建築基準法第25条は、延べ面積の合計が1,000平方メートルを超える大規模な木造建築物等に、外壁・軒裏・屋根という3つの部位すべてで延焼を抑える性能を求めています。
古くからある大規模な木造建築物等の中には、建てた当時は適法でも、その後の基準の見直しによってこの規定に適合しなくなったものが少なくありません。
こうした「既存不適格建築物」が増築や改築をしようとすると、原則としては外壁・軒裏・屋根も含めて建物全体を現行基準に合わせる必要が生じます。
けれども一定の要件を満たせば、建築基準法施行令第137条の2の5により、この負担が一部緩和されます。
うちの倉庫は延べ面積が1,000平方メートルを超える木造で、外壁が今の基準には合っていないんです。
増築するなら、外壁も軒裏も屋根も全部やり直さないといけませんか。
いいえ、要件を満たせば外壁等を全部直さなくても増築できます。
建築基準法施行令第137条の2の5という緩和の規定があるんです。
緩和があるんですね、少し安心しました。
どんな建物のどんな増築が対象になるんでしょうか。
対象になるのは、延べ面積が1,000平方メートルを超える木造建築物等で外壁等の基準に適合していないものの増築や改築です。
この記事で、対象と要件を順番に確認していきましょう。
- 延べ面積が1,000平方メートルを超える大規模な木造建築物等も、要件を満たせば増築や改築ができます(建築基準法第86条の7第1項)。
- 対象となるのは、法第3条第2項により現行の第25条の規定の適用を受けない大規模木造建築物等です(施行令第137条の2の5)。
- 要件はただ一つ、増築・改築に係る部分の床面積の合計を基準時の延べ面積の20分の1以内に収めることです。
- あわせて、増築・改築に係る部分以外の外壁・軒裏・屋根における延焼の危険性を増大させないことも必要です。
- 第137条の2の4のような火熱遮断壁等による代替ルートは用意されておらず、満たすべき要件はこの一つだけです。
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目次
なぜ延べ面積が1,000平方メートルを超える木造建築物等に外壁等の性能が求められるのか

建築基準法第25条は、延べ面積の合計が1,000平方メートルを超える木造建築物等に、外壁・軒裏・屋根の3部位すべてで延焼を抑える性能を求めています。
第22条や第23条が特定行政庁の指定区域内に限って適用されるのに対して、第25条は区域の指定にかかわらず、延べ面積の規模だけで対象が決まります。
大規模な木造建築物等も、建てた当時はほとんどが適法でした。
基準そのものが見直されたり、増築で延べ面積が1,000平方メートルを超えたりすると、建てたときは適合していた外壁等が、その後の基準に適合しなくなることがあります。
これが建築基準法第3条第2項が定める「既存不適格建築物」で、そのまま使い続けること自体は認められています。
問題になるのは増築や改築をするときで、原則としては工事にあわせて外壁・軒裏・屋根も含む建物全体を現行の第25条の基準に適合させなければなりません。
延べ面積が1,000平方メートルを超える木造の建物で、外壁等が今の基準には合っていないんです。
自分の建物がそうなのか、どうやって分かりますか。
建築確認を取った当時の図面と、今の第25条の基準を照らし合わせれば分かります。
迷ったら特定行政庁や設計士に確認するのが確実です。
どんな建築物のどんな増改築が緩和の対象になるのか

対象になる建物と工事の範囲は、法律と政令の両方で決められています。
建築基準法第86条の7第1項は、第3条第2項により第25条など複数の規定の適用を受けない建築物について、政令で定める範囲内で増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替をする場合に、その規定を適用しないと定めています。
このうち外壁等に関する増築・改築の範囲を具体的に定めているのが、次の章で見る施行令第137条の2の5です。
この条項は延べ面積1,000平方メートル超の木造建築物等に限った規定で、それ以下の規模の建築物や、鉄骨造・コンクリート造など可燃材料を使わない建築物はもともと第25条の適用対象外のため、この緩和を使う場面もありません。
延べ面積1,000平方メートル超の木造建築物等が対象なんですね。
具体的にはどんな要件を満たせばいいんでしょうか。
要件はただ一つで、床面積の割合に関するものです。
次の章で条文を確認しましょう。
緩和を受けるにはどんな要件を満たす必要があるのか

施行令第137条の2の5は、面積割合に関する要件をただ一つ定めています。
増築・改築に係る部分の対象床面積の合計を、基準時の延べ面積の20分の1以内に収める必要があります。
あわせて、その増築・改築が、増築・改築に係る部分以外の外壁及び軒裏並びに屋根における延焼の危険性を増大させないものであることも求められます。
この要件を満たせば、増築・改築に係る部分以外の建物全体を現行の第25条基準に適合させる必要はありません。
条文には「いずれかに該当する」という選択肢の表現がなく、この一つの要件だけが定められています。
要件は面積の割合だけなんですね。
他の緩和規定とは何か違いがあるんでしょうか。
はい、混同しやすい点があります。
次の章で見落としやすいポイントを説明します。
実務で見落としやすいのはどこか

条項ごとに要件の作り方が異なるため、混同すると計画が狂うおそれがあります。
外壁関係の緩和(施行令第137条の2の4)には、火熱遮断壁等で区画する第一号のルートと、面積割合による第二号のルートという2つのルートのどちらかを満たせばよいという選択肢があります。
これに対して、大規模の木造建築物等の外壁等関係(施行令第137条の2の5)には、面積割合による要件しかありません。
「他の137条の2系と同じように、火熱遮断壁等で区画すれば面積を気にしなくてよい」と思い込むと、実際には用意されていない代替ルートを前提に計画してしまうおそれがあります。
さらに、対象が外壁だけでなく軒裏・屋根も含む3部位である点も、屋根だけを対象にする第137条の2の3や外壁だけを対象にする第137条の2の4と混同しやすいところです。
代替ルートは無いんですね。
対象が3部位というのも初めて知りました。
はい、条項ごとの違いに注意してください。
最後に実務での確認手順をまとめます。
増築や改築を計画するときは何を確認すればよいか

判断に迷う部分があれば、早めに専門家へ相談するのが安全です。
- 自分の建物が延べ面積の合計で1,000平方メートルを超える木造建築物等に当たるかを確認する
- 自分の建物が法第3条第2項の適用を受ける既存不適格に当たるかを確認する
- 増築・改築に係る部分の床面積の合計を試算し、基準時の延べ面積の20分の1以内に収まるかを確認する
- 増築・改築が、それ以外の部分の外壁・軒裏・屋根における延焼の危険性を増大させないかをあわせて確認する
- 第137条の2の4のような火熱遮断壁等による代替ルートは無いことを前提に計画する
- 面積割合を超える見込みの場合は、増築・改築に係る部分以外も含めた現行基準への適合を検討する
設計が固まってから要件を満たさないと分かると、計画の手戻りが発生します。
面積の割合を早めに試算しておけば、無理のない増築ができそうです。
次はよくある質問も見てみます。
はい、あわせてご確認ください。
次によくある質問をまとめました。
よくある質問
まとめ
増築の計画を立てるときは、今日の内容を確認しながら進めます!
建築物の増築や改築をお考えの際は、いつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第3条・第25条・第86条の7
- 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第137条の2の4・第137条の2の5
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または専門家にご確認ください。





