大雨や浸水のあと、避難窓のそばにある避難はしごの格納箱へ泥水の跡が残っていることがあります。
「ふたが開けば使える」と考えがちですが、箱内へ入った水分や泥が、はしごの横桟、縦棒、継手、取付け具へ影響しているかもしれません。
結論からいえば、施設担当者だけで開放や展張を試さず、対象器具を使用停止にして防火管理者と専門事業者へ共有します。
格納箱・はしご本体・取付け具・降下空間を一体で確認することが重要です。
避難はしごの箱へ、
泥水が入ったようです。
無理に開けないでください。
まず使用を止めます。
乾かせば、
元どおりですか。
まだ足りません。
はしご本体まで確認します。
- 泥水の跡がある格納箱を施設担当者だけで開けない
- 対象の避難はしごを使用停止にする
- 箱・横桟・縦棒・継手・取付け具をまとめて確認する
- 防火管理者と専門事業者へ状態を共有する
- 代替避難と復旧確認をBCPの再開判断へ反映する
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目次
格納箱へ泥水が入っていたらふたを開けて使ってよいのか

泥水の跡を見つけても施設担当者だけで開放や展張を試しません。
ふたや箱が変形していると、急に外れたり、収納された金属製はしごが崩れたりするおそれがあります。
箱内へ入った水分や泥は、はしごの横桟、縦棒、継手、可動部、取付け具へ影響します。表面を乾かしただけでは、安全に展張して降下できる状態か判断できません。
対象器具へ使用停止の表示を置き、防火管理者と施設管理者へ連絡します。独自判断で清掃と復旧を進めず、消防設備の専門事業者へ点検を依頼します。
ふたを持ち上げて、
確認してもだめですか。
やめておきます。
開閉確認も点検に含めます。
確認対象は格納箱だけでなくはしご本体と取付け具と降下空間まで

避難はしごは収納から降下までの一連の状態で確認します。
消防庁の点検要領は、器具本体だけでなく、操作面積、開口部、降下空間、避難空地、取付け具、格納箱などを確認対象にしています。
- 格納箱の変形・損傷・腐食・浸水
- はしごの縦棒と横桟の変形や腐食
- 継手と可動部の損傷や作動状態
- つり下げ金具と取付け具の固定
- 接近経路・開口部・降下空間・避難空地
点検要領は、格納箱に著しい変形、損傷、腐食や浸水がなく、ふたを容易に開けられ、器具が適正に収納されていることを確認する考え方を示しています。外観だけで済ませず、本体と取付け具の状態まで確認します。
浸水範囲が広い場合は1箱だけで判断しません。同じ階の避難口や別の避難経路も確認し、復旧中は代替避難経路を消防計画で共有します。
ふたが開いても、
確認は続くんですね。
はい。
展張と降下空間まで見ます。
発見時は使用停止にして代替避難と専門点検へつなぐ

清掃より先に使用停止と情報共有を行います。
泥を洗い流す前に、浸水高さ、箱の変形、内部へ水が入った痕跡を安全な位置から記録します。
- 対象の避難はしごを使用停止にする
- 施設管理者と防火管理者へ連絡する
- 浸水高さと泥の位置を記録する
- 利用できる代替避難経路を確認する
- 専門事業者へ点検を依頼する
- 避難経路と担当者を在館者へ周知する
- 復旧後の確認結果をBCPへ残す
使用停止を区画するときは、避難窓への接近や他の避難経路を塞がないでください。近くへ復旧資材を仮置きすると、避難上の障害になる場合があります。
復旧までの間は、階段などの代替避難経路を館内図へ示します。設備担当者だけで決めず、自衛消防隊と在館者へ周知してください。
別の避難経路も、
確認しておきます。
ええですね。
使えない間を補えます。
ふたが開くだけでははしごの腐食と可動不良を見落とす

ふたが開いても避難はしごが復旧したとは限りません。
箱内へ入った泥や水分は、縦棒、横桟、継手、可動部、つり下げ金具へ影響する可能性があります。
- 格納箱とふたの変形や腐食
- 箱内に残った泥と水分
- 縦棒と横桟の変形や損傷
- 継手と可動部の腐食や作動不良
- つり下げ金具と取付け具の固定
消防庁の点検要領は、はしごの縦棒、横桟、継手に変形、損傷、著しい腐食がなく、可動部が正常に作動することなどを確認項目にしています。つまり箱を乾かしただけでは判定できません。
また、施設担当者だけで窓から展張して試しません。落下防止と地上側の安全を確保し、点検方法を理解した消防設備の専門事業者へ引き継ぎます。
箱が乾いても、
中身は別なんですね。
そのとおりです。
安全に展張できるまで見ます。
明日から避難はしごの浸水後確認をどう準備するのか

平時から位置と種類と代替避難を一枚にまとめます。
災害後に避難はしごを探すところから始めると、復旧資材の仮置きで接近経路や操作面積を塞ぎやすくなります。
- 平面図へ避難はしごと避難窓を記入する
- 器具の種類と格納方法を確認する
- 接近経路・操作面積・降下空間を空ける
- 想定浸水範囲と泥の流入方向を重ねる
- 使用停止用の資材を近くへ準備する
- 点検と復旧判定の記録様式を用意する
- 代替避難を消防計画とBCPへ反映する
内閣府の事業継続ガイドラインは、重要業務に必要な資源と復旧手順をあらかじめ整理する考え方を示しています。避難器具も、事業再開前の安全確認項目へ入れてください。
水害訓練では、使用停止を表示する担当者、専門事業者へ連絡する担当者、代替避難を自衛消防隊へ伝える担当者を分けます。消防計画とBCPの連絡系統を同じ名簿でつないでおきます。
停止範囲と代替避難を、
図面へ書いておきます。
ええですね。
避難時にも迷いません。
よくある質問
まとめ
浸水後の避難はしごは、格納箱を乾かすだけでは使用できると判断できません。対象を使用停止にし、箱、はしご本体、継手、取付け具、開口部、降下空間を専門点検で確認します。
必要なときに安全に展張して降下できる状態を再開条件として確認することが、施設の防災とBCPをつなぐ要点です。
安全に降下できる状態を、
確認します!
格納箱と本体の確認が大切です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- e-Gov法令検索 消防法第17条・第17条の3の3
- e-Gov法令検索 消防法施行令第25条
- 総務省消防庁 消防用設備等の点検基準 点検要領 点検票
- 総務省消防庁 第15 避難器具 点検要領
- 総務省消防庁 避難器具の点検基準
- 総務省消防庁 金属製避難はしごの構造等に関する告示
- 総務省消防庁 金属製避難はしごの維持管理に関する通知
- 内閣府 事業継続ガイドライン 令和5年3月
※本記事は公表されている法令および公的資料に基づく一般的な解説です。避難器具の種類、格納箱の構造、清掃方法、点検方法、使用可否、代替避難の運用は施設により異なります。個別の判断は所轄消防署、消防設備の専門事業者、施設管理者などへご確認ください。





