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危険物施設の配管はなぜ保温材を外して点検するのか|腐食疲労事故とモニタリング新技術の活用例を解説

危険物施設の配管はなぜ保温材を外して点検するのか

危険物施設の配管や塔槽類は、目視点検さえしていれば安全だと思っていませんか。
実は腐食・疲労等劣化による事故の約8割が、この配管と塔槽類で起きています。
中でも見えにくいのが、保温材の下に隠れた配管の腐食です。
消防庁の通知が示した点検表の見直しと新しい診断技術を解説します。

配管の定期点検はいつも目視で済ませています。
これで十分なのでしょうか。

保温材で覆われた部分は、目視だけでは腐食に気づけません。
消防庁が示した点検表の見直しを順に見ていきましょう。

見直しというと、点検表そのものが変わったということですか。

そのとおりです。
まずはなぜ見直しが必要になったのかから説明します。

この記事の結論
  • 平成31年4月15日、消防危第73号により定期点検の点検表が一部改正されました
  • 対象は配管と塔槽類の保温(冷)材の損傷、脱落等の有無という新しい点検項目です
  • 損傷・脱落等が見つかったら保温材を外して点検することが望ましいとされています
  • あわせて赤外線カメラや超音波によるモニタリング技術の適用例も示されました
  • 事業所独自に加工した点検表を使う場合は管轄消防本部との事前協議が必要です

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危険物施設の配管の保温材下腐食点検と新しいモニタリング技術の活用手順を示す図解

危険物施設の配管や塔槽類はなぜ点検表の見直しが必要になったのか

高経年化が進む危険物施設の配管と塔槽類で腐食疲労による事故が多発していることを示すイメージ
危険物施設は年々数が減っているのに、事故そのものは減っていません。
その背景を、消防庁の検討会が調べました。
消防危第73号(平成31年4月15日) 危険物施設の高経年化が進んでいることを踏まえ、消防庁では平成29年度から「危険物施設の長期使用に係る調査検討会」を開催し、危険物施設の事故や点検・維持管理に関する実態、最新技術を用いたモニタリング・診断手法の開発状況等の調査を行い、危険物施設における事故の発生防止や被害軽減を推進するための方策について検討を行っているところです。
危険物施設の長期使用に係る調査検討会 中間まとめ(平成31年3月) 平成29年度の本検討会における事故分析の結果、腐食・疲労等劣化を原因とする事故は、全体の約8割が配管及び塔槽類において発生したものであり(略)、配管においては配管本体のほか、保温材下の配管や架台・サポート付近の配管でも事故が発生している。
理由は高経年化にあります。
腐食・疲労等劣化を原因とする事故が、配管と塔槽類に集中していることが調査で分かりました。
平成3年に定められた「製造所等の定期点検に関する指導指針の整備について」(消防危第48号)の点検表は、長らく「目視」中心の内容にとどまっていました。
そこで消防庁は、腐食・疲労等劣化の実態と新技術の活用状況を踏まえ、点検表そのものを見直すことにしました。
今回の改正は、その検討結果を踏まえて平成31年4月に発出されたものです。

配管と塔槽類に事故が集中するというのは、意外でした。

特に保温材の下は見落とされやすい場所です。
次は対象になる施設や部位を見ていきましょう。

どの施設のどの点検表が今回の改正の対象になるのか

製造所や一般取扱所の配管と塔槽類の定期点検表が改正の対象になることを示すイメージ
改正はすべての点検項目に及んだわけではありません。
対象は、事故が集中していた部位に絞られています。
消防危第73号(平成31年4月15日) 48号通知の点検表のうち、配管の「点検方法」の欄に保温材に係る点検方法を追加するとともに、腐食・疲労等劣化による事故の多い配管及び塔槽類について、点検表を補足する実施要領案を作成した。
消防法第14条の3の2 政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、これらの製造所、貯蔵所又は取扱所について、総務省令で定めるところにより、定期に点検し、その点検記録を作成し、これを保存しなければならない。
対象は製造所・一般取扱所等の定期点検で使う点検表のうち、配管及び塔槽類に関する部分です。
保温材(断熱材・保冷材)を巻いた配管や塔槽類がある施設であれば、ほぼすべてが対象になります。
定期点検そのものは消防法第14条の3の2が義務づけているもので、今回の改正はその点検表の中身を補強した形です。
地下埋設配管の漏えい点検など、別の通知で扱われている部分は今回の対象に含まれません。

うちの施設にも保温材を巻いた配管があります。
これも対象になりますか。

はい、対象になります。
具体的に何が加わったのか見ていきましょう。

点検表には具体的に何が追加されたのか

保温材の損傷脱落の有無という点検項目と赤外線や超音波によるモニタリング技術の適用例を示すイメージ
追加されたのは、点検項目が1つと、それを補う実施要領です。
中身を順番に見ていきます。
消防危第73号 別記(改正内容) 注 保温(冷)材の損傷、脱落等が認められた場合には、保温(冷)下の配管が腐食しているおそれがあることから、保温(冷)材を外して点検することが望ましい。
消防危第73号 別添3(定期点検の実施要領) 保温(冷)材の損傷、脱落等の有無 目視(略)【モニタリング技術・診断技術の適用例】・赤外線サーモグラフィー(外表面の温度を測定し、保温材の劣化部分の検出や配管の腐食潜在箇所を推測)・中性子水分計(保温材の水分量を予測し、腐食潜在箇所を推測)
点検表には「保温(冷)材の損傷、脱落等の有無」という項目が新しく加わりました。
点検方法は目視ですが、異常が見つかれば保温材を外して配管まで確認することが望ましいとされています。
あわせて、配管や塔槽類の各点検項目に「モニタリング技術・診断技術の適用例」が添えられました。
赤外線カメラ・赤外線サーモグラフィー・3Dレーザースキャン・振動計のほか、保温材を外さずに腐食を推定するガイド波やパルス超音波などの技術が例として挙げられています。
これらはいずれも、事業所の設備構成や予算に応じて選べる選択肢として示されたものです。

