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準防火性能を満たさない木造建築物等の外壁はなぜ増築できるのか|建築基準法施行令第137条の2の4が定める外壁関係の緩和を解説

木造の古い外壁を持つ建物が新しい建物の間に建つ街並みのイメージ

防火地域及び準防火地域以外でも、特定行政庁が指定する区域内にある木造建築物等の外壁には、延焼を抑えるための性能が建築基準法第23条によって義務づけられています。
古くからある建物の中には、建てた当時は適法でも、区域の指定や基準の見直しによってこの規定に適合しなくなったものが少なくありません。
こうした「既存不適格建築物」が増築や改築をしようとすると、原則としては外壁も含めて建物全体を現行基準に合わせる必要が生じます。
けれども一定の要件を満たせば、建築基準法施行令第137条の2の4により、この負担が一部緩和されます。

うちの建物は指定区域にあって、外壁が今の基準には合っていないんです。
増築するなら、外壁も全部やり直さないといけませんか。

いいえ、要件を満たせば外壁全体まで直さなくても増築できます。
建築基準法施行令第137条の2の4という緩和の規定があるんです。

緩和があるんですね、少し安心しました。
どんな建物のどんな増築が対象になるんでしょうか。

対象になるのは、外壁の性能基準に適合していない木造建築物等の増築や改築です。
この記事で、対象と要件を順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 外壁の性能基準に適合しない既存不適格の木造建築物等も、要件を満たせば増築や改築ができます(建築基準法第86条の7第1項)。
  • 対象となるのは、法第3条第2項により現行の第23条の規定の適用を受けない木造建築物等です(施行令第137条の2の4)。
  • 要件は2つのルートのどちらか一方を満たせばよく、両方を満たす必要はありません。
  • 1つ目は増築部分を火熱遮断壁等で区画し、その外壁を性能基準に適合させるルートです。
  • 2つ目は増築部分の床面積の合計を基準時の延べ面積の20分の1以内に収めるルートです。

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木造建築物の外壁の増築部分を火熱遮断壁等で区画し性能基準に適合させるか床面積の合計を基準時の延べ面積の20分の1以内に収めるかのいずれかで現行基準を適用しないことを示す図解

指定区域内の木造建築物等の外壁になぜ基準が求められるのか

区域の境界線の中に並ぶ同じ形の建物の列で中央の一棟だけ外壁の仕上げが古びて見えるイラスト
特定行政庁は、防火地域及び準防火地域以外の市街地についても、火災の延焼を防ぐために特定の区域を指定できます。
建築基準法第22条はこの区域内の建物の屋根に、第23条は木造建築物等の外壁に、それぞれ延焼を抑える性能を求めています。
建築基準法第二十三条(外壁) 前条第一項の市街地の区域内にある建築物(その主要構造部の第二十一条第一項の政令で定める部分が木材、プラスチックその他の可燃材料で造られたもの(第二十五条及び第六十一条第一項において「木造建築物等」という。)に限る。)は、その外壁で延焼のおそれのある部分の構造を、準防火性能(建築物の周囲において発生する通常の火災による延焼の抑制に一定の効果を発揮するために外壁に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合する土塗壁その他の構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。
対象は木造建築物等の外壁だけです。
第23条が適用されるのは、第22条第1項の区域内にある建築物のうち、主要構造部が木材などの可燃材料でできた「木造建築物等」に限られます。
指定区域内の建物も、建てた当時はほとんどが適法でした。
区域の指定や第23条の技術的基準そのものが見直されると、建てたときは適合していた外壁が、その後の基準に適合しなくなることがあります。
これが建築基準法第3条第2項が定める「既存不適格建築物」で、そのまま使い続けること自体は認められています。
問題になるのは増築や改築をするときで、原則としては工事にあわせて外壁も含む建物全体を現行の第23条の基準に適合させなければなりません。

