カラオケ店や漫画喫茶の個室で、お客様のたばこの煙が原因で煙感知器が作動しないか、心配になったことはありませんか。
平成22年3月31日、消防庁予防課は事務連絡「消防用設備等に係る執務資料の送付について」で、個室の喫煙で煙感知器がどうなるかを確かめた実験と、イヤホンを付けた客に警報音がどう聞こえるかを確かめた実験の概要を、各地の消防本部へ送りました。
「作動しなかった」という結果だけが、一人歩きしやすい資料です。
この記事では、通知が送られた理由、対象、実験の中身、読むときの落とし穴、確認手順を、通知と現行の条文をもとに解説します。
個室のたばこの煙で、煙感知器が鳴らないか心配です。
お客様が吸う部屋なので、誤報も困ります。
消防庁が実験をして、結果を各地の消防へ送っています。
まず、なぜ送られたのかから見ましょう。
警報音がイヤホンで聞こえない、という話もあると聞きました。
二つの実験が、同じ通知にまとまっています。
順番に整理します。
- 消防庁予防課は平成22年3月31日の事務連絡で、カラオケ個室の喫煙実験と、複合カフェの警報音の実験の概要を「参考のため」送付しました。
- 喫煙実験では、定員もしくは定員を若干超える人数が一度に喫煙しても、2室とも煙感知器は作動しませんでした。空調と換気の入切でも、結果は同じでした。
- ただし、ポンプで煙を出し続けた条件では感知器が作動し、通知の考察は一定以上の煙が入れば作動すると述べています。
- 警報音の実験では、イヤホンの型によって遮音の効果が大きく違い、音楽を80デシベル程度で聞いていると、警報ベル音が80デシベルでも聞こえない場合があると考えられています。
- 現行の規則は、遊興の個室に煙感知器または熱煙複合式スポット型感知器を求め(第23条第5項第3号の2)、ヘッドホンやイヤホンを使う個室では警報音を確実に聞き取れる措置を求めています(第24条第5号イ(ハ))。
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目次
消防庁はなぜ個室の喫煙と警報音の実験結果を各地の消防へ送ったのか

まず、通知の本文で経緯を確かめます。
消防法施行規則等の一部を改正する省令(平成21年総務省令第93号)が平成21年9月30日に公布され、個室ビデオ店等における防火安全対策が強化されたところですが、今般、カラオケ施設の個室における喫煙による煙感知器への影響(別添1参照)及び複合カフェにおける火災警報音の聞こえ方(別添2参照)について、関係機関・団体により実験が行われ、その概要がとりまとめられましたので、参考のため送付いたします。
通知の文面は、火災の名前を挙げていません。
ただし、個室ビデオ店等の防火安全対策を強化した省令改正のあとに送られたことは、冒頭の一文から読み取れます。
別添1の喫煙実験の報告書は、目的を「非火災報対策の検討資料とする」と書いています。
宛先は、各都道府県消防防災主管課、東京消防庁、各指定都市消防本部です。
同じ日付で、容器弁の点検などを扱う別の執務資料も送られているので、本記事ではカラオケ施設と複合カフェの実験を送付した通知だけを扱います。
| 文書 | 作成者・日付 | 内容 |
|---|---|---|
| 事務連絡の本文 | 消防庁予防課設備係 平成22年3月31日 | 二つの実験の概要を「参考のため」送付する |
| 別添1 | 日本火災報知機工業会 技術委員会 平成22年3月 | カラオケ施設の個室における喫煙による煙感知器への影響実験報告書 |
| 別添2 | 産業技術総合研究所 最終報告書(要約) 平成22年3月15日 | 複合カフェにおける火災警報音の聞こえ |
法令が変わったわけではなく、実験の紹介なのですね。
そのとおりです。
参考資料として読む点がまず大切です。
この実験の対象はどんな店のどんな部屋なのか

