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古い木造の下宿はなぜ重点点検の対象になったのか|札幌市の火災を受けた消防庁の注意喚起を解説

古い木造の下宿がなぜ重点点検の対象になるのかを解説する記事のアイキャッチ画像

平成30年1月、北海道札幌市の木造アパートで発生した火災で11名が亡くなりました。
建物は昭和50年以前に建てられた木造2階建ての下宿で、既存不適格や用途変更の記録があいまいなまま使われていた疑いが指摘されています。
消防庁はこの火災を受けて、同じ条件に当てはまる下宿を対象にした重点的な指導と注意喚起を全国の消防機関に求めました。
この記事では、対象になる下宿の条件と、施設管理者や入居者が明日から確認すべきことを解説します。

うちの近所にも古い木造アパートがあるんですけど、消防の検査に何か基準があるんですか。

消防庁が平成30年に注意喚起の通知を出していて、対象になる下宿の条件が具体的に決まっていますよ。

うちの建物、対象になるんでしょうか。

四つの条件を全て満たすかどうかで決まるので、まず一緒に確認しましょう。

この記事の結論
  • 対象は令別表第一(5)項ロの寄宿舎又は下宿で、共同住宅は含まれません
  • 昭和50年以前に新築・2階建て以上・延べ面積150平方メートル以上・木造という4条件を全て満たす建物が対象です
  • 施設管理者には消防用設備等の維持管理・避難経路の物品放置・防火管理体制の3点の指導が求められます
  • 入居者にはたばこの管理・避難経路確認・119番通報・大声での周知・消火器の使用の5点を注意喚起します
  • 用途変更の記録が確認できない建物は優先指導の対象になり、(6)項ロ又はハに該当する場合は用途の判定をやり直します

古い木造の下宿は昭和50年以前に新築・二階建て以上・150平方メートル以上・木造の四条件で重点点検の対象になるという要点を示した図解

古い木造の下宿はなぜ注意喚起の対象になったのか

木造2階建てのアパートの前に消防車が到着している様子
平成30年1月31日、北海道札幌市の木造アパートで火災が発生し、11名が死亡・3名が負傷しました。
消防庁は火災原因調査のため職員を派遣し、翌日には全国の消防機関へ注意喚起の通知を発しています。
消防予第26号(平成30年2月1日) 1月31日に北海道札幌市で発生した消防法施行令(略)別表第一(5)項ロ(下宿)の火災では、死者11名、負傷者3名(重症1名、中等症2名)の被害が発生しています(別紙参照)。(略)当庁では、消防法(略)第35条の3の2に基づき、消防庁長官の火災原因の調査のため、現地に職員を派遣したところです。
事故発生の翌日に注意喚起が出されたのが今回の特徴です。
火元の建物は木造2階建て、延べ面積404平方メートルの下宿で、消防用設備は消火器・自動火災報知設備(条例設置)・漏電火災警報器のみ、避難器具は任意設置にとどまっていました。
消防庁長官による火災原因調査は消防法第35条の3の2に基づく対応で、同種の被害を繰り返さないという危機感がうかがえます。
同じタイミングで国土交通省住宅局からも、建築基準法違反の是正を求める通知が特定行政庁に出されており、消防と建築の両輪で対応が進められました。
自分の管理する建物が古い木造の下宿に当てはまらないか、まず思い浮かべてみてください。