指定区域にある木造の建物で、外壁が今の基準には合っていないんです。
自分の建物がそうなのか、どうやって分かりますか。

建築確認を取った当時の図面と、今の第23条の基準を照らし合わせれば分かります。
迷ったら特定行政庁や設計士に確認するのが確実です。

どんな建築物のどんな増築が緩和の対象になるのか

木造の壁材でできた建物本体に小さな増築部分が接続しているイラスト
緩和の対象になるのは建物そのものではなく、増築や改築という工事の範囲です。
対象になる建物と工事の範囲は、法律と政令の両方で決められています。
建築基準法第八十六条の七第一項(抜粋) 第三条第二項の規定により(略)第二十三条(略)の規定の適用を受けない建築物について政令で定める範囲内において増築、改築、大規模の修繕又は大規模の模様替をする場合においては(略)、これらの規定は、適用しない。
対象になるのは、第23条の規定に適合しない木造建築物等の増築や改築だけです。
建築基準法第86条の7第1項は、第3条第2項により第23条など複数の規定の適用を受けない建築物について、政令で定める範囲内で増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替をする場合に、その規定を適用しないと定めています。
このうち外壁に関する増築・改築の範囲を具体的に定めているのが、次の章で見る施行令第137条の2の4です。
この条項は木造建築物等に限った規定で、鉄骨造やコンクリート造など可燃材料を使わない建築物はもともと第23条の適用対象外のため、この緩和を使う場面もありません。

木造建築物等が対象なんですね。
具体的にはどんな要件を満たせばいいんでしょうか。

要件は2つのルートに分かれていて、どちらか一方を満たせば足ります。
次の章で順番に見ていきましょう。

緩和を受けるにはどんな要件を満たす必要があるのか

分かれ道の先で壁のマークと天秤のマークにそれぞれ通じその先で一つの旗に合流している道を示すイラスト
前の章で見た対象について、具体的に満たすべき要件を確認します。
施行令第137条の2の4は、2つのルートのどちらか一方に該当すればよいと定めています。
建築基準法施行令第百三十七条の二の四(外壁関係) 法第三条第二項の規定により法第二十三条の規定の適用を受けない木造建築物等についての法第八十六条の七第一項の政令で定める範囲は、増築及び改築については、次の各号のいずれかに該当する増築又は改築に係る部分とする。一 次のイ及びロに該当するものであること。イ 増築又は改築に係る部分が火熱遮断壁等で区画されるものであること。ロ 増築又は改築に係る部分の外壁(法第二十三条に規定する準防火性能を有すべきものとして国土交通大臣が定める外壁に限る。)が、第百九条の十に掲げる基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものであること。二 増築又は改築に係る部分の対象床面積の合計が基準時における延べ面積の二十分の一を超えず、かつ、当該増築又は改築が当該増築又は改築に係る部分以外の部分の外壁における延焼の危険性を増大させないものであること。
要件は2つのルートのどちらか一方を満たすことです。
1つ目のルート(第一号)は、増築・改築に係る部分を火熱遮断壁等で区画したうえで、その部分の外壁を第109条の10が定める20分間の技術的基準に適合させる方法です。
2つ目のルート(第二号)は、増築・改築に係る部分の対象床面積の合計を基準時の延べ面積の20分の1以内に収め、かつ他部分の外壁の延焼危険性を増大させない方法です。
どちらのルートも、増築・改築に係る部分以外の建物全体を現行の第23条基準に適合させる必要はありません。
建物の使い方や増築の規模に応じて、実現しやすいほうのルートを選んで計画できます。

2つのルートがあるんですね。
どちらを選んでもいいんでしょうか。

はい、どちらか一方の要件を満たせば足ります。
次の章で見落としやすい点を説明します。

実務で見落としやすいのはどこか

二棟の増築部分のうち一方は天秤のマークだけに矢印が伸びもう一方は壁のマークと天秤のマークの両方に矢印が伸びているイラスト
外壁関係の要件を見てきましたが、似た構成の他の緩和規定と比べると特徴的な違いがあります。
条項ごとに要件の作り方が異なるため、混同すると計画が狂うおそれがあります。
建築基準法施行令第百三十七条の二の五(大規模の木造建築物等の外壁等関係)(抜粋) (略)増築又は改築に係る部分の対象床面積の合計が基準時における延べ面積の二十分の一を超えず(略)である増築又は改築に係る部分とする。
見落としやすいのは、面積割合だけのルートしかない他の137条の2系との違いです。
大規模木造建築物等の外壁等に関する緩和(施行令第137条の2の5)は、面積割合の一つのルートしかありません。
これに対して外壁関係(第137条の2の4)には、面積割合のルートに加えて、火熱遮断壁等と性能基準の外壁による第一号のルートがもう一つ用意されています。
「20分の1だから他の137条の2系と同じ」と思い込むと、面積を増やせない前提で計画してしまい、実際には使える火熱遮断壁等のルートを見落とすおそれがあります。
逆に、2つのルートを両方とも満たさなければならないと誤解するのも禁物で、条文は「いずれかに該当する」と定めており、一方だけで足ります。

