防火管理者は、地域の防災マップは市町村が勝手に作って配っているだけだと思っていませんか。
実は災害対策基本法に、市町村長が住民等へ周知の措置を講ずるよう努めなければならないという規定があります。
周知の方法も、印刷物の配布とインターネットでの公開という2つの手段が施行規則で具体的に定められています。
実はこの防災マップ、津波防災地域づくり法などに基づく地図がすでにあれば、あらためて作り直す必要はないと通知が明記しています。
防災マップって、市町村が勝手に作っているだけのものですよね。
実は市町村長の努力義務として法律に位置付けられているんです。
うちの施設の近くにも、配らないといけないんですか。
2つの周知方法が施行規則で決まっています。
順番に見ていきましょう。
この記事の結論
- 市町村長は災害対策基本法第49条の9により、居住者等への周知の措置を講ずるよう努めなければなりません。
- 周知の方法は、施行規則第1条の8が定める印刷物の配布とインターネット等での提供の2つです。
- 津波防災地域づくり法・水防法・土砂災害警戒区域法などに基づく既存の防災マップがあれば、重複して作り直す必要はありません。
- 記載事項には、指定緊急避難場所の所在地や避難路その他の避難経路に関する事項も含まれます。
- 作成過程でバリアフリー化が必要な避難経路が確認された場合は、所要の措置を講じることが求められます。
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なぜ改めて住民への周知が法律で義務付けられたのか
防災マップの周知は、なぜわざわざ法律の条文にまで書き込まれたのでしょうか。
まずは規定が設けられた経緯を確認します。
(災害対策基本法第49条の9)市町村長は、居住者等の円滑な避難のための立退きに資するよう、内閣府令で定めるところにより、災害に関する情報の伝達方法、指定緊急避難場所及び避難路その他の避難経路に関する事項その他円滑な避難のための立退きを確保する上で必要な事項を居住者等に周知させるため、これらの事項を記載した印刷物の配布その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(災害対策基本法等(地区防災計画、指定緊急避難場所及び指定避難所関連事項)の運用について 平成26年3月26日 府政防第369号・消防災第126号)災害の危険が及ぶことが想定される地域や指定緊急避難場所の所在地、避難経路、避難情報の入手・伝達方法等の災害に関する情報をあらかじめ周知しておくことは、発災時に住民等が円滑に避難を行う上で特に重要である。このため、各市町村において、想定している災害の概要や当該災害の危険が及ぶことが想定される地域、指定緊急避難場所の所在地等、住民等が円滑に避難を行う上で必要となる情報を記載した防災マップ等の作成を一層推進することとしたものである。
指定緊急避難場所の所在地や避難経路をあらかじめ知っておくことは、発災時に円滑に避難するための土台になります。
このため市町村長には、
災害に関する情報の伝達方法や避難路に関する事項を居住者等へ周知させる努力義務が課されています。
努力義務ではありますが、具体的な措置の内容は施行規則で2つの方法に整理されています。
次は、その2つの方法を確認します。
うちの周りにどんな災害の危険があるか、正直よく知りません。
防災マップが、その情報をまとめる役割を持っています。
次は具体的な方法を見ていきましょう。
周知はどんな方法で行うことになっているのか
2つの方法は、いずれも施行規則が具体的に定めています。
条文を確認します。
(災害対策基本法施行規則第1条の8)法第四十九条の九の居住者等に周知させるための必要な措置は、次に掲げるものとする。一 異常な現象が発生した場合において人の生命又は身体に危険が及ぶおそれがあると認められる土地の区域を表示した図面に法第四十九条の九に規定する事項を記載したものを、印刷物の配布その他の適切な方法により、各世帯に提供すること。二 前号の図面に表示した事項及び記載した事項に掲げる情報を、インターネットの利用その他の適切な方法により、居住者等がその提供を受けることができる状態に置くこと。
(同通知 第四 2)上記①及び②の方法により、円滑な避難の確保を図る上で必要な事項について住民等への周知が図られるよう、各市町村において適切に対応されたい。
1つ目は、危険な区域を示した図面を各世帯に配る印刷物の配布です。
2つ目は、同じ内容の情報を
インターネットの利用その他の適切な方法で確認できる状態に置くことです。
どちらか一方ではなく、
両方の方法で周知を図ることが求められています。
次は、この防災マップを他の法律の分と重複して作り直す必要があるかを確認します。
いいえ、インターネットでも確認できる状態にする必要があります。
次は重複整備の話です。
津波防災地域づくり法などの防災マップと重複して作り直す必要はあるのか
防災マップと似た地図は、他の法律にもいくつも存在します。
通知の記載を確認します。
(同通知 第四 1)なお、津波防災地域づくりに関する法律、水防法及び土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律等の他の法律に基づき津波、洪水、崖崩れ等の災害に係る防災マップや、各地方公共団体において作成されている火災による延焼危険度を示す地図、地震による建物倒壊や液状化などに係る防災マップの作成等により既に住民等に対する周知がされている場合は、これらに基づく防災マップ等を活用することとしても構わない。
他の法律に基づく防災マップがすでにあるなら、それをそのまま活用してよいとされています。
対象になるのは、
津波防災地域づくりに関する法律、水防法、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律などに基づく津波・洪水・崖崩れ等のマップです。
