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デッキオーブンはなぜグリス除去装置との距離が不要になったのか|5つの要件と満たさない場合の基準を解説

デッキオーブンとグリス除去装置の距離が不要になったことを示すアイキャッチ画像

厨房のデッキオーブンとグリス除去装置は、これまで火源から一定の距離を空けて設置するよう求められてきました。
ところが令和8年3月27日に出された新しい通知で、条件を満たすデッキオーブンならこの距離を確保しなくてよいことになりました。
どんな機器なら対象になるのか、免除されるのはどの距離なのかを取り違えると、点検や改装のときに困ることになります。
この記事では、対象になる5つの要件と、免除されない距離を整理します。

厨房のオーブンとグリス除去装置って、離さないといけないんですよね。
新しいオーブンを入れるたびに配置に困っています。

実は令和8年の新しい通知で、条件を満たせば距離を確保しなくてよいデッキオーブンが認められました。
ただし全部のオーブンが対象というわけではありません。

条件を満たせばいいんですね。
うちのオーブンが当てはまるのか知りたいです。

5つの要件を順番に見ていきましょう。
満たさない場合の基準も一緒に確認します。

この記事の結論
  • 令和8年3月27日の消防予第113号により、5つの要件を満たすデッキオーブンはグリス除去装置との距離を確保しなくてよくなりました
  • 対象になるのは火源が露出せず、自動温度調整装置と過熱防止装置を備えたものなど5つの条件をすべて満たす機器だけです
  • 5つの条件を1つでも満たさない場合は、従来どおり第60号通知の距離基準(60cmから120cm)を確保する必要があります
  • 免除されるのは厨房設備とグリス除去装置の距離だけで、対象火気省令第5条が定める可燃物からの距離は別途必要です
  • 該当するデッキオーブンでも清掃や維持管理を怠れば出火の危険は残ります

デッキオーブンはなぜ距離が不要になったのかを示す図解

デッキオーブンとグリス除去装置の距離はなぜあらためて示されたのか

デッキオーブンとグリス除去装置が近接して設置された厨房のイメージ
グリス除去装置は厨房設備の天蓋に取り付けられ、油脂分を排気から取り除く役目を持っています。
その油脂分が付着しやすいという特性から、火源との距離が長年の課題でした。
消防予第113号(令和8年3月27日) 厨房設備の天蓋に設けるグリス除去装置は、その使用に際し油脂分が付着する等の特性から、厨房設備の火源から火災予防上安全な距離を確保して設置するよう「火災予防条例準則の運用について」(平成5年2月10日付け消防予第60号)等に基づき運用されてきた。今般、「厨房設備等の基準に関する検討部会報告書」をとりまとめたので、第60号通知で求める距離に関する運用の参考とされるよう通知する
対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令 第16条第3号 厨房設備にあっては、(略)特に油脂を含む蒸気を発生させるおそれのある厨房設備の天蓋には、(略)グリス除去装置を設けること。この場合のグリス除去装置は、耐食性を有する鋼板又はこれと同等以上の耐食性及び強度を有する不燃材料で造られたものとすること。
距離のルールは検討部会の実験を受けて見直されました。
これまでは厨房設備の種類にかかわらず、フライヤーやこんろと同じ距離基準がデッキオーブンにも当てはめられていました。
しかし消防庁が実際に加熱実験を行ったところ、条件を満たすデッキオーブンは発火の危険性が低いことが確認されました。
そこで令和8年3月27日付けの消防予第113号で、対象となるデッキオーブンの範囲と、免除される距離の内容があらためて示されたのです。
背景を押さえたうえで、次に対象となる機器の条件を見ていきましょう。

