防火管理者になれるのは、誰なのか。
建物を借りている人、講習を分けて受けた人、消防団員だった人、一級建築士。
消防の実務書には、この資格の読み方を扱った昭和36年から昭和54年の質疑応答が並んでいます。
この記事では、その中から5問を取り上げ、現行の条文に照らして読みます。借りている人、講習の一部受講、講習の委託、消防団員、一級建築士を、順に確かめます。
防火管理者の資格って、講習を受ければ、それでいいんじゃないんですか。
はい。
講習を受ける道のほかにも、条文に定められたルートがあります。
借りているだけの建物でも、選ぶ側になるんですか。
一つずつ確かめます。
現行の条文に当たれるところは、当たって読みます。
- 消防法第8条の「管理について権原を有する者」には、使用貸借の借主や賃貸借の賃借人も含まれると答えています
- 講習の一日目と二日目を別の回で受けても、一つの講習会の全課程を受けた者でなければ修了者とは認めないと答えています
- 講習の実施者は条文で定められた者ですが、講習の実務的な部分を他の法人等に委託することは、さしつかえないと答えています
- 資格にある市町村の消防団員は、常備でも非常備でもよいと答えています
- 一級建築士は、資格を取った後に一年以上の防火管理の実務経験を積んだ者でなければ、資格の要件を満たさないと答えています
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目次
防火管理者の資格は、どの条文で決まっているのか
防火管理者を定める義務は、消防法第8条第1項にあります。多数の人が出入りする防火対象物の管理について権原を有する者が、政令で定める資格を有する者のうちから、防火管理者を定めます。政令は、消防法施行令第3条です。第1項は、甲種防火対象物と乙種防火対象物に分けて、それぞれの資格を並べています。甲種は、講習の課程を修了した者、大学や高等専門学校で防災に関する学科を修めて一年以上の実務経験がある者、市町村の消防職員で管理的または監督的な職に一年以上あった者などです。乙種は、乙種の講習を修了した者などです。どちらも、防火管理上必要な業務を適切に遂行できる管理的または監督的な地位にあることが前提です。
講習を受ける道のほかに、「これらに準ずる者で、防火管理者として必要な学識経験を有すると認められるもの」があります。その中身を細かく並べているのが、消防法施行規則第2条です。
以下の5問は、この仕組みが、個別の場面に当てはめられた例です。
建物を借りている人も、防火管理者を定める権原者になるのか

建物の所有者でなく、借りて使っている人は、その権原を有する者にあたるのかが、質疑応答に出てきます。
(昭和36年10月6日自消丙予発第25号 消防庁予防課長から佐賀県総務部長あて回答)
使用貸借は、無償で物を借りる契約です。賃貸借は、賃料を払って借りる契約です。どちらも、その建物を実際に使い、管理する立場にあるのは借りている人です。
権原を有する者が誰かは、所有の形、管理の形、使い方の形を合わせて、個別に判断します。所有者と借主が別の建物では、防火管理者を定める義務が、借りている側にかかる場面があります。判断の考え方は、別の記事で詳しく解説しています。
所有者じゃなくても、選ぶ側になるんですね。
はい。
実際に管理する立場を見て決まります。
講習を二回に分けて受けた場合は、修了したことになるのか

仕事の都合で、一日目を受けたあと、二日目は別の回で受けるという人が、出てきます。
(昭和38年7月25日自消丙予発第42号 消防庁予防課長から栃木県総務部長あて回答)
消防法施行令第3条第1項は、講習の課程を修了した者を資格者としています。課程は一体のものなので、一つの講習会を通して受けることが求められます。
同じ質疑応答には、資格を認定する書面を交付すべきかという問いもあります。答えは、消防庁長官が認定する場合のほかは、何らの認定行為も必要でない、というものです。
今の講習の日程や、欠席時の扱いは、実施する機関ごとに決まっています。受講する前に、実施機関に確認します。
二日目だけ別の回、っていうのはだめなんですね。
はい。
一つの講習会を通して修了します。
講習の実務は、実施者から他の法人に任せてもよいのか

その実施者が、講習の業務の全部を公益法人などに任せられるのかが、質疑応答に出てきます。
(昭和54年6月22日消防予第118号〔4〕 消防庁予防救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
現行の消防法施行令第3条第1項は、講習を行う者を、都道府県知事、消防本部と消防署を置く市町村の消防長、そして総務大臣の登録を受けた法人と定めています。
質疑応答の考え方は、実施する主体は条文の者でなければならず、会場の運営や受付といった実務を外に頼むことは別の話、というものです。今の登録講習機関の制度は、消防庁の告示や省令に基づいています。
実施できる人と、手伝ってもらう人は別なんですね。
はい。
実施者の要件は変わりません。
消防団員は、常備と非常備で資格が変わるのか

常備の団員だけなのか、それとも非常備も含むのかが、質疑応答に出てきます。
(昭和54年6月22日消防予第118号〔8〕 消防庁予防救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
(昭和54年6月22日消防予第118号〔9〕 消防庁予防救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
現行の消防法施行規則第2条第7号は、市町村の消防団員で、三年以上管理的または監督的な職にあった者を挙げています。班長と同じ職位にあった者も、階級準則の制定前であれば同様に扱う、というのが後の質疑応答です。
ただし、資格があることと、知識が今もあることは別です。回答は、職務を離れて長い人には、講習を受けるよう指導すると述べています。
団員だった経験も、資格の道になるんですね。
はい。
三年以上の管理的な職が条件です。
一級建築士は、そのまま防火管理者の資格になるのか

それでも、資格の書き方には、実務経験の条件がついています。順番を取り違えやすいところなので、質疑応答で確かめます。
(昭和54年6月22日消防予第118号〔7〕 消防庁予防救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
現行の消防法施行規則第2条第6号は、建築主事、一級建築士試験に合格した建築副主事、または一級建築士の資格を有する者で、一年以上防火管理の実務経験を有するものを挙げています。
資格があるだけでも、実務経験があるだけでも足りません。資格を持った状態で、防火管理の実務に携わった一年以上の経験が、ひとまとまりで求められます。
経験の順番まで見られるんですね。
はい。
資格を得たあとの経験が、数えられます。
よくある質問
まとめ
資格の読み方にも、細かい決まりがあるんですね。
うちも、選ぶ前に確認します!
選任の前に確認するのが安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第8条
- 消防法施行令第3条
- 消防法施行規則第2条
- 民法第593条・第601条
- 昭和36年から昭和54年の消防庁予防課長・予防救急課長の回答(自消丙予発第25号・第42号、消防予第118号)
※本記事は公表されている法令および通知に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





