政令第23条の基準の特例は便利な規定ですが、何でも通るわけではありません。
不可分の工程でなければ保安距離の特例は使えないのか。
海岸の屋外タンクで防油堤を省けるのか。
給油取扱所の間口が0.8メートル足りないだけで許可されないのか。
自動車用回転台を設けたら補えるのか。
昭和37年の執務資料から、認められた例と認められなかった例を並べて解説します。
給油取扱所の間口が0.8メートル足りへんだけやのに、ダメって言われたら困るんやけど。
何とかならんの?
間口9.2メートルの事例で自動車用回転台を設けるという補充対策が示され、特例を適用して差し支えないと回答されています。
足りない分を別の方法で補うという考え方です。
ほんなら何でも特例で通るんやな。
うちも保安距離が足らんから頼んでみるわ。
そこが大事なところです。
プロパンガス充てん所の事例では政令第23条を適用することはできないと明確に否定されました。不可分の工程かどうかが分かれ目です。
- 油槽所敷地内のプロパンガス充てん所は製造所等と不可分の工程にあるものと解せられないから政令第9条第1号の距離について政令第23条を適用することはできない
- 高圧ガス関係の許認可に際しての事前の連絡等については消防法第7条の同意のほか特別の規制はない
- 海岸にある屋外タンクの防油堤は一般的には政令第23条の規定を適用すべきではないが、危険物の性質または周囲の状況から判断して容量または高さを緩和して差し支えない場合もありうる
- 石炭ガス発生工場の極めて重質のタール貯蔵タンクは政令第23条を適用しコンクリート製のものを認めて差し支えない/密閉は不要だが蓋は設けなければならない
- 農業協同組合の敷地内の給油取扱所はへいまたは壁について4つの措置を講ずることを条件に2案のいずれも特例を適用して差し支えない
- 間口9.2メートルで基準に満たない給油取扱所は自動車用回転台を設けることにより特例を適用して差し支えない
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目次
不可分の工程でなければ保安距離に政令第23条は使えない

既設の油槽所敷地内に新設しようとするプロパンガスの貯蔵充てん所について、県から詳しい経緯を添えた照会がありました。当該油槽所は相当多量の危険物が貯蔵されており、政令の施行により相当大がかりな改修を必要とするため逐次改修を指導中という状況です。
昭和33年12月ごろ、従来危険物の取扱いがなされていた貯蔵倉庫(石造倉庫)をプロパンガス貯蔵所に転用して高圧ガス取締法に基づく知事の許可を受け、事実上使用されていることがわかり、業者に対して早急な撤去および許可の取消方を勧告してきたという前提もありました。今回は同一敷地内に専用の建物を設けてプロパンガスの貯蔵および充てんを行おうとして建築確認の申請があったものです。
設置者は防火上有効なへい、具体的には当該建物より1メートルの空地を保有し高さ3メートル厚さ10センチメートルのコンクリートブロック造のへいを設けることにより同意方を依頼していました。他の建築物との保有距離は最低10.2メートルです。
理由は明快で、設問のプロパンガス充てん所は添付図面等より判断すれば製造所等と不可分の工程にあるものと解せられないからとされています。
特例の前提は同じ施設の一部であることです。別の法律で許可を受けた別の施設が隣にあるだけでは、危険物施設の保安距離を緩める理由になりません。
あわせて、高圧ガス関係の許認可に際しての事前の連絡等については消防法第7条の同意のほか特別の規制はないと回答されています。消防が関与する法的な入口は建築同意だけという整理です。
海岸の屋外タンクは防油堤を省けないが容量や高さは緩和できる

第四類の危険物の屋外タンクの周囲には、危険物が洩れた場合にその流出を防止するための防油堤を規則第22条により設けなければなりません。しかし既設の屋外タンクのほとんどは規定の空地もなく、場所的にも設けさせることが不可能な場合が多いという実情がありました。
照会では、船舶への給油を目的として沿岸に設置してある場合などはことさら防油堤を造るにも必要な空地がなく、かつ特殊な地形その他の状況から技術的にも設置が困難であるため、防油堤に代えて火災等の場合に配管で船舶(舟そう)等に排送しうる設備を設けることにより政令第23条の特例を適用して差し支えないかと問われています。
ただし続きがあります。危険物の性質または周囲の状況から判断して、防油堤の容量または高さを緩和して差し支えない場合もありうるとされました。
防油堤そのものを無くす方向は認められません。認められるのは容量または高さを緩和するという部分的な調整までです。
配管で船舶に排送する設備という代替案は、防油堤の代わりとしては採用されませんでした。流出を受け止める構造物と、流出後に移送する設備は役割が違うという判断です。
重質のタール貯蔵タンクはコンクリート製でよいが蓋は必要

