地下街や大きな地階の飲食店では、ガス管が外から建物へ入ってくる所にもガス漏れ検知器を付けます。
国の消防法施行規則は、この場所を貫通部と呼び、受信機でほかの検知器と区別して表示できるよう求めています。
鈴鹿市消防本部の審査基準は、もう一歩進めて、貫通部の検知器の警戒区域をほかと分けるよう指導しています。
国の規則から鈴鹿市の基準までたどり、津市・埼玉県央広域・四日市市・堺市・大阪市の書き方と比べます。
鈴鹿市で地下に飲食店が入るビルを管理しています。
設備業者から、ガス管の入口の検知器は別の警戒区域にすると言われました。
鈴鹿市の審査基準に、その扱いが行政指導として書かれています。
まず国の規則が何を決めているかから確かめましょう。
津市にも同じような建物があるのですが、扱いは同じでしょうか。
津市はさらに、貫通部が複数あれば貫通部ごとに警戒区域を分けると書いています。
消防本部ごとの違いを順に見ていきます。
- 消防法施行規則第24条の2の3は、燃料用ガスの導管が外壁を貫通する場所を貫通部とし、そこから水平距離8m以内(重いガスは4m以内)に検知器を付けるよう定めている
- 国は、貫通部の検知器の警戒区域を受信機でほかの検知器と区別して表示できることを求めている
- 鈴鹿市と埼玉県央広域は、貫通部の検知器の警戒区域を貫通部以外と区別するよう▲(行政指導)で定め、貫通部に当たる部分を同じ図で示している
- 津市は、貫通部の警戒区域を別にするだけでなく、貫通部が複数あれば各貫通部ごとに一の警戒区域を設けるとしている
- 距離の測り始めは、鈴鹿市・県央広域・四日市市・堺市が外壁の室内に面するガス配管、大阪市がガス配管の中心、津市が導管の貫通する部分と書いている
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目次
国はガス管が外壁を通る所の検知器をどう決めているのか

検知器をどこに付けるかは、消防法施行規則第24条の2の3が細かく決めています。
一 (略)イ 検知対象ガスの空気に対する比重が一未満の場合には、次の(イ)から(ニ)までに定めるところによること。
(イ)燃焼器(略)又は貫通部(同項第一号、第二号、第四号若しくは第五号に掲げる防火対象物若しくはその部分又は同項第三号に掲げる防火対象物の部分で消防庁長官が定めるものに燃料用ガスを供給する導管が当該防火対象物又はその部分の外壁を貫通する場所をいう。以下同じ。)から水平距離で八メートル以内の位置に設けること。(略)
ロ (略)(イ)燃焼器又は貫通部から水平距離で四メートル以内の位置に設けること。(略)
三 (略)ロ 貫通部に設ける検知器に係る警戒区域は、他の検知器に係る警戒区域と区別して表示することができること。
四 (略)ハ (略)ただし、警報機能を有する検知器を設置する場合並びに機械室その他常時人がいない場所及び貫通部には、検知区域警報装置を設けないことができる。
貫通部は、燃料用ガスの導管が建物の外壁を貫通する場所のことで、燃焼器と同じく、空気より軽いガスなら水平距離8m以内、重いガスなら4m以内に検知器を付けます。
対象は、施行令第21条の2第1項の第1号((16の2)項の地下街で延べ1,000㎡以上)・第2号((16の3)項の準地下街)・第4号と第5号(特定用途の地階で床面積1,000㎡以上など)の建物で、温泉の第3号は消防庁長官が定める部分に限られます。
第3号ロは、受信機が貫通部の検知器の警戒区域を区別して表示できることを求めていて、第4号ハは、貫通部には検知区域警報装置を置かなくてよいとしています。
ただし、警戒区域をどう分けるかまでは条文に書かれていません。
明日やることは、ガス管が建物へ入る位置を設備図で確かめ、その近くに検知器が付いているかを見ることです。
厨房のコンロだけでなく、ガス管の入口にも検知器が要るのですね。
はい、受信機の上でも入口の検知器だと見分けられることが求められます。
その見分け方を市の基準が補っています。
鈴鹿市は貫通部の警戒区域をなぜほかと分けるのか

