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食品工場や業務用厨房のガス設備はなぜ換気と点検が欠かせないのか|経産省要請を受けた消防庁のCO中毒事故防止策を解説

食品工場や業務用厨房の換気と点検でCO中毒事故を防ぐイメージ

食品工場や飲食店の厨房では、ガスコンロや業務用のゆで麺機、ガス炉などの火気設備を毎日使います。
換気を怠ったまま使い続けると、不完全燃焼で一酸化炭素が発生し、重大な中毒事故につながることがあります。
経済産業省からの要請を受け、消防庁予防課は食品工場や業務用厨房施設に向けた注意喚起を全国の消防機関に出しました。
この記事では、どんな事故が起きているのか、現場でなにを確認すればよいのかを解説します。

厨房の換気扇は、匂いを消すためのものだと思っていました。

実は一酸化炭素中毒を防ぐための大事な設備です。
経済産業省の要請を受けて、消防庁が注意喚起を出しました。

うちの厨房でも、事故が起きる可能性があるのですか。

はい、実際に起きています。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 2024年、食品工場や業務用厨房施設で一酸化炭素中毒事故が10件発生し、死者1名・症者19名が出ました。
  • 経済産業省の要請を受け、消防庁予防課は令和7年10月の事務連絡で、立入検査等の機会を捉えた注意喚起を消防機関に求めています。
  • 対象はガスコンロやゆで麺機、瞬間湯沸器など、液化石油ガスや都市ガスを使う消費設備です。
  • 停電中にやむを得ずガス消費設備を使う場合は、換気扇が動かないため窓を開けて換気する必要があります。
  • グリスフィルターや脱臭フィルターの目詰まりは換気量の低下につながるため、定期的な清掃や交換が欠かせません。

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食品工場や厨房のガス機器のCO中毒事故を防ぐ4つの対策をまとめた図解

食品工場や業務用厨房のガス機器はなぜCO中毒事故を招くのか

業務用のガスコンロと壁の換気扇を並べた図

食品工場や厨房の火気設備は、毎日何時間も稼働します。
換気が不十分なまま使い続けると、気づかないうちに一酸化炭素がたまります。

事務連絡「食品工場及び業務用厨房施設等における一酸化炭素中毒事故の防止について」(令和7年10月24日、消防庁予防課) 近年、食品工場及び業務用厨房施設等において液化石油ガス及び都市ガス(以下「ガス」という。)の消費設備による一酸化炭素(以下「CO」という。)中毒事故が発生しています。2024年は10件(死者1名、症者19名)発生しています。同年7月には、大阪府の業務用厨房において、業務用麺ゆで器と瞬間湯沸器の使用中に従業員2名、消費者2名(計4名)がCO中毒となる事故が発生し、同年12月には、鹿児島県の工房において、LPガス炉の使用中に従業員1名がCO中毒により死亡する事故が発生しました。これらの事故原因の多くは、機器の経年劣化や換気が不十分なため、消費設備が不完全燃焼を起こし、COが発生したものです。

原因の多くは機器の経年劣化と換気不足です。
2024年は食品工場や業務用厨房施設で10件のCO中毒事故が発生し、死者1名・症者19名が出ました。
大阪府の業務用厨房では麺ゆで器と瞬間湯沸器の使用中に、従業員と消費者計4名がCO中毒となりました。
鹿児島県の工房では、LPガス炉の使用中に従業員1名がCO中毒で死亡しています。
どちらも機器の経年劣化や換気不足で不完全燃焼が起き、室内にCOがたまったことが原因でした。

こんな身近な厨房でも、死亡事故になるのですね。

経年劣化と換気不足が重なると起きます。
次はどんな施設が対象になるのか見てみましょう。

どの食品工場やどの厨房のガス設備が対象になるのか

ガス配管のある食品工場の建物と点検用のクリップボードを並べた図

対象になるのは、食品工場や業務用厨房施設が使う液化石油ガスと都市ガスの消費設備です。
消防機関は立入検査等の機会を捉えて周知するよう求められています。

事務連絡「食品工場及び業務用厨房施設等における一酸化炭素中毒事故の防止について」(令和7年10月24日、消防庁予防課) 標記について、経済産業省産業保安・安全グループから別添により要請がありました。つきましては、立入検査等の機会を捉え、食品工場や業務用厨房施設が存する事業所に対し、別添の要請文書を参考にして、ガス消費設備使用中の換気や使用前後の点検等による一酸化炭素中毒事故防止について注意喚起を行うようご配慮願います。各都道府県消防防災主管課におかれましては、貴都道府県内の市町村(消防の事務を処理する一部事務組合等を含む)に対し、この旨周知していただきますようお願いします。

