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救急の虚偽通報をするとどうなるのか|消防法第44条第20号が定める傷病者に係る罰則を解説

夜の住宅街に停まった救急車で救急の虚偽通報を表すアイキャッチ画像

119番は火災だけでなく、急病やけがの通報にも使われます。
本当に具合の悪い人がいなくても、いたずらや嘘で救急車を呼んでしまう人がいます。
こうした行為は消防法でも取り締まりの対象になっています。
消防法が定めるのは、傷病者に関する虚偽の通報そのものに罰則を科す仕組みです。

うちの近所で、いたずらで救急車を呼ぶ人がいるという話を聞きました。
そういうのも法律で罰せられるんでしょうか。

はい、罰則が用意されています。
消防法第44条第20号という条文を順に見ていきましょう。

火災の嘘の通報とはまた別の規定なんですか。

条文は同じ号にまとめられていますが、傷病者に関する虚偽通報は火災とは別枠の文言です。

この記事の結論
  • 消防法第2条第9項は、救急業務の対象となる傷病者を定義しています
  • 傷病者に係る虚偽の通報をした者は、30万円以下の罰金又は拘留に処せられます(消防法第44条第20号)
  • 罰せられるのは正当な理由がない虚偽の通報で、思い込みや勘違いによる通報は対象になりません
  • 第20号は消防法第45条が挙げる両罰規定の対象には含まれておらず、会社は罰せられません
  • 火災の通報義務を定める第24条は水災を除く他の災害にも準用されますが、傷病者の虚偽通報にはこの準用規定はありません

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救急の虚偽通報から罰則と両罰規定の対象外までの流れを示した図解

救急の通報にも消防法の罰則は及ぶのか

電話と救急車を並べて救急の通報にも消防法が関わることを示したイメージ
119番は火災の通報だけに使われるわけではありません。
救急車を呼ぶ場面にも、消防法の言葉が及んでいます。
救急業務とは、(略)医療機関その他の場所へ緊急に搬送する必要があるものを、救急隊によつて、医療機関(略)その他の場所に搬送すること(略)をいう。(消防法第2条第9項)
火災を発見した者は、遅滞なくこれを消防署又は市町村長の指定した場所に通報しなければならない。(消防法第24条)
火災には通報の義務を定めた条文があります。
第24条は、火災を発見した者に通報の義務を課しています。
ところが救急業務の対象となる傷病者については、これに相当する通報義務の条文は置かれていません。
義務を課す条文が無いまま、虚偽の通報だけを罰する規定が別に用意されている形です。
次にその罰則の中身を確認していきます。

火災みたいに「通報しなければならない」という義務は無いんですね。

はい、そのとおりです。
虚偽の通報だけが別に罰せられる作りになっています。

虚偽の通報をするとどんな罰を受けるのか

木づちと鉄格子と罰金の束で虚偽通報の罰則を示したイメージ
虚偽の通報そのものを罰する条文は、第44条に置かれています。
火災と傷病者の両方が、同じ号の中に書き分けられています。
次のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金又は拘留に処する。(消防法第44条)
二十 正当な理由がなく消防署又は第二十四条(略)の規定による市町村長の指定した場所に火災発生の虚偽の通報又は第二条第九項の傷病者に係る虚偽の通報をした者。(消防法第44条第20号)
火災と傷病者の虚偽通報は同じ号で同じ重さの罰を受けます。
第44条第20号は「火災発生の虚偽の通報」と「傷病者に係る虚偽の通報」を並べて1つの号にまとめています。
どちらに当たっても30万円以下の罰金又は拘留という同じ罰が科されます。
対象は救急車を呼ぶための通報に限らず、傷病者が存在するという虚偽の内容そのものです。
次に、どこまでが「正当な理由がない」通報に当たるのかを確認します。

火災の嘘と同じ号に入っているとは思いませんでした。

はい、号は同じでも文言ははっきり書き分けられています。
罰の重さはどちらも同じです。

思い込みや勘違いの通報も罰せられるのか

電話の上に大きな疑問符を描いて勘違いの通報を示したイメージ
条文は「虚偽の通報」とだけ書いているわけではありません。
その手前に、罰則が及ぶ範囲を絞る言葉が置かれています。
二十 正当な理由がなく消防署又は第二十四条(略)の規定による市町村長の指定した場所に火災発生の虚偽の通報又は第二条第九項の傷病者に係る虚偽の通報をした者。(消防法第44条第20号)
救急業務とは、(略)医療機関その他の場所へ緊急に搬送する必要がある傷病者のうち、(略)搬送すること(略)をいう。(消防法第2条第9項)
対象になるのは正当な理由のない虚偽の通報だけです。
「虚偽」とは、本当は傷病者がいないと知りながら、いるかのように伝えることを指します。
救急業務の対象となる傷病者がいると誤解して通報した場合は、虚偽には当たりません。
本当に具合が悪いと思い込んでの通報まで処罰の対象にする条文ではないということです。
不確かでも心配なときは、ためらわずに通報することが基本になります。