うちの近所にも似たような木造アパートがあります。
他人事とは思えません。

珍しいことではありません。
だからこそ、対象になる条件を次で確認しましょう。

注意喚起の対象になるのはどんな下宿なのか

築年数の古い木造2階建てのアパートに定規と巻き尺が添えられている様子
対象になる建物は4つの条件で決まっていて、立地や周辺環境では判断しません。
まず自分の建物が当てはまるかどうかを確認しましょう。
消防法施行令別表第一 (五)項 ロ 寄宿舎、下宿又は共同住宅
消防予第26号 令別表第一(5)項ロに掲げる防火対象物(寄宿舎又は下宿に限る。)のうち、次の条件を全て満たす防火対象物とする。(1)昭和50年以前に新築されたものであること。(2)2階建て以上であること。(3)延べ面積が150平方メートル以上であること。(4)木造であること
四条件をすべて満たすと対象になります。
昭和50年以前に新築・2階建て以上・延べ面積150平方メートル以上・木造という4つの条件は、一つでも欠ければ対象から外れるAND条件です。
共同住宅(マンションやアパート)も同じ(5)項ロですが、通知が名指ししているのは寄宿舎又は下宿に限られています。
消防法施行令第1条の2第3項第1号ハにより(5)項ロは収容人員が50人以上で防火管理者の選任義務が生じますが、今回の注意喚起は収容人員に関係なく築年数と構造だけで対象を絞っている点が特徴です。
対象棟数が地域の実情で多くなる場合は、既存不適格の規定が多く残るものや廊下が開放型でないものを優先すると通知は示しています。

うちのアパートは築40年くらいの木造2階建てです。
当てはまりそうで心配になってきました。

該当しそうなら早めの自主点検が安心です。
次で具体的にやることを見ていきましょう。

通知は施設管理者と入居者に何を求めているのか

消防用設備を点検する施設管理者と消火器を手にする入居者
当面の対応は、消防法令違反の是正・施設管理者への指導・入居者への注意喚起の3段構えです。
それぞれの中身を見ていきましょう。
消防予第26号 施設管理者等に対し、以下の事項を指導されたいこと。ア 消防用設備等が適切に維持管理されていること。イ 避難経路に物品が存置されていないこと。ウ 防火管理体制に不備がないこと
入居者に対し、直接又は施設管理者を通じて、以下の事項を注意喚起されたいこと。ア たばこ、火気管理等の出火防止対策を徹底すること。イ 避難経路を再確認すること。ウ 火災の際に迅速な119番通報を行うこと。エ 火災発見時に他の入居者等に大声で火災の発生を知らせること。オ 消火器を用いた初期消火方法を習得すること
求められているのは3点と5点の具体的なチェックです。
消防用設備等の設置状況や点検に消防法令違反がある場合は重点的な改善指導の対象になり、施設管理者には維持管理・避難経路・防火管理体制の3点が指導されます。
入居者側はたばこの管理・避難経路の確認・119番通報・大声での周知・消火器の使い方の5点で、日頃の暮らし方に直結する内容です。
通知は婦人防火クラブやケアマネジャー、民生委員と連携した住宅防火訪問の一環として実施するなど、効果的な方法で行うことも示しています。
入居者への注意喚起は口頭でも構いませんが、掲示物や説明会で形に残すほうが徹底につながります。

入居者への説明はどうやって伝えればいいでしょうか。

掲示物の配布や説明会が確実です。
民生委員などと連携した訪問も有効ですよ。

用途変更や既存不適格の見落としはどこにあるのか

書類が入ったファイルと中身が空のファイルを見比べている様子
対象棟数が多いときに優先される3つの視点には、見落としやすい落とし穴があります。
とくに用途変更の記録は要注意です。
消防予第26号 地域の実情により、対象とする防火対象物数が多数となる場合は、必要に応じて、以下のものを優先する等の対応を図られたいこと。・既存不適格の建築物として、現行の規定に適合していない防火の規定が多数存するもの・廊下が開放型となっていないなど、比較的火災危険性が高いと考えられるもの・他の用途から、寄宿舎・下宿に用途変更した経過が確認できるもので、当該用途変更に係る消防同意の記録が存しないなど、用途変更時に建築確認を受けなかった可能性が高いと考えられるもの
対象となる施設が、令別表第一(6)項ロ又はハに該当する可能性がある場合は、必要に応じて福祉部局と連携の上、消防法上の用途の取扱いについて適切に判定されたいこと
用途変更の記録が無い建物ほど見落とされがちです。
戸建て住宅や事務所から寄宿舎・下宿へ用途変更した建物は消防同意の記録が残っていないケースがあり、建築確認を経ないまま使われている可能性が指摘されています。
入居者が高齢者や障がいのある方に偏っている施設は、令別表第一(6)項ロ又はハ(避難が困難な要介護者等を主として入所させる施設等)に該当する可能性があり、その場合は下宿ではなく福祉施設としての取扱いを判定し直す必要があります。
既存不適格のまま現行基準に適合していない建物や、廊下が開放型でない建物も優先的な確認対象です。
自分の建物がいつ・どんな用途変更を経てきたか、登記や過去の届出書類で振り返ってみましょう。