各市町村が独自に作成している延焼危険度や液状化の地図も、この活用対象に含まれます。
つまり防災マップは一から作り直す義務ではなく、既存の資料を使い回してよい柔軟な規定だと分かります。
うちの市は、すでに洪水のハザードマップを配っていました。
それならあらためて作り直す必要はありません。
次は作成時の留意点です。
作成にあたって市町村はどんな点に留意すべきなのか
防災マップは配って終わりではなく、作成の過程そのものにも留意点があります。
通知の記載を確認します。
(同通知 第四 3)本規定の適切な運用を図るためには、市町村と住民等が一体となって防災マップ等の作成を行うことにより、指定避難所と指定緊急避難場所の違いや、災害ごとに避難すべき場所が異なることについての理解を深め、避難についての住民の意識の向上を図ること、防災訓練や防災教育等を通じて、普段から住民等に対し制度の趣旨と緊急避難場所等の所在地情報、避難方法等の周知徹底を行うことなどが重要であり、各市町村において適切な対応を図られたい。また、防災マップの作成過程等においてバリアフリー化が必要な避難経路等が確認された場合には、所要の措置を講じられたい。
防災マップは配って終わりではなく、住民の意識向上まで見据えて作ることが求められています。
具体的には、防災訓練や防災教育を通じて
指定緊急避難場所と指定避難所の違いを理解してもらうことが重要とされています。
作成の過程で
バリアフリー化が必要な避難経路が見つかった場合は、必要な措置を講じることも求められます。
これらは市町村の努力義務ですが、建物側の消防計画にも直結する視点です。
バリアフリーの視点まで求められているとは、知りませんでした。
避難経路の点検にもつながる視点です。
最後に実務での確認点をまとめます。
防火管理者は防災マップとどう向き合えばよいのか
最後に、防火管理者の視点から防災マップとどう向き合うべきかを整理します。
条文が挙げる記載事項とあわせて確認します。
(災害対策基本法第49条の9)指定緊急避難場所及び避難路その他の避難経路に関する事項その他円滑な避難のための立退きを確保する上で必要な事項を居住者等に周知させる。
自分の施設周辺の防災マップを取り寄せ、
指定緊急避難場所や避難経路を消防計画に反映しているか確認することが実務の出発点になります。
市町村の周知義務と、建物側の消防計画は別々の書類ですが、内容がずれていると発災時の避難行動が混乱します。
防災訓練の際に、配布された防災マップと自施設の避難計画を突き合わせておくとよいでしょう。
うちの避難計画、防災マップと突き合わせたことがなかったです。
次の防災訓練のときに確認してみましょう。
よくある質問もあわせてご確認ください。
よくある質問
Q防災マップの作成は義務ですか、それとも努力義務ですか。
A努力義務です。災害対策基本法第49条の9は「講ずるよう努めなければならない」と規定しており、市町村長の努力義務として位置付けられています。
Q周知の方法はインターネットで公開するだけでもよいですか。
Aいいえ。施行規則第1条の8は印刷物の配布とインターネット等での提供の両方を必要な措置として挙げており、どちらか一方だけでは足りません。
Q洪水ハザードマップなど他の法律に基づく地図がすでにある場合はどうなりますか。
Aあらためて作り直す必要はありません。津波防災地域づくり法や水防法などに基づく既存の防災マップを活用することとしても構わないとされています。
Q防災マップの作成でバリアフリーの視点は必要ですか。
A必要です。通知は作成過程でバリアフリー化が必要な避難経路等が確認された場合は所要の措置を講じるよう求めています。
まとめ
✔市町村長は、災害対策基本法第49条の9により居住者等への周知の措置を講ずるよう努めなければなりません。
✔周知の方法は、施行規則第1条の8が定める印刷物の配布とインターネット等での提供の2つです。
✔記載事項には指定緊急避難場所の所在地や避難路その他の避難経路に関する事項が含まれます。
✔津波防災地域づくり法・水防法・土砂災害警戒区域法などに基づく既存の防災マップがあれば、重複して作り直す必要はありません。
✔各地方公共団体が独自に作成する延焼危険度や液状化の地図も活用対象に含まれます。
✔作成過程でバリアフリー化が必要な避難経路が確認された場合は、所要の措置を講じることが求められます。
✔防火管理者は、配布された防災マップと自施設の消防計画の内容を突き合わせておくことが実務の出発点になります。
それが一番の備えになります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
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この記事を書いた人
㈱防災屋Web編集部
元消防士、行政書士、高専卒など
防火管理者には「セルフ選任」と「プロ代行」の2択があることをもっと多くの方々に知ってもらい、世の中の防火管理レベルをもっと上げていきたい。
0にはできない火災リスクとの向き合い方を伝え、救える命を増やし、悲しみの総量を減らしたい。
後悔してからでは遅すぎる火災予防に、Webの力で取り組む㈱防災屋の編集部です。
監修・編集者
青木 俊輔
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
主な活動
参考・出典
- 災害対策基本法等(地区防災計画、指定緊急避難場所及び指定避難所関連事項)の運用について(平成26年3月26日 府政防第369号・消防災第126号)
- 災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第49条の9
- 災害対策基本法施行規則(昭和37年総理府令第52号)第1条の8
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。