タンクローリーから何かに危険物を移す行為は、どの施設の取扱いとして扱われるのでしょうか。
移動タンク貯蔵所の貯蔵に伴う取扱いなのか。
それとも一般取扱所における取扱いなのか。
この線引きで、許可が要るかどうかが変わります。
昭和57年から平成4年までの質疑を通して、どちら側に振れるのかを解説します。
タンクローリーからドラム缶に詰め替えるんやったら、移動タンク貯蔵所の取扱いで済むんちゃうん?
引火点40度以上やし。
そこに落とし穴があります。
令第27条第6項第4号ロただし書で詰替えが認められていても、同一の場所で1日に取り扱う量が指定数量以上になるときは一般取扱所の許可が必要であるとされました。
ほな配管の途中で水と混ぜるんは?
タンクローリーから荷受けするついでにやりたいんやけど。
それは否定されています。
危険物の取扱工程の一部に移動タンク貯蔵所を組み入れて使用することは、移動タンク貯蔵所の貯蔵に伴う取扱いとは解されないので認められないとされました。5件まとめて解説します!
- ハウス園芸用の暖房用燃料の遠方注油は1日の取扱数量が指定数量未満であるので各市町村の火災予防条例の定めるところによられたい
- ただし1日の取扱数量が指定数量以上となる場合はポンプの動力源として内燃機関を使用することは適当でない
- 国際輸送用タンクコンテナ式移動タンク貯蔵所から移動タンク貯蔵所およびドラム缶への充填は一般取扱所における取扱いとして認めてさしつかえない
- 引火点40度以上の危険物の詰替えでも同一の場所で1日に取り扱う量が指定数量以上になるときは一般取扱所の許可が必要である
- 配管中で水により希釈することは移動タンク貯蔵所の貯蔵に伴う取扱いとは解されないので認められない
- 給油取扱所の固定給油設備から移動貯蔵タンクや移動タンク車へ注入する行為は適当でない
- 移動タンク貯蔵所から自動車等の燃料タンクへ手動開閉装置を備えた注入ノズルにより直接給油する行為はいずれも認められる
- 貨車に積載されたタンクから注入ホースで地下タンク貯蔵所へ自然流下する行為は地下タンク貯蔵所の貯蔵に伴う取扱いによる
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目次
山上のハウスへの遠方注油は指定数量未満なら条例の世界になる

愛媛県から、ハウス園芸用等の暖房用燃料の遠方注油に伴うポンプの動力源についての照会がありました。
農家で密柑等の促成栽培が行われており、これらの暖房用の燃料として重油を使用し、ハウス内のバーナーにより熱風を造り、自動温度調整器により温度を保持しているという状況です。
問題は場所でした。ハウスの位置が山頂附近に設置されているものもあり、移動タンク貯蔵所進入可能な農道からさらに200メートルから250メートル(垂直距離に換算して約30メートルから50メートル)山上にあり、移動タンク貯蔵所に積載しているポンプでは当該ハウスの直近にあるタンクへの注油が不可能でした。
そこで示された案は、注油可能な位置に少量危険物貯蔵タンク(容量1,950リットル)を1基から3基設置し、移動タンク貯蔵所から当該タンクに注油し、その後ギヤポンプにて山上のハウス直近に設置されている同容量のタンクに注油するというものです。
このときギヤポンプの動力源としてエンジンを使用することは認められるかという問いでした。移動タンク貯蔵所に車両の動力源を使用しないエンジンをポンプの動力源とすることについては、昭和51年10月23日付け消防危第71号により認められない旨回答されていたためです。
回答は、設問については1日の取扱数量が指定数量未満であるので、各市町村の火災予防条例の定めるところによられたいです。
そもそも政令の世界の話ではありませんでした。
そのうえで念押しが付きます。1日の取扱数量が指定数量以上となる場合にあつては、ポンプの動力源として内燃機関を使用することは適当でない、というものです。
照会側が3つ目の問いとして用意していた「他の適切な方法はいかがか」には触れられていません。数量の枠を先に確認せよ、という答え方になっています。
タンクコンテナからの充填は一般取扱所における取扱いとして認められる