対象は新設や特定の規模に限りません。
食品工場や業務用厨房施設でガスを使う事業所はすべて注意喚起の対象です。
消防本部や消防署は、立入検査等の機会を捉えて、事業所に換気や点検を呼びかけます。
各都道府県の消防防災主管課も、管内の市町村や一部事務組合にこの内容を周知するよう求められています。
自分の厨房や工場が立入検査の対象になったときは、この注意喚起が話題に出ることがあります。

立入検査のときに、この話が出るかもしれないのですね。

はい、資料を見せてもらえることもあります。
次は具体的になにを求められているのか見ていきます。

消防庁はなにを注意喚起しているのか

作動中の換気扇と壁の点検用ゲージを並べた図

経済産業省の要請文書には、ガス消費設備の使用者と管理者が守るべき項目が示されています。
中心になるのは換気と日常点検です。

「食品工場及び業務用厨房施設等における一酸化炭素中毒事故の防止について」(令和7年10月10日、経済産業省産業保安・安全グループ) 1.ガスの消費設備の使用中は必ず換気(給気及び排気の両方)を行うこと。特に夏期、冬期等冷暖房機を使用する際に、長時間室内を閉め切りの状態にすることが想定されるため、換気扇や換気装置によって十分に換気が行われているか、必ず確認すること。なお、現場において換気し忘れを防止するための工夫を実践すること。
同要請文書 2.ガスの消費設備の使用者及び管理者は、ガスの消費設備の使用開始時及び使用終了時にガスの消費設備及び換気設備の異常の有無を点検するほか、1日に1回以上、当該設備の作動状況について点検し、異常のあるときは、当該設備の使用中止、補修その他の危険を防止する措置を講じること。

換気と点検の2つが柱です。
使用中は給気と排気の両方を行い、換気扇や換気装置が十分に働いているか確認します。
特に夏や冬に冷暖房を使うと室内を閉め切りがちになるため、注意が必要です。
使用開始時と終了時、さらに1日に1回以上は設備の作動状況を点検し、異常があれば使用を中止します。
この2つを徹底するだけでも、不完全燃焼によるCO中毒の多くは防げます。

換気扇を回していても、確認までは忘れがちです。

現場で換気し忘れを防ぐ工夫が大切です。
次は見落としやすい落とし穴を確認します。

ガス消費設備の点検で見落としやすいのはどこか

停電を示すコンセントと目詰まりしたグリスフィルターを並べた図

普段の換気と点検だけでは防ぎきれない場面もあります。
停電や災害のあとと、フィルターの汚れには特に注意が必要です。

「食品工場及び業務用厨房施設等における一酸化炭素中毒事故の防止について」(令和7年10月10日、経済産業省産業保安・安全グループ) 3.ガスの消費設備及び換気設備は、その使用に際して取扱説明書を十分に読み、適切に使用すると共に、設備の作動状況の確認、ほこりや汚れの除去、フィルターの清掃等、換気不良やガスの不完全燃焼を防ぐための日常管理を行うこと。特に台風、地震、積雪等の自然災害後は当該設備の異常の有無を点検し、異常のあるときは、当該設備の使用中止、補修その他の危険を防止する措置を講じること。また、停電中は、換気扇及び給排気設備が作動しない場合があるので、停電中にやむを得ずガスの消費設備を使用する場合は、窓を開けて換気をする等の措置を講じること。更に、復電後は換気扇及び給排気設備が作動することを確実に確認すること。
同要請文書 4.排気ガス中に含まれる油脂等を有効に除去するために排気取入口に設置されるグリス除去装置(グリスフィルター)や悪臭防止のために排気ダクト内に設置される脱臭フィルター等は、使用し続けると油脂等が付着して目詰まりを起こし、十分な換気量が確保できなくなることから、当該フィルターの定期的な清掃又は交換を実施すること。