勘違いで救急車を呼んでしまっても、それだけでは罰せられないんですね。

はい、処罰の対象になるのは故意の虚偽通報だけです。
不確かでも気づいたら通報してください。

会社にも罰金が科されることになるのか

天秤の片方に会社の建物を置き禁止マークを添えて法人が対象外であることを示したイメージ
消防法の罰則の中には、行為者だけでなく会社まで罰する号があります。
第20号がその列挙に入っているかどうかを確認します。
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を科する。(消防法第45条)
三 (略)前条第一号、第三号、第十一号、第十二号若しくは第二十二号 各本条の罰金刑(消防法第45条第3号)
第20号は両罰規定の列挙に入っていません。
第45条第3号が挙げる第44条の号は、第一号・第三号・第十一号・第十二号・第22号の5つだけです。
第20号はこの中に含まれていないため、虚偽の通報をした行為者個人だけが罰せられます。
会社として業務中に起きたことであっても、法人に罰金刑が科される規定は置かれていません。
それでも行為者本人が処罰される点は変わらないので、個人の判断で済ませない姿勢は必要です。

会社の電話から虚偽の通報をしてしまったら、会社も罰金を取られますか。

いいえ、第20号は両罰規定の対象外です。
罰せられるのは行為者本人だけです。

火災以外の災害でも同じ罰則が及ぶのか

土砂災害の警戒標識と電話と建物を並べて他の災害への準用を示したイメージ
火災の通報義務を定めた条文は、火災だけに閉じていません。
別の条文が、他の災害にも範囲を広げています。
火災を発見した者は、遅滞なくこれを消防署又は市町村長の指定した場所に通報しなければならない。(消防法第24条)
第十八条第二項、第二十二条及び第二十四条から第二十九条まで(略)の規定は、水災を除く他の災害について準用する。(消防法第36条第8項)
火災の通報義務は水災を除く他の災害にも及びます。
第36条第8項により、第24条は土砂災害のような他の災害にもそのまま準用されます。
一方で、第44条第20号の傷病者に係る虚偽通報の部分には、このような準用の定めはありません。
傷病者に関する虚偽通報の罰則は、災害の種類を問わず、もともと全国で同じ条文が直接適用される形です。
どの災害がきっかけであっても、求められる対応は変わらないということです。

火災以外の災害でも、通報の決まりは変わらないんですか。

はい、第36条第8項の準用で水災以外の災害にも及びます。
傷病者の虚偽通報はもともと一律の規定です。

よくある質問

Q119番で救急車を呼ぶ義務は消防法に定められていますか?
A火災の通報については消防法第24条が義務を定めていますが、傷病者についてこれに相当する通報義務の条文はありません。虚偽の通報だけを罰する規定が別に置かれています。
Q傷病者に係る虚偽の通報をするとどんな罰になりますか?
A消防法第44条第20号により30万円以下の罰金又は拘留の対象になります。火災発生の虚偽の通報と同じ号で、同じ重さの罰が定められています。
Q勘違いで救急車を呼んでしまった場合も罰せられますか?
A罰則の対象になるのは正当な理由のない虚偽の通報です。本当に傷病者がいると思い込んでの通報は虚偽に当たらず、対象になりません。
Q虚偽の通報をした従業員の会社も罰せられますか?
A消防法第45条第3号が挙げる号に第20号は含まれていないため、会社に罰金刑は科されません。罰せられるのは行為者本人だけです。

まとめ

✔消防法第2条第9項は救急業務の対象となる傷病者を定義しています
✔火災の第24条のような通報義務の条文は、傷病者については置かれていません
✔傷病者に係る虚偽の通報をすると30万円以下の罰金又は拘留に処せられます(消防法第44条第20号)
✔火災発生の虚偽の通報と同じ号・同じ重さの罰則です
✔対象は正当な理由のない虚偽の通報だけで、思い込みや勘違いは対象外です
✔第20号は両罰規定に含まれず、会社は罰せられません
✔火災の通報義務は水災を除く他の災害にも準用されますが、傷病者の虚偽通報にはこの準用規定はありません

火災と傷病者で罰則の書き分けがあることが分かりました。
これで安心です。

消防法第44条第20号は正当な理由のない虚偽の通報だけが対象です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第2条第9項
  • 消防法第24条・第36条第8項
  • 消防法第44条第20号・第45条
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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