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離島や過疎地域の救急隊はなぜ准救急隊員で編成できるのか|救急隊員との資格の違いと実施計画を解説

離島の救急・消防拠点と灯台を示すイメージ

消防法施行令第44条は、救急隊を救急自動車一台・救急隊員三人以上で編成することを原則としています。
ところが離島や過疎地域など人員確保が難しい地域では、この原則どおりに三人の救急隊員を確保できないことがあります。
そこで一定の地域に限り、市町村が実施計画を定めれば、救急隊員二人と准救急隊員一人の三人体制で編成できる特例が設けられています。
准救急隊員とはどんな資格を持つ人で、どの地域で使える制度なのか、条文で確認していきます。

離島だと救急隊員を三人揃えるのは大変そうです。

はい、准救急隊員という資格を使った特例があります。
消防法施行令第44条という条文を見ていきましょう。

准救急隊員は救急隊員とは別の資格なんですか。

はい、講習時間も充てる職員の立場も違います。
どんな仕組みか、順番に確認していきます。

この記事の結論
  • 救急隊は原則、救急自動車一台と救急隊員三人以上(又は航空機一機と隊員二人以上)で編成しなければならない(消防法施行令第44条第1項)
  • 離島振興法の対象地域など5つの区域に限り、市町村が実施計画を定めれば、救急隊員二人以上と准救急隊員一人以上の3人体制で編成できます(同条第2項)
  • 准救急隊員は消防吏員ではない消防職員で、救急隊員より短い基礎的な講習(15時間以上)を修了した者などが充てられる(同条第6項)
  • 実施計画には人数や応援体制、医師の指導助言体制を記載し、市町村は定めたら遅滞なく公表しなければなりません(同条第3項・施行規則第50条の2)
  • 医療機関間の搬送で医師等が同乗する場合の2人編成(施行規則第50条)は、准救急隊員による編成とは別の特例である

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救急隊の編成基準と准救急隊員の特例と医療機関間搬送の2人編成の違いを示した図解

救急隊は何人で編成しなければならないのか

救急自動車と三人の救急隊員を示すヘルメットを並べたイメージ
救急隊は、火災だけでなく病気やけがの現場に駆けつける消防の救急業務の最前線です。
まず、通常はどのような人員で編成しなければならないかを確認します。
救急隊(略)は、救急自動車一台及び救急隊員三人以上をもつて、又は航空機一機及び救急隊員二人以上をもつて編成しなければならない。ただし、救急業務の実施に支障がないものとして総務省令で定める場合には、救急自動車一台及び救急隊員二人をもつて編成することができる。(消防法施行令第44条第1項)
救急隊の編成は、救急自動車1台に対して救急隊員3人以上を乗せることが原則です。
航空機を使う場合は隊員2人以上で足りますが、これは特殊な運用です。
ただし書にある「支障がない場合の2人編成」は医療機関同士の転院搬送に限られる例外で、通常の救急要請では使えません(詳しくはこのあと落とし穴として確認します)。
離島や過疎地域では、そもそも救急隊員を3人確保すること自体が難しいという別の課題があります。
次は、この課題に対応するために設けられた特例を確認します。

病気やけがでも救急隊が来てくれるんですね。

はい、救急業務は消防の大切な役割の一つです。
次は人員が足りない地域の特例を見ていきます。

どの地域なら准救急隊員による編成が認められるのか

離島の灯台と実施計画を示す書類の束を並べたイメージ
准救急隊員を使った編成は、どこでも自由に選べるわけではありません。
条文が対象を区切っている範囲を確認します。
消防署又は消防庁長官が定める消防署の組織の管轄区域の全部が次の各号のいずれかに該当する場合において、市町村が(略)実施計画を定めたときは、実施計画に基づき当該救急業務を実施する救急隊は、救急自動車一台並びに救急隊員二人以上及び准救急隊員一人以上をもつて編成することができる。(消防法施行令第44条第2項)
准救急隊員による編成が認められるのは、管轄区域の全部が次の5つの区域のいずれかに当たる場合だけです。
  • 離島振興法の離島振興対策実施地域
  • 奄美群島振興開発特別措置法の奄美群島の区域
  • 小笠原諸島振興開発特別措置法の小笠原諸島の区域
  • 沖縄振興特別措置法に規定する離島の区域
  • 過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法の過疎地域
これらの地域以外では、通常どおり救急隊員3人以上の編成が必要です。
次は、准救急隊員そのものがどんな資格を持つ人かを確認します。

5つもあるとは知りませんでした。

はい、市町村が実施計画を定めることも条件です。
次は准救急隊員の資格を見ていきます。

准救急隊員と救急隊員の資格はどう違うのか

高さの違う2つの資格証明書の束にヘルメットを乗せたイメージ
准救急隊員は、救急隊員とまったく同じ資格ではありません。
それぞれの資格要件を条文で確認します。
第二項の准救急隊員は、次の各号のいずれかに該当する消防職員(消防吏員を除き、常勤の職員及び(略)短時間勤務の職を占める職員に限る。)をもつて充てなければならない。 一 救急業務に関する基礎的な講習で総務省令で定めるものの課程を修了した者(略)(消防法施行令第44条第6項)
救急隊員は消防吏員に限られますが、准救急隊員は消防吏員ではない消防職員から充てられます。
講習時間にも差があり、救急隊員の講習は50時間以上であるのに対し、准救急隊員の基礎的な講習は15時間以上です(消防法施行規則第51条・第51条の2の2)。
常勤職員だけでなく、地方公務員法上の短時間勤務職員も准救急隊員に充てることができます。
次は、この資格の違いと実施計画の関係を、別の特例と比べながら確認します。

