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自衛消防の体制は要員をそろえれば足りるのか|消防計画で明確にする4つの実施レベルを解説

自衛消防の体制は要員をそろえれば足りるのかというタイトルを載せた防災用品の保管庫の写真

自衛消防組織には何人置けばよいのか、という質問を現場でよく受けます。
条文をたどると業務ごとの員数がすぐに見つかるので、その数をそろえて一安心となりがちです。
ところが消防庁のガイドラインは、人数の先にある実施レベルまで決めておくよう求めています。
この記事では要員の員数から体制の水準までをどうつなぐのかを整理します

自衛消防組織の名簿は条文どおりの人数で埋めました。
これで体制は整ったと考えてよいですか。

名簿がそろったのは出発点です。
条文の人数は最低限の目安として書かれています。

最低限だとすると、どこまで増やせば足りるのでしょうか。

人数から考えると答えが出ません。
先に災害想定と目標を置いてから逆に体制を導きます。

この記事の結論
  • 消防法施行規則が書いている要員の数は業務ごとにおおむね二人以上だけです
  • 足りるかどうかは規則第51条の8第1項第2号イの被害の想定から判断します
  • 消防庁のガイドラインは目標として人命安全の確保と二次災害の防止を置いています
  • その目標を測る物差しが4つの実施レベルです
  • 決めた水準は活動要領として防災管理に係る消防計画に書き留めます

業務ごとにおおむね二人の要員を置き被害の想定と目標を置いて四つの実施レベルを決め人員と資機材を計画するまでの流れを並べた図解

自衛消防組織に置く要員の数はどこまで決まっているのか

左の建物の右に四つの台が並びそれぞれの台に二人ずつ立っているイラスト
はじめに、法令が要員の数について何を書いているのかを確かめます。
数が出てくるのは消防法施行規則のたった一か条だけです。
消防法施行規則第4条の2の11 自衛消防組織には、次の各号に定める業務について、それぞれおおむね二人以上の要員を置かなければならない。 一 火災の初期の段階における消火活動に関する業務 二 情報の収集及び伝達並びに消防用設備等その他の設備の監視に関する業務 三 在館者が避難する際の誘導に関する業務 四 在館者の救出及び救護に関する業務
数の手がかりはこれだけです
業務は初期消火と情報の収集伝達及び監視と避難誘導と救出救護の4つで、それぞれにおおむね二人以上を置きます。
気をつけたいのは、条文が「おおむね」と書いていて上限を置いていないことです。延べ面積が5万平方メートルの建物でも、消防法施行令第4条の2の4に当たる大きさであれば同じ条文が適用されます。
つまりこの条文は建物の規模や在館者の数を見ておらず、最低限の骨組みを示しているにすぎません。
まずは自分の建物の名簿がこの4つの業務ごとに分かれているかを開いて確かめてください。分かれていなければ、そもそも条文の形に届いていません。

建物の大きさで人数が変わると思い込んでいました。

そこは条文が触れていない部分です。
だから規模に応じた上乗せは計画の側で考えることになります。

要員がそろえば体制は足りるといえるのか

左の台には人だけが並び右の台には人と大きな板がそろっている様子を比べたイラスト
つぎに、足りるかどうかを何で判断するのかを見ます。
判断のものさしは人数ではなく、消防計画に書く被害の想定の側にあります。
消防法施行規則第51条の8第1項 防災管理者は、令第48条第1項の規定により、(略)おおむね次に掲げる事項について、(略)防災管理に係る消防計画を作成し、(略)届け出なければならない。 二 令第45条第1号に掲げる災害(以下この号において「地震」という。)による被害の軽減に関する事項として次に掲げる事項 イ 地震発生時における建築物その他の工作物及び建築物その他の工作物に存する者等の被害の想定並びに当該想定される被害に対する対策に関すること
想定と対策は一組で書きます
条文は被害の想定だけを求めているのではなく、その想定される被害に対する対策まで一続きで定めよと書いています。
対策には人を動かすことが含まれますから、想定した被害に手が届かない人数であれば、その計画は条文の求めを満たしていないことになります。
だから「何人いれば足りるか」という問いは立てられません。立てられるのは「この想定の被害に対して、この対策を実行できる体制か」という問いだけです。
名簿の人数を見る前に、自分の建物でどんな被害を想定しているのかを消防計画から抜き出してみてください。想定が書かれていなければ、体制の議論はそこから先へ進みません。

