工場の敷地に更衣室だけの棟を建てたら、消防法ではなんの用途として数えるのでしょうか。
同じように、はり灸院、絵や写真の作品発表会場、吹き抜けの駐車場、ラック式の駐輪場は、令別表第一のどの項に入るのか、迷いやすい施設です。
消防庁は昭和54年6月22日に、そうした疑問への回答を各都道府県に示しており、その中に五つの問いと答えが続けて残っています。
この記事では、その質疑を、現行の令別表第一に照らして読みます。五つの問いと答えを順に確かめます。
そもそも、建物の用途は、なにで区分されるんですか。
消防法施行令の別表第一が、防火対象物を(1)項から(20)項までに分けています。
どの項に入るかで、必要な消防用設備等が変わります。
その質疑には、どんな問いが載っているんですか。
独立棟の更衣室、はり灸院、作品発表会場、吹き抜けの駐車場、ラック式の駐輪場についての、五つの問いです。
順に、現行の令別表第一と見比べます。
- 工場の敷地内で独立した棟になっている更衣室は、電気室やボイラー室、トイレと同じように(15)項に該当すると答えています
- はり灸院は、(15)項に該当すると答えています
- 11階建ての建物の3階を、有料で絵や写真、生花の作品発表会場として使う部分は、(8)項に該当すると答えています
- グレーチング仕上げの床で全方向が吹き抜けの駐車場は、(13)項イに該当し、水平投影面積を各層の床面積とみなして各層を各階とみなすと答えています
- ラック式の駐輪場は、(15)項の防火対象物であると答えています
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目次
工場の敷地にある更衣室だけの棟は、なんの項になるのか

(消防庁予防救急課長の回答・昭和54年6月22日・消防予第118号〔31〕)
更衣室は、工場の建物の中にあれば(12)項イの区分の一部として扱われますが、独立した棟になっている場合は、電気室やボイラー室、トイレなどと同様に(15)項として扱うという答えです。
区分が変わると、設備の基準も変わります。現行の令第11条第1項第3号は、(15)項の防火対象物のうち延べ面積が1,000平方メートル以上のものに屋内消火栓設備を、令第21条第1項第6号は、同じく延べ面積が1,000平方メートル以上のものに自動火災報知設備を求めています。
更衣室は、独立すると工場の一部ではなくなるんですね。
はい。
答えは、独立した棟なら(15)項です。
はり灸院は、令別表第一のどの項に入るのか

(消防庁予防救急課長の回答・昭和54年6月22日・消防予第118号〔32〕)
答えは短く、理由までは述べていません。(6)項イの診療所として扱うのではなく、他の項に当たらない事業場としての(15)項に入れる、という答えです。
なお、現行の令別表第一の(6)項イは、患者を入院させるための施設の有無などで細かく分かれています。質疑の答えは当時のものですので、個別の施設は現行の条文で確かめてください。
はり灸院は、病院や診療所とは別の扱いなんですね。
この質疑では、(15)項という答えです。
絵や写真の作品発表会場は、美術館と同じ(8)項になるのか

(消防庁予防救急課長の回答・昭和54年6月22日・消防予第118号〔33〕)
(8)項の「美術館その他これらに類するもの」に入る、という答えです。有料で使わせることや、物品の販売を伴わないことを、どう評価したのかまでは、答えは述べていません。なお、(4)項には「展示場」も挙がっていますが、質疑はこれとの違いには触れていません。
(8)項と(15)項では、基準の入り口の面積が違います。たとえば令第21条第1項第4号は、(8)項の防火対象物に延べ面積500平方メートル以上で自動火災報知設備を求めていますが、(15)項は前に見たとおり1,000平方メートル以上です。
作品を見せる会場は、美術館の仲間として扱われるんですね。
この質疑では、(8)項という答えです。
他の用途と同じ建物なら、建物全体は複合用途の区分で考えます。
全方向が吹き抜けのグレーチングの駐車場は、階をどう数えるのか

(消防庁予防救急課長の回答・昭和54年6月22日・消防予第118号〔34〕)
(13)項イは「自動車車庫又は駐車場」です。壁のない吹き抜けの構造でも、駐車場としての区分は変わりません。床が格子のグレーチングですが、その水平投影面積を各層の床面積とみなし、各層を各階として数える、という答えです。答えは、そう数える理由までは述べていません。
階と床面積の数え方は、設備の基準に効いてきます。現行の令第13条は、駐車の用に供する部分について、階ごとの床面積(地階又は2階以上は200平方メートル以上、1階は500平方メートル以上、屋上部分は300平方メートル以上)や、昇降機等の機械装置で駐車させる構造で収容台数が10以上のものを、泡消火設備などの対象にしています。
壁がなくて吹き抜けでも、駐車場は駐車場なんですね。
はい。
答えは、(13)項イで、各層を各階として数えるというものです。
ラック式の駐輪場は、なんの項になるのか

(消防庁予防救急課長の回答・昭和54年6月22日・消防予第118号〔35〕)
(13)項イの「自動車車庫又は駐車場」ではなく、前各項に該当しない事業場としての(15)項に入れるという答えです。問いに「ラック式」とあるだけで、ラックの段数や台数、屋根の有無までは述べていません。
同じ駐輪場でも、オートバイの駐輪場は別の質疑で扱われています。関連する記事は、下の「あわせて読みたい」にまとめています。
駐輪場は、駐車場とは別に数えられるんですね。
この質疑では、ラック式の駐輪場は(15)項という答えです。
よくある質問
まとめ
独立棟や変わった施設も、質疑の答えが手がかりになるんですね。
まずは、うちの敷地の建物を区分し直してみます!
進める前に、所轄の消防署へ確かめておくのが安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第10条、第11条、第13条、第21条、別表第一
- 消防庁の消防用設備等に係る質疑応答(予防行政の通知)
※本記事は公表されている法令および通知に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や言葉づかい等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄の消防署にご確認ください。





