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指定避難所はなぜホテルや旅館まで対象になりうるのか|令第20条の6が定める5つの指定基準を解説

指定避難所はホテルや旅館も対象になりうるのかを解説する記事のアイキャッチ

防火管理者は、自分の施設が学校の体育館でも公民館でもないから、指定避難所にはなれないと思っていませんか。
指定避難所として指定できる施設は、令第20条の6が定める規模・構造・立地・交通の条件を満たせば足ります。
主として要配慮者を受け入れる施設だけは、福祉避難所としての追加基準も加わります。
実はこの基準、公共施設に限らずホテルや旅館などの民間施設まで対象に含まれることは、意外と知られていません。

うちは体育館でも公民館でもないので、指定避難所には対象外ですよね。

実は公共施設に限らず、ホテルや旅館のような民間施設も対象に含まれるんです。

じゃあ、指定されるかどうかは何で決まるんですか。

規模・構造・立地・交通の4条件を、順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 指定避難所は、令第20条の6が定める規模・構造・立地・交通の4条件を満たす公共施設その他の施設が対象になります。
  • 対象は学校の体育館や公民館に限らず、ホテルや旅館などの民間施設も含まれると解されています。
  • 主として要配慮者を滞在させる施設は、福祉避難所に関する指定基準(令第20条の6第5号)も満たす必要があります。
  • 公園や広場のような構造物ではない単なる場所は、指定避難所の対象になりません。
  • 指定緊急避難場所と指定避難所は相互に兼ねることができます。

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指定避難所の指定基準を示す図解(規模・構造・立地・交通・福祉避難所の5条件)

指定避難所はなぜ指定緊急避難場所と別に定められたのか

学校の体育館のような公共施設の建物と、内部に間仕切りを並べて生活空間を作った様子を示すイラスト

指定避難所は、指定緊急避難場所とは別の制度として法律に位置付けられています。
まず、なぜ2つの制度に分けられたのかを確認します。

(災害対策基本法第49条の7第1項)市町村長は、想定される災害の状況、人口の状況その他の状況を勘案し、災害が発生した場合における適切な避難所の確保を図るため、政令で定める基準に適合する公共施設その他の施設を指定避難所として指定しなければならない。
(災害対策基本法等(地区防災計画、指定緊急避難場所及び指定避難所関連事項)の運用について 平成26年3月26日 府政防第369号・消防災第126号)法第49条の7第1項において、被災者が一定期間滞在する場としての避難所については、円滑な救援活動を実施し、また一定の生活環境を確保する観点から、「政令で定める基準に適合する公共施設その他の施設」を指定避難所として指定することとしたものである。(略)指定避難所は、一定の生活環境が確保された避難所の量的な確保を図り、発災時に迅速に避難者に提供することができるようあらかじめ指定することとしているものである。

指定緊急避難場所は「一時的に逃げ込む場所」、指定避難所は「一定期間生活する場所」という役割の違いがあります。
洪水や津波などから緊急的に身を守るだけの場所と、被災後の生活環境を確保する場所とでは、求められる設備も期間も異なります。
このため指定緊急避難場所(法第49条の4)と指定避難所(法第49条の7)は別の条文として整理されています。
指定避難所には、量的な確保を図りあらかじめ指定しておくことで、発災時に迅速に提供できるようにする狙いがあります。
次は、指定避難所として指定できる施設の範囲を見ていきます。

うちの施設は避難場所とは関係ないと思っていました。

避難所は生活の場という点が大きな違いです。
次は対象になる施設を見ていきましょう。

指定避難所の対象になる施設にはどんな範囲が含まれるのか

単なる公園には禁止マークが付き、窓の並ぶホテルのような建物には許可マークが付いているイラスト

「公共施設その他の施設」という条文の言葉には、思ったより広い範囲が含まれています。
通達が示す具体的な線引きを確認します。

(同通知 第三 1 ⑥その他)ここでいう「公共施設」としては、学校の体育館や公民館などの施設を想定しているところであり、避難生活を一定期間送るのには適切ではない公園や広場など、構造物、建築物ではない単なる場所はここでいう公共施設には含まれない。(略)また、「その他の施設」としては、公共施設を含め、広く施設一般を想定し、規定しているものである。特に、被災者が避難生活を送るに当たって、その一定の生活環境を確保する観点から、ここにはホテルや旅館等の民間施設も含まれるものと解される。

