液化石油ガスや圧縮アセチレンガスなど、貯蔵や取扱いに消防への届出が必要な物質があります。
これらは「消防活動阻害物質」と呼ばれ、消防庁は毎年、全国の事故件数を取りまとめています。
令和8年6月に公表された最新の集計では、令和7年中の事故件数が前年より大きく増えていたことが分かりました。
何が原因で増えたのか、そして届出さえしていれば防げるのかを、この記事で確認しておきましょう。
消防活動阻害物質の事故が増えているって本当ですか。
はい、令和7年は61件と前年より大きく増えました。
届出さえ出していれば安心と思っていました。
実は工事中の配管損傷が主な原因で、届出だけでは防げません。
- 消防危第142号(令和8年6月24日)により、令和7年中の消防活動阻害物質の事故は61件(前年47件)と判明した
- 火災・漏えいのいずれも液化石油ガスが最多で、火災の72.7%・漏えいの56.3%を占める
- 事故の多くは工事業者による埋設配管の誤った損傷や経年腐食が原因になっている
- 事故の中には消防法第9条の3の届出をしていなかった事案も複数含まれている
- 対策の鍵は埋設配管図面の共有と経年劣化の点検を工事の前に済ませること
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目次
圧縮アセチレンガス等の事故はなぜ令和7年に61件まで増えたのか

その届出対象の物質で、事故が目立って増えました。
消防法第9条の3の規定する圧縮アセチレンガス等の消防活動阻害物質に係る事故の発生状況について、令和7年中に発生したものの件数及び人的被害は、事故件数は61件(前年47件)であり、人的被害は死者1人(前年1人)、負傷者11人(前年13人)となっている。
圧縮アセチレンガス、液化石油ガスその他の火災予防又は消火活動に重大な支障を生ずるおそれのある物質で政令で定めるものを貯蔵し、又は取り扱う者は、あらかじめ、その旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。
圧縮アセチレンガス・液化石油ガス・生石灰・毒物・劇物など、消防法第9条の3が定める物質を一定数量以上貯蔵・取扱いする場合は、あらかじめ消防長等への届出が義務づけられています。
令和7年の事故件数61件は前年の47件から14件の増加で、ここ数年でも目立つ伸びです。
死者は1人・負傷者11人で、いずれも消防活動従事者ではなく現場の作業者や住民でした。
まずは「何が」「なぜ」増えたのかを、次の項目で見ていきましょう。
そもそも消防活動阻害物質ってどんな物質のことですか。
圧縮アセチレンガスや液化石油ガスなど、消火活動に重大な支障を生ずる物質です。
どの物質でどんな事故が一番多いのか

火災と漏えい、それぞれの内訳を確認しましょう。
液化石油ガスによる事故が8件(72.7%)で最も多く、次いで、圧縮アセチレンガスによる事故が2件(18.2%)、毒物による事故が1件(9.1%)となっている。(漏えい事故の内訳)液化石油ガスによる事故が27件(56.3%)で最も多く、次いで、劇物による事故が20件(41.7%)、毒物による事故が1件(2.1%)となっている。
LPガスは家庭のガス給湯器やコンロから工場の熱源まで全国に広く普及しており、配管も長期間にわたって地中や屋外に設置されたままになりがちです。
そのぶん、経年劣化や外部からの衝撃にさらされる機会も多く、他の物質より事故が起きやすい状況にあります。
一方で毒物・劇物(アンモニアや硫酸など)による漏えいも合わせて21件あり、工場やプラントの配管腐食が目立ちます。
物質ごとの傾向を知っておくと、自社にどのリスクが当てはまるかを判断しやすくなります。
アセチレンガスより身近なLPガスの方が事故が多いんですね。
はい、普及の広さと配管の年数がLPガスの事故を押し上げています。
事故はどうやって起きているのか

代表的な事例を確認しましょう。
「水道業者が工事中に誤って埋設ガス配管を損傷させ、漏えいさせたもの」(岡山県)/「パワーショベルで掘削中に、埋設ガス配管を損傷させ、少量のガスを漏洩させたもの」(広島県)/「経年劣化により配管よりガスが漏えいしたもの」(神奈川県)/「軽乗用車が、ブレーキの踏み間違いにより共同住宅ガス管に衝突し、ガス管が破損して漏えいした」(栃木県)
1つ目は工事業者による誤った掘削・損傷で、埋設配管の位置を正しく把握しないまま掘削機や重機で配管を傷つけるケースです。
2つ目は経年劣化による腐食で、長年使われた配管や継手が内側から傷み、フランジやピンホールから漏れ出します。
3つ目は車両の衝突で、駐車場やガス庫周辺のボンベ・配管に車が接触して破損させるケースです。
いずれも「気づいたときには漏れていた」という共通点があり、日頃の点検と周囲への周知が予防のかなめになります。
工事業者のミスで事故が起きるケースが多いんですね。
はい、埋設配管の位置確認不足が典型的な原因です。
届出をしていれば事故は防げるのか

事故事例の中には、届出そのものをしていなかったものも含まれています。
「小学校校舎解体作業中にアセチレンガス溶断機で鉄筋を切断していたところ、アセチレンボンベの調整器付近から火が上がった」(香川県、届出無し)/「冷凍室で使用するために未届で貯蔵していたアンモニアのガス配管を交換する工事中に作業員がアンモニアを屋外へ排出していたもの」(北海道、届出無し)
消防法第9条の3に基づく届出は、あくまで「どこに」「どれだけの量」があるかを消防長等に伝えるものです。
今回の事故の多くを占める掘削工事中の損傷は、届出の有無にかかわらず、現場で配管の位置を知らなければ防げません。
なお、事故事例の中には届出をしていなかった事案も複数含まれており、届出そのものを怠っていた施設があったことも見逃せません。
届出の基準や怠った場合の扱いについては、既存の解説記事もあわせてご確認ください。
届出さえしていれば安心だと思っていました。
届出は数量の把握が目的で、工事の安全対策とは別問題です。
明日から何を確認すればよいのか

工事の予定がある場合とない場合で、優先順位が変わります。
自然災害に起因する事故を除き、掘削・解体等の工事に伴う配管損傷が漏えい事故の主要な発生原因となっていることが、事故概要の集計から読み取れる。
まずは自社の埋設配管図面の有無を確認し、工事を発注する際は着工前に必ず配管図面を業者へ共有しましょう。
図面が古い、または存在しない場合は、ガス事業者や設置業者に立会いを依頼するのが確実です。
経年劣化への対策としては、埋設配管や継手部分を定期点検の対象に含め、腐食の兆候を早期に見つける体制を整えます。
最後に、貯蔵・取扱い数量に変更がないか確認し、届出が必要な数量に達していれば速やかに手続きを済ませてください。
まず何から手を付ければいいですか。
まずは埋設配管図面の有無を確認してください。
よくある質問
まとめ
まずは埋設配管図面を確認してみます!
配管の点検や届出のご相談もお任せください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 令和7年中の圧縮アセチレンガス等の消防活動阻害物質に係る事故の発生状況について(令和8年6月24日 消防危第142号 消防庁危険物保安室長)
- 消防法第9条の3
- 消防法第44条第8号
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