面積の割合だけじゃないルートもあるんですね。
両方満たす必要はないと聞いて安心しました。

はい、どちらか一方で足ります。
最後に実務での確認手順をまとめます。

増築や改築を計画するときは何を確認すればよいか

設計図とチェックリストとメジャーが並んでいるイラスト
増築や改築を計画する際は、次の点を順番に確認してください。
判断に迷う部分があれば、早めに専門家へ相談するのが安全です。
  • 自分の建物が特定行政庁の指定する法第22条区域内にあるかを確認する
  • 自分の建物が主要構造部を可燃材料で造った木造建築物等に当たるかを確認する
  • 自分の建物が法第3条第2項の適用を受ける既存不適格に当たるかを確認する
  • 増築部分を火熱遮断壁等で区画し性能基準の外壁とするルートと、床面積を20分の1以内に収めるルートのどちらが実現しやすいかを比較する
  • 選んだルートが、増築・改築に係る部分以外の外壁の延焼危険性を増大させないかをあわせて確認する
  • 面積割合ルートを選ぶ場合は、基準時の延べ面積を正確に把握してから床面積を試算する
計画の早い段階で確認しておくことが大切です。
設計が固まってから要件を満たさないと分かると、計画の手戻りが発生します。

2つのルートを比べてから計画すれば、無理のない増築ができそうです。
次はよくある質問も見てみます。

はい、あわせてご確認ください。
次によくある質問をまとめました。

よくある質問

Q指定区域内の木造建築物等で、外壁が古い基準のままでも増築できますか?
Aできます。建築基準法施行令第137条の2の4の要件を満たせば、増築・改築に係る部分について現行の第23条の規定を適用しないという緩和を受けられます。
Q緩和を受けるための要件にはどのようなものがありますか?
A2つのルートのどちらか一方を満たす必要があります。増築部分を火熱遮断壁等で区画し性能基準の外壁とするルートと、増築部分の床面積の合計を基準時の延べ面積の20分の1以内に収めるルートです。
Q2つのルートは両方とも満たす必要がありますか?
Aいいえ。条文は「いずれかに該当する」と定めており、どちらか一方を満たせば足ります。両方を満たす必要はありません。
Q鉄骨造やコンクリート造の建築物にもこの緩和は使えますか?
Aいいえ。この緩和は木造建築物等(主要構造部が木材などの可燃材料で造られたもの)に限られます。それ以外の構造の建築物はもともと第23条の適用対象外です。

まとめ

✔外壁の性能基準に適合しない既存不適格の木造建築物等も、要件を満たせば増築・改築ができます。
✔根拠は建築基準法第86条の7第1項と施行令第137条の2の4です。
✔対象になるのは法第23条の規定に適合しない木造建築物等で、鉄骨造やコンクリート造は対象外です。
✔要件は2つのルートのどちらか一方を満たすことで、両方を満たす必要はありません。
✔1つ目は増築部分を火熱遮断壁等で区画し、外壁を第109条の10の性能基準に適合させるルートです。
✔2つ目は増築部分の床面積の合計を基準時の延べ面積の20分の1以内に収めるルートです。
✔他の137条の2系のように面積割合だけのものもあるため、条項ごとの違いを混同しないことが必要です。

増築の計画を立てるときは、今日の内容を確認しながら進めます!

建築物の増築や改築をお考えの際は、いつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第3条・第22条・第23条・第86条の7
  • 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第百九条の十・第137条の2の4・第137条の2の5

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または専門家にご確認ください。

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