見落としやすいのは停電時とフィルターの状態です。
停電中は換気扇や給排気設備が動かないことがあるため、やむを得ず使うときは窓を開けて換気します。
台風や地震、積雪などの災害のあとも、復電後に換気扇が確実に作動するかまで確認が必要です。
グリスフィルターや脱臭フィルターは油脂で目詰まりしやすく、換気量が落ちていても気づきにくいところです。
定期的な清掃や交換を怠ると、見た目は普段どおりでも換気が効いていない状態になります。

停電のときこそガスを使いたくなるのに、危ないのですね。

換気扇が止まっていることに気づきにくいのが怖いところです。
最後に明日からの確認事項をまとめます。

明日からなにを確認すればよいのか

天井のCO警報器と教育用の冊子を並べた図

今日からできることは、フィルターの点検と警報器の検討、従業員への周知です。
どれも大きな費用をかけずに始められます。

「食品工場及び業務用厨房施設等における一酸化炭素中毒事故の防止について」(令和7年10月10日、経済産業省産業保安・安全グループ) 5.万一の不完全燃焼に備えて業務用換気警報器の設置を検討すること。
同要請文書 6.ガスの消費設備及び換気設備の正しい使用方法及び換気の重要性について、調理に従事する従業員(パート・アルバイト等を含む)への教育及び周知を実施すること。

まずフィルターと警報器の有無を確かめます。
グリスフィルターと脱臭フィルターの汚れ具合を点検します。
万一の不完全燃焼に備えて、業務用換気警報器の設置も検討します。
そのうえで、ガス消費設備と換気設備の正しい使い方を、パートやアルバイトを含む全従業員に周知します。
停電や災害のあとに換気扇の作動を確認する手順も、あらかじめ決めておくと安心です。

停電のあとは、換気扇の確認を忘れないようにします。

それができれば十分です。
最後によくある質問を確認しておきましょう。

よくある質問

Q一酸化炭素中毒事故は、どんな施設で起きやすいのですか?
A液化石油ガスや都市ガスを使う食品工場や業務用厨房施設で起きています。2024年は10件発生し、死者1名・症者19名が出ました。
Q換気扇を回していれば、CO中毒は防げますか?
A回しているだけでは不十分です。使用開始時と終了時、1日に1回以上の点検で異常の有無を確かめる必要があります。
Q停電中にガス消費設備を使ってもよいですか?
Aやむを得ず使う場合は窓を開けて換気する必要があります。換気扇や給排気設備は停電中に作動しないことがあるためです。
Qグリスフィルターはどれくらいの頻度で手入れが必要ですか?
A具体的な頻度は示されていませんが、油脂による目詰まりが換気量の低下につながるため、定期的な清掃や交換が必要です。

まとめ

✔根拠は経済産業省の要請を受けた消防庁予防課の事務連絡(令和7年10月24日)です。
✔2024年、食品工場や業務用厨房施設でCO中毒事故が10件発生し、死者1名・症者19名が出ました。
✔原因の多くは機器の経年劣化と換気不足による不完全燃焼です。
✔対象は液化石油ガスや都市ガスを使うガス消費設備全般です。
✔停電中にやむを得ず使うときは、窓を開けて換気する必要があります。
✔グリスフィルターや脱臭フィルターの目詰まりは定期的な清掃や交換で防ぎます。
✔まずはフィルターの点検と、換気警報器の設置検討から始めます。

さっそくフィルターの点検から始めます!

それがCO中毒事故をいちばん早く防ぐ一歩になります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 事務連絡「食品工場及び業務用厨房施設等における一酸化炭素中毒事故の防止について」(令和7年10月24日、消防庁予防課)
  • 「食品工場及び業務用厨房施設等における一酸化炭素中毒事故の防止について(要請)」(令和7年10月10日、経済産業省産業保安・安全グループ高圧ガス保安室・ガス安全室)
  • 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第4条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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