地下に駐車場がある建物を計画すると、設計の打合せで「駐車場には炎感知器が必要です」と言われることがあります。炎感知器は、炎から出る光を見て火災を知らせる感知器です。
国の基準をそのまま読むと、地階や無窓階の駐車場では、ふつうの熱感知器では足りず、炎感知器が残る場面があります。
東大阪市消防局の運用基準は、自動火災報知設備の特例基準の中で、駐車場などで炎感知器を設置しないことができる3つの場合を定めています。
この記事では、国の基準と東大阪市の運用を分けて読み、炎感知器が必要になるまでの条文のつながりを順にたどります。大阪市と堺市の基準とも比べます。
東大阪市で、地下1階を駐車場にする店舗ビルを計画しています。
図面の駐車場に炎感知器が描かれていました。
地階の駐車場なら、国の基準で炎感知器が必要になる場合があります。
まず理由を条文でたどりましょう。
熱感知器ではいけないのですか?
炎感知器は高いと聞きました。
東大阪市の運用基準には、高感度の熱感知器などで炎感知器を置かない特例があります。
条件を順に見ていきます。
- 国の消防法施行規則第23条第5項第6号は、特定の用途の地階・無窓階・11階以上の部分に、煙感知器・熱煙複合式スポット型感知器・炎感知器のどれかを求めています
- 同じ第23条で、排気ガスが多量に滞留する場所には煙感知器と熱煙複合式スポット型感知器を設けないので、駐車場では炎感知器が残ります
- 東大阪市の運用基準は、令第32条又は条例第52条を適用し、駐車場の高感度の熱感知器・高さ20メートル以上の立体駐車場・障害物やヘッドライトの3つの場合に炎感知器を設置しないことができるとしています
- 大阪市にもほぼ同じ3つの特例があります。堺市は高さ20メートル以上の立体駐車場の1つだけで、使える感知器も差動式分布型感知器に限っています
- 特例は消防長又は消防署長が認めて使うものなので、設計の段階で所轄の消防署と協議します
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目次
国の基準では駐車場のどこに炎感知器が必要になるのか

五 感知器を設置する区域の天井等の高さが二十メートル以上の場所
六 前各号に掲げる場所以外の地階、無窓階及び十一階以上の部分(令別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十五)項、(十六)項イ、(十六の二)項及び(十六の三)項に掲げる防火対象物又はその部分に限る。)
では、その地階が駐車場ならどうなるか。同じ第23条の第4項第1号が、感知器を設けない場所を決めています。
(ホ) 排気ガスが多量に滞留する場所
ホ 炎感知器にあつては、ハに掲げる場所のほか、次に掲げる場所
(イ) ニ(ロ)から(ニ)まで、(ヘ)及び(ト)に掲げる場所
条文をつなげると、次の順になります。
- 消防法施行令第21条第1項が、自動火災報知設備が必要な防火対象物を決める
- 施行規則第23条第5項第6号が、特定の用途の地階・無窓階・11階以上の部分に、煙感知器・熱煙複合式スポット型感知器・炎感知器のどれかを求める
- 第23条第4項第1号ニ(ホ)が、排気ガスが多量に滞留する場所には煙感知器と熱煙複合式スポット型感知器を設けないとする
- 第4項第1号ホは、炎感知器を設けない場所に排気ガスの場所を挙げていないので、駐車場の地階などでは炎感知器が残る
- 天井等の高さが20メートル以上の場所は、第5項第5号でもともと炎感知器と決まっている
排気ガスで煙感知器が使えないから、炎感知器しか残らないのですね。
はい、第5項第6号と第4項第1号ニ(ホ)の組み合わせです。
東大阪市の特例は、ここを緩めています。
東大阪市で地階の駐車場は高感度の熱感知器でよいのか

ア 規則第23条第5項第6号の規定により、炎感知器の設置が必要となる地階、無窓階及び11階以上の部分が駐車の用に供されており、かつ、同条第6項第1号に規定する高感度の熱感知器が設置されている場合
ここで言う第6項第1号を、国の条文で確かめます。
ところが駐車場は、前の章のとおり炎感知器なら設けられる場所なので、第6項第1号にはそのまま当たりません。東大阪市のアは、令第32条などを適用して、第6項第1号と同じ扱いの熱感知器で炎感知器に代えることを認めていると読めます。
具体的にどの種別の熱感知器が当たるかは、運用基準のこの項目には書かれていません。図面の段階で所轄の消防署に確かめましょう。
東大阪市の凡例では、印の意味は次のとおりです。
2 ●:行政指導基準であることを示す印
3 ▲:法令基準に行政指導を加えた基準を示す印
高感度の熱感知器にすれば、地階の駐車場でも炎感知器はいらないのですね。
はい、東大阪市では9の(2)アの特例として扱えます。
熱感知器の種別は所轄で確かめましょう。
高さ20メートル以上の立体駐車場はどう扱われるのか

