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会社に事業継続の努力義務が生まれたのはいつからか|物資供給事業者との協定も解説

会社に事業継続の努力義務が生まれたのはいつからかを示すアイキャッチ画像(物流倉庫の積み込み風景)

取引先や仕入れ先から「災害が起きても納品を止めないでほしい」と言われたことはありませんか。
実はその要請の根っこには、平成25年の法改正で新設された条文があります。
東日本大震災では多くの民間事業者が協力しましたが、当時は法律上の根拠がありませんでした。
会社が負う防災協力の努力義務がいつどう生まれたのか、条文から確認します

取引先から、大規模な災害が起きても事業を止めないでほしいと言われたことがあります。

それはおそらく平成25年の法改正で新設された規定が背景にあります。

うちの会社にも関係があるということですか。

対象になる業種かどうかがポイントです。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 平成25年法律第54号による災害対策基本法の改正で、民間事業者の防災協力に関する規定が新設されました。
  • きっかけは東日本大震災で、民間事業者の協力があったのに当時は法律上「住民としての責務」しかありませんでした。
  • 対象は全事業者ではなく、法第7条第2項の「物資・資材・役務の供給又は提供を業とする者」に限られます。
  • 会社に求められるのは事業活動の継続的実施と防災施策への協力の2つの努力義務です。
  • 国・地方公共団体の側にも、法第49条の3で物資供給事業者等との協定の締結に努める規定があります。

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会社の防災協力が努力義務になった経緯を示す図解(震災で民間の協力、物資供給業が対象、事業継続と協力を明記、自治体との協定へ進む4ステップ)

会社の防災協力はなぜ法律に書き込まれたのか

支援物資を積んだトラックが被災した町へ向かうイラスト
大きな災害のたびに、官民の役割分担は問い直されてきました。
東日本大震災は、事業者の立場そのものを法律に書き込む転機になりました。
災害対策基本法等の一部を改正する法律について(平成25年6月21日付け府政防第558号・消防災第245号・社援発0621第1号 内閣府政策統括官(防災担当)・消防庁次長・厚生労働省社会・援護局長通知) 東日本大震災では、災害応急対策等に関し多くの民間事業者の協力があったが、本法に基づく指定公共機関等以外の民間事業者は、これまで法律上、住民としての責務を有するに過ぎなかった。
きっかけは東日本大震災でした。
発災直後、多くの民間事業者が物資の供給や輸送などで協力しましたが、その協力を支える法律上の根拠はありませんでした。
当時、指定公共機関等以外の民間事業者は、法律上は住民としての責務を有するに過ぎなかったのです。
そこで平成25年の法改正で、事業者という立場そのものを条文に位置づけることになりました。
通知の番号は平成25年6月21日付け府政防第558号・消防災第245号・社援発0621第1号です。

震災のときに協力した会社は多かったはずなのに、法律には無かったんですね。

その通りです。
そこでどんな規定が加わったのか見ていきましょう。

努力義務を負うのはどんな会社なのか

倉庫の積み荷と配送トラックのイラスト
条文が指しているのは、業種を問わないすべての会社ではありません。
まずは対象になる会社の範囲を確認します。
災害対策基本法等の一部を改正する法律について(平成25年6月21日付け府政防第558号・消防災第245号・社援発0621第1号) ②民間事業者の責務等(法第7条第2項及び第49条の3等関係) このため、災害応急対策等に関する事業者の責務として、災害時における事業活動の継続的実施並びに国及び地方公共団体が実施する防災に関する施策への協力に努めることを規定し、官民が一体となって災害対策に取り組むことを明らかにしたものである。
災害応急対策又は災害復旧に必要な物資若しくは資材又は役務の供給又は提供を業とする者は、基本理念にのつとり、災害時においてもこれらの事業活動を継続的に実施するとともに、当該事業活動に関し、国又は地方公共団体が実施する防災に関する施策に協力するように努めなければならない(災害対策基本法第7条第2項)。
対象になるのは、すべての会社ではありません。
法律が指すのは物資若しくは資材又は役務の供給又は提供を業とする者、つまり災害時に必要とされる物やサービスを扱う事業者です。
建設資材や食品、医薬品、運送などを手がける会社は対象に含まれる可能性が高いといえます。
反対に、災害対応に直接関わらない業種は、この条項では会社としての努力義務を負いません(ただし社員は住民として別の責務を負います)。
自社がどちらに当たるかは、条文の言葉と自社の事業内容を照らして確認します。

うちはオフィス向けのサービス業なんですが、対象になるんでしょうか。

物資や役務の供給に当たらなければ、この条項の対象外です。
ただし取引先次第で関わることもあります。

会社に求められる2つの努力義務とは何か

稼働を続ける工場と契約書のイラスト
対象になった会社には、条文上2つの努力義務が課されています。
どちらも「できる範囲で努める」という書きぶりです。
災害対策基本法等の一部を改正する法律について(平成25年6月21日付け府政防第558号・消防災第245号・社援発0621第1号) また、国及び地方公共団体等は、災害応急対策又は災害復旧についての協力を得ることを必要とする事態に備え、物資供給事業者等(災害応急対策又は災害復旧に必要な物資若しくは資材又は役務の提供を業とする者その他災害応急対策又は災害復旧に関する活動を行う民間の団体をいう。)との協定の締結その他必要な措置を講ずるよう努めることとしたものである。
災害予防責任者は、法令又は防災計画の定めるところにより、その所掌事務又は業務について、災害応急対策又は災害復旧の実施に際し物資供給事業者等の協力を得ることを必要とする事態に備え、協定の締結その他円滑に物資供給事業者等の協力を得るために必要な措置を講ずるよう努めなければならない(災害対策基本法第49条の3)。
求められているのは2つの努力義務です。
ひとつは事業活動の継続的実施、つまり災害時にも仕事を止めないよう備えることです。
もうひとつは国や地方公共団体が実施する防災施策への協力で、要請があれば応じるよう努める規定です。
あわせて国や地方公共団体の側にも、物資供給事業者等との協定の締結に努める規定が置かれました。
会社の努力義務と、自治体側の協定締結の努力義務は、対になる仕組みだといえます。