保温材を外さずに腐食を調べる方法があるんですね。

はい、ただし導入は任意です。
実務で見落としやすい点を次に説明します。

実務で見落としやすいのはどこか

保温材の外観に異常がなくても配管が腐食している場合があることと独自点検表は消防本部との協議が必要なことを示すイメージ
見た目に問題がなければ安心、とは言い切れません。
落とし穴は大きく2つあります。
危険物施設の長期使用に係る調査検討会 中間まとめ(平成31年3月) 事業所における定期点検の実態調査からは、多くの事業所において、48号通知の点検表を活用するとともに、事業所の設備構成等に応じた点検表や点検要領、マニュアル等が作成されていることがわかった。
消防危第73号 第2(点検実施上の留意事項) 48号通知の点検表の様式は、個別の設備構成や自主的な点検項目等に応じ、内容を一部変更したものを用いることも可能であること。この場合において、消防法令上の点検記録として活用するものについては、適切な記載内容となっていることをあらかじめ管轄の消防本部と十分協議しておくことが必要であること。
1つ目は保温材の外観です。
保温材の表面が無事でも、その下の配管まで無事とは限りません。これが保温材下腐食と呼ばれる現象で、目視だけでは発見できません。
2つ目は独自の点検表です。事業所の設備構成に合わせて点検表を加工して使うこと自体は認められていますが、消防法令上の点検記録として扱うには、事前に管轄消防本部と協議しておく必要があります。
協議を省いたまま独自様式だけで点検を続けていると、いざ立入検査で記録を示したときに齟齬が生じかねません。

うちは独自の点検表を使っています。
消防本部に相談したことはありません。

早めに管轄消防本部へ相談しておくと安心です。
最後に、明日からの確認事項をまとめます。

明日からなにを確認すればよいのか

配管の保温材を点検し消防本部と相談しながら新しい点検表を運用することを示すイメージ
ここまでの話を、やることに落とし込みます。
難しい判断は要りません。順番に確かめるだけです。
消防危第73号(平成31年4月15日) これらのことを踏まえ、48号通知を一部改正するとともに、点検実施上の留意事項をとりまとめましたので、危険物施設の関係者への周知をお願いします。
確認は3つで足ります。
自分の施設の点検表に保温材の項目があるかをまず確認します。古い様式のままなら、次回の点検までに更新しておきましょう。
次に、保温材に損傷・脱落・湿潤などの兆候がないかを点検のたびに見ます。兆候があれば保温材を外して配管まで確認することが望ましいとされています。
最後に、独自の点検表を使っている場合や新しいモニタリング技術の導入を考えている場合は、点検業者や管轄消防本部と早めに相談しておきます。次回の点検のタイミングで、この3点を話題に出すところから始めてみてください。

次の点検のとき、保温材の項目を業者に確認してみます。

それでじゅうぶんです。
保温材の項目の確認から始めましょう。

よくある質問

Q保温材に異常がなければ配管は点検しなくてよいですか?
A回答は、保温材の外観に異常がなくても配管が腐食している可能性があるため、点検項目にある目視確認は毎回欠かさず行うこととしています。損傷等が見つかった場合は保温材を外した確認が望ましいとされています。
Qモニタリング技術・診断技術の導入は義務ですか?
A回答は、実施要領に示された技術は適用可能な例であり、導入そのものを義務づけるものではないとしています。導入するかどうかは事業所の判断です。
Q事業所独自の点検表を使ってもよいですか?
A回答は、設備構成や自主的な点検項目に応じて加工した点検表を使うことも可能としていますが、消防法令上の点検記録として扱うには管轄消防本部と事前に協議しておくことを求めています。
Q今回の改正はどの通知に基づいていますか?
A回答は、平成31年4月15日付け消防危第73号により、平成3年5月29日付け消防危第48号「製造所等の定期点検に関する指導指針の整備について」が一部改正されたとしています。

まとめ

✔腐食・疲労等劣化による事故の約8割が配管及び塔槽類で発生しています
✔背景には危険物施設の高経年化があります
✔平成3年の48号通知の点検表に保温材の項目が追加されました
✔保温材の下は外観だけでは腐食の有無が分かりません
✔損傷等があれば保温材を外して点検することが望ましいとされています
✔赤外線カメラや超音波など複数のモニタリング技術の適用例が示されました
✔独自の点検表を使う場合は管轄消防本部との協議が必要です

保温材の項目から確認すればいいと分かりました。
すっきりしました。

保温材の確認、独自様式の協議、そして新技術の検討。
この3つを順に進めれば大きく外しません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「製造所等の定期点検に関する指導指針の整備について」の一部改正及び点検実施上の留意事項について(通知)(平成31年4月15日 消防危第73号)
  • 危険物施設の長期使用に係る検討の進捗状況と当面の取組について(中間まとめ)(危険物施設の長期使用に係る調査検討会 平成31年3月)
  • 製造所等の定期点検に関する指導指針の整備について(平成3年5月29日 消防危第48号)
  • 消防法第14条の3の2

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。点検表の運用や新技術の導入可否は事業所や管轄消防本部ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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