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観光用のエレベーターはなぜ建物と同じ基準を満たすのか|建築基準法施行令第143条が定める工作物への準用を解説

観光用エレベーターはなぜ建物と同じ基準を満たすのか

観光地の高台には、建物には属さず単独で立つエレベーターやエスカレーターがあります。
展望塔や遊園地の斜面を上り下りするこうした設備は、法律上「建築物」ではなく工作物として扱われます。
建築物でないなら基準もゆるいのではと思いがちですが、実際には建築基準法施行令が建築物のエレベーターとほぼ同じ技術基準を準用しています。
観光用という理由だけで基準が甘くなることはありません。

うちの施設、展望台まで登る専用のエレベーターがあるんですが、建物の中のエレベーターとは扱いが違うんですかね。

建物に属さない「工作物」という扱いになりますが、構造の基準は建築物のエレベーターとほぼ同じものが適用されますよ。

建物の外にぽつんと立っているだけなのに、なぜ同じ基準まで求められるんでしょうか。

利用者を乗せて運ぶ設備であることは建物の中でも外でも変わらないからです。
今日はその仕組みを一緒に確認しましょう。

この記事の結論
  • 観光用の乗用エレベーターやエスカレーターは建築物ではなく「工作物」として建築基準法施行令の対象になります。
  • 対象になるのは観光のためのものに限られ、一般交通の用に供するものは最初から対象外です。
  • 構造の基準は建築物用のエレベーターやエスカレーターの規定がほぼそのまま準用されます。
  • 国土交通大臣の認定を受けているかどうかで、追加で満たすべき規定の範囲が変わります。
  • 確認申請の要否は施設の管理者だけで判断せず、必ず特定行政庁や指定確認検査機関に相談してください。

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観光用エレベーターも建物と同じ基準を満たす仕組みの図解

なぜ観光用のエレベーターにも建物と同じ基準がかかるのか

建物のエレベーターと観光用の単独エレベーターに同じ盾のマークが付いている図
法律上「建築物」に当たらない設備にも、建物と同じ安全基準を求める仕組みがあります。
その根拠になっているのが建築基準法第88条第1項です。
(建築基準法施行令第百四十三条第一項)第百三十八条第二項第一号に掲げる乗用エレベーター又はエスカレーターに関する法第八十八条第一項において読み替えて準用する法第二十条第一項の政令で定める技術的基準は、次項から第四項までにおいて準用する規定(第七章の八の規定を除く。)に適合する構造方法を用いることとする。
利用者を乗せて運ぶ設備は、建物の中でも外でも同じ危険が伴います。だから法は「建築物」に限らず、一定の工作物にも建築物と同じ構造基準を及ぼしています。
煙突や擁壁、広告塔といった他の工作物と並んで、観光用のエレベーターやエスカレーターもこの仕組みの対象です。
根拠は建築基準法第88条第1項で、政令(建築基準法施行令)が対象の種類と基準を具体的に定める形になっています。
まずは自分の施設の設備がこの対象に入るかどうかを、次の章で確認しましょう。

建築物じゃないのに「建築基準法」が出てくるのが、そもそも意外でした。

よくある誤解ですね。
次はどんな設備が対象になるかを具体的に見ていきましょう。

どんなエレベーターやエスカレーターが対象になるのか

観光用の単独エレベーターに青いチェックマーク、駅のエスカレーターに赤い禁止マークが付いている図
対象になるかどうかは、用途を見て判断します。
「観光のため」かどうかが分かれ目です。
(建築基準法施行令第百三十八条第二項)昇降機、ウオーターシユート、飛行塔その他これらに類する工作物で法第八十八条第一項の規定により政令で指定するものは、次の各号に掲げるものとする。一 乗用エレベーター又はエスカレーターで観光のためのもの(一般交通の用に供するものを除く。)
対象は「観光のため」の乗用エレベーターやエスカレーターに限られます。展望塔や遊園地の斜面昇降機のように、移動そのものが観光体験になっている設備が典型例です。
一方で一般交通の用に供するもの、たとえば駅やバスターミナルに設けられたエスカレーターは、この規定の対象からはじめから除かれています。
同じ「エスカレーター」でも、利用目的によって適用される規定の入口が変わる点に注意が必要です。
自分の施設の設備がどちらに当たるかは、パンフレットや利用規約の説明ではなく、実際の設置目的で判断します。

駅のエスカレーターとうちの展望エレベーター、見た目は似てるのに扱いが違うんですね。

見た目ではなく利用目的で線引きされます。
対象に入ると分かったら、次は何を満たすかを見ましょう。

対象になると何を満たさなければならないのか

単独エレベーターのかご・昇降路・機械室が積み重なった断面図
求められる中身は、実は目新しいものではありません。
建築物用のエレベーターの構造基準が、そのまま持ち込まれます。
(建築基準法施行令第百四十三条第二項)前項に規定する乗用エレベーター又はエスカレーターについては、第百二十九条の三から第百二十九条の十まで、第百二十九条の十二、第七章の八並びに第百三十九条第一項第三号及び第四号の規定を準用する。
準用されるのは、建物のエレベーターに求められる構造基準のほぼ全体です。かごの構造、昇降路の構造、駆動装置と制御器、機械室の床面積、制動装置などの安全装置まで、条文の第129条の3から第129条の10までの規定がそのまま適用されます。
エスカレーターについても第129条の12の構造基準が準用され、工事中の危害防止を定める第七章の8も及びます。
さらに、高さのある煙突に構造計算での安全確認を求める第139条第1項第3号・第4号と同じ考え方(大臣認定または構造計算による安全性の確認)も準用されます。
「観光用だから」と簡易な仕様で済ませられる規定ではないことを、まず押さえておきましょう。