鴻巣市・桶川市・北本市を受け持つ埼玉県央広域消防本部の審査基準にも、同じ趣旨の文があります。
貫通部(燃料用ガスを供給する導管が防火対象物又はその部分の外壁を貫通する場所をいう。以下この項において同じ。)に設ける検知器に係る警戒区域の設定
ガス漏れを速やかに検知し、かつ、適切な措置を講ずることを可能とするため、貫通部以外に設ける検知器に係る警戒区域とは区別する。▲(第11-3図参照)この場合において、貫通部として検知器の設置を要する部分は、第11-4図の例による。
埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準 第4章 第11 3⑶
(同じ趣旨で「貫通部以外に設ける検知器に係る警戒区域と区別すること。▲」)
鈴鹿市の凡例では、無印が法令基準、▲が行政指導、●が法令基準に行政指導を加えた基準で、この3⑴イには▲が付いています(画像で確かめました)。
国の規則が求めるのは受信機で「区別して表示できること」ですが、鈴鹿市は警戒区域そのものを貫通部とそれ以外に分けて設定するよう求めています。
第11-3図は、一辺50mの店舗街を1つの警戒区域にし、導管が外壁を通る一角だけを別の番号の警戒区域にした例です。
理由として書かれているのは「ガス漏れを速やかに検知し、かつ、適切な措置を講ずることを可能とするため」で、県央広域も同じ文に▲を付けています。
明日やることは、受信機の警戒区域一覧で、貫通部の検知器が店舗の検知器と同じ番号になっていないかを確かめることです。
番号が分かれていれば、鳴ったときに入口の漏れだとすぐ分かりますね。
そう読めます。
新しく受信機を入れるときは、警戒区域の割り方を設計の段階で決めておきましょう。
地下道に並ぶ建物ではどの壁を通る所が貫通部になるのか

図は3つの例を描いていて、最初の2つは(16の3)項の準地下街です。
(その1)(16の3)項に掲げる防火対象物の場合の例:地下道に面してA対象物とB対象物が並び、ガス導管が両方を通っている。導管がそれぞれの対象物の外壁を通る所が貫通部で、その室内側に検知器を設ける。
(その2)(16の3)項に掲げる防火対象物の場合の例(A対象物及びB対象物のそれぞれに外壁があり、密着している場合):境目でも、それぞれの外壁を通る所の両側に検知器を設ける。
図のL:空気に対する比重が1を超える(空気より重いガス)場合:4m以上/空気に対する比重が1未満(空気より軽いガス)の場合:8m以上
(その1)は、地下道に面して並ぶ2つの対象物をガス導管が順に通る形で、それぞれの入口と出口の外壁に検知器を描いています。
(その2)は、2つの対象物がくっついて建っていても、それぞれに外壁があれば境目の両側に1個ずつ検知器を付ける例です。
どちらの図も、対象物の幅Lが空気より重いガスで4m以上、軽いガスで8m以上ある場合として描かれていて、1個の検知器で両端を受け持てない幅を前提にしています。
下のあわせて読みたいで紹介している質疑応答でも、(16の3)項で対象物が並ぶ場合はすべての貫通部に設置を要するとされていて、図はこれと同じ考え方です。
明日やることは、隣の建物とつながる地下の壁をガス管が通っていないかを設備図で追い、通っていれば両側の検知器の有無を確かめることです。
隣のビルとくっついていても、壁の両側に1個ずつ要るのですね。
図の上ではそうなっています。
それぞれの外壁があるかどうかを図面で確かめるのが出発点です。
建物の中の壁を通る所と距離の測り始めはどう決まるのか

あわせて、貫通部から8mや4mをどこから測るかも、鈴鹿市は図で示しています。
第11-4図(その3)(5)項イに掲げる防火対象物の場合の例(図の要旨):耐火構造の壁で仕切ったA室・B室・C室をガス導管が通っている。検知器は、導管が外壁を通るC室の側だけに描かれている。
3⑶イ(ア) 省令第24条の2の3第1項第1号イ(イ)及びロ(イ)に規定する水平距離の算定は、次による。(略)c 貫通部は、外壁の室内に面するガス配管からの水平距離(第11-7図参照)
3⑶イ(ウ) 空気に対する比重が1を超える場合 a 床面に段差がある場合 燃焼器又は貫通部を設ける側に検知器を設ける。 b 燃焼器又は貫通部から水平距離4m以内に床面から0.3mを超えるカウンタ一等がある場合 検知器は燃焼器又は貫通部の側に設ける。
(その3)では、A室からC室までを仕切る耐火構造の壁をガス導管が通っていても、検知器は導管が外壁を通る所の室内側にだけ描かれています。
国の規則の定義が「防火対象物又はその部分の外壁を貫通する場所」なので、建物の中の間仕切りは貫通部に当たらないという読み方と合っています。
距離の測り始めは「外壁の室内に面するガス配管」で、第11-7図は、壁の室内側で配管が出てくる点を中心に半円を描き、遮断弁の位置ではないことを示しています。
重いガスでは、床の段差やカウンターがあれば検知器を貫通部の側に置くとしていて、測り方と重いガスの項目には記号がありません(法令基準。画像で確かめました)。
明日やることは、ガス管が壁から出てくる点にメジャーを当て、検知器までの水平距離が8m(重いガスは4m)に収まっているかを測ることです。
遮断弁からではなく、壁から出てくる所から測るのですね。
はい、鈴鹿市の図はそう描いています。
壁の中に配管が隠れている所は、出てくる点を図面で押さえておくと迷いません。
ほかの消防本部は貫通部をどう扱っているのか

