無線式の自動火災報知設備は感知器と受信機の間を配線でつながずに電波でやり取りします。
配線が無い分、有線の設備で当たり前だった導通試験がそのままでは使えません。
消防法施行規則は無線式のために別の確認のしくみを用意していて、試験結果報告書にも専用の欄が置かれています。
この記事では無線式の自動火災報知設備に置かれた通信試験を条文から読み解きます。
うちの建物は去年から無線式の感知器に替えました。
点検のとき配線の導通試験はしなくていいと言われたんですが、それで大丈夫なんでしょうか。
配線が無い代わりに通信試験という別の試験項目が置かれています。
消防法施行規則にも専用の条文があるので順に見ていきましょう。
言われてみれば感知器から電波が本当に届いているのか、見た目では分からないですよね。
その通信試験というのは具体的に何を確認するものなんでしょうか。
受信機のほうで実際に信号のやり取りができているかを機器ごとに確認する試験です。
結論からまとめておきますね。
- 有線の感知器回路は送り配線にして容易に導通試験ができるようにする
- 無線式は受信機において無線式感知器等からの信号を受信できることを確認する措置を講じなければならない
- 試験結果報告書には配線とは別に通信試験という専用の欄が置かれている
- 設置したときの確認だけでなく常に良好な状態で信号をやり取りできるよう維持する義務がある
- 試験結果報告書は消防長又は消防署長の検査に使われる
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目次
無線式の自動火災報知設備にはなぜ独自の試験項目があるのか

感知器の信号回路のつなぎ方が細かく決められています。
感知器を順につないで末端に終端器を置けば、受信機の側から回路全体がつながっているかを一度に確認できます。
これが有線の自動火災報知設備で長らく使われてきた導通試験の仕組みです。
けれども無線式は感知器と受信機の間に配線そのものがありません。
配線を前提にした導通試験をそのまま当てはめることができないため、無線式には別の確認方法が必要になります。
配線が無いと感知器まで電気が通っているかを確かめる方法も無くなりますよね。
それはどうやって補っているんでしょうか。
電気の代わりに電波のやり取りそのものを確かめます。
次の条文にその根拠が置かれています。
受信確認の措置とは具体的に何を指すのか

配線に代わる独自の基準が置かれています。
有線なら導通試験で末端までつながっているかを見ますが、無線式は信号そのものが受信機に届いているかを見ます。
同じ号のイは、感知器や中継器や受信機を確実に信号を発信し、又は受信することができる位置に設けることも求めています。
位置の基準と受信確認の措置は対になっていて、届く場所に置いたうえで届いていることを確かめる、という二段構えです。
この受信確認の措置を実際にどう行うかが、次に見る試験の中身になります。
電波が届く場所に置くだけじゃなくて、届いているかどうかも別に確かめる決まりがあるんですね。
知りませんでした。
そのとおりです。
この確認の作業には名前が付いています。
通信試験は試験結果報告書のどの欄で確認されるのか

試験結果報告書を添えて消防機関に届け出ます。
自動火災報知設備の様式には配線の試験項目として共通線試験と送り配線試験が置かれていますが、無線設備の欄はこれとは別に通信試験という項目が単独で設けられています。
配線の導通を確かめる欄と、電波の送受信を確かめる欄が、最初から分けて用意されているということです。
どちらの欄も試験を行った結果を記入する仕組みで、見た目の確認だけで済ませるものではありません。
無線式の設備を設置したら、試験結果報告書の欄が空欄のまま届出をすることのないようにします。
報告書の書式そのものに無線用の欄があるんですね。
思いつきで運用しているわけじゃないんだ。
そのとおりで国が最初から無線式を想定した書式です。
次は維持のほうの基準を見ていきましょう。
設置したときの確認だけで足りるのか

設置したら終わりというわけではありません。
第24条第一号の二が設置時の位置と受信確認の措置を定めているのに対し、この号は維持のための基準として同じ内容を求め直しています。
建物の模様替えで棚やパーティションを増やしたり、感知器の近くに物を寄せたりすると、電波の届き方が変わることがあります。
一度は通信試験に合格していても、その後の環境の変化までは自動的には保証されません。
点検のたびに通信状態を確かめる意味は、この維持基準を満たし続けているかを確認するところにあります。
一回合格したら安心というわけじゃないんですね。
模様替えのときも気をつけないといけなそうです。
そのとおりです。
レイアウトを変える前には点検業者にも声をかけておいてください。
試験結果は消防検査でどう扱われるのか

消防機関の検査に使われます。
同条第一項により、工事完了から四日以内に試験結果報告書を添えて届け出ることが求められ、無線式であれば通信試験の結果もここに含まれます。
消防機関はこの届出を受けて設備が設備等技術基準に適合しているかどうかを検査し、適合していれば検査済証を交付します。
通信試験の欄が空白のままだったり実施した記録が曖昧だったりすると、検査の場で確認を求められることになります。
明日からは、無線式の設備を扱う工事や点検のときに、通信試験の結果が報告書へきちんと書き込まれているかを確認してみてください。
検査のときにここを見られるなら、通信試験は形だけで済ませちゃいけないですね。
そのとおりです。
記録をきちんと残しておくことが自分たちを守ることにもなります。
よくある質問
まとめ
今度の点検では通信試験の欄をちゃんと確認します。
報告書もしっかり保管しておきます。
その一手間が検査のときの安心につながります。
無線式の設備のことで迷われたら㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第24条第一号イ
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第24条第一号の二イ・ロ
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第24条の2第六号
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第31条の3第1項・第2項・第5項
- 消防法(昭和23年法律第186号)第17条の3の2
- 消防用設備等試験結果報告書の様式を定める件(平成元年消防庁告示第4号)別記様式第35
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※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