結局、普通のエレベーターと同じくらい厳しいということですか。

その理解で正しいです。
ただ満たし方には2つの経路があるので、次はそこを見ましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

認定書類がある単独エレベーターと認定書類がない単独エレベーターで、その先に求められる規定の量が異なる図
満たすべき規定の範囲は、実は一本道ではありません。
認定の有無によって、追加で準用される条文が変わります。
(建築基準法施行令第百四十三条第四項)第一項に規定する乗用エレベーター又はエスカレーターのうち前項に規定するもの以外のものについては、第二項に規定するもののほか、第三十六条の三、第三十七条、第三十八条、第三十九条第一項及び第二項、第三章第五節、第六節及び第六節の二並びに第八十条の二の規定を準用する。
国土交通大臣の認定を受けた構造方法を使う設備は、耐久性に関する規定だけを追加で満たせば足ります。一方で認定を受けていない設備は、建築材料の品質や木造・組積造などの構造方法そのものを定めた規定まで、より広い範囲を満たす必要があります。
つまり「認定さえ取れば基準が軽くなる」のではなく、どちらの経路でも建物と同等の安全性を示す義務は変わりません。
違いは、その安全性をどの規定の組み合わせで証明するかという点だけです。
既存の観光用エレベーターを持つ施設では、設計図書に認定の記録が残っているかをまず確認しましょう。

うちの設備、認定を受けているかどうかなんて、どこを見れば分かるんでしょうか。

設置時の確認申請書類や構造計算書に記載があります。
最後に、明日からの確認手順をまとめますね。

明日からなにを確認すればよいのか

チェックリストとエレベーターの模型と巻尺が置かれた机上のイラスト
条文を知っているだけでは、現場の確認は終わりません。
手元の設備に当てはめて、順番に確かめていきましょう。
  • 設備が「観光のため」か「一般交通の用」かをまず切り分ける。
  • 該当する場合は確認申請が済んでいるか、竣工時の書類を確かめる。
  • 構造計算書や検査済証に国土交通大臣の認定の記載があるか確認する。
  • 機械室の点検や定期検査の記録が、通常の建物用エレベーターと同じ頻度で行われているか見る。
迷ったときは自己判断せず専門家に確認することが一番の近道です。書類が見当たらない場合や増改築を検討している場合は、設計時の建築士や特定行政庁の建築担当窓口に相談しましょう。
観光用の設備は利用者の目に触れやすく、不具合があれば施設の信頼そのものに関わります。
日常点検の記録を防火管理者としても把握しておくと、いざというときの説明に役立ちます。

まずは書類が残っているか、施設の担当と確認してみます。

それが一番確実な第一歩です。
最後によくある質問をまとめておきますね。

よくある質問

Q建物の中に観光用のエレベーターを設けた場合はどうなりますか?
A建築基準法施行令第百三十八条第二項が対象にしているのは「工作物」としてのエレベーターやエスカレーターです。建築物に組み込まれたエレベーターは最初から通常のエレベーター規定(第百二十九条の三以下)が直接適用されるため、この準用規定の対象にはなりません。
Q「一般交通の用に供するもの」とはどんな設備を指しますか?
A条文はこの語の具体例までは示していませんが、駅やバスターミナルのように日常の移動手段として不特定多数が利用する設備が典型例とされます。観光を目的とせず通行そのものが用途である設備は、この規定の対象から除かれます。
Q確認申請はどこに提出すればよいですか?
A建築物の確認申請と同じく、特定行政庁または指定確認検査機関が窓口になります。個別の設備が対象に当たるかどうかの判断も含めて、計画段階で早めに相談することが実務上の近道です。
Q既存の設備が対象と分かった場合、すぐに改修が必要になりますか?
A設置時の確認申請や検査済証の有無によって状況は異なります。自己判断で改修の要否を決めず、まずは書類の有無を確認したうえで所轄の特定行政庁や建築士に相談してください。

まとめ

✔観光用の乗用エレベーターやエスカレーターは「工作物」として建築基準法施行令の対象になる。
✔根拠は建築基準法第88条第1項で、政令が対象の種類と基準を具体的に定める。
✔対象は「観光のため」の設備に限られ、一般交通の用に供するものは対象外。
✔構造基準は建物用エレベーターの規定(第129条の3から第129条の10までなど)がほぼそのまま準用される。
✔国土交通大臣の認定の有無で、追加で満たす規定の範囲が変わる。
✔どちらの経路でも建物と同等の安全性を示す義務そのものは変わらない。
✔既存設備は確認申請書類や検査済証の有無をまず確かめることが実務の第一歩。

観光用だから緩いと思い込んでいたので、今日確認できてよかったです。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第88条第1項
  • 建築基準法施行令第138条第2項第1号(工作物の指定)
  • 建築基準法施行令第143条(乗用エレベーター又はエスカレーター)
  • 建築基準法施行令第129条の3〜第129条の10(エレベーターの構造)・第129条の12(エスカレーターの構造)
  • 建築基準法施行令第139条第1項第3号・第4号(構造計算による安全性の確認)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の設備が対象に当たるかどうかや確認申請の要否は、所轄の特定行政庁または指定確認検査機関にご確認ください。条例や運用は自治体ごとに異なる場合があります。

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