市内のガス会社のタール貯蔵用タンクについて、消防長から5項目の照会がありました。タンクはコンクリート造にて無蓋として屋内に設置され、条例施行時から既に使用中であったものです。適正化については屋内タンク貯蔵所の取扱いとすべく指導しているという状況でした。
- タンクの構造はコンクリートのままでよいか → 石炭ガス発生工場における極めて重質のタールを貯蔵するものであれば政令第23条の規定を適用しコンクリート製のものを認めて差し支えない
- 気密に造るとすれば有蓋とする必要があるか → 必ずしも密閉する必要はないが蓋は設けなければならない
- コンクリート造10立方メートル入り1個と鉄板製10立方メートル入り1個および地下無蓋10立方メートル入り1個が同一建築物内にあり指定数量の10倍以上となる場合の取扱い/地上タンクの設置間隔が10センチメートルである場合の取扱い/地下式タンクの取扱い → 前記1を参照の上、危険物の性質等を考慮し政令第23条の規定を適用して差し支えない
ただし蓋は設けなければならないという一線は残されています。密閉までは求めないが開けっ放しは認めないという整理です。
タンク間隔10センチメートルや地下式の扱いも同じ論法で処理されており、個別に基準を書き換えるのではなく1つの理由づけを他の項目にも及ぼす形になっています。
農協敷地内の給油取扱所はへいの措置を条件に2案とも認められた

ある農業協同組合は住家AおよびBの間にあり、その敷地内に事務所のほか米穀倉庫、肥料倉庫および精米所を有していました。それらの米穀倉庫等に国道から出入するため隣家Aとの間に幅3メートルの通路を有していますが、事務所を改造してその位置に給油取扱所を設置する計画で、次の2案について相談を受けたという照会です。
- 1案 通路の幅を自動三輪車の運行のため必要な最低限の2.5メートルとすると保有空地の間口は9.7メートルとなり、防火へい2箇所(隣家AおよびBに面する両側)の幅0.3メートルだけ不足することとなるが、奥行を7メートルとして規定の空地を保有するものと認めることは差し支えないか
- 2案 間口を6メートル、奥行を10メートル、通路の幅を4.5メートルにして設置を認めることは差し支えないか。またこの場合、隣家Aに面する給油取扱所の部分について防火上の措置を講ずる必要があるか
- 米穀倉庫および肥料倉庫に面する側のへいまたは壁は、住家Aに到達せしめるように設けること
- そのへいに設ける前記倉庫に出入する自動車の出入口は住家Aに接する位置とし、その幅はこれらの自動車の出入に必要な最少限度の幅とすること
- その出入口には不燃材料で造った扉を設けること
- 住家Aに面する側のへいの位置は住家Aとの境界線上とし、前記倉庫に出入する自動車は給油取扱所の空地の一部を使用するものとすること
間口が基準に満たない給油取扱所は自動車用回転台で補える

給油取扱所の新設申請を政令の基準に照して審査したところ、間口が9.2メートルで基準に満たないという事案です。補充対策として給油取扱所内に自動車用回転台を設け、自動車をこれに乗せたまま給油し、給油終了後は回転台を動かして自動車の進行方向を変えその出入を容易にする方法を採る場合に、政令第23条の特例を適用して差し支えないかという照会でした。
なお当該申請者は数年前より申請地において油類の小売業を営み若干のガソリン販売もしているので、政令に定める基準に比し敷地が若干不足(0.8メートル不足)していることで処理するには行政的に困難な状況にあるという事情も添えられています。
間口の基準は、自動車が安全に出入りできることを担保するために置かれています。回転台で進行方向を変えられるなら、間口が狭くても出入の安全は確保できます。
つまり基準が守ろうとしている目的を別の手段で満たすという構成です。0.8メートル足りないという数字だけを見て切るのではなく、何のための数字かに戻って判断しています。
前段のプロパンガスの事例で特例が否定されたのと対照的です。あちらはそもそも同じ施設ではないため目的に戻る余地がありませんでした。
よくある質問
まとめ
- 油槽所敷地内のプロパンガス充てん所は不可分の工程にないため、政令第9条第1号の距離について政令第23条を適用できない
- 高圧ガス関係の許認可に際しての事前の連絡等には、消防法第7条の同意のほか特別の規制はない
- 海岸の屋外タンクの防油堤は一般的には特例の対象とせず、容量または高さの緩和までが認められる余地がある
- 極めて重質のタールを貯蔵するタンクは、危険物の性質を理由にコンクリート製が認められる
- タンクは密閉までは不要だが蓋は設けなければならない
- 農協敷地内の給油取扱所は、へいまたは壁の4つの措置を条件に2案のいずれも特例が認められた
- 間口が0.8メートル不足する給油取扱所は、自動車用回転台という補充対策で特例が認められた
通る特例と通らん特例の違いが見えてきたわ。
そのとおりです。
基準が何のために置かれているかに戻って、別の手段で同じ安全が確保できると示せた事例が通っています。
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第9条・第17条・第23条 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第22条 e-Gov法令検索
- 消防法(昭和23年法律第186号)第7条 e-Gov法令検索
- 油槽所敷地内のプロパンガスの貯蔵充てん所設置に対する保安距離の特例について(昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号 予防課長から島根県厚生部長あて回答)
- 海岸にある屋外タンクの防油堤の特例について(昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号 予防課長から岩手県釜石市消防長あて回答)
- タール貯蔵用タンクの構造について(昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号 予防課長から鳥取県鳥取市消防長あて回答)
- 農業協同組合の敷地内に給油取扱所を設置する場合の位置について(昭和37年4月20日付け自消丙予発第47号 予防課長から愛媛県総務部長あて回答)
- 給油取扱所内の間口が基準に満たないので自動車用回転台を設けることについて(昭和37年5月22日付け自消丙予発第53号 予防課長から川崎市消防局長あて回答)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)基準の特例に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。