うちは元々アパートだったので用途変更はしていないはずですが、記録が残っているか自信がありません。

届出書類が見当たらなければ、まず消防署に相談してみましょう。
次で確認の手順をまとめます。

明日からなにを確認すればよいのか

チェックリストを持つ施設管理者と電話で相談する様子
最後に、施設管理者が明日から確認できる手順を整理します。
一つずつ順番に確認していきましょう。
消防法施行令第1条の2第3項第1号 ハ 別表第一(五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項から(十五)項まで、(十六)項ロ及び(十七)項に掲げる防火対象物で、収容人員が50人以上のもの
確認は建物・設備・書類・周知の四つの視点で足ります。
まず自分の建物が昭和50年以前・2階建て以上・150平方メートル以上・木造の4条件に当てはまるかを確認し、当てはまれば消防用設備等の点検記録と避難経路の物品の有無を見直します。
収容人員が50人以上になると防火管理者の選任義務が生じるため、入居者数が変わっていないかもあわせて確認しておきましょう。
用途変更の履歴が分かる書類が見当たらない場合は、早めに所轄の消防署へ相談するのが確実です。
最後に、入居者への周知を掲示や説明会で形にすれば、指導が入る前に自主的な備えを示せます。

確認する項目が多くて大変そうです。

一つずつ確認すれば十分です。
不安な点は消防署か専門家に相談しましょう。

よくある質問

Q対象になる建物に共同住宅(マンション)は含まれますか?
A含まれません。通知が対象にしているのは寄宿舎又は下宿に限られ、同じ(5)項ロでも共同住宅は対象外です。
Q4つの条件のうち一つだけ当てはまる場合も対象になりますか?
Aなりません。4条件すべてを満たす建物だけが対象で、一つでも欠ければ対象から外れます。
Q消防用設備等に違反が見つかった場合はどうなりますか?
A重点的な改善指導の対象になります。火災発生時に被害が拡大しやすいと判断されるためです。
Q建物が高齢者向け施設に近い実態を持つ場合はどう扱われますか?
A令別表第一(6)項ロ又はハに該当する可能性があるため、福祉部局と連携して用途を判定し直す必要があります。

まとめ

平成30年1月に北海道札幌市で発生した木造下宿の火災を受けて注意喚起の通知が出されました
対象は令別表第一(5)項ロの寄宿舎又は下宿に限られ、共同住宅は含まれません
対象になるのは昭和50年以前に新築・2階建て以上・150平方メートル以上・木造の4条件を全て満たす建物です
施設管理者には消防用設備等の維持管理・避難経路の物品放置・防火管理体制の3点の指導が求められています
入居者にはたばこ管理・避難経路確認・119番通報・大声での周知・消火器の使用の5点の注意喚起が求められています
用途変更の記録が確認できない建物は優先的な指導対象になり、(6)項ロ又はハに該当する場合は用途を判定し直します
収容人員が50人以上になると防火管理者の選任義務が生じるため、入居者数もあわせて確認します

対象になる条件と、明日からやることが分かって安心しました!

用途変更の記録まで振り返れれば十分です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令別表第一(5)項ロ(下宿等)の防火対策に係る注意喚起等について(平成30年2月1日 消防予第26号)
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第35条の3の2
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)別表第一(5)項ロ・(6)項ロ・(6)項ハ、第1条の2第3項第1号ハ

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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