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危険物施設の保有空地はなぜ塀と散水設備で削減できるようになったのか|高圧ガス施設との保安距離の特例もあわせて解説

危険物施設の保有空地と保安距離を塀と散水設備で削減する仕組みを示したイメージ

危険物施設の周囲には、火災の延焼を防ぐための保有空地や保安距離を保つことが法令で義務付けられています。
この空地・距離の幅は、施設の規模や取扱う危険物の量から決まった数値が長く使われてきました。
令和8年6月、危険物の規制に関する規則にこの数値の考え方を見直す改正が加わりました。
通知が示したのは耐火構造の塀と散水設備を備えれば保有空地や保安距離を削減できるという新しい線引きです。

施設の周りの空地を削減できる場合があると聞きました。
うちの危険物施設にも関係あるのでしょうか。

耐火構造の塀と散水設備を備える施設なら関係します。
令和8年6月の改正で、新しい特例が加わりました。

空地の幅を削っても、火災のときに安全なのでしょうか。

はい、輻射熱の計算で安全性を確かめる仕組みです。
保有空地と保安距離の2つを順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 令和8年6月29日、危険物の規制に関する規則に保有空地と保安距離の特例基準が加わりました(消防危第156号)
  • 対象は危険物施設の周囲の保有空地と、高圧ガス施設等との間の保安距離の2つです
  • 耐火構造の塀の設置と散水設備等による冷却措置を講じれば、輻射熱の基準を満たす範囲内で空地・距離を削減できます
  • 危険物施設の出入口等の周辺には消防活動のための空地を別途保有することが条件です
  • この省令改正は公布の翌日、令和8年6月30日から施行済みです

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危険物施設の保有空地や保安距離が塀と散水設備で削減できることを示したインフォグラフィック

危険物施設の保有空地や保安距離はなぜ見直されたのか

危険物施設の周囲の保有空地と改正の通知文書を示したイメージ
危険物施設は、火災が起きたときに周囲へ延焼させないための空地や距離をあらかじめ保つ設計になっています。
この空地・距離の幅は、施設の規模や取扱う危険物の量から決まった数値がこれまで使われてきました。
消防危第156号「危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令等の公布について」(令和8年6月29日) 危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令(令和8年総務省令第83号)及び危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示の一部を改正する件(令和8年総務省告示第241号)が令和8年6月29日に公布されました。(略)第1 改正内容に関する事項 1 危険物施設の周囲に保有する空地に係る規制の見直しについて 危険物施設の周囲に保有する空地(以下「保有空地」という。)について、当該危険物施設の周囲に耐火構造の塀の設置その他の防火上有効な措置を講じ、延焼防止上有効に冷却するための散水設備等を設け、及び当該危険物施設の出入口等の周辺に消防活動のための空地を保有する場合には、Ⅰ及びⅡの要件を満たす範囲内において保有空地の幅を減じ、又はⅠ及びⅡの要件を満たすときに保有空地を保有しないことができるように規制の特例を拡大したこと。
これまでの空地・距離は、塀や冷却設備を前提としない数値でした。
令和8年6月の改正で、耐火構造の塀と散水設備によって延焼を防げることが確かめられれば、その分だけ空地や距離を削減できるという考え方が明文化されました。
見直しの対象になるのは、危険物施設の周囲そのものに保つ保有空地と、危険物施設と高圧ガス施設等の間に保つ保安距離の2つです。
どちらも、単純な距離の数値に代わる新しい計算方法が用意された形になります。

距離の数字が動くのではなくて、計算方法が増えたということですね。

そのとおりです。
次にどの空地・距離が対象になるかを見ていきましょう。

保有空地と保安距離のどちらが対象になるのか

危険物施設と高圧ガス施設の間の保安距離を示したイメージ
特例が使えるのは、どの空地・距離なのか。
通知が挙げている条文から、対象の範囲を確かめます。
消防危第156号 第1 改正内容に関する事項 2 危険物施設と高圧ガス施設等の間に設ける保安距離に係る規制の見直しについて 危険物施設と高圧ガス施設等の間に設ける保安距離について、耐火構造の塀の設置その他の防火上有効な措置を講じた場合には、Ⅰ及びⅡの要件を満たす距離を当該保安距離とすることができるように規制の特例を設けたこと。(規則第13条の6及び告示第2条の3関係)
保有空地は危険物の規制に関する規則第13条の6・第16条の2の3・第16条の2の4・第22条の2の3・第24条の12が対象です。
これらの条文はそれぞれ屋内貯蔵所・屋外タンク貯蔵所など施設の種類ごとに保有空地を定めており、令和8年6月の改正はこの複数の条文に同じ考え方の特例を横断的に加えました。
保安距離のほうは規則第13条の6が対象で、危険物施設と高圧ガス施設等の間に保つ距離に限って新しい特例が設けられています。
どちらの条文も、これまでの数値そのものが変わるのではなく、塀と散水設備を条件にした特例が既存の枠の中に加わる形で改正されています。