想定と人数がつながっているとは考えていませんでした。

条文が想定と対策を並べて書いているのがその印です。
片方だけでは号を満たしません。

計画上の実施レベルとはなにを明確にすることなのか

左に机のそばに立つ人がいて右に低いものから高いものへ四つの柱が階段のように並ぶイラスト
想定と体制をつなぐ考え方は、消防庁のガイドラインが手順として示しています。
そこで出てくるのが計画上の実施レベルという言葉です。
総務省消防庁「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年)別冊2 2 計画上の実施レベルを明確化する。 基本的な目標を達成するため、必要と考えられる応急活動全般の項目を抽出し、それぞれについて計画上の実施レベルを明確化する。 (1) 防火対象物内の状況を速やかに把握できること。 (2) 建物の安全性が確保されないと判断される場合、当該部分にいる在館者を負傷者が増加しないように安全に屋外等に避難させる。 (3) 防火対象物内で発生した火災について在館者の避難時間の間、影響を及ぼさない規模に抑制できること。 (4) (一定割合で発生する)エレベーター等における閉じ込め事案について速やかに状況の把握及び救出等の応急措置ができること。
できることの水準を先に書きます
ガイドラインは同じ別冊の前段で、基本的な目標として人命安全の確保と二次災害の防止の2点を共通に置くとしています。その目標を測るための具体例として並んでいるのが上の4項目です。
読むと分かるとおり、どれも「何人置く」ではなく「何ができる状態にしておく」という書き方になっています。状況を速やかに把握できること、危ないと判断したら安全に避難させること、火災を避難時間の間だけでも抑えられること、閉じ込めに応急措置ができることです。
この水準を先に決めてしまえば、必要な人数も資機材も後から逆算できます。ガイドラインが最後の手順で組織編成と人員と資機材を計画すると書いているのは、この順番だからです。
自分の建物の消防計画を開いて、この4項目に当たる記述があるかを探してみてください。人数の表しか無ければ、水準がまだ言葉になっていません。

つまり人数を決める前に、できる状態を決めるのですね。
順番が逆でした。

その順番だと議論が短く済みます。
まずは4項目を自分の建物の言葉に置き換えてみてください。

実務で見落としやすいのはどこか

左のカレンダーの形をした板と真ん中の丸い文字盤と右の机に座る二人と空いた椅子を描いたイラスト
水準を決めても、決め方を一度きりで固めてしまうと現場と合わなくなります。
ガイドラインはそこにも二つの注意を添えています。
総務省消防庁「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年)別冊2 3 当該防火対象物における災害想定の結果を踏まえ、具体的な活動内容を整理する (1) 必要となる対応行動や体制の水準は、個々の防火対象物の用途や規模等に応じて判断されるべきことに留意が必要。また、同じ防火対象物でも、曜日や時間帯によって体制が異なる場合があることに留意が必要。 (2) 火災と大規模地震では、被害事象、対応行動に大きな違いがあることに留意が必要
落とし穴は2つです
1つ目が曜日や時間帯です。昼の在館者が多い時間に組んだ体制のまま夜間と休日を通そうとすると、名簿の人が建物にいない時間帯が生まれます。実施レベルは時間帯ごとに満たせるかどうかで見なければ意味を持ちません。
2つ目が火災との違いです。ガイドラインは同じ別冊の図で、火災は局所的で消防機関の駆けつけが期待できるのに対し、地震は広域で同時多発になり発生直後は行政支援を期待できないと整理しています。火災の消防計画で足りた体制が、そのまま地震で足りるとは限りません。
そして水準は決めた時点で終わりません。消防法施行規則第51条の8第1項第1号トは、訓練の結果を踏まえた消防計画の内容の検証と、その結果に基づく見直しに関することを定めよと求めています。
訓練のたびに、決めた実施レベルに手が届いたかを記録に残してください。届かなかった項目こそ、次に人員か資機材を足す場所です。