「公共施設」は学校の体育館や公民館などを想定しており、公園や広場のような単なる場所は含まれません。
一方で「その他の施設」には公共施設以外も広く含まれ、ホテルや旅館等の民間施設も対象になり得ると解されています。
民間施設を指定するときは、当該施設の管理者の同意を得る法定の手続を経る必要があります。
公園や広場は避難生活を一定期間送るのに適さない「単なる場所」として除外される点に注意が必要です。
次は、指定を受けるために施設が満たすべき4つの条件を見ていきます。

うちのホテル、避難所になれるって考えたことなかったです。

民間施設でも指定は可能です。
次は具体的な条件を見ていきましょう。

指定避難所に求められる4つの条件とはなにか

出入口が大きく開いた建物と、道路を通ってその建物に近づくトラックを示すイラスト

指定避難所として指定されるには、令第20条の6が定める4つの条件を満たす必要があります。
条文と通達の解説を確認します。

(災害対策基本法施行令第20条の6第1号〜第4号)一 避難のための立退きを行った居住者等又は被災者を滞在させるために必要かつ適切な規模のものであること。二 速やかに、被災者等を受け入れ、又は生活関連物資を被災者等に配布することが可能な構造又は設備を有するものであること。三 想定される災害による影響が比較的少ない場所にあるものであること。四 車両その他の運搬手段による輸送が比較的容易な場所にあるものであること。
(同通知 第三 1 ①〜④)指定避難所の適切な規模については、地域の状況によって異なることから、具体的な基準は設けていない。(略)多数の被災者等の出入りに適した出入口などを有していることや多数の被災者等の受入れに必要となるトイレ、水道等の設備を有していることなどを想定しており、「又は」と規定していることからも明らかなように、必ずしもこれらの構造や設備を全て具備している必要はない。(略)具体的には、洪水の浸水想定区域や土砂災害警戒区域、土砂災害特別警戒区域、津波災害警戒区域など、災害が発生するおそれがある区域内に立地している施設を極力避けて指定することが望ましい。

規模条件は具体的な数値基準を設けず、想定される被災者数に対して十分な面積があるかで判断します。
構造条件は「又は」という規定のとおり、出入口・トイレ・水道のいずれかを備えていれば足り、全部を揃える必要はありません。
立地条件では、浸水想定区域や土砂災害警戒区域など災害の影響を受けやすい区域を極力避けることが望ましいとされています。
交通条件は、車両による物資の供給や輸送が比較的容易な場所であることを求めています。
次は、見落としやすい福祉避難所に関する条件を見ていきます。

全部の設備を揃えないと指定してもらえないんですか。

いいえ、「又は」なので一部で足ります。
次は福祉避難所の話です。

福祉避難所に関する指定基準を見落としていないか

建物の入口に向かうスロープと、丸テーブルに椅子が置かれた相談スペースを示すイラスト

主として要配慮者を受け入れる施設には、規模・構造・立地・交通の条件に加えてもう1つの基準が上乗せされます。
条文と通達の解説を確認します。

(災害対策基本法施行令第20条の6第5号)主として高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者を滞在させることが想定されるものにあっては、要配慮者の円滑な利用の確保、要配慮者が相談し、又は助言その他の支援を受けることができる体制の整備その他の要配慮者の良好な生活環境の確保に資する事項について内閣府令で定める基準に適合するものであること。(災害対策基本法施行規則第1条の9)一 要配慮者の円滑な利用を確保するための措置が講じられていること。二 災害が発生した場合において要配慮者が相談し、又は助言その他の支援を受けることができる体制が整備されること。三 災害が発生した場合において主として要配慮者を滞在させるために必要な居室が可能な限り確保されること。
(同通知 第三 1 ⑤)一般の避難所では生活することが困難な障害者等の要配慮者が、避難所での生活において特別な配慮が受けられるなど、要配慮者の状態に応じて安心して生活ができる体制を整備した老人福祉センターや障害福祉施設、特別支援学校等の福祉避難所をあらかじめ指定しておくことが望ましい。(略)このため、いわゆる「福祉避難所」に関する指定基準として、要配慮者の円滑な利用の確保、要配慮者が相談し、又は助言その他の支援を受けることができる体制の整備その他の要配慮者の良好な生活環境の確保に資する事項について内閣府令で定める基準に適合することを求めるものである。

