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排煙設備の非常電源はなぜ専用受電設備を使えない建物があるのか|特定防火対象物と延べ面積1,000平方メートルの境目を解説

排煙設備の非常電源は専用受電設備を使えない建物がある

排煙設備は、火災のときに煙を屋外へ排出し、消防隊の活動を助ける設備です。
その非常電源は、実は排煙設備自身の条文には基準が書かれていません。
屋内消火栓設備の非常電源の規定を、そのまま借りてくる仕組みになっています。
今回はなぜ借りているのか、そして専用受電設備を使えない建物がどう決まるのかを解説します。

排煙設備の非常電源って、他の設備と何か違うんですか。

実は排煙設備の条文には非常電源の基準が書かれていないんです。
屋内消火栓設備の規定をそのまま借りています。

借りているだけなら、どの建物でも同じように使えるんですね。

それが実は建物の規模によって変わるんです。
まずは借りる仕組みから見ていきましょう。

この記事の結論
  • 排煙設備の非常電源は消防法施行規則第30条第8号が第12条第1項第4号を準用する形で決まっています
  • 選べる電源は非常電源専用受電設備・自家発電設備・蓄電池設備・燃料電池設備の4種類です
  • 特定防火対象物で延べ面積1,000平方メートル以上の建物では専用受電設備が選択肢から外れます
  • 専用受電設備を使う場合は点検に便利な場所・専用の回路・開閉器への表示などの基準を満たす必要があります
  • 点検では受電設備の種類そのものが基準に合っているかどうかを目視で確認します

排煙設備の非常電源は何で絞られるかを示す図解

排煙設備の非常電源はなぜ独自の基準を持たないのか

小さな配電盤から専用受電設備・自家発電設備・蓄電池設備へ矢印が伸びる図
排煙設備の技術基準は、消防法施行規則第30条に細かく定められています。
ただし非常電源の項目だけは、条文の中で他の設備の規定を借りる形になっています。
【消防法施行規則第30条第8号】非常電源は、第十二条第一項第四号の規定の例により設けること。
排煙設備の非常電源は、屋内消火栓設備の非常電源とまったく同じ条文を使います。
第12条第1項第4号は、もともと屋内消火栓設備の非常電源を定めた条文です。
排煙設備の条文はこれを「規定の例により」という言い方で借りてきています。
だから排煙設備の非常電源の種類や基準は、屋内消火栓設備とまったく同じ内容になります。
この借りる仕組みを知っておくと、条文を探すときに迷わなくなります。

排煙設備の条文をいくら探しても、非常電源の細かい基準が出てきませんでした。

それは屋内消火栓設備の条文を見に行くのが正解だからです。
次はその中身を見てみましょう。

専用受電設備を使えない建物はどう決まるのか

高層ビルの配電盤に禁止マーク、小規模な建物の配電盤には印がない対比図
借りてきた第12条第1項第4号には、非常電源の種類と使える条件が書かれています。
ここに、専用受電設備が使えなくなる建物の条件が定められています。
【消防法施行規則第12条第1項第4号】屋内消火栓設備の非常電源は、非常電源専用受電設備、自家発電設備、蓄電池設備又は燃料電池設備(法第十七条の二の五第二項第四号に規定する特定防火対象物(以下「特定防火対象物」という。)で、延べ面積が千平方メートル以上のもの(第十三条第一項第二号に規定する小規模特定用途複合防火対象物を除く。)にあつては、自家発電設備、蓄電池設備又は燃料電池設備)によるものとし、次のイからホまでに定めるところによること。
延べ面積1,000平方メートルを境に、選べる電源の数が変わります。
条文中の「屋内消火栓設備」は、排煙設備にもそのまま当てはめて読みます。
建物が特定防火対象物で、かつ延べ面積が1,000平方メートル以上であれば、専用受電設備は選択肢から外れます。
外れた場合に残るのは、自家発電設備・蓄電池設備・燃料電池設備の3つです。
ただし条文には小規模特定用途複合防火対象物を除くという例外も書かれているため、用途の組み合わせ次第で結論が変わることもあります。

うちのビルは延べ面積が1,000平方メートルを超えていますが、それだけで決まるんですか。

特定防火対象物かどうかも同時に見る必要があります。
どちらの条件も満たしたときだけ、専用受電設備が外れます。

専用受電設備を選ぶならどんな基準を満たす必要があるのか

点検スペースのある配電盤と表示付きの遮断器を並べた図
延べ面積が1,000平方メートル未満などで専用受電設備を選べる場合も、条文はいくつかの基準を求めています。
ここからは、専用受電設備そのものに求められる基準を見ていきます。
【消防法施行規則第12条第1項第4号イ】非常電源専用受電設備は、次の(イ)から(ト)までに定めるところによること。(イ)点検に便利で、かつ、火災等の災害による被害を受けるおそれが少ない箇所に設けること。(ロ)他の電気回路の開閉器又は遮断器によつて遮断されないこと。(ハ)開閉器には屋内消火栓設備用である旨を表示すること。(略)
専用受電設備は、他の電気回路の影響を受けない専用の回路にする決まりです。
まず、点検のときに近づきやすく、火災の被害を受けにくい場所に設けます。
そして他の電気回路の開閉器や遮断器で止められないようにし、専用の回路として確保します。
条文の表示の規定は「屋内消火栓設備用」という文言のままですが、排煙設備に当てはめる場合は排煙設備用の表示に読み替えて運用されます。
高圧又は特別高圧で受電する場合は、さらに専用の室に設けるなどの基準も加わります。