令と規則の条文で、範囲と義務を確かめます。
カラオケボックスその他遊興のための設備又は物品を個室(これに類する施設を含む。)において客に利用させる役務を提供する業務を営む店舗で総務省令で定めるもの
令第二十一条第一項(第十二号を除く。)に掲げる防火対象物又はその部分のうち、(略)第二号及び第三号の二に掲げる場所にあつては煙感知器又は熱煙複合式スポット型感知器を、(略)設けなければならない。
三の二 遊興のための設備又は物品を客に利用させる役務の用に供する個室(これに類する施設を含む。)(略)
規則第23条第5項第3号の2は、その個室に煙感知器または熱煙複合式スポット型感知器を設けるよう定めています。
つまり、個室には煙で作動する感知器が付いているのが前提で、そこにたばこの煙が入ったらどうなるかが、実験の問いです。
実験は、東京都内のカラオケ店の個室2室で行われました。
通知の別添2は「複合カフェ」を扱っており、ネットカフェなどが(2)項ニに含まれる理由は、別の記事で詳しく解説しています。
| 項目 | 根拠 | 内容 |
|---|---|---|
| 店舗の区分 | 令別表第一(2)項ニ | カラオケボックスなど、遊興のための設備を個室で客に利用させる店舗 |
| 感知器 | 規則第23条第5項第3号の2 | 遊興の個室に、煙感知器または熱煙複合式スポット型感知器 |
| 地区音響装置 | 規則第24条第5号イ(ロ)・(ハ) | 音が聞き取りにくい場所での区別、ヘッドホンやイヤホンを使う個室での聞き取り |
つまり、個室にも煙感知器が付く前提の実験なのですね。
はい。
個室の感知器と警報音が、二つの実験の中心です。
二つの実験では何がどこまで分かったのか

警報音の実験は、距離やイヤホンで聞こえ方がどう変わるかを見ています。
少人数用の部屋(4名、6名)において、定員もしくは定員を若干超える人数が一度に喫煙をしても感知器が作動することはなかった。部屋の使用条件として、空調機、換気のon/offいずれにおいても結果は同様であった。
今回の結果では、定員もしくは定員を若干超える人数が一度に喫煙するという厳しい条件下でも、感知器が作動することはなかった。ただし、煙感知器の特性上、煙を直接吹きかける等、一定以上の煙が入れば作動するものであることは考慮しておく必要がある。
部屋は定員4名の202号室と、定員6名の206号室で、天井の高さは2.4メートルでした。
換気扇と空調のオンとオフを組み合わせ、光電式スポット型の2種と3種を、それぞれ4社分設置しています。
結果は、定員もしくは定員を若干超える人数が吸っても、感知器は作動しませんでした。
一方、ポンプで煙を出し続けて感知器が作動するまで加速した条件では、感知器が作動しています。
| 喫煙実験の項目 | 内容 |
|---|---|
| 実験日・場所 | 平成22年1月26日、東京都内のカラオケ店の個室2室(定員4名の部屋と、定員6名の部屋) |
| 喫煙の条件 | 定員数が同時に10分間、2本ずつ5分間隔。定員4名の部屋では、6名で吸う条件も試した |
| 感知器 | 光電式スポット型の2種(設定作動感度は約10%)と3種(約15%)を各4社分、濃度計としてアナログ式 |
| 参画した機関 | 日本カラオケスタジオ協会、消防庁、日本火災報知機工業会 |
| 喫煙実験の結果 | 感知器の反応 |
|---|---|
| 定員または定員を若干超える人数の喫煙 | 作動せず(空調・換気のオンとオフのどちらも) |
| ポンプで強制的に発煙(202号室) | 2種は4社とも370〜494秒で作動。3種は4社中2社が作動 |
| ポンプで強制的に発煙(206号室) | 2種は106〜185秒、3種は160〜245秒で4社とも作動 |
火災警報ベルの音圧は、音の伝達経路の特性(ドアや壁による遮音や障害物による吸音)に大きく影響される。
(略)音楽を80 dB程度の音圧で聞いているとき、イヤホンのタイプによっては、火災警報ベル音の音圧が80 dBでも聞こえない場合があると考えられる。
| 警報音の実験の項目 | 報告書の要約が述べること |
|---|---|
| 距離と遮音 | 1メートルで90デシベルなら、距離減衰だけで25メートル離れた位置は約62デシベル。実測の騒音レベルはそれより10デシベル以上低く、条件によっては20デシベルも低かった |
| イヤホンの型 | 遮音の効果は型で大きく異なる。挿入型イヤホンや密閉型ヘッドホンで大きく、開放型ヘッドホンやイントラコンカ型イヤホンでは小さい。挿入型とイントラコンカ型の差は30デシベル近く |
| 音楽を聞いているとき | 80デシベル程度で音楽を聞いていると、型によっては警報ベル音が80デシベルでも聞こえない場合があると考えられる |
イヤホンの種類でも、警報音の聞こえ方が変わるのですね。
はい。
イヤホンの型と音楽の音量が、聞こえ方を左右します。
実験の結果を読むときに見落としやすいのはどこか