夜間の当直は警備の担当だけになります。
その時間帯で同じ水準は届きません。

そこが分かっているだけで前進です。
届かない時間帯は計画に書いて手当てを決めておきましょう。

明日からなにを確かめればよいのか

左で書類を持つ人と真ん中の窓口の台と右のヘルメットや箱を並べた棚を描いたイラスト
最後に、決めた水準がどこに残るのかを押さえます。
体制は消防計画だけでなく届出の書面にも姿を現します。
消防法施行規則第4条の2の15第1項 法第8条の2の5第2項の総務省令で定める事項は、次に掲げるものとする。(略) 四 自衛消防組織の内部組織の編成及び自衛消防要員の配置 五 統括管理者の氏名及び住所 六 自衛消防組織に備え付けられている資機材
確かめる順番は3つです
1つ目は、消防計画の中に活動要領があるかどうかです。消防法施行規則第51条の10第1項第1号は、関係機関への通報や在館者の誘導など火災以外の災害の被害の軽減のために自衛消防組織が行う業務に係る活動要領を定めよと書いています。実施レベルはここに落ちる言葉です。
2つ目は、上の届出事項の第4号と手元の名簿を突き合わせることです。内部組織の編成と要員の配置は届出に載る事項なので、実態と食い違っていれば届出を出し直す場面にあたります。
3つ目は、第6号の資機材が実施レベルに見合う量かどうかです。閉じ込めの状況把握や在館者の避難に必要な道具が数のうえで足りているかを、届出の写しを見ながら数えてください。
3つとも消防計画と届出の紙の上で終わる作業なので、次の訓練を待たずに今日から始められます。

届出の写しと名簿を並べるところから始めてみます。

それが手早くて確実です。
食い違いが見つかったら、その場で消防計画の側も直しておいてください。

よくある質問

Q実施レベルという言葉は法令に書かれているのですか?
A消防法施行令にも消防法施行規則にもこの言葉は出てきません。総務省消防庁のガイドラインが示している考え方です。ただし規則第51条の8第1項第2号イが想定される被害に対する対策まで定めよと求めているので、その対策を具体化する道具として使えます。
Qおおむね二人以上とありますが二人ちょうどでよいのですか?
A消防法施行規則第4条の2の11は業務ごとにおおむね二人以上と書くだけで、上限にも建物の規模にも触れていません。何人まで必要かは条文からは出てこないので、ガイドラインの手順どおり災害想定と目標から導きます。判断に迷う場合は所轄消防署にご確認ください。
Q決めた実施レベルは消防計画のどこに書けばよいですか?
A消防法施行規則第51条の10第1項第1号が、自衛消防組織が行う業務に係る活動要領に関することを防災管理に係る消防計画に定めよとしています。何ができる状態を保つのかという水準は、この活動要領の中で書くのが素直です。
Q火災の消防計画と同じ体制のままにしてはいけませんか?
A消防法施行令第49条は、自衛消防組織の業務について火災に対応するものを防火管理に係る消防計画に、火災以外の災害に対応するものを防災管理に係る消防計画に定めるよう読み替えています。書く場所が分かれている以上、同じ中身を写すのではなく地震の想定に合わせて組み直すのが本来の形です。

まとめ

要員の数を書いているのは消防法施行規則第4条の2の11だけです
4つの業務ごとにおおむね二人以上という最低限の骨組みしかありません
足りるかどうかは被害の想定と対策を一組で見て判断します
ガイドラインの目標は人命安全の確保と二次災害の防止の2点です
実施レベルは何人置くかではなく何ができるかで書かれています
曜日や時間帯で体制が変わることと火災との違いが落とし穴です
決めた水準は活動要領に書き届出の編成と資機材で裏づけます

人数の話から水準の話へ切り替えれば議論が進みそうです。
次の見直しで書き足してみます。

その順番なら訓練の狙いもはっきりします。
自衛消防の体制づくりでお困りでしたら㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)第8条の2の5・第36条
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第4条の2の4・第4条の2の8・第45条・第48条・第49条
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第4条の2の11・第4条の2の15・第51条の8・第51条の10
  • 総務省消防庁「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年)別冊2 災害想定に基づく自衛消防体制の整備に関する考え方について
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※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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