共同住宅やホテルの屋上に、灯油を送るための小さなタンクが置かれていることをご存知でしょうか。
これは中継タンクと呼ばれ、専用タンクから各戸のボイラーまで灯油を届ける仕組みの中継地点です。
設置場所や容量を誤ると、屋上から灯油が漏れ出す重大な事故につながりかねません。
今回は共同住宅等の燃料供給施設における中継タンクの技術基準を解説します。
うちのマンションの屋上にある小さいタンク、何のためにあるのか気になっていたんです。
それは中継タンクですね、専用タンクから各戸のボイラーへ灯油を送るための設備です。
耐火構造の建物であることや、容量・防油堤など細かい基準が決まっているんですよ。
この記事の結論
- 共同住宅等の燃料供給施設は、平成15年8月6日付け消防危第81号が定める技術指針に従う必要があります
- 設置場所は耐火構造の建築物、または壁・柱・床・はり・屋根・階段を不燃材料で造った建築物に限られます
- 一の中継タンクの容量は1,000リットル未満と定められています
- 屋上に設置する場合は、容量以上の防油堤を鉄筋コンクリートで設ける必要があります
- 監視・制御は管理人・外部委託・遠隔監視の3方式から選べますが、遠隔で制御できない方式では即応体制が必須です
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共同住宅の灯油タンクはなぜ新しい運用指針が必要になったのか
古い運用基準のままでは対応しきれない新しい供給方式が登場したことが、指針づくりの出発点です。
共同住宅の灯油タンクは、実は40年以上前から国の基準で運用されてきました。
共同住宅等の燃料供給施設に関する運用上の指針について(平成15年8月6日付け消防危第81号 消防庁危険物保安室長、改正 平成16年6月消防危第61号) 共同住宅等における燃料供給施設については、従前より「配管による灯油の供給施設に関する運用基準について」(昭和44年11月26日付け消防予第269号)により運用をお願いしているところですが、今般、新たな供給方式の開発・普及が見込まれること等を踏まえ、下記のとおり運用上の指針を定めました。
共同住宅の灯油タンクは、昭和44年の通知からずっと同じ枠組みで運用されてきました。
ところが電話回線を使った遠隔監視など、
新しい供給方式が開発・普及し始めたことで、旧基準だけでは対応しきれない場面が出てきました。
そこで消防庁は
平成15年、専用タンク・中継タンク・戸別タンクという構成を前提にした新しい運用指針を定め直しました。
この指針が、今も共同住宅等の燃料供給施設を扱うときの拠りどころになっています。
40年以上前の基準がベースになっているとは知りませんでした。
そこに新しい供給方式が加わったので、指針が整理し直されたんです。
共同住宅等の燃料供給施設とはどんな設備を指すのか
対象になるのは、共同住宅の給湯・暖房に灯油や重油を配る一連の設備です。
タンクは役割ごとに3種類に分かれています。
共同住宅(一部に貸事務所・店舗を有するものも含む。)、学校、ホテル等(以下「共同住宅等」という。)に灯油又は重油(以下「灯油等」という。)を供給する燃料タンクを設け、これから各戸又は各教室に設けられている燃焼機器に配管によって灯油等を供給する施設(以下「共同住宅等の燃料供給施設」という。) 「中継タンク」:専用タンクと戸別タンクとの間に中継のために設けられるタンク 「戸別タンク」:専用タンクから各戸の燃焼機器までの間に設けられるタンクのうち最も燃焼機器に近いタンク
灯油は専用タンクから中継タンクを経て、戸別タンクへと段階を踏んで送られます。
出発点の
専用タンクは、灯油等を貯蔵する主たる燃料タンクです。
そこから配管で
中継タンクへつなぎ、さらに各戸にいちばん近い
戸別タンクまで届けます。
この3段構成を知っておくと、このあとの技術基準がどの段階の話なのか整理しやすくなります。
屋上の小さいタンクは、この中継タンクにあたるんですよ。
中継タンクを屋上に置くにはどんな基準を満たす必要があるのか
屋上という特殊な場所に置くからこそ、細かい技術基準が用意されています。
建物そのものの構造から、タンクの容量、漏れたときの備えまで3段階です。
一般取扱所となる共同住宅等の燃料供給施設に関する技術指針 1 中継タンクを有する供給方式 (1) 設置場所は、耐火構造の建築物又は壁、柱、床、はり、屋根及び階段を不燃材料で造った建築物とすること。 (3) 中継タンクは、次によること。 ア 一の中継タンクの容量は、1,000リットル未満とすること。この場合において、中継タンクは、一の施設につき複数設けることができること。 イ 中継タンクを屋上に設ける場合は、灯油等が漏れたときにその流出を防止するため、次により周囲に防油堤を設けること。 (ア) 防油堤の容量は、中継タンクの容量(中継タンクが複数設けられる場合には、最大のものの容量)以上とすること。 (イ) 防油堤は、鉄筋コンクリートで造り、その中に収納された灯油等が当該防油堤の外に流出しない構造であること。 (ウ) 防油堤には、雨水の浸入を防ぐ、不燃材料で造った覆いを設けること。
危険物の規制に関する政令第19条第1項 第9条第1項の規定は、一般取扱所の位置、構造及び設備の技術上の基準について準用する。 同令第23条(基準の特例) この章の規定は、製造所等について、市町村長等が…火災の発生及び延焼のおそれが著しく少なく…認めるときにおいては、適用しない。
中継タンクの容量が1,000リットル未満に抑えられているのは、屋上という設置環境のリスクを最小限にするためです。
建物は
耐火構造、または壁・柱・床・はり・屋根・階段を不燃材料で造ったものに限られます。
屋上に設ける場合は、漏れた灯油を受け止める
防油堤を
鉄筋コンクリートで造る必要があります。
容量・構造のどちらか一方だけを満たしても、中継タンクは屋上に設置できません。
容量と防油堤、両方そろって初めて屋上に置けるんですね。