講習時間がそんなに違うんですね。

はい、立場も講習時間も別の資格です。
次は別の2人編成の特例と比べてみます。

医療機関間搬送の2人編成と准救急隊員の3人編成は何が違うのか

病院同士をつなぐ搬送と離島の灯台と書類を並べて2つの特例の違いを示すイメージ
ここからが本記事の落とし穴です。
救急隊の人数を減らせる特例は、実は2種類あります。
令第四十四条第一項の総務省令で定める場合は、傷病者を一の医療機関から他の医療機関へ搬送する場合であつて、これらの医療機関に勤務する医師、看護師、准看護師又は救急救命士が救急自動車に同乗している場合とする。(消防法施行規則第50条)
(略)市町村が(略)実施計画を定めたときは、(略)救急隊員二人以上及び准救急隊員一人以上をもつて編成することができる。(消防法施行令第44条第2項)
医療機関間搬送の2人編成には実施計画も公表も不要ですが、准救急隊員による編成には実施計画の策定と公表が必須です。
前者は医師・看護師・准看護師・救急救命士のいずれかが同乗する一時的な場面に限った特例で、後者は離島や過疎地域の恒常的な人員不足に対応する制度です。
どちらも「隊員を減らせる」という点は似ていますが、条文も目的も仕組みも別物であり、混同すると実施計画の届出漏れにつながりかねません。
次は、自分の地域がどちらの制度の対象になるかを確認する手順を整理します。

2人になる場合がこんなに違うとは知りませんでした。

はい、別の条文・別の目的です。
確認するときの手順を次で整理します。

自分の地域が対象かどう確認すればよいか

チェックリストと電話を並べて確認の手順を示したイメージ
最後に、実施計画で何が定められているかを確認します。
令第四十四条第二項の総務省令で定める事項は、次の各号に掲げる事項とする。 一 (略)実施地域(略)及び時間帯並びに准救急隊員の人数、勤務形態、配置場所その他の実施体制(略) 三 医師が救急業務を行う救急隊員及び准救急隊員に対して必要に応じて指導又は助言を行うことができる体制の確保に関する事項(消防法施行規則第50条の2)
実施計画には人数や体制だけでなく、医師が指導や助言を行える体制まで記載しなければなりません。
市町村は実施計画を定めたとき、または変更したときは遅滞なく公表しなければなりません(消防法施行令第44条第3項)。
自分の地域が対象かどうかを知りたいときは、次の順で確認します。
  • 自分の地域が離島振興法等の5区域のいずれかに当たるかを確認する
  • 管轄の消防本部に実施計画を定めているかを確認する
  • 実施計画が公表されていれば、その内容(人数・体制)を確認する
  • 医療機関間搬送時の2人編成(施行規則第50条)と混同しない

自分の地域の消防本部に聞いてみます。

はい、実施計画の公表内容を確認してみてください。
最後によくある質問をまとめます。

よくある質問

Q救急隊は何人で編成しなければなりませんか?
A原則として、救急自動車一台と救急隊員三人以上(航空機なら隊員二人以上)で編成しなければなりません(消防法施行令第44条第1項)。
Q准救急隊員とはどんな人ですか?
A消防吏員ではない消防職員(常勤または短時間勤務)で、救急業務に関する基礎的な講習を修了した者などです(消防法施行令第44条第6項)。
Q准救急隊員による編成はどの地域でも使えますか?
Aいいえ。離島振興法の対象地域・奄美群島・小笠原諸島・沖縄の離島・過疎地域という5つの区域に限られ、市町村が実施計画を定めた場合だけ使えます(同条第2項)。
Q医療機関間搬送の2人編成と准救急隊員による編成は同じ制度ですか?
Aいいえ、別の制度です。医療機関間搬送時の2人編成(消防法施行規則第50条)は実施計画も公表も不要ですが、准救急隊員による編成には実施計画の策定と公表が必要です。

まとめ

✔救急隊は原則、救急自動車一台と救急隊員三人以上で編成しなければならない(消防法施行令第44条第1項)
✔支障がなければ2人編成も可能だが、これは医療機関間搬送に医師等が同乗する場合に限られる(消防法施行規則第50条)
✔離島振興法の対象地域・奄美群島・小笠原諸島・沖縄の離島・過疎地域の5区域に限り、救急隊員二人以上と准救急隊員一人以上の編成が認められます(施行令第44条第2項各号)
✔この特例を使うには市町村が実施計画を定めることが条件になる
✔准救急隊員は消防吏員ではない消防職員で、救急隊員(50時間講習)より短い基礎的な講習(15時間以上)で充てられる(消防法施行規則第51条の2の2)
✔実施計画には人数・配置・医師の指導助言体制を記載し、市町村は定めたら遅滞なく公表しなければなりません(施行規則第50条の2・施行令第44条第3項)
✔医療機関間搬送の2人編成特例と、離島等の准救急隊員による編成特例は条文も目的も別物である

同じ2人体制でもこんなに意味が違うとは知りませんでした。
自分の地域の実施計画も確認してみます!

消防法施行令第44条は救急隊の体制を分ける重要な条文です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令第44条
  • 消防法施行規則第50条・第50条の2・第51条・第51条の2の2
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。実施計画を定めているかどうかは市町村ごとに異なります。個別の実施状況は所轄の消防本部にご確認ください。

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