BLOG

小規模な建築物はなぜ二以上の直通階段を免除されることがあるのか|建築基準法施行令第121条が定める特定階の区画基準を解説

小規模な建築物の階段の防火扉を示すアイキャッチ画像

延べ面積が小さく階数も低い建築物であれば、直通階段は一本で足りると思われがちです。
しかし用途と床面積によっては、たとえ小規模な建築物であっても二以上の直通階段が原則として必要になります。
一方で、一定の区画さえ満たせば、この原則が適用されない小規模な建築物もあります。
この記事では、建築基準法施行令第121条が定める二以上の直通階段の原則と、第4項が認める小規模建築物の特定階の区画基準を、条文に沿って具体的に解説します。

うちの建物は3階建てで延べ面積も小さいのですが、それでも階段は二本必要なんでしょうか。

用途と床面積次第では建築基準法施行令第121条により二本必要です。
ただし小規模な建築物には区画による例外があります。

区画さえすれば階段を減らせるなら、うちにも当てはまるか気になります。

条件は規模・用途・区画の三つです。
順番に条文で確認していきましょう。

この記事の結論
  • 建築基準法施行令第121条第4項は、小規模な建築物の特定階に限り、二以上の直通階段の原則を区画によって免除しています。
  • 免除の対象になるのは、階数三以下・延べ面積200平方メートル未満の建築物の避難階以外の階(特定階)だけです。
  • 特定階では、階段の部分とそれ以外の部分を間仕切壁または一定構造の防火設備で区画しなければなりません。
  • 用途が病院・診療所・入所者の寝室がある児童福祉施設等なら防火設備、ホテルや共同住宅・寄宿舎なら戸で足ります。
  • 準耐火構造等による床面積基準の緩和を受ける場合は、免除の対象が病院・診療所系の用途だけに絞られます。

▼

小規模建築物の特定階が区画によって直通階段の原則を免除される手順を示す図解

小規模な建築物でも二以上の直通階段が必要になることがあるのか

小規模な建築物の両端に二本の外部階段が設けられている様子を示すイラスト
延べ面積が小さい建築物でも、階段が一本しかなければ避難経路がふさがれたときに逃げ場を失います。
そのため条文は建物の規模ではなく、用途と床面積を基準に二以上の直通階段を求めています。
建築基準法施行令第百二十一条第1項 建築物の避難階以外の階が次の各号のいずれかに該当する場合においては、その階から避難階又は地上に通ずる二以上の直通階段を設けなければならない。(略)四 病院若しくは診療所の用途に供する階でその階における病室の床面積の合計又は児童福祉施設等の用途に供する階でその階における児童福祉施設等の主たる用途に供する居室の床面積の合計が、それぞれ五十平方メートルを超えるもの 五 ホテル、旅館若しくは下宿の用途に供する階でその階における宿泊室の床面積の合計、共同住宅の用途に供する階でその階における居室の床面積の合計又は寄宿舎の用途に供する階でその階における寝室の床面積の合計が、それぞれ百平方メートルを超えるもの
病院や児童福祉施設等は50平方メートル、ホテルや共同住宅・寄宿舎は100平方メートルを超えると二以上の直通階段が原則です。
この面積は建物全体の延べ面積ではなく、その階における病室・居室・寝室の床面積の合計で判定します。
小規模な建築物であっても、この面積を超える階が一つでもあれば原則どおり二本の階段が必要になります。
つまり「小規模だから一本でよい」という思い込みは、まず用途と床面積で確認し直す必要があります。

うちは小さな有料老人ホームで、居室の合計が50平方メートルを超えています。
それでも例外はあるんでしょうか。

建物全体の規模が条件に合えば例外があります。
次は建物全体の規模から確認しましょう。

免除を受けられる特定階とはどんな建築物のどの階か

三階建ての建築物の避難階以外の階が特定階として色分けされている様子を示すイラスト
区画による例外は、どんな建築物にも使えるわけではありません。
まず建物全体の階数と延べ面積が一定の枠に収まっている必要があります。
建築基準法施行令第百二十一条第4項 (略)階数が三以下で延べ面積が二百平方メートル未満の建築物の避難階以外の階(以下この項において「特定階」という。)(略)については、適用しない。
建物全体が階数三以下・延べ面積200平方メートル未満であることが第一の条件です。
この条件を満たした建物のうち、さらに避難階以外の階だけが「特定階」として例外の対象になります。
避難階(多くの場合は1階)そのものはもともと直通階段規定の対象外なので、特定階には含まれません。
延べ面積は建物全体の合計であり、各階の床面積ではない点も取り違えやすいところです。

延べ面積は各階の合計だったんですね。
うちの建物なら特定階に当てはまりそうです。

規模の条件が揃ったら、次は区画の要件です。
ここが一番実務で見られる部分です。

特定階の区画には何が必要なのか

階段部分と居室部分を間仕切壁で区画している様子を示すイラスト
規模の条件を満たしただけでは、二以上の直通階段の原則は免除されません。
特定階の内部で、階段部分をきちんと区画していることが求められます。
建築基準法施行令第百二十一条第4項 (略)(階段の部分(当該部分からのみ人が出入りすることのできる便所、公衆電話所その他これらに類するものを含む。)と当該階段の部分以外の部分(直接外気に開放されている廊下、バルコニーその他これらに類する部分を除く。)とが間仕切壁若しくは次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める防火設備で第百十二条第十九項第二号に規定する構造であるもので区画されている建築物又は同条第十五項の国土交通大臣が定める建築物の特定階に限る。)
階段部分とそれ以外の部分を、間仕切壁または一定構造の防火設備で区画しなければなりません。
階段部分には、そこからしか出入りできない便所や公衆電話所も含めてよいとされています。
一方で、直接外気に開放されている廊下やバルコニーは区画の対象から除かれます。
つまり階段のまわりだけを壁や防火設備で囲い、その他の居室部分と行き来を分けることが免除の前提になります。