神奈川県から、国際輸送用タンクコンテナ式移動タンク貯蔵所から移動タンク貯蔵所およびドラム缶に充填することについての照会がありました。
計画されていた施設はこうです。既設の一般取扱所であるローリー充填所(第四類の第1、2、3、4石油類、メチルエチルケトン、さく酸エステル類および動植物油類5,200倍)に、空気駆動の固定式ポンプ、配管(2インチSUS304)および金属フレキシブルホースを新設し、国際輸送用タンクコンテナ式移動タンク貯蔵所から移動タンク貯蔵所へ充填します。
ここから更に配管を延長し、隣接する一般取扱所であるドラム充填所(第四類の第1、2、3、4石油類、アルコール類、メチルエチルケトン、さく酸エステル類および動植物油類1,210.8倍)においてドラム缶に充填することを計画していました。なお、コンテナは車両に積載した状態にしておくとされています。
照会は、既存の通知のどれで読むべきかを選択肢の形で並べたものでした。
- 移動タンク貯蔵所への充填は、昭和41年2月8日付け自消丙予発第22号にいう一般取扱所における取扱いとして可とするか、それとも昭和52年3月25日付け消防危第46号のとおり移動タンク貯蔵所間の移し替えであるので認めないか
- ドラム缶への充填は、昭和40年7月15日付け自消丙予発第125号の回答にいう貯蔵に伴う取扱いとは認められない場合に該当するか
- 昭和51年11月11日付け消防危第87号に示す移動タンク貯蔵所における危険物の取扱いとして認められる場合に該当するか
- 配管を他の取扱い工程と共用しているので、昭和56年7月3日付け消防危第83号の危険物の取扱い工程の一部に移動タンク貯蔵所が組み入れられて使用される場合となるので認められないか
場所が既設の一般取扱所であることが効いています。
照会側が挙げた否定側の選択肢は、いずれも移動タンク貯蔵所どうしの移し替えや取扱い工程への組み入れとして読む立場でした。しかしこの計画では、行為が行われるのはすでに許可を受けた一般取扱所の中です。
移動タンク貯蔵所の側から見れば移し替えに見えても、場所の側から見れば一般取扱所の取扱いになります。前の記事で見た「行為と場所は別に評価される」という考え方が、ここでは認める方向に働きました。
詰替えが認められても指定数量以上なら一般取扱所の許可が要る

平成元年の執務資料に、令第27条第6項第4号に関する2つの質疑があります。
1つめは、令第27条第6項第4号ロただし書の規定により移動貯蔵タンクから容器に引火点が40度以上の第四類の危険物を詰め替える場合においても、同一の場所で1日に取り扱う量が指定数量以上になるときは、一般取扱所の許可が必要となるかという問いです。
ただし書は行為を認める規定であって場所を免除する規定ではありません。
引火点が40度以上という条件を満たし、ただし書によって詰替えという行為そのものは認められます。それでも、同じ場所で1日に扱う量が指定数量に達すれば、その場所は施設として許可の対象になります。
前の記事で見た小分け行為の回答と同じ組み立てで、行為の可否と場所の規制が二層になっていることが繰り返し確認されています。
2つめは、エチルアルコールを移動タンク貯蔵所から荷受けする際、配管中において水で希釈することは認められるかという問いです。
荷受けという行為に、混合や希釈という工程がくっついています。
運んできたものを降ろすことと作ることは違います。
移動タンク貯蔵所に認められているのは、貯蔵に伴う取扱いです。中身を変えてしまう工程に組み込まれた時点で、それは貯蔵に伴う取扱いの範囲を超えている、という整理になりました。
前のH2でタンクコンテナからの充填が認められたのは、中身を変えていないからだと読むこともできます。
給油取扱所からローリーへの注入は適当でないが逆向きは認められる