主として要配慮者を受け入れる施設は、規模・構造・立地・交通の条件に加えて福祉避難所としての基準も満たす必要があります。
具体的にはバリアフリー化による円滑な利用の確保、生活相談員等による相談・助言体制の整備、要配慮者を滞在させるための居室の確保という3要件です。
老人福祉センターや障害福祉施設、特別支援学校などが、福祉避難所としてあらかじめ指定される施設の例に挙げられています。
一般の指定避難所として指定しただけでは、この福祉避難所の基準までは自動的に満たされません。
次は、指定を受けたあとに確認すべき手続を見ていきます。

福祉避難所は普通の指定避難所と何が違うんですか。

要配慮者向けの相談体制などが上乗せされます。
最後に手続を確認しましょう。

明日から何を確認すればよいのか

建物の壁に2枚の標識が並んで掲げられ、窓口カウンターに書類とスタンプが置かれた様子を示すイラスト

最後に、指定を受けた施設・受けようとする施設が確認すべき手順を整理します。
指定緊急避難場所との関係も確認します。

(災害対策基本法第49条の8)指定緊急避難場所と指定避難所とは、相互に兼ねることができる。(第49条の7第2項)第四十九条の四第二項及び第三項並びに前二条の規定は、指定避難所について準用する。
(同通知)指定緊急避難場所として指定している施設と指定避難所として指定しようとする施設が同一の施設であり、かつ、指定緊急避難場所の基準及び指定避難所の基準の両方に適合している場合には、両者を兼ねることができることとしているので、この点留意されたい。

指定緊急避難場所と指定避難所は別の制度ですが、両方の基準を満たせば同じ施設で兼ねることができます。
指定避難所の指定・変更・取消しにも、指定緊急避難場所と同じく管理者の同意と都道府県知事への通知・公示の手続が準用されます。
民間施設を指定するときは、管理者の同意取得をあらかじめ進めておく必要があります。
自分の施設がどの条件(規模・構造・立地・交通・福祉避難所)を満たしているかを、地域防災計画とあわせて確認しておくことが実務の出発点になります。

うちの施設、両方の基準を満たしていれば一つで済むということですね。

その通りです。
よくある質問もあわせてご確認ください。

よくある質問

Q公民館や体育館以外の施設は指定避難所になれないのですか?
Aいいえ。「その他の施設」には公共施設以外も広く含まれ、被災者の生活環境確保の観点からホテルや旅館等の民間施設も対象になり得ると解されています。
Q規模条件には具体的な面積の数値基準がありますか?
Aいいえ。地域の状況によって異なるため具体的な基準は設けられておらず、想定される被災者数に対して十分な面積を有することが求められます。
Q福祉避難所はどんな施設が対象になりますか?
A老人福祉センターや障害福祉施設、特別支援学校等、要配慮者が安心して生活できる体制を整備した施設があらかじめ福祉避難所として指定されることが望ましいとされています。
Q指定緊急避難場所と指定避難所は別々の建物にしないといけませんか?
Aいいえ。災害対策基本法第49条の8により、両方の基準に適合していれば同じ施設で兼ねることができます。

まとめ

✔指定避難所は、災害対策基本法施行令第20条の6が定める規模・構造・立地・交通の4条件を満たす公共施設その他の施設が対象になります。
✔対象施設は学校の体育館や公民館に限らず、ホテルや旅館等の民間施設も含まれると解されています。
✔公園や広場のような構造物ではない単なる場所は、指定避難所には含まれません。
✔規模条件・構造条件は具体的な数値基準を設けず、想定される被災者数や「又は」規定に応じた柔軟な判断がされます。
✔立地条件では浸水想定区域や土砂災害警戒区域を極力避けて指定することが望ましいとされています。
✔主として要配慮者を受け入れる施設は、福祉避難所に関する指定基準(施行規則第1条の9の3要件)も満たす必要があります。
✔指定緊急避難場所と指定避難所は相互に兼ねることができ、その際も管理者の同意と知事への通知・公示の手続が必要です。

うちの施設がどの条件に当てはまるか、確認してみます。

それが一番の備えになります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 災害対策基本法等(地区防災計画、指定緊急避難場所及び指定避難所関連事項)の運用について(平成26年3月26日 府政防第369号・消防災第126号)
  • 災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第49条の7・第49条の8
  • 災害対策基本法施行令(昭和37年政令第288号)第20条の6
  • 災害対策基本法施行規則(昭和37年総理府令第52号)第1条の9

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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