事業を続けることと、自治体に協力することは、別々の話なんですね。

はい、条文上も別の項に分かれています。
両方あわせて備えるのが理想です。

会社が見落としやすい点はどこにあるのか

白紙の契約書と時計のイラスト
努力義務には罰則がないため、後回しにされがちです。
ですが条文の位置づけを見ると、軽く扱ってよい話ではないと分かります。
災害対策基本法等の一部を改正する法律について(平成25年6月21日付け府政防第558号・消防災第245号・社援発0621第1号) (1)基本理念の明確化(法第2条の2関係) 災害対策の一般法である本法には、これまで各主体の責務は規定されていたが、基本理念が定められていなかった。(略)同法に「減災」の考え方や、「自助」「共助」「公助」等の基本理念を明記することで、災害対策に関する基本的な考え方を広く共有し、関係者が一体となって災害対策に取り組む体制を整えようとしたものである。
前二項に規定するもののほか、地方公共団体の住民は、基本理念にのつとり、食品、飲料水その他の生活必需物資の備蓄その他の自ら災害に備えるための手段を講ずるとともに、防災訓練その他の自発的な防災活動への参加、過去の災害から得られた教訓の伝承その他の取組により防災に寄与するように努めなければならない(災害対策基本法第7条第3項)。
努力義務だからといって、関係ないとは言い切れません。
この規定に罰則はありませんが、基本理念には「自助」「共助」「公助」が明記され、事業者の協力は共助の一部と位置づけられています。
住民としての防災訓練への参加(法第7条第3項)と、事業者としての事業継続・施策協力(法第7条第2項)は別の条文です。
「防災訓練に協力しているから十分」と考えると、事業継続や施策協力の努力義務を見落としかねません。
罰則が無いことは、確認しなくてよい理由にはなりません。

訓練に社員を参加させていれば、それで足りると思っていました。

それは住民としての責務のほうです。
会社としての備えは別に確認が要ります。

明日からなにを確認すればよいか

チェックリストと電話のイラスト
規定を知っただけでは、自社がどちらに当たるか分かりません。
確認の入り口は、身近なところにあります。
災害対策基本法等の一部を改正する法律について(平成25年6月21日付け府政防第558号・消防災第245号・社援発0621第1号) 貴職におかれましては、下記の改正内容を御理解の上、今後の防災対策の推進に万全を期するとともに、貴都道府県内の市町村に対しても周知いただきますようお願いします。
まずは自社が対象に当たるか確認しましょう。
自社の事業が物資・資材・役務の供給又は提供に当たるかどうかを、条文の言葉と照らして確かめます。
次に、地元の市町村や都道府県との間に災害協定が結ばれているかを確認します。
締結されていなければ、自治体の防災担当窓口へ相談することもできます。
消防計画や事業継続計画(BCP)に、防災施策への協力という視点が入っているかも、あわせて見直しておきましょう。

まずは自治体との協定があるかどうか、確認してみます。

消防計画とあわせて確認しておくと確実です。
次はよくある質問をまとめます。

よくある質問

Q事業者の防災協力の努力義務に違反すると罰則がありますか?
Aいいえ、罰則はありません。法第7条第2項は努力義務であり、実施しなかったこと自体への罰則規定は設けられていません。ただし、地元自治体との協定が無いと、実際に協力を求められた際の対応が遅れるおそれがあります。
Qすべての会社がこの努力義務の対象になりますか?
Aいいえ。対象は「災害応急対策又は災害復旧に必要な物資若しくは資材又は役務の供給又は提供を業とする者」に限られ、業種に関係なくすべての会社に及ぶわけではありません。
Q物資供給事業者等との協定はどちらから申し出るものですか?
A法律上は国及び地方公共団体の側に協定締結の努力義務がありますが(法第49条の3)、対象になりうる事業者の側から自治体へ相談することも妨げられません。
Qこの規定はいつからのものですか?
A平成25年6月21日に公布・施行された災害対策基本法等の一部を改正する法律(平成25年法律第54号)によるものです。同日付けで運用の通知(府政防第558号・消防災第245号・社援発0621第1号)も発出されています。

まとめ

✔平成25年法律第54号による災害対策基本法改正で、民間事業者の防災協力に関する規定が新設されました。
✔きっかけは東日本大震災で、民間事業者の協力があったのに法律上は住民としての責務しかありませんでした。
✔対象は全事業者ではなく、法第7条第2項の「物資・資材・役務の供給又は提供を業とする者」です。
✔会社に求められるのは事業活動の継続的実施と防災施策への協力の2つの努力義務です。
✔国・地方公共団体の側にも法第49条の3で物資供給事業者等との協定締結に努める規定があります。
✔この規定は努力義務であり罰則はありませんが、協定の有無で災害時の実務対応が変わります。
✔自社が対象に当たるか、地元自治体との協定があるかを確認することが最初の一歩です。

協定の有無を確認してみます!

自治体との協定づくりもいっしょに整理していきましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 災害対策基本法等の一部を改正する法律について(平成25年6月21日付け府政防第558号・消防災第245号・社援発0621第1号)
  • 災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第7条第2項・第3項
  • 災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第49条の3

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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