建築物の構造計算適合性判定を、都道府県知事に代わって民間の機関が行うことがあります。
その機関に判定を任せたときや、機関が業務を休止したときに、都道府県知事は何をしなければならないのでしょうか。
今回は建築基準法第77条の35の8・第77条の35の20・第77条の35の21を中心に、委任の公示と届出、委任の解除の通知、休止したときに都道府県知事が自ら行う場合、防火管理者が押さえておきたい点をあわせて解説します。
構造計算適合性判定を民間の機関が行うと聞きました。
任せたあとは、都道府県はもう何もしないのですか。
任せたことは公示されると、条文に書かれています。
まず第77条の35の8から見ていきましょう。
その機関が業務を休止したときは、判定はどうなるのでしょうか。
任せる関係をやめるときの決まりもありますか。
第77条の35の20に委任の解除、第77条の35の21に知事が自ら行う場合の規定があります。
順番に条文を確認していきます。
- 委任都道府県知事は、機関の名称及び住所、業務区域、事務所の所在地、行わせる業務と開始の日を公示しなければなりません(第77条の35の8第1項)。
- 機関は名称・住所や事務所の所在地を変えるとき、変えようとする日の二週間前までに届け出ます。届出があると知事は公示します(第77条の35の8第2項から第4項)。
- 委任を解除するときは、六月前までに機関へ通知し、解除したときは公示します(第77条の35の20)。
- 機関が休止したときや停止を命じられたとき、天災などで実施が困難となったときは、他の機関が行わない判定を知事が自ら行います(第77条の35の21第1項)。
- 引継ぎなどは国土交通省令で定めるとされ、消防法令の基準とは別の制度です。
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目次
判定を機関に任せた都道府県知事は何を公示するのか

この都道府県知事は、条文で委任都道府県知事と呼ばれています。
公示する事項は、機関の名称及び住所、業務区域、判定の業務を行う事務所の所在地です。
そのほか、機関に行わせることとした判定の業務と、その業務の開始の日も公示します。
なお、第18条の2第3項は、機関に判定の全部または一部を行わせることとしたときは、その部分を都道府県知事が行わないと定めています。
公示する事項は、機関の名前と住所だけなのでしょうか。
名称と住所のほかに、業務区域と事務所の所在地、行わせる業務、開始の日も公示します。
条文の第1項に並んでいます。
名称や事務所の所在地を変えるときはいつまでに誰へ届け出るのか

(建築基準法第七十七条の三十五の八第三項)都道府県知事の指定に係る指定構造計算適合性判定機関は、構造計算適合性判定の業務を行う事務所の所在地を変更しようとするときは、変更しようとする日の二週間前までに、その旨を委任都道府県知事に届け出なければならない。
(建築基準法第七十七条の三十五の八第四項)委任都道府県知事は、前二項の規定による届出があつたときは、その旨を公示しなければならない。
第2項は、国土交通大臣の指定に係る機関の場合です。
名称または住所を変えるときは委任都道府県知事に、事務所の所在地を変えるときは関係委任都道府県知事に、それぞれ届け出ます。
第3項は、都道府県知事の指定に係る機関の場合で、事務所の所在地を変えるときに委任都道府県知事へ届け出ます。
第4項は、これらの届出があったとき、委任都道府県知事がその旨を公示しなければならないと定めています。
届出は、変えたあとにすればよいのでしょうか。
条文は、変えようとする日の二週間前までに届け出ると書いています。
変えたあとの届出ではありません。
判定を任せることをやめるときは何を通知し何を公示するのか

(建築基準法第七十七条の三十五の二十第二項)委任都道府県知事は、指定構造計算適合性判定機関に構造計算適合性判定の全部又は一部を行わせないこととしたときは、その旨を公示しなければならない。
第1項は、判定の全部または一部を行わせないこととするときは、その六月前までに、その旨を機関に通知しなければならないとしています。
第2項は、行わせないこととしたときは、その旨を公示しなければならないと定めています。
全部だけでなく、一部を行わせないこととする場合も、同じ通知と公示の対象です。
通知の方法や様式は、この条文には書かれていません。
通知は、行わせないことにした直前でもよいのですか。
第1項は、六月前までに機関へ通知すると定めています。
行わせないこととしたときは、公示もします。
機関が休止したとき都道府県知事が自ら判定を行うのはどのような場合か

