建物の防火区画は、完成した瞬間に役目を果たしているとは限りません。
消火栓やスプリンクラーとは違い、防火区画が基準を満たしているかどうかは消防の検査では確認されません。
建築基準法施行令第十三条は、防火区画を含む避難施設等ごとに、判定する側を分けて定めています。
防火区画が使用制限から除かれるかどうかは、建築基準法施行令自身の基準に適合しているかで決まります。
消防の検査には合格したので、防火区画の工事も終わったと思っていました。
図面どおりに壁は全部立っているはずなんですが。
実はそこが誤解しやすいところです。
防火区画は消防の検査対象ではなく建築基準法施行令自身の基準で見られます。
消火栓やスプリンクラーとは扱いが違うということですか。
そうです。
避難施設等の中でも、防火区画は建築側だけで判定される項目です。
- 建築基準法施行令第十三条は、防火区画を避難施設等の一つとして定めています
- 消火設備(スプリンクラー等)だけは消防法施行令第十二条から第十五条までの基準が判定の物差しになります
- 防火区画は、建築基準法施行令第百十二条等、建築側自身の基準に適合しているかで判定されます
- 消防の検査に合格しても、それは防火区画の完成を意味しません
- 検査済証の交付は、防火区画を含むすべての避難施設等が基準に適合して初めて受けられます
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目次
工事が終わった防火区画はなぜすぐに完成したと言えないのか

建築基準法は、防火区画を含む一群の工事を特別に扱っています。
条文は防火区画を、廊下や階段などの避難施設、消火栓やスプリンクラーなどの消火設備と並べて同じ条文の中に挙げています。
つまり防火区画の工事がある建物は、検査済証の交付を受けるまで使用してはならないという制限がかかります。
壁が立ち上がって見た目が完成していても、この検査済証が出ていなければ工事は終わっていない扱いです。
自分の建物に防火区画の工事が含まれているかどうかを、まず設計図書で確認しておくと段取りが立てやすくなります。
壁が立って防火戸も付いているので、もう終わりだと思っていました。
見た目だけでは判断できません。
検査済証が出て初めて工事完了という扱いになります。
施行令第十三条が定める防火区画とはどの区画を指すのか

条文を確認すると、対象になる区画の根拠条文まで特定できます。
第百十二条には、床面積で建物を区切る区画、階段や昇降路を囲う区画、用途が違う部分を分ける区画など、いくつもの区画の方法が定められています。
たとえば延べ面積が千五百平方メートルを超える建物は、原則として千五百平方メートル以内ごとに準耐火構造の床や壁、特定防火設備で区画しなければなりません。
地下街の各構えが接する地下道の区画(第百二十八条の三)も同じ号に含まれています。
自分の建物のどの壁や戸が防火区画に当たるのかは、確認申請時の図書に明記されているので、そこで具体的な範囲を確認してください。
防火区画といっても、いろいろな種類があるのですね。
はい。
すべて第百十二条という同じ条文に定められています。
なぜ防火区画は消防法ではなく建築基準法施行令自身の基準で判定されるのか

条文の括弧書きに、除かれる条件が品目ごとに書き分けられています。
消火設備(スプリンクラー等)だけは消防法施行令第十二条から第十五条までの技術的基準への適合が除外の条件になっています。
一方で防火区画は第百十二条、非常用の昇降機は第百二十九条の十三の三というように、それ以外の品目はすべて建築基準法施行令自身の条文が条件になっています。
つまり防火区画が基準を満たしているかどうかを判断するのは、消防長や消防署長ではなく建築主事等の役目です。
消防用設備業者に防火区画まで一緒に見てもらえると思い込まず、建築側の設計者や施工者に確認を取っておくことが実務上の対策になります。
消防用設備の点検業者さんに、防火区画も一緒に見てもらえばよいと思っていました。
防火区画は建築側の設計者や施工者に確認する範囲です。
点検業者は消防用設備等が専門です。
消防用設備の検査に合格すれば防火区画も終わっていると思っていないか

しかし消防の検査が見ている範囲は、防火区画には及びません。
消防長または消防署長が確認するのは、スプリンクラーや自動火災報知設備といった消防用設備等が技術基準に適合しているかであって、防火区画の壁や防火戸そのものではありません。
配管の貫通部の処理を後回しにしたまま防火区画の壁を仕上げても、消防の検査自体には通ってしまうことがあります。
その状態では建築基準法施行令第百十二条の基準に適合しておらず、検査済証はまだ交付されません。
消防の検査結果だけで安心せず、防火区画の完成は別に建築側へ確認する必要があります。
消防の検査に通ったので、防火区画の貫通部処理もついでに確認済みだと思っていました。
そこが今回の落とし穴です。
貫通部の処理は建築側の検査で別に確認されます。
引渡し前に防火区画について何を確認しておけばよいか

次の点を確認しておくと見落としを防げます。
- 設計図書のとおりに防火区画の壁や防火戸が連続して設けられているか
- 配管や配線が防火区画を貫通する部分の耐火措置がすべて完了しているか
- 特定防火設備の建具が正しい仕様で設置され、閉鎖に支障がないか
- 建築主事等への完了検査の申請を期限内に済ませているか
建築基準法上の完了検査は、工事が完了した日から四日以内に建築主事等へ申請しなければなりません。
消防用設備等の届出も設置後四日以内という別の期限があるため、二つの期限を同時に管理しておくことが実務上の対策になります。
発注段階で、防火区画の完成確認と完了検査の申請日を工程表に組み込んでおくと安心です。
貫通部の処理まで、自分たちで確認する必要があるとは思いませんでした。
だからこそ引渡し前のチェックリストに項目として入れておくのが確実です。
よくある質問
まとめ
防火区画は建築側の基準で見られると分かりました。
引渡し前に設計者へ確認します。
消防と建築、見ている場所が違います。
両方の完成をそれぞれ確かめれば大きく外しません。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第七条の六
- 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第十三条・第百十二条
- 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第十七条の三の二
- 消防法施行令(昭和三十六年政令第三十七号)第十二条から第十五条まで
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の建物での運用は所轄の特定行政庁や消防署の判断によります。具体的な工事や届出については、事前に所轄行政庁と所轄消防署の両方にご確認ください。