平成2年の執務資料には、令第27条第6項に関する対照的な2つの質疑が並んでいます。
1つめは、給油取扱所における危険物の取扱い方法として次に掲げる行為は認められるか、というものです。
- 固定給油設備から、車両に固定された容量4,000リットル未満の移動貯蔵タンクに、1日当たり指定数量未満のガソリン又は軽油を注入する行為
- 固定給油設備から、指定数量未満の危険物を収納するタンクを固定した車両(移動タンク車)のタンクに、1日当たり指定数量未満のガソリン又は軽油を注入する行為
2つめは、移動タンク貯蔵所から引火点が40度以上の第四類の危険物を、注入ホースの先端部に手動開閉装置を備えた注入ノズル(手動閉鎖装置を開放の状態で固定する装置を備えたものを除く。)により自動車等の燃料タンクに直接危険物を給油する行為は、同一場所における給油量が指定数量未満なら認められるか。また移動タンク車による同様の危険物の取扱いは認められるか、という問いです。
向きが逆になると結論も逆になりました。
1つめは固定給油設備から車両のタンクへ入れる方向です。給油取扱所の固定給油設備は自動車等の燃料タンクに給油するためのもので、運搬用のタンクを満たすために使う想定になっていません。
2つめは移動タンク貯蔵所から自動車等の燃料タンクへ入れる方向です。こちらは手動開閉装置を備えた注入ノズルという条件付きで認められました。手動閉鎖装置を開放の状態で固定する装置を備えたものを除く、という除外まで書かれています。
移動タンク車による同様の取扱いも認められており、車両の側の種類ではなくどちらからどちらへ入れるかで判断が分かれた事例です。
貨車から地下タンクへの自然流下は地下タンク側の取扱いになる

平成4年の執務資料には、短いながら線引きの考え方がよく表れた質疑があります。
貨車に積載されたタンクから注入ホースで地下タンク貯蔵所へ自然流下する行為は、一般取扱所における取扱いか、それとも地下タンク貯蔵所の貯蔵に伴う取扱いか、という問いです。
受け入れる側の施設の取扱いとして扱われました。
ここまで見てきた質疑を並べると、判断の軸が見えてきます。その行為が行われている場所に許可を受けた施設があるか、そして中身を変える工程が入っていないかの2点です。
タンクコンテナからの充填は一般取扱所の中だったので一般取扱所の取扱いになりました。貨車からの自然流下は地下タンク貯蔵所へ入れる行為なので、地下タンク貯蔵所の取扱いになります。
一方で配管中の希釈は、場所ではなく工程が組み込まれたことで否定されました。運んできたものをそのまま降ろすのか、途中で何かをするのかが分かれ目です。
よくある質問
まとめ
- ハウス園芸用の暖房用燃料の遠方注油は、1日の取扱数量が指定数量未満であるので各市町村の火災予防条例の定めるところによる
- 1日の取扱数量が指定数量以上となる場合は、ポンプの動力源として内燃機関を使用することは適当でない
- 国際輸送用タンクコンテナ式移動タンク貯蔵所から移動タンク貯蔵所およびドラム缶への充填は、一般取扱所における取扱いとして認めてさしつかえない
- 引火点40度以上の危険物の詰替えでも、同一の場所で1日に取り扱う量が指定数量以上になるときは一般取扱所の許可が必要である
- 配管中で水により希釈することは、移動タンク貯蔵所の貯蔵に伴う取扱いとは解されないので認められない
- 給油取扱所の固定給油設備から移動貯蔵タンクや移動タンク車へ注入する行為は適当でない
- 移動タンク貯蔵所から自動車等の燃料タンクへ手動開閉装置を備えた注入ノズルにより直接給油する行為はいずれも認められる
- 貨車に積載されたタンクから地下タンク貯蔵所へ自然流下する行為は、地下タンク貯蔵所の貯蔵に伴う取扱いによる
そのまま降ろすんか、途中で何かするんかで変わるんやな。
そこと、その場所に許可を受けた施設があるかどうかの2点です。
両方を確かめると、どの施設の取扱いとして扱われるのかがだいたい見えてきます。
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第27条第6項 e-Gov法令検索
- ハウス園芸用等の暖房用燃料の遠方注油に伴うポンプの動力源について(昭和57年3月31日付け消防危第43号 消防庁危険物規制課長から愛媛県あて回答 昭和58年3月9日付け消防危第19号「18」)
- 国際輸送用タンクコンテナ式移動タンク貯蔵所から移動タンク貯蔵所及びドラム缶に充填することについて(昭和60年10月21日付け消防危第117号 消防庁危険物規制課長から神奈川県あて回答 昭和61年3月10日付け消防危第23号「1」)
- 危険物規制事務に関する執務資料(給油取扱所を除く)の送付について(平成元年7月4日付け消防危第64号 消防庁危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて回答)令第27条第6項第4号関係
- 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成2年10月31日付け消防危第105号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)令第27条第6項関係
- 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成4年2月6日付け消防危第13号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)取り扱いの基準に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。