保有空地と保安距離で、対象になる条文が違うんですね。

はい、そのとおりです。
次に特例を使うための具体的な要件を見ていきましょう。

特例を使うにはどんな要件を満たせばよいのか

耐火構造の塀と散水設備を備えた危険物施設を示したイメージ
保有空地の特例に絞って、実際の要件を見ます。
求められているのは、火災を想定した2方向の検証です。
消防危第156号(略) Ⅰ 危険物施設で火災が発生するものとした場合において、当該火災の輻射熱により、当該危険物施設に隣接する建築物等の外壁等が、燃焼せず、かつ、防火上又は構造耐力上支障のある損傷を生じないこと。 Ⅱ 危険物施設に隣接する建築物等で火災が発生するものとした場合において、当該火災の輻射熱により、当該危険物施設の外壁等が、燃焼せず、かつ、防火上又は構造耐力上支障のある損傷を生じないこと。
自分の施設が火元でも、隣が火元でも、互いに燃え移らないことを確かめる2方向の要件です。
Ⅰは危険物施設で火災が起きた場合に隣の建築物が燃えないことを、Ⅱは逆に隣の建築物で火災が起きた場合に危険物施設が燃えないことを求めており、片方向だけでは足りません。
この判定に使われるのが輻射熱の計算で、耐火構造の塀と散水設備等による冷却がこの計算上の条件になります。
あわせて、危険物施設の出入口等の周辺には消防活動のための空地を別途保有することも条件に含まれています。

自分の施設側だけでなく、隣の建物側からも確認するんですね。

はい、双方向で安全を確かめる仕組みです。
次は実務で見落としやすい点を確認しましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

輻射熱の計算報告書と耐火構造の塀を示したイメージ
塀さえ建てれば空地や距離を減らせる、と誤解しやすい制度です。
実際にはもう1段階、確認すべき点があります。
消防危第156号(略) Ⅱ 危険物施設に隣接する高圧ガス施設等で火災又は爆発が発生するものとした場合において、当該危険物施設が以下の基準に適合すること。 ・当該火災の輻射熱により当該危険物施設の外壁等が燃焼せず、かつ、当該火災の輻射熱又は当該爆発の爆風圧により当該危険物施設の外壁等が防火上又は構造耐力上支障のある損傷を生じないこと。 ・当該火災の輻射熱又は当該爆発の爆風圧により、当該危険物施設の保安に関する設備がその機能に支障を生じず、かつ、当該危険物施設で貯蔵し、又は取り扱う危険物の温度及び圧力が過度に上昇しないこと。
塀を建てただけでは特例の条件を満たしたことになりません。
保有空地・保安距離のいずれも、輻射熱の計算による実証があって初めて要件を満たしたと認められる仕組みで、塀の設置はその計算の前提条件の一つにすぎません。
さらに高圧ガス施設等との保安距離では、火災の輻射熱だけでなく爆発の爆風圧も基準に含まれており、保有空地の要件より確認する項目が1つ多くなります。
出入口等の周辺に必要な消防活動のための空地も、削減した空地とは別枠で確保しておく必要があります。

塀を建てる計画だけで満足するところでした。

計算による実証まで含めて1セットです。
迷ったら所轄の消防署に確認してください。

明日からなにを確認すればよいのか

図面を確認する様子と消防署への相談を示したイメージ
施行日は公布の翌日、令和8年6月30日です。
新設・改修のどちらを検討している場合でも、確認する順番は同じです。 確認は対象・条件・計算・相談の順で進めます。
まず、自社の施設で削減を検討したいのが保有空地なのか保安距離なのかを確認します。
次に、耐火構造の塀と散水設備等の冷却措置、そして消防活動のための空地を実際に用意できるかを図面で確かめます。
そのうえで輻射熱の計算による実証が必要になるため、この段階で所轄消防署に事前相談し、必要な計算書の様式や審査の進め方を確認しておくと計画がぶれません。
新設や増改築を計画している場合は、この4点を設計の初期段階でまとめておくと、許可申請の手戻りを防げます。

対象・条件・計算・相談の順で確認すればいいんですね。

そのとおりです。
次に進む前に、この4点を書き出しておくと確実です。

よくある質問

Q高圧ガス施設等とは具体的に何を指しますか?
A高圧ガスを製造・貯蔵・消費する施設で、危険物施設との間に一定の保安距離を保つことが規則で定められています。今回の改正は、この保安距離を耐火構造の塀の設置等を条件に短縮できる特例を新設するものです。
Q保有空地をゼロにすることもできますか?
A通知はⅠ及びⅡの要件を満たすときに保有空地を保有しないことができるとしており、幅を減らすだけでなく保有しないことまで認める特例です。ただし消防活動のための空地は別途保有する必要があります。
Q輻射熱の計算は自社で行ってよいのですか?
A通知には計算の実施主体までは書かれていません。最終的にⅠ及びⅡの要件を満たすと判断するのは所轄消防署になるため、計算の進め方や必要な様式は早い段階で消防署に確認してください。
Qこの特例はいつから使えますか?
A危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令(令和8年総務省令第83号)は、公布の日の翌日である令和8年6月30日から施行されています。新設・改修を検討している場合は、この施行日以降の基準で計画してください。

まとめ

✔令和8年6月29日公布の消防危第156号で、保有空地と保安距離の削減を認める特例が加わりました
✔保有空地は規則第13条の6・第16条の2の3・第16条の2の4・第22条の2の3・第24条の12が対象です
✔保安距離は規則第13条の6が対象で、相手は高圧ガス施設等に限られます
✔耐火構造の塀と散水設備等の冷却措置、消防活動のための空地の確保が前提条件になります
✔輻射熱の計算による実証があって初めて要件を満たします。塀の設置だけでは足りません
✔高圧ガス施設等との保安距離では爆発の爆風圧も基準に含まれます
✔施行日は公布の翌日の令和8年6月30日です

空地を削減できる条件がよく分かりました!

塀と散水設備、それに輻射熱の計算の3つを確認してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令等の公布について(令和8年6月29日 消防危第156号 消防庁危険物保安室長)
  • 危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令(令和8年総務省令第83号)
  • 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第13条の6

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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