表示は「屋内消火栓設備用」のままでいいんですか。

排煙設備に借りて使う場合は、排煙設備用である旨に読み替えて表示します。
条文の言葉どおりに貼ってしまうと逆に分かりにくくなります。

実務で見落としやすいのはどこか

専用受電設備に禁止マークがついた電源4種類のアイコンの並び
ここまでの基準を実務に当てはめるとき、見落としやすい点がいくつかあります。
とくに選択肢の数え方と、確認する順序でつまずきやすいところを整理します。
  • 4種類のうち専用受電設備だけが対象から外れる規定であり、自家発電設備・蓄電池設備・燃料電池設備の3つは建物の規模に関わらず常に選べます
  • 延べ面積の1,000平方メートルはその防火対象物全体の延べ面積で判定します。排煙設備が設置される階だけの面積ではありません
  • 特定防火対象物にあたるかどうかは用途で決まるため、延べ面積の基準だけを先に見て判断しないよう注意します
見落としを防ぐには、対象範囲と確認の順序を先に決めておくのが近道です。
まず4種類のうちどれが対象外になるかを確認し、次に建物の延べ面積と用途を確認する順序で進めます。
逆の順序で考えると、専用受電設備以外まで誤って除外してしまう事故につながります。

専用受電設備だけが対象で、他の3つは関係ないんですね。

そのとおりです。
数え間違いが一番多いところなので、点検のたびに確認しています。

点検のときに何を確認すればよいのか

点検員が配電盤を確認しているシーン
排煙設備の設置工事が終わったときには、非常電源についても試験が行われます。
ここでは実際の試験でどこを確認しているのかを見ていきます。
【消防庁「消防用設備等の試験基準」第19 排煙設備 ア 外観試験】常用電源 目視により確認する。専用回路となっており、排煙設備専用である旨の表示が適正にされていること。電源の容量が適正であること。
点検では、まず目で見て確認できる部分から確かめます。
常用電源については専用回路になっているか排煙設備専用である旨の表示を目視で確認します。
非常電源についても同じように、設けられている設備の種類が条文どおりの4種類のいずれかであるかを目視で確認します。
延べ面積が1,000平方メートル以上の特定防火対象物なのに専用受電設備のままになっていないか、書類と現場の両方で確かめることが大切です。
気づいた点はそのまま試験結果報告書に記録します。

点検のときは、電源の種類までちゃんと見ているんですね。

種類と表示の両方を見ないと、あとで指摘されることがあります。
次はよくある質問を確認しましょう。

よくある質問

Q排煙設備の非常電源に関する基準は、どこの条文に書かれていますか?
A排煙設備自体の条文(消防法施行規則第30条第8号)には「第十二条第一項第四号の規定の例により設けること」とだけ書かれており、実際の基準は屋内消火栓設備の非常電源の条文(同規則第12条第1項第4号)にあります。
Q専用受電設備が使えなくなるのは、延べ面積が1,000平方メートルを超えたときだけですか?
Aいいえ。延べ面積の基準だけでなく特定防火対象物であることも同時に必要です。両方の条件を満たした場合に限り、専用受電設備が選択肢から外れます。
Q小規模特定用途複合防火対象物とはどのような建物ですか?
A消防法施行規則第13条第1項第2号に規定される建物の区分です。条文上は延べ面積が1,000平方メートル以上の特定防火対象物であっても、この区分に当たる場合は除外の対象から外れると定められています。個別の当てはめは所轄消防署にご確認ください。
Q専用受電設備の開閉器に貼る表示は、条文どおり「屋内消火栓設備用」と書けばよいですか?
Aいいえ。この文言は借用元の条文の言葉であり、排煙設備に適用する場合は「排煙設備用」である旨に読み替えて表示するのが実務上の扱いです。

まとめ

排煙設備の非常電源は消防法施行規則第30条第8号が第12条第1項第4号を準用する形で定められています
選べる非常電源は非常電源専用受電設備・自家発電設備・蓄電池設備・燃料電池設備の4種類です
特定防火対象物で延べ面積1,000平方メートル以上の建物では専用受電設備が選択肢から外れます
小規模特定用途複合防火対象物に当たる場合は、この除外の対象外になります
専用受電設備を使う場合は点検に便利な場所・専用の回路・開閉器への表示などの基準を満たす必要があります
排煙設備に適用するときは、条文の「屋内消火栓設備用」という表示文言を「排煙設備用」に読み替えます
点検では常用電源の専用回路・表示・容量に加え、非常電源の種類そのものが条文どおりかを目視で確認します

排煙設備の非常電源だけでも、こんなに細かい決まりがあるんですね!

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㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則第30条第8号(排煙設備の非常電源)
  • 消防法施行規則第12条第1項第4号(非常電源の種別・専用受電設備の基準)
  • 消防法施行規則第13条第1項第2号(小規模特定用途複合防火対象物)
  • 消防庁「消防用設備等の試験基準」第19 排煙設備 外観試験

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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