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特定非常災害で相続の承認や放棄の期限はなぜ延びるのか|熟慮期間の特例と政令で定める日を解説

特定非常災害での相続の熟慮期間の延長を解説する記事のアイキャッチ画像。窓辺の食卓に置かれた書類フォルダと家の形の鍵置きと万年筆

大きな災害で家族が亡くなると、相続の承認や放棄の判断も迫られます。
民法は、相続の開始を知った時から三箇月以内に決めるよう定めています。
平成25年の改正では、特定非常災害でこの期間を延ばせる規定が特定非常災害法に加わったと、国の通知が説明しています。
通知と条文で、その仕組みを確かめます。

災害のあとで相続の判断まで迫られると、大変ですね。

民法の期間は、相続の開始を知った時から三箇月です。

災害のときは、その期間が延びることがあるのでしょうか。

特定非常災害では、政令で定める日まで延びる場合があります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 民法は、相続人が相続の開始を知った時から三箇月以内に、承認か放棄をするよう定めています(第915条第1項)。
  • 特定非常災害では、期間の末日が発生日から一年を超えない範囲内の日の前日までに来るとき、政令で定める日まで伸長されます(特定非常災害法第6条第1項)。
  • 対象は、発生日に政令で定める地区に住所を有していた相続人などです。
  • 通知は、適用される被災者の範囲は災害ごとに政令で定めると説明しています。
  • この特例が使えるのは、災害を特定非常災害として政令で指定し、この措置も指定した場合です(第2条)。

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熟慮期間が延びる仕組みを示す図解(特定非常災害の指定、対象地区を政令で指定、熟慮期間が延びる)

相続の承認や放棄の期限は、なぜ災害のあとに延ばす必要があるのか

左に傾いた屋根に青いシートを掛けた被災した木造の家、右に机の上の書類の束と大きな砂時計が置かれたイラスト

災害の直後は、生活の立て直しが最優先になります。
通知と条文が、相続の判断の期限をどう扱っているかを見ます。

(災害対策基本法等の一部を改正する法律による改正後の災害対策基本法等の運用について 平成25年6月21日 府政防第559号・消防災第246号・社援総発0621第1号)特定非常災害法において、特定非常災害の被災者である相続人について、災害発生後間もない時期に、その相続に係る熟慮期間(相続の承認又は放棄をすべき期間)が満了する場合には、(略)
(民法第915条第1項)相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
(特定非常災害法第2条第1項)著しく異常かつ激甚な非常災害であって、(略)当該非常災害により相続の承認若しくは放棄をすべきか否かの判断を的確に行うことが困難となった者の保護、(略)に資するための措置を講ずることが特に必要と認められるものが発生した場合には、当該非常災害を特定非常災害として政令で指定するものとする。

期限を延ばす仕組みは、被災者が判断する時間を確保するためのものです。
民法第915条第1項は、相続人が相続の開始を知った時から三箇月以内に、承認か放棄をするよう定めています。
特定非常災害法第2条は、相続の承認や放棄の判断を的確に行うことが困難となった者の保護を、特定非常災害の指定の理由の一つに挙げています。
通知は、災害発生後間もない時期に相続に係る熟慮期間が満了する場合には、期間を伸長することができることとしたと説明しています。
民法のただし書は、この期間を、利害関係人などの請求により家庭裁判所が伸長できるとも定めています。

災害のときでも、期限は三箇月なのですか。

民法の原則は三箇月です。
特定非常災害には例外があります。

熟慮期間の延長は、どのような相続人が対象になるのか

左に橙色の点線で囲まれた区域を示す地図の板、右に同じ橙色の点線で囲まれた家々が並ぶイラスト

延長の対象は、災害に遭った人すべてではありません。
条文が、対象になる相続人の条件を定めています。

(災害対策基本法等の一部を改正する法律による改正後の災害対策基本法等の運用について 平成25年6月21日 府政防第559号・消防災第246号・社援総発0621第1号)(略)なお、適用される被災者の範囲は、災害ごとに政令で定めることとしている。
(特定非常災害法第6条第1項)相続人(次の各号に掲げる場合にあっては、当該各号に定める者)が、特定非常災害発生日において、特定非常災害により多数の住民が避難し、又は住所を移転することを余儀なくされた地区として政令で定めるものに住所を有していた場合において、(略)
(同項各号)一 相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡した場合 その者の相続人 二 相続人(前号の場合にあっては、同号に定める者)が未成年者又は成年被後見人である場合 その法定代理人

対象は、政令で定める地区に住所があった相続人です。
第6条第1項は、特定非常災害発生日に、多数の住民が避難し、又は住所を移転することを余儀なくされた地区として政令で定めるものに住所を有していた相続人を対象としています。
通知も、適用される被災者の範囲は災害ごとに政令で定めると説明しています。
相続人が承認や放棄をしないで死亡した場合は、その者の相続人が、地区の条件を満たすかどうかを見ます。
相続人が未成年者や成年被後見人である場合は、その法定代理人が、地区の条件を満たすかどうかを見ます。