一 第七十七条の三十五の十八第一項の規定により構造計算適合性判定の業務の全部又は一部を休止したとき。
二 第七十七条の三十五の十九第二項の規定により構造計算適合性判定の業務の全部又は一部の停止を命じられたとき。
三 天災その他の事由により構造計算適合性判定の業務の全部又は一部を実施することが困難となつた場合において委任都道府県知事が必要があると認めるとき。
(建築基準法第七十七条の三十五の二十一第二項)委任都道府県知事は、前項の規定により構造計算適合性判定の業務を行い、又は同項の規定により行つている構造計算適合性判定の業務を行わないこととしようとするときは、あらかじめ、その旨を公示しなければならない。
(建築基準法第七十七条の三十五の二十一第三項)委任都道府県知事が第一項の規定により構造計算適合性判定の業務を行うこととし、又は国土交通大臣等が第七十七条の三十五の六第一項の規定により業務区域の減少を認可し、第七十七条の三十五の十八第一項の規定により構造計算適合性判定の業務の廃止を許可し、若しくは第七十七条の三十五の十九第一項若しくは第二項の規定により指定を取り消した場合における構造計算適合性判定の業務の引継ぎその他の必要な事項は、国土交通省令で定める。
条文は、第18条の2第3項の規定にかかわらず、と前置きしています。
場合は三つです。第1号は、機関が第77条の35の18第1項の規定により業務の全部または一部を休止したときです。
第2号は、第77条の35の19第2項の規定により業務の全部または一部の停止を命じられたときです。
第3号は、天災その他の事由により業務の全部または一部を実施することが困難となった場合で、委任都道府県知事が必要があると認めるときです。
第2項は、自ら行うとき、または自ら行っている業務を行わないこととしようとするときは、あらかじめその旨を公示するとしています。
第3項は、業務の引継ぎその他の必要な事項を国土交通省令で定めるとしていて、具体的な手続はこの条文には書かれていません。
機関が休止すれば、判定はそこで止まってしまうのでしょうか。
休止したときは、他の機関が行わない判定を、委任都道府県知事が自ら行うと第1項に書かれています。
行うときは、あらかじめ公示もします。
判定の委任に関する規定を防火管理の現場ではどのように受け止めればよいのか

分けて読むと、混乱しにくくなります。
| 項目 | 条文の書き方 | 押さえる点 |
|---|---|---|
| 委任の公示 | 委任都道府県知事が、名称及び住所、業務区域、事務所の所在地、行わせる業務と開始の日を公示する(第77条の35の8第1項) | 知事が公示します |
| 変更の届出 | 名称・住所や事務所の所在地を変えようとする日の二週間前までに届け出て、届出があると知事が公示する(第77条の35の8第2項から第4項) | 二週間前までに届け出ます |
| 委任の解除 | 行わせないこととするときは六月前までに通知し、行わせないこととしたときは公示する(第77条の35の20) | 通知は六月前までです |
| 知事が自ら行う場合 | 機関が休止したとき、停止を命じられたとき、天災などで実施が困難となったときに、他の機関が行わない判定を自ら行う(第77条の35の21第1項) | 行う前に公示します |
| 引継ぎなど | 業務の引継ぎその他の必要な事項は国土交通省令で定める(第77条の35の21第3項) | 詳細は省令にあります |
この規定は、防火管理者の義務を直接決めるものではありません。
また、第77条の35の8・第77条の35の20・第77条の35の21には、公示の方法、通知の様式、引継ぎの手続は書かれていません。
建物の新築や増築の場面では、判定を受ける手続の窓口や書類の控えを、設計者や施工業者と共有しておくと、後の相談で慌てずに済みます。
明日から、次の点を確認してください。
- 建物の構造計算適合性判定を、どの機関が行ったかを設計者に尋ねて控えておく。
- 判定に関する書類の名称、日付、番号を、設計者や施工業者から書面でもらって保管する。
- 公示の方法や引継ぎの手続などの詳細は条文の本文にはないので、必要なときは都道府県の建築の窓口で確かめる。
- 判定の手続で分からないことは、建築の窓口に問い合わせる。
- 建築の話と消防の話は別の制度なので、両方の窓口へ確かめる。
建築の窓口と所轄消防署に、それぞれ確かめておきましょう。
委任の決まりは分かりました。
現場では、何から確かめればよいですか。
判定を行った機関と書類の日付を、設計者に確認して控えておきましょう。
消防の基準は、所轄消防署に別に確かめます。
よくある質問
まとめ
判定の委任の仕組みがよく分かりました。
判定を行った機関を、設計者に確認します!
建築の判定と消防の基準は別なので、両方を確かめておくと安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第十八条の二・第七十七条の三十五の八・第七十七条の三十五の二十・第七十七条の三十五の二十一(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。判定の委任の運用は都道府県と建築の窓口ごとに確認が必要な場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





