が出てくるのは、少量危険物のタンクの水張検査などの条です。
国の検査のほうは、期限が決まっています。消防法施行規則の第31条の3です。
消防法施行規則 第31条の3 第1項(抜粋) 法第十七条の三の二の規定による検査を受けようとする防火対象物の関係者は、当該防火対象物における消防用設備等又は特殊消防用設備等の設置に係る工事が完了した場合において、その旨を工事が完了した日から四日以内に消防長又は消防署長に
国の検査は
工事完了から4日以内の届出です。八尾市の条例の検査に同じ期限があるかどうかは、条文からは読み取れません。
もう一つ、罰則です。八尾市の条例の罰則の条は、次のように始まります。
八尾市火災予防条例 第76条 第1項(柱書) 次の各号の1に該当する者は、300,000円以下の罰金に処する。
この条の各号には、少量危険物(第33条など)、指定可燃物(第39条・第40条)、指定催しの計画(第64条の3)などが並び、
第65条は挙がっていませんでした。ただし、条例の罰則に挙がっていないことと、検査を受けなくてよいことは別の問題です。
はい、7日前までです。
検査の期限は、条例にも規則にも見当たりませんでした。
大阪市・東大阪市・堺市・豊中市・吹田市の条例はどう違うのか
大阪市・東大阪市・堺市の条例にも、八尾市と同じ型の第2項があります。まず大阪市です。
大阪市火災予防条例 第56条 第2項 第5章及び令第2章第3節の規定により消防用設備等を設置しなければならない防火対象物及び法第17条第3項の規定により特殊消防用設備等を設置する防火対象物は、使用開始前に消防署長の行う検査を受けなければならない。ただし、法第17条の3の2の規定による検査を受け、又は受けることとなる消防用設備等若しくは特殊消防用設備等については、この限りでない。
大阪市は、検査を行うのが
消防署長で、
特殊消防用設備等を設置する防火対象物も対象に入れています。東大阪市の条文は次のとおりです。
東大阪市火災予防条例 第65条 第2項 第5章及び令第2章第3節の規定により消防用設備等を設置しなければならない防火対象物は、使用開始前に消防長の行う検査(法第17条の3の2の規定による検査を受けたもの又は受けることとなる消防用設備等を除く。)を受けなければならない。
東大阪市は、八尾市と同じく消防長の検査で、国の検査を受ける設備を除く点も同じです。違いは、除く部分を
ただし書で書くか
括弧書で書くかという書き方だけです。堺市の条文は次のとおりです。
堺市火災予防条例 第84条 第2項 第5章及び令第2章第3節の規定により消防用設備等を設置しなければならない防火対象物は、使用開始の前に消防長又は消防署長の行う検査を受けなければならない。
堺市の第2項には、国の検査を除く文言が
書かれていません。堺市の「解説及び運用」は、この項の趣旨を次のように説明しています。
堺市「火災予防条例 解説及び運用」第84条 解説5 の規定により消防用設備等を設置しなければならない防火対象物すべてについて、その使用を開始するまでに消防長又は消防署長の検査を受けなければならない旨を規定したものである。
「防火対象物すべて」と書いているので、設置義務のある建物には広く検査を求める趣旨と読めます。一方、豊中市と吹田市の条例の該当条は、使用開始の届出だけです。
豊中市火災予防条例 第43条 令別表第1に掲げる防火対象物(同表(19)項及び(20)項に掲げるものを除く。)をそれぞれの用途に使用しようとする者は,使用開始の日の7日前までに,その旨を消防長に届け出なければならない。
吹田市火災予防条例 第43条 令別表第1に掲げる防火対象物(同表(19)項及び(20)項に掲げるものを除く。)をそれぞれの用途に使用しようとする者は、使用開始の日の7日前までに、その旨を消防長に届け出なければならない。
この2条は項が1つだけで、
検査を求める第2項に当たる規定は見当たりませんでした。6市を表にまとめます。
| 市 | 条例の条 | 検査を求める項 | 検査を行う者 | 国の検査との関係 |
| 八尾市 | 第65条 | 第2項 | 消防長 | ただし書で除く |
| 大阪市 | 第56条 | 第2項 | 消防署長 | ただし書で除く(特殊消防用設備等も対象) |
| 東大阪市 | 第65条 | 第2項 | 消防長 | 括弧書で除く |
| 堺市 | 第84条 | 第2項 | 消防長又は消防署長 | 第2項に除く文言なし |
| 豊中市 | 第43条 | 見当たらない(届出のみ) | - | - |
| 吹田市 | 第43条 | 見当たらない(届出のみ) | - | - |
読んだのは各市の条例本文までです。豊中市と吹田市は、規則や運用基準に検査の扱いがあるかどうかまでは確かめていないため、
検査の運用がないと断定はできません。