災害に遭えば、誰でも延びるわけではないのですね。

政令で定める地区に住所があったことが条件です。
第6条第1項が定めています。

熟慮期間は、いつまで延びるのか

左に短い青い棒、その右に橙色の長い棒が続き、先端に小さな赤い旗が立つイラスト

延びる日は、災害ごとの政令で決まります。
通知は、延長の上限を示しています。

(災害対策基本法等の一部を改正する法律による改正後の災害対策基本法等の運用について 平成25年6月21日 府政防第559号・消防災第246号・社援総発0621第1号)(略)当該熟慮期間を特定非常災害の発生日から一年を超えない範囲内において政令で定める日まで伸長することができることとしたものである。
(特定非常災害法第6条第1項)(略)民法(明治二十九年法律第八十九号)第九百十五条第一項の期間(この期間が同項ただし書の規定によって伸長された場合にあっては、その伸長された期間。以下この条において同じ。)の末日が特定非常災害発生日以後当該特定非常災害発生日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日の前日までに到来するときは、同項の期間は、当該政令で定める日まで伸長する。

延びる期間の上限は、災害の発生日から一年です。
通知は、熟慮期間を特定非常災害の発生日から一年を超えない範囲内で政令で定める日まで伸長できると説明しています。
第6条第1項は、期間の末日が、発生日から起算して一年を超えない範囲内で政令が定める日の前日までに来るとき、政令で定める日まで伸長すると定めています。
この範囲に末日が入る場合に、特例が働きます。
民法のただし書で家庭裁判所が期間を伸長した場合は、その伸長された期間の末日で見ます。

延びる日は、いつになるのですか。

政令で定める日までです。
災害ごとに政令を確かめます。

特定非常災害の指定がなければ、この特例は使えないのか

左に官庁の建物、中央に赤い印のある巻いた書類、右に低い台の上のオンの位置のレバースイッチが並ぶイラスト

特例は、災害が起きれば自動で使えるわけではありません。
指定の手続を、条文で確かめます。

(特定非常災害法第2条第1項)(略)当該非常災害を特定非常災害として政令で指定するものとする。この場合において、当該政令には、当該特定非常災害が発生した日を特定非常災害発生日として定めるものとする。
(特定非常災害法第2条第2項)前項の政令においては、次条以下に定める措置のうち当該特定非常災害に対し適用すべき措置を指定しなければならない。当該指定の後、新たにその余の措置を適用する必要が生じたときは、当該措置を政令で追加して指定するものとする。

指定の政令が出て、はじめて特例の対象になります。
第2条第1項は、この政令に、災害が発生した日を特定非常災害発生日として定めるとしています。
第2条第2項は、政令で、特例のうち当該災害に適用すべき措置を指定しなければならないと定めています。
通知は熟慮期間の伸長を「伸長することができる」と説明していますが、現行の第6条第1項の文末は「伸長する」です。
通知の説明と現行の条文で言い回しが違うので、判断は現行の条文で確かめます。

災害が起きれば、自動で延びるのではないのですね。

政令の指定が要ります。
措置も政令で指定されます。

明日から何を確認しておけばよいのか

左にチェックリストの板、中央の机に開いた書類フォルダ、右に小さな家の模型が並ぶイラスト

相続の期限は、災害のさなかに調べる余裕がありません。
平常時に、確認の手順を決めておきます。

期限と指定の有無を、政令と条文で確かめます。
相続の開始を知った日から数えて、民法の三箇月の末日がいつかを確認します。
災害が特定非常災害に指定されているか、この熟慮期間の特例が措置として指定されているかを、政令で確認します。
被相続人や相続人の住所のあった地区が、政令で定める地区に含まれるかを確認します。
延びる場合の「政令で定める日」は、政令の本文で確かめます。個別の判断は、弁護士や家庭裁判所などにご確認ください。

相続の期限は、政令まで確かめる必要があるのですね。

現行の条文と政令で確認するのが安心です。
よくある質問もあわせてご確認ください。

よくある質問

Q熟慮期間とは何ですか?
A通知は、相続の承認又は放棄をすべき期間と説明しています。民法第915条第1項は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内と定めています。
Q延びる期間は、最長でどこまでですか?
A通知は、特定非常災害の発生日から一年を超えない範囲内で政令で定める日までと説明しています。
Qどの地区の相続人が対象になりますか?
A第6条第1項は、特定非常災害により多数の住民が避難し、又は住所を移転することを余儀なくされた地区として政令で定めるものに、発生日に住所を有していた相続人を対象としています。
Q家庭裁判所による伸長とは別の仕組みですか?
A民法第915条第1項のただし書は、利害関係人又は検察官の請求により、家庭裁判所が期間を伸長できると定めています。第6条第1項は、その伸長があった場合は伸長された期間の末日で見ると定めています。

まとめ

✔民法は、相続の開始を知った時から三箇月以内に、承認か放棄をするよう定めています(第915条第1項)。
✔特定非常災害の指定の理由の一つに、相続の判断を的確に行うことが困難となった者の保護があります(第2条)。
✔対象は、発生日に政令で定める地区に住所を有していた相続人などです(第6条第1項)。
✔期間は、発生日から一年を超えない範囲内で政令が定める日まで伸長されます。
✔特例が使えるのは、特定非常災害として政令で指定され、この措置も指定された場合です。
✔通知の「伸長することができる」と、現行の第6条第1項の「伸長する」は言い回しが違います。
✔期限と指定の有無は、現行の条文と政令で引き直して確認します。

現行の条文と政令で、まず確認してみます!

それが一番の備えになります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 災害対策基本法等の一部を改正する法律による改正後の災害対策基本法等の運用について(平成25年6月21日 府政防第559号・消防災第246号・社援総発0621第1号)
  • 特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律(平成8年法律第85号)第2条、第6条
  • 民法(明治29年法律第89号)第915条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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