車を上下に運ぶ塔のような立体駐車場は、中の空間が高くなりがちです。イは、垂直循環方式・エレベーター方式・エレベーター・スライド方式の3つに限って、差動式分布型感知器か煙感知器を設置していれば炎感知器を設置しないことができる、としています。
3つの方式以外の立体駐車場は、イの対象に入りません。どの方式にあたるかは、駐車装置の仕様書で確かめます。
なお、東大阪市の特例基準には、周囲が外気に開放された機械式駐車装置について、自動火災報知設備そのものを設置しないことができる特例もあります。こちらは開放性と使用実態で判断する別の項目です。
機械式の立体駐車場でも、方式によって扱いが分かれるのですね。
はい、イは3つの方式に限ると書いています。
仕様書で方式を確かめておきましょう。
障害物やヘッドライトで炎感知器が働きにくいときはどうなるのか

また、車のヘッドライトなどの光で、火災でないのに作動する非火災報のおそれもあります。ウは、こうした場合に炎感知器を設置しないことができる、としています。
ウには、アやイのような代わりに設ける感知器の定めが書かれていません。炎感知器を置かない部分をどう警戒するかは、所轄の消防署と協議して決めることになります。
ヘッドライトで誤って鳴るおそれがあるなら、炎感知器は向かないのですね。
はい、ウはそこを令第32条などで手当てする項目です。
代わりの警戒の方法は所轄と決めましょう。
大阪市や堺市と比べると何が違うのか

(1) 次のいずれかに該当するものについては、規則第23条第5項第6号の規定によらないことができる。
ア 炎感知器の設置が必要となる地階、無窓階及び11階以上の部分が駐車の用に供されており、かつ、規則第23条第6項第1号に定める高感度の熱感知器が設置されている場合
(2) 炎感知器の設置が必要となる高さ20メートル以上である場所のうち、立体駐車場(垂直循環方式、エレベータ方式、エレベータ・スライド方式のものに限る。)で、差動式分布型感知器又は煙感知器が設置されている場合
(3) 炎感知器以外の感知器が適さない場所のうち、障害物等により未監視部分が多く発生し、有効に火災を感知できない場合又は車両のヘッドライト等による非火災報が発生するおそれがある場合は、感知器を設置しないことができる。
大阪市の(1)は、「規則第23条第5項第6号の規定によらないことができる」と書き、国のどの規定を外すのかを明示しています。(3)は「炎感知器以外の感知器が適さない場所のうち」という前置きがあり、最後は「感知器を設置しないことができる」と結んでいます。
柱書に書かれている根拠は、大阪市が「令第32条又は条例第47条」、東大阪市が「令第32条又は条例第52条」です。条例の側の条文の中身は、ここでは扱いません。
堺市消防局の「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」は、自動火災報知設備の特例適用基準に、炎感知器の項目を1つだけ置いています。
比べると次のとおりです。
| 項目 | 東大阪市 | 大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|---|
| 特例の場所 | Ⅱ 細目 9 特例基準 (2) | 第12 特例基準 3 | 第12 Ⅱ 細目 11 特例適用基準 (5) |
| 根拠として書かれている条文 | 令第32条又は条例第52条 | 令第32条又は条例第47条 | 政令第32条 |
| 地階などの駐車場で高感度の熱感知器 | ア(炎感知器を設置しない) | (1)ア(第5項第6号によらない) | 見当たらない |
| 高さ20メートル以上の立体駐車場(3方式) | イ(差動式分布型又は煙) | (2)(差動式分布型又は煙) | (5)(差動式分布型だけ・★) |
| 障害物・ヘッドライト | ウ | (3)(炎感知器以外が適さない場所のうち) | 見当たらない |
| 印 | 無印(法令基準) | ◆なし | ★(堺市の指導基準) |
東大阪市で駐車場の炎感知器を外す計画なら、次の点を確かめます。
- 駐車場の部分が、第23条第5項第6号の用途の地階・無窓階・11階以上か、天井等の高さが20メートル以上の場所か
- 使う特例が、9の(2)のア・イ・ウのどれにあたるか
- アなら、高感度の熱感知器の種別を所轄の消防署と確かめたか
- イなら、立体駐車場が垂直循環方式・エレベーター方式・エレベーター・スライド方式のどれかで、差動式分布型感知器か煙感知器を設けるか
- ウなら、炎感知器を置かない部分の警戒の方法を所轄の消防署と決めたか
堺市は、立体駐車場の特例でも差動式分布型感知器だけなのですね。
はい、同じ大阪府内でも書き方と範囲が違います。
建物のある市の基準で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず駐車場の部分が第5項第6号の地階などにあたるかを確かめます。
使う特例も図面に書き添えます!
東大阪市では、9の(2)と国の第23条を並べて読むのが要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 東大阪市消防局「自動火災報知設備の設置に係る運用基準」凡例、Ⅱ 細目 9 特例基準(柱書・(2)ア〜ウ) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第2章 第1節 自動火災報知設備 第12 特例基準(柱書・3(1)ア・(2)・(3)) https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」総則 凡例、第12 自動火災報知設備 Ⅱ 細目 11 特例適用基準 (5) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 消防法施行令 第21条第1項、第32条/消防法施行規則 第23条第4項第1号イ・ニ・ホ、第5項、第6項第1号(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および東大阪市・大阪市・堺市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。各資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。個々の建物で炎感知器を設置しないことができるかは、令第32条などの適用について設計の段階で所轄の消防署にご確認ください。