堺市の運用の説明にある「使用開始前」の理由は、第1項の届出の説明に出てきます。
堺市「火災予防条例 解説及び運用」第84条 解説2(抜粋) その時期としては当該建築物の使用開始前が適当である
つまり、使用を始めてから違反が見つかると、改修のために営業を止める事態にもなりかねないので、
使用開始前に確かめるという考え方です。八尾市の条文にはこうした説明はなく、趣旨を同じとは断定できません。
はい、四つの市に第2項があり、豊中市と吹田市には見当たりません。
自分の建物の市の条文を確かめましょう。
明日から自分の建物で何を確かめればよいのか
八尾市で店舗や事務所を開くなら、使用開始前に確かめる順番は四つです。
- 建物の用途が令別表第一の何項に当たるか、延べ面積はいくつかを、図面と届出書類で確かめます。
- 政令第8条から第33条の2までの基準で、設置が必要な消防用設備等を数えます。消火器具は第10条で見ます。
- 国の検査の対象(令第35条)に当たるなら、工事完了から4日以内に消防長又は消防署長へ届け出ます。
- 使用開始の7日前までに届出書を出し、条例第65条第2項の検査の進め方は、管轄の消防署に確かめます。
国の検査の対象外でも、八尾市の条文の文言は設備を置く建物に広がっています。
小さな店だから検査は関係ないと決めつけず、工事の前に消防署へ相談しておくと、使用開始が遅れる事態を防げます。
小さな店でも、使用開始前に消防署へ相談しておくのですね。
はい、条文の読み方と実際の運用は消防署で確認できます。
設備の工事の前に聞いておきましょう。
よくある質問
Q豊中市や吹田市では、小さな店舗は検査を受けなくてよいのですか?
A条例本文に検査を求める項が見当たらないだけで、受けなくてよいとは言えません。国の検査(消防法第17条の3の2)の対象なら届出と検査が必要で、市の規則や運用は消防署で確認してください。
Q八尾市の条例の検査も、工事完了から4日以内に届け出るのですか?
A4日以内は、国の検査を受けるときの消防法施行規則第31条の3の期限です。八尾市の条例の検査には、条例にも規則にも期限が見当たりませんでした。
Q八尾市で条例の検査を受けないと、条例の罰則になりますか?
A条例第76条の罰則の各号には、第65条は挙がっていません。ただし、これは条例の罰則の確認だけで、他の法令上の義務は別ですので、消防署に確かめてください。
Q大阪市の条例は、八尾市と同じ書き方ですか?
A大阪市条例第56条第2項は、検査を行うのが消防署長で、特殊消防用設備等を設置する防火対象物も対象に入れています。国の検査を除く点は八尾市と同じです。
まとめ
✔国の検査は政令第35条が挙げる防火対象物が対象で、延べ面積300平方メートル未満の物品販売店舗は第2号に当たりません
✔八尾市条例第65条第2項は、設備を設置しなければならない防火対象物に使用開始前の消防長の検査を求め、面積の線は条文に書かれていません
✔ただし書は、国の検査を受ける消防用設備等を除くとしており、二重に検査する書き方ではありません
✔使用開始の届出は条例第65条第1項で、期限は施行規則第8条が7日前までと定めています
✔大阪市・東大阪市・堺市にも同じ型の第2項があり、豊中市と吹田市の条例本文には見当たりませんでした
✔第2項の検査の申請の様式や期限は八尾市の規則に見当たらず、条例の罰則の条にも挙がっていません
✔条文の読み方と実際の運用は違うことがあるので、管轄の消防署で確認しましょう
まず自分の建物の用途と延べ面積を確かめます。
そのうえで消防署に相談します!
条文の読み方は市ごとに違うので、工事の前に確認しましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
防火管理はプロにお任せ下さい
まずはWebで無料お見積りを!
お問い合わせ
この記事を書いた人
㈱防災屋Web編集部
元消防士、行政書士、高専卒など
防火管理者には「セルフ選任」と「プロ代行」の2択があることをもっと多くの方々に知ってもらい、世の中の防火管理レベルをもっと上げていきたい。
0にはできない火災リスクとの向き合い方を伝え、救える命を増やし、悲しみの総量を減らしたい。
後悔してからでは遅すぎる火災予防に、Webの力で取り組む㈱防災屋の編集部です。
監修・編集者
青木 俊輔
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
主な活動
参考・出典
※本記事は公表されている法令および八尾市・大阪市・東大阪市・堺市・豊中市・吹田市の条例の公開本文に基づく一般的な解説です。条例や運用は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。各条文は2026年10月時点の公開版で確認しています。個々の建物が検査の対象に当たるかどうかは、用途や設備によって変わります。