距離のルールが変わったのは、実験で安全性が確認されたからなんですね。
うちのオーブンにも当てはまるのか気になります。

そうです。
次は対象になる5つの条件を確認していきましょう。

どんなデッキオーブンなら距離の確保が不要になるのか

デッキオーブンの5つの構造要件を並べたイメージ
対象になるかどうかは、機器の構造と機能で判断します。
5つの条件をすべて満たすものだけが対象です。
消防予第113号 本通知の対象とするデッキオーブンは、以下の事項のいずれにも該当するものであること。(1)火源が露出していないもの。(2)自動温度調整装置及び過熱防止装置が設けられ、適切に作動するよう維持管理されているもの(自動温度調整装置による設定温度の上限は300度程度までとする仕様が一般的である)。(3)鋼材・断熱材等の不燃材で構成され、庫内で発火した際に外部への延焼に至らない構造のもの。(4)熱源が気体又は電気のもの。(5)清掃を実施できる空間を確保すること等により、デッキオーブン及びグリス除去装置の清掃を適切に実施できること。
5つの条件は機器の構造そのものを問うものです。
火源が庫内に隠れているか、温度が上がりすぎたときに自動で止まるか、といった構造上の安全性が中心になっています。
熱源は気体又は電気に限られ、炭火や薪などは対象になりません。
掃除がしやすい空間があるかどうかも条件の1つで、汚れがたまりやすい機器では油脂が蓄積し発火につながるためです。
メーカーの仕様書や取扱説明書で、この5つを1つずつ確認することが最初の一歩になります。

自動で温度が止まる機能とか、掃除のしやすさまで見られるんですね。
思ったより細かい条件です。

はい、5つとも満たして初めて対象になります。
次はどの距離が不要になるのかを見てみましょう。

距離が不要になる範囲はどこまでなのか

厨房設備とグリス除去装置の距離が免除される範囲を示すイメージ
条件を満たしても、免除されるのは特定の距離だけです。
どこまでが不要になるのかを正確に押さえておきましょう。
消防予第113号 実験の結果、(1)に該当するデッキオーブンについては稼働時に発せられる熱によるグリス除去装置への発火危険性及び使用時の内容物の発火による外部への延焼危険性が低いことが確認されたことから、第60号通知で求める厨房設備とグリス除去装置との火災予防上安全な距離を確保する必要はないこと。
消防予第60号(平成5年2月10日) 気体燃料を使用する厨房設備の上方に設置される天蓋に付属されるグリス除去装置との火災予防上安全な距離は、一般の家庭以外の厨房において、グリスエクストラクターは45cm以上、それ以外のものは100cm以上、ブロイラー等多量の油脂を発生するものは120cm以上とする。
免除されるのは厨房設備とグリス除去装置の距離だけです。
条件を満たすデッキオーブンであれば、この60cmから120cmの距離を確保しなくても設置できます。
ただし免除は第60号通知の範囲に限られ、対象火気省令第5条が定める可燃物との距離まで免除されるわけではありません。
壁や什器との距離は、機器ごとに消防庁長官が定める方法や規則の別表に沿って別途確保する必要があります。
「グリス除去装置との距離」と「可燃物との距離」を混同しないことが実務のポイントです。

免除されるのはグリス除去装置との距離だけなんですね。
壁との距離はまた別に確認しないといけないと。

そのとおりです。
次は実務で見落としやすいポイントを整理しましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

デッキオーブンの清掃不足による出火の危険を示すイメージ
条件を満たしていても、油断してよいわけではありません。
通知には明確な留意事項が示されています。
消防予第113号 留意事項 1に該当するデッキオーブンであっても、通常想定されない条件又は方法で使用された場合や、定期的な清掃等が行われていない場合等は出火する危険があるため、機器の適切な使用及び管理に配意する必要があること。食品工場及び業務用厨房施設等においてガス機器による一酸化炭素中毒事故が発生しているため、ガス機器を使用する場合は換気やガス警報器を設置する等、一酸化炭素中毒の防止に留意すること。
対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令 第5条第1項 令第5条第1項第1号の総務省令で定める火災予防上安全な距離は、別表第一及び別表第二に定める離隔距離のうち、消防長又は消防署長が認める距離以上の距離とする。
免除は無条件ではありません。
5つの条件を満たしていても、想定外の使い方や清掃不足があれば出火の危険は残ります。
特にガス機器では、換気不足による一酸化炭素中毒の事故も報告されています。
免除は「距離を取らなくてよい」という話であって、「管理をしなくてよい」という話ではありません。
日々の清掃記録と換気設備の点検は、条件を満たした後も続ける必要があります。

