倉庫や事務所の裏口にある鉄の扉には、顔の高さに小さなガラス窓が付いていることがあります。
窓のない階(無窓階)かどうかの判定では、この扉が消防隊が外から入れる開口部に数えられるのかが問題になります。
この記事では、豊中市消防局の運用基準にある「ガラス小窓付き鉄扉」の項を、堺市・鈴鹿市・埼玉県央広域の審査基準と並べて読みます。
書かれていることと、読み取れなかったことを分けて解説します。
扉の小窓の大きさでも、無窓階の判定は変わるのでしょうか?
豊中市の運用基準に、小窓の大きさの数字が書かれています。
市によって、数字の書き方が違うのですか?
堺市や鈴鹿市とは、数字の置き場所が違います。
順に見ていきましょう。
- 国の規則は、開口部が「容易に破壊することにより進入できるもの」であることを求めますが、小窓の大きさや鍵までの距離の数字は書いていません
- 豊中市は、ガラス小窓付き鉄扉について、小窓が縦15㎝以上・幅15㎝以上で、小窓からサムターン錠までが概ね25㎝以内のものを、運用基準に掲げています
- 小窓のガラスは、運用基準の「前イ」に該当する種類に限られ、普通板ガラスなら6mm以下、強化ガラスなら5mm以下など、種類ごとの厚さの条件があります
- 堺市は小窓を例えば幅15cm以上・高さ60cm以上と本文に書き、鈴鹿市と埼玉県央広域は、本文でなく図に寸法を示しています
- 今回読んだ4本部のうち、サムターン錠までの距離を本文の数字で書いているのは豊中市だけでした
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目次
国の法令は鉄扉の小窓についてどこまで決めているのか

その開口部が満たす条件は、同じ条の第2項に並んでいます。扉に関わるのは第三号です。
数字は、各消防本部の運用基準が補っています。なお、豊中市の運用基準の本文は「規則第5条の3」と書いていますが、e-Govで確かめた現行の規則では、同じ内容が第五条の五にあります。この記事では、現行の条番号で書きます。
窓のない階になると、屋内消火栓設備や自動火災報知設備の基準も厳しくなります。くわしくは無窓階に該当すると消防用設備等の基準がどう変わるかを扱った記事で解説しています。
国の条文には、小窓の数字は無いのですね。
はい、数字は運用基準に書かれています。
本部ごとに書き方が違います。
豊中市はガラス小窓付き鉄扉をどう扱うのか

「3」の冒頭は、次のように書かれています。
- 小窓を破壊して、サムターン錠を解錠できるものであること。
- 小窓の大きさが、縦15㎝以上・幅15㎝以上であること。
- 小窓からサムターン錠までの距離が、概ね25㎝以内であること。
| 確かめる項目 | 豊中市の運用基準の書き方 |
|---|---|
| 扉の種類 | ガラス小窓付き鉄扉等 |
| 小窓の大きさ | 縦15㎝以上・幅15㎝以上 |
| 小窓とサムターン錠の距離 | 概ね25㎝以内 |
| 小窓のガラス | 前イに該当するものに限る |
運用基準の冒頭には、「法令上義務となる内容と行政指導の内容が含まれている」と書かれています。この項が義務なのか指導なのかを分ける記号や凡例は、見当たりませんでした。そのため、この記事では「運用基準にこう書かれている」の範囲で書きます。
小窓を割って、内側の鍵を回すということですか?
運用基準は、小窓からサムターン錠まで概ね25㎝以内と数字で示しています。
小窓のガラスはどの種類と厚さなら認められるのか