どちらか片方だけでは、屋上設置は認められないんです。
灯油の監視や制御は誰が行ってもよいのか
見落としやすいのは、遠隔監視を選べば安心とは限らない点です。
方式によって、できることとできないことが変わります。
危険物施設となる共同住宅等の燃料供給施設においては、法第13条第3項の規定に従って危険物の取扱いを行う必要があること。 通常の燃料消費に伴う危険物の取扱いについても、危険物取扱者による取扱い等が必要であるが、次のいずれかにより運用することとして差し支えないこと。 ア 危険物取扱者の資格を有する共同住宅等の管理人等が監視・制御等を行う方式 イ 共同住宅等が管理会社、燃料の販売店等に業務を外部委託し、当該管理会社、販売店等の危険物取扱者が監視・制御等を行う方式。この場合において、当該危険物取扱者は、監視・制御等を行う共同住宅等において、異常がないことを1日1回以上確認すること。 ウ 電話回線等を活用して、戸別タンクへの灯油等の供給に関する監視・制御等を当該施設の所在する場所と異なる場所において行う方式 なお、危険物の取扱い状況を監視することはできるが、遠隔制御することができない方式にあっては、漏えい等の異常を検知した場合に即応できる体制を構築する必要があること。
電話回線を使った遠隔監視は、監視ができても弁を閉める制御まではできないことがあります。
監視・制御の方式は
管理人・
外部委託・
遠隔監視の3つから選べますが、優劣がある訳ではありません。
ただし遠隔で制御まではできない方式を選んだ場合は、漏えいを検知したときの
即応体制を別に用意しておく必要があります。
「監視できている」ことと「止められる」ことは、必ずしも同じではありません。
遠隔監視にすれば全部おまかせできると思っていました。
止められない方式なら、駆けつける体制まで決めておく必要があるんです。
監視の委託契約で何を確認すればよいのか
最後は、実際に管理を任せるときに確認すべき手順です。
契約書と体制図を照らし合わせることが出発点になります。
また監視・制御等が当該施設の所在する市町村の区域外において行われるときには、当該施設が設置される区域を管轄する市町村長等は、当該施設の監視・制御等をする施設の設置される区域を管轄する市町村長…と必要に応じ情報交換等を行う必要があること。
委託先が別の市町村にある遠隔監視は、自治体どうしの情報交換まで前提になっています。
まず契約書に、監視・制御の方式が
管理人・
外部委託・
遠隔監視のどれなのか明記されているかを確認してください。
遠隔監視だけの場合は、異常検知時に誰がどれだけの時間で駆けつけるのか、
即応体制まで書面で確かめます。
専用タンク・中継タンクが技術基準に適合しているかは、自己判断せず所轄消防署や専門業者に確認するのが確実です。
契約書を見比べればいいだけなら、うちでもできそうです。
方式と体制さえ書面で確認すれば、取り違えは防げますよ。
よくある質問
Q共同住宅の灯油タンクにも消防法の危険物規制がかかるのですか?
Aはい、専用タンクの容量が指定数量以上の場合、共同住宅等の燃料供給施設は一の一般取扱所として消防法第3章の規制を受けます。
Q中継タンクの容量に上限はありますか?
Aはい、一の中継タンクの容量は1,000リットル未満と定められていますが、一の施設につき複数設けることは認められています。
Q遠隔監視だけで灯油タンクを管理できますか?
A監視はできても遠隔で弁を閉める制御まではできない方式の場合、漏えい等の異常時に即応できる体制を別途構築する必要があります。
Qこの基準は今も有効ですか?
Aはい、危険物の規制に関する政令第9条・第12条・第13条・第19条・第23条という技術基準の枠組みは、現行の政令にそのまま引き継がれています。
まとめ
✔共同住宅等の燃料供給施設は、平成15年8月6日付け消防危第81号の技術指針に従います
✔設置場所は耐火構造の建築物、または壁・柱・床・はり・屋根・階段を不燃材料で造った建築物に限られます
✔専用タンクは危険物の規制に関する政令第12条・第13条が定める屋内外タンクの基準の例によります
✔一の中継タンクの容量は1,000リットル未満と定められています
✔屋上に設置する場合は、容量以上の防油堤を鉄筋コンクリートで設ける必要があります
✔監視・制御は管理人・外部委託・遠隔監視の3方式から選べますが、遠隔で制御できない方式は即応体制が必須です
✔施設が別の市町村で監視される場合は、管轄する市町村長どうしの情報交換が必要です
これで屋上のタンクを見る目が変わりました、確認すべきこともはっきりしました!
お役に立てて何よりです、㈱防災屋でもご相談を承っております。
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この記事を書いた人
㈱防災屋Web編集部
元消防士、行政書士、高専卒など
防火管理者には「セルフ選任」と「プロ代行」の2択があることをもっと多くの方々に知ってもらい、世の中の防火管理レベルをもっと上げていきたい。
0にはできない火災リスクとの向き合い方を伝え、救える命を増やし、悲しみの総量を減らしたい。
後悔してからでは遅すぎる火災予防に、Webの力で取り組む㈱防災屋の編集部です。
監修・編集者
青木 俊輔
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
主な活動
参考・出典
- 共同住宅等の燃料供給施設に関する運用上の指針について(平成15年8月6日付け消防危第81号 消防庁危険物保安室長、改正 平成16年6月消防危第61号)
- 配管による灯油の供給施設に関する運用基準について(昭和44年11月26日付け消防予第269号)
- 消防法第13条第3項
- 危険物の規制に関する政令第9条・第12条・第13条・第19条・第23条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。