免除されても、掃除をサボったら意味がないってことですね。
気を引き締めます。

そのとおりです。
最後に明日から確認すべきことをまとめます。

明日から何を確認すればよいのか

デッキオーブンの確認チェックリストを持つ防火管理者のイメージ
ここまでの内容を、実際の確認作業に落とし込みます。
今日から始められることを順番に整理しました。
消防予第113号 加熱実験の詳細は厨房設備等の基準に関する検討部会報告書を参照されたい。なお、本通知は消防組織法第37条の規定に基づく助言として発出するものである。
確認は仕様書とチェックリストの2段階で進めます。
まずメーカーの仕様書で5つの条件を1つずつ照らし合わせ、次に現場で清掃や換気の状態を確認します。
条件を満たさない機器が混じっていることもあるため、厨房にある機器を1台ずつ確認することが大切です。
  • 自店のデッキオーブンの仕様書で、火源の露出の有無を確認する
  • 自動温度調整装置と過熱防止装置が付いているか、設定温度の上限が300度程度になっているかを確認する
  • 庫内で発火した場合に外部へ延焼しない不燃構造か、熱源が気体か電気かを確認する
  • 清掃を行うための空間が確保されているか、清掃計画が実際に守られているかを点検する
  • 5つの条件を1つでも満たさない場合は、第60号通知の距離基準(60cmから120cm)を確保する
条件を満たさない場合は、慌てず第60号通知の距離基準に沿って配置を見直しましょう。
判断に迷うときは、所轄の消防署に個別に確認することをおすすめします。

仕様書とチェックリストで確認していけばいいんですね。
さっそくやってみます。

はい、迷ったら遠慮なくご相談ください。
安全な厨房づくりをお手伝いします。

よくある質問

Q令和8年3月27日より前に設置したデッキオーブンも対象になりますか?
A通知は設置時期を区別していません。5つの条件を満たしていれば、既存のデッキオーブンも対象になります。ただし条件に当てはまるかどうかは、設置済みの機器の仕様書や現地確認で個別に判断する必要があります。
Q自動温度調整装置の設定温度が300度を超えていたら対象外になりますか?
A通知は300度程度を上限とする仕様が一般的としているだけで、絶対の数値基準ではありません。実際の対象判定は所轄消防署が機器の構造全体を見て行うため、事前に相談することをおすすめします。
Qグリス除去装置そのものの構造基準も変わりましたか?
A変わっていません。耐食性を有する不燃材料で造るという対象火気省令第16条第3号の基準はそのままで、変わったのは厨房設備との距離の運用だけです。
Q電気式のデッキオーブンなら無条件で対象になりますか?
Aいいえ。熱源が電気であることは5つの条件の1つに過ぎません。火源の露出の有無や自動温度調整装置の有無など、残り4つの条件もあわせて満たす必要があります。

まとめ

令和8年3月27日の消防予第113号により、条件を満たすデッキオーブンはグリス除去装置との距離を確保しなくてよくなった
対象になるのは火源非露出・自動温度調整装置と過熱防止装置・不燃構造・気体または電気の熱源・清掃可能な空間という5つの条件をすべて満たす機器だけ
条件を1つでも満たさない場合は、第60号通知の距離基準(60cmから120cm)をそのまま確保する
免除されるのは厨房設備とグリス除去装置の距離だけで、対象火気省令第5条が定める可燃物との距離は別途必要
条件を満たした機器でも、想定外の使用や清掃不足があれば出火の危険は残る
ガス機器は換気やガス警報器の設置で一酸化炭素中毒を防ぐ
判断に迷ったら仕様書の確認だけで済ませず、所轄消防署に相談する

デッキオーブンの5つの条件と、免除されない距離がよく分かりました。
さっそく厨房の機器を確認します!

厨房設備の配置は迷いやすいところです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • デッキオーブンとグリス除去装置との火災予防上安全な距離の運用について(通知)(消防予第113号・令和8年3月27日・消防庁予防課長)
  • 火災予防条例準則の運用について(通知)(消防予第60号・平成5年2月10日・消防庁予防課長)
  • 対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令(平成14年総務省令第24号)第5条・第16条第3号

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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