イは、ガラスを一部破壊することで外部から開放できる窓について、ガラスの種類ごとに厚さの上限を示しています。主なものを表にまとめます。
| ガラスの種類(前イ) | 厚さの条件 |
|---|---|
| 普通板・フロート板・磨き板・型板・熱線吸収板・熱線反射ガラス | 6mm以下 |
| 網入板ガラス・線入板ガラス | 6.8mm以下 |
| 上の網入板・線入板ガラス以外で、バルコニー・屋上広場等の足場があるもの | 10mm以下 |
| 強化ガラス・耐熱板ガラス | 5mm以下 |
読むときの注意が二つあります。一つ目は、網入板ガラスの10mm以下が、バルコニーや屋上広場など破壊作業のできる足場がある場合の数字だということです。扉の小窓に、この足場の条件がどう当てはまるのかは、運用基準に書かれていません。
二つ目は、前イに入らない種類や厚さのガラスについて、コの条件に合うとは書かれていないことです。小窓のガラスが前イの種類と厚さに入るかは、ガラスの種類と厚さを調べて確かめる必要があります。 ここまでの「たどる順番」を整理します。
- 国の規則 第五条の五 第2項 第三号が、開口部は容易に破壊して進入できるものであることを求めます。
- 豊中市の運用基準 3(1)が、その扱いができる開口部を列挙します。
- 列挙の最後のコが、ガラス小窓付き鉄扉の小窓の大きさとサムターン錠までの距離を示します。
- コのかっこ書きが、小窓のガラスを前イに該当するものに限ります。
- 前イが、ガラスの種類ごとの厚さの上限を示します。
ガラスの種類で、小窓の扱いも変わるのですね。
はい、コは前イのガラスに限ると書いています。
厚さも種類ごとに違います。
堺市・鈴鹿市・埼玉県央広域と比べて何が違うのか

次に、鈴鹿市です。
最後に、埼玉県央広域消防本部です。
| 本部 | 小窓の大きさ | サムターン錠との位置 | ガラスの条件 |
|---|---|---|---|
| 豊中市 | 本文:縦15㎝以上・幅15㎝以上 | 本文:小窓から概ね25㎝以内 | 前イに該当するもの |
| 堺市 | 本文:例えば幅15cm以上・高さ60cm以上 | 本文に数字なし(図に寸法) | 本文には書かれていない |
| 鈴鹿市 | 本文に数字なし(図に15cmと60cm) | 本文に数字なし(図に10cm) | 本文には書かれていない |
| 埼玉県央広域 | 本文に数字なし(図に15cm以上) | 本文に数字なし(図に10cm以内) | 第4-1表の種類と条件 |
堺市の審査基準の通知一覧(PDF p13)には、「ガラス小窓付き鉄扉の取り扱いについて」の項目があります。ページの画像では、平成14年9月30日の消防予第281号の行に並んでいます。この通知の本文は今回確認できていないため、寸法がその通知に書かれているかは分かりません。
大阪市・東大阪市の公開資料では、手元で読んだ範囲で、同じ項目を見つけられませんでした。
豊中市は、本文にサムターン錠までの距離も書いているのですね。
はい、数字を本文で示すのが豊中市です。
他の本部は図で示しています。
明日から自分の建物の鉄扉で何を確かめればよいのか

- 小窓の大きさを測り、縦と幅が、それぞれ15㎝以上あるかを確かめます。
- 小窓から内側のサムターン錠までの距離を測り、概ね25㎝以内かを確かめます。
- 小窓のガラスの種類と厚さを調べ、前イの表に入るかを確かめます。
- 扉全体を開口部として数えるときの大きさは、同じ項の(2)で、第6-2表により判断するとされています。表の中身は消防署で確かめます。
無窓階の判定は、階ごとの開口部の数や大きさで決まります。扉の小窓だけでなく、窓の位置や空地の扱いも関わります。窓の下端が高い場合の扱いは四日市市の踏み台の記事でも解説しています。
小窓の寸法と、鍵までの距離を測ればよいのですね。
はい、まずはこの二つの寸法です。
ガラスの種類と厚さも忘れずに確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず小窓と鍵の寸法を測ります。
そのうえで消防署に相談します!
ガラスの種類は調べてから確認しましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 豊中市消防局「消防用設備等の設置に関する運用基準」第1部 第2章 第1節 第4 無窓階の取扱い 3 開口部の構造(PDF p65〜p70) https://www.city.toyonaka.osaka.jp/kurashi/bosai/toyonakafiredept/todokede/setubiunnyoukijun.html
- 堺市消防局「消防同意・消防用設備等審査基準」第5 無窓階の取扱い https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準 第2章 第4 無窓階の取り扱い https://www.city.suzuka.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/016/103/r08.07.06musoukai.pdf
- 埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準 第2章 第4 無窓階の取り扱い https://www.ken-o.or.jp/wp/wp-content/uploads/2025/04/fcecc3d65621772945a1209bcf7fb14e.pdf
- 消防法施行規則 第五条の五(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/336M50000008006
※本記事は公表されている法令および豊中市・堺市・鈴鹿市・埼玉県央広域消防本部の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防局で確認してください。