区画といっても、どんな壁や戸を使えばいいかは
用途で変わったりしますか。

はい、用途によって必要な構造が変わります。
ここが見落としやすいポイントです。

実務で見落としやすいのはどこか

防火設備の重い戸と普通の戸が並んでいる様子を示すイラスト
区画に使う戸の構造は、すべての用途で同じではありません。
用途を見誤ると、過大な設備を付けたり、逆に基準を満たさない戸のままにしてしまいます。
建築基準法施行令第百二十一条第4項 第一項(第四号及び第五号(第二項の規定が適用される場合にあつては、第四号)に係る部分に限る。)の規定は、(略)特定階については、適用しない。 一 特定階を第一項第四号に規定する用途(児童福祉施設等については入所する者の寝室があるものに限る。)に供する場合 法第二条第九号の二ロに規定する防火設備(当該特定階がある建築物の居室、倉庫その他これらに類する部分にスプリンクラー設備その他これに類するものを設けた場合にあつては、十分間防火設備) 二 特定階を児童福祉施設等(入所する者の寝室があるものを除く。)の用途又は第一項第五号に規定する用途に供する場合 戸(ふすま、障子その他これらに類するものを除く。)
病院・診療所や入所者の寝室がある児童福祉施設等は防火設備、それ以外は戸で足ります。
ホテルや共同住宅・寄宿舎、寝室のない児童福祉施設等であれば、ふすま・障子を除く戸で区画すれば足ります。
一方で病院・診療所系はより重い防火設備が原則ですが、スプリンクラー設備等を設置していれば十分間防火設備まで軽減されます。
さらに、準耐火構造等で床面積基準が緩和される建築物では、免除の対象が病院・診療所系の用途だけに絞られ、ホテルや共同住宅は対象から外れる点も見落としがちです。

うちは寝室のある児童福祉施設なので、
普通の戸のままだと足りないんですね。

そのとおりです、防火設備が必要になります。
最後に確認の手順を整理しましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

チェックリストと巻尺と虫眼鏡を並べて確認する様子を示すイラスト
ここまでの規模・区画・用途の条件は、どれか一つでも欠けると免除は成立しません。
最後に、現場で確認する順番に整理します。
  • 建物全体が階数三以下・延べ面積200平方メートル未満であるかを確認する
  • 対象の階が避難階以外の「特定階」に当たるかを確認する
  • 階段部分(付属の便所・公衆電話所を含む)とそれ以外の部分が壁または戸で区画されているかを確認する
  • 用途が病院・診療所系か、ホテル・共同住宅・寄宿舎系かを確認し、必要な戸の構造を見分ける
  • スプリンクラー設備等の設置状況によって防火設備の等級が変わらないかを確認する
この免除規定は、規模・区画・用途の三つがすべて揃って初めて成立します。
一つでも欠ければ原則どおり二以上の直通階段が必要になるため、増改築や用途変更のたびに確認し直してください。

規模・区画・用途の三つがそろって初めて成立するんですね。
順番に確認していきます。

まず建物全体の規模からです。
チェックリストの順に見ていきましょう。

よくある質問

Q延べ面積200平方メートル未満というのは各階の床面積の基準ですか?
Aいいえ、建物全体の延べ面積の基準です(建築基準法施行令第121条第4項)。各階の床面積ではなく、階数三以下の建物すべての床面積を合計した数値で判定します。
Q避難階も特定階に含まれますか?
A含まれません。特定階は避難階以外の階に限られます(施行令第121条第4項)。避難階そのものはもともと二以上の直通階段の規定の対象外です。
Q階段の近くにある公衆電話所は区画の対象になりますか?
A階段の部分からしか出入りできない公衆電話所や便所は、階段の部分に含めて扱われます(施行令第121条第4項かっこ書き)。区画の外側に別枠で設ける必要はありません。
Q共同住宅なら戸だけで区画すればよいですか?
A条件を満たせば、ふすま・障子を除く戸で区画すれば足ります(施行令第121条第4項第二号)。ただし準耐火構造等で面積基準が緩和されている建築物では、共同住宅は免除の対象から外れる場合があります。

まとめ

✔建築基準法施行令第121条第4項は、小規模な建築物の特定階に限り、二以上の直通階段の原則を区画によって免除しています。
✔対象は階数三以下・延べ面積200平方メートル未満の建築物の避難階以外の階(特定階)です。
✔階段部分(付属の便所・公衆電話所を含む)とそれ以外の部分を間仕切壁または防火設備で区画する必要があります。
✔病院・診療所や入所者の寝室がある児童福祉施設等は防火設備が原則必要です。
✔スプリンクラー設備等を設置していれば、十分間防火設備まで軽減されます。
✔ホテル・共同住宅・寄宿舎、寝室のない児童福祉施設等はふすま・障子を除く戸で足ります。
✔準耐火構造等で面積基準が緩和される建築物では、免除の対象が病院・診療所系の用途だけに絞られます。

規模・区画・用途、
三つとも忘れずに確認します!

小規模建築物の避難計画のご相談も、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)
  • 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第121条・第112条

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
小規模な建築物の階段の防火扉を示すアイキャッチ画像
延べ面積が小さく階数も低い建築物であれば、直通階段は一本で足りると思われがちです。 しかし用途と床面積によっては、たとえ小規模な建築物であっても二以上の直通階段が原則として必要になります。 一方で、一定の区画さえ満たせば...
リクルート 採用情報はこちら →
採用ページ 一緒に働く仲間を募集中 → フランチャイズ (株)防災屋と一緒に開業する → 協力業者 協力業者さん募集中 →