いちばん踏み込んでいるのは津市です。
1⑴イ ガスを供給する導管が外壁を貫通する場所(以下「貫通部」という。)の屋内側の付近
8 警戒区域(燃焼器又は貫通部に設置するものに限る。)(略)
⑵ 貫通部に設ける検知器に係る警戒区域は、他の検知器に係る警戒区域と別とすること。
⑶ 一の防火対象物において貫通部が複数箇所存在する場合は、各貫通部ごとに一の警戒区域を設けること。
津市は、検知器を置く場所に「貫通部の屋内側の付近」を挙げ、警戒区域を別にするうえ、貫通部が複数あれば各貫通部ごとに一の警戒区域とします(凡例の記号はない基準です)。
鈴鹿市と県央広域は貫通部以外と区別するとだけ書き、貫通部どうしを分けるかは書いていません。
四日市市と大阪市は警戒区域の項で貫通部に触れておらず、堺市は警戒区域の根拠に国の第3号ロを挙げるだけで、独自の定めは置いていません。
測り始めは、四日市市と堺市が「外壁の室内に面するガス配管の中心」、大阪市が「ガス配管の中心」、津市が「外壁をガス導管が貫通する部分」と書き、言い回しが少しずつ違います。
明日やることは、建物の所在地の基準でガス漏れ火災警報設備の警戒区域の項を開き、貫通部の扱いを設計者と確かめることです。
| 消防本部 | 貫通部の警戒区域 | 距離の測り始め |
|---|---|---|
| 鈴鹿市 | 貫通部以外と区別する(▲)・貫通部に当たる部分は第11-4図 | 外壁の室内に面するガス配管から(記号なし) |
| 埼玉県央広域(鴻巣市・桶川市・北本市) | 貫通部以外と区別する(▲)・同じ図 | 外壁の室内に面するガス配管から(記号なし) |
| 津市 | ほかと別にする・貫通部が複数なら各貫通部ごとに一の警戒区域 | 外壁をガス導管が貫通する部分から |
| 四日市市 | 貫通部の定めは見当たらない | 外壁の室内に面するガス配管の中心から(下線なし) |
| 堺市 | 国の第3号ロの規定によるほか、貫通部の定めは見当たらない | 外壁の室内に面するガス配管の中心から |
| 大阪市 | 貫通部の定めは見当たらない | ガス配管の中心から |
- 消防法施行令第21条の2第1項:地下街・準地下街・特定用途の地階などにガス漏れ火災警報設備を置く
- 消防法施行規則第24条の2の3第1項第1号イ(イ)・ロ(イ):貫通部から水平距離8m以内(重いガスは4m以内)に検知器
- 同 第3号ロ:受信機は貫通部の検知器の警戒区域を区別して表示できること
- 鈴鹿市 第4章 第11 3⑴イ(▲):貫通部の警戒区域を貫通部以外と区別する → 貫通部に当たる部分は第11-4図
- 同 3⑶イ(ア)c(記号なし):距離は外壁の室内に面するガス配管から測る(第11-7図)
つまり、ガス管の入口が2か所ある建物だと、津市では入口の分だけで警戒区域が2つになるのですね。
津市の文はそう読めます。
受信機の回線の数にも関わるので、見積りの前に確かめておきましょう。
よくある質問
まとめ
まずは設備図で、ガス管が外壁を通る位置に印を付けてみます!
印の横に警戒区域の番号も書き込むと、点検のときにすぐ照らし合わせられます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第21条の2(e-Gov法令検索)
- 消防法施行規則 第24条の2の2・第24条の2の3(e-Gov法令検索)
- 鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準 第4章 第11 ガス漏れ火災警報設備 3⑴・3⑶・第11-3図・第11-4図・第11-7図(鈴鹿市消防本部)
- 埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準 第4章 第11 ガス漏れ火災警報設備 3⑶・5⑵(埼玉県央広域消防本部)
- 津市予防事務審査検査基準 5-12 ガス漏れ火災警報設備 1・5・8(津市消防本部)
- 四日市市消防同意事務審査基準 第2章 第11 ガス漏れ火災警報設備 1⑸・2⑶(四日市市消防本部)
- 消防用設備等の審査基準 第13 ガス漏れ火災警報設備 Ⅰ2・Ⅱ1⑹・Ⅱ2⑶(堺市消防局)
- 消防用設備等の設置に係る運用基準 第2節 ガス漏れ火災警報設備 第3・第6 1(大阪市消防局)
※本記事は鈴鹿市消防本部などが公表している審査基準・運用基準と、消防法施行令・消防法施行規則に基づく一般的な解説です。鈴鹿市・県央広域の▲は行政指導の基準を表し、四日市市の基準は行政指導の部分に下線を引いています。図の内容は要旨を自分の言葉でまとめたものです。「見当たらない」としたものは、各本部のガス漏れ火災警報設備の基準を確認した範囲の結果です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