資料の性格、実験の条件、感知器の位置、警報音の基準です。
(イ)取り付けられた音響装置の中心から一メートル離れた位置で九十デシベル以上であること。
(ハ)令別表第一(二)項ニ、(十六)項イ、(十六の二)項及び(十六の三)項に掲げる防火対象物(略)のうち、遊興のためにヘッドホン、イヤホンその他これに類する物品を客に利用させる役務の用に供する個室(略)があるものにあつては、当該役務を提供している間においても、当該個室において警報音を確実に聞き取ることができるように措置されていること。
二つ目は、実験が個室2室と特定の条件での結果だという点で、報告書自身が、煙を直接吹きかける等一定以上の煙が入れば作動すると述べています。
三つ目は感知器の位置で、206号室では、空調の吹き出し側の感知器が、空調機の横の感知器より早く作動する傾向が見られました。
四つ目は警報音で、規則は1メートルで90デシベル以上と定めていますが、実験では、ドアや壁、イヤホンの遮音で聞こえ方が大きく下がっています。
通知は、感知器の取付け位置の基準までは述べていません。
| 見落としやすい点 | 通知や報告書の書き方 | 確認のしかた |
|---|---|---|
| 資料の性格 | 「参考のため」送付 | 実験の結果を、感知器を省く理由にしない |
| 実験の条件 | 個室2室、定員数の同時喫煙、ポンプ発煙では作動 | 自店の部屋の広さ・換気・喫煙のしかたが実験と同じか考える |
| 感知器の位置 | 空調吹き出し側が早く作動する傾向(206号室) | 空調の吹出口と感知器の位置を図面で見る |
| 警報音 | 距離・ドア・壁・イヤホンの型で聞こえ方が大きく変わる | 個室の中で、ドアを閉めた状態の警報音を確かめる |
実験で作動しなかったからといって、感知器を省いてよいわけではないのですね。
そのとおりです。
規則は個室ごとの煙感知器を求めています。
明日からなにを確認すればよいのか

そこで、通知と条文から、確認したい点を五つに整理します。
その概要がとりまとめられましたので、参考のため送付いたします。
次の手順は通知に書かれた義務ではなく、通知と条文を踏まえた実務上のおすすめです。
個別の設計や運用の適否は、所轄の消防署で確かめてください。
- 遊興の個室ごとに、煙感知器または熱煙複合式スポット型感知器が付いているか、種別と位置を図面で確かめる
- 空調の吹出口と感知器の位置関係を見て、誤報の相談は取付け位置から考える
- 喫煙できる個室では、煙が原因の誤報が過去にあったかを記録で確かめ、感知器を外したり覆ったりせず所轄に相談する
- ヘッドホンやイヤホンを貸し出す個室では、ドアを閉めた状態で警報音が確実に聞き取れるか、実際に音を鳴らして確かめる
- 個室の増設や内装の変更があったときは、感知器と音響装置を見直すと決めておく
まず、個室の感知器の位置と警報音の聞こえ方を確かめます。
それが入り口です。
ドアを閉めた個室で確かめてください。
よくある質問
まとめ
個室ごとの確認から、始めます!
個室の感知器と警報音の見直しは、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 事務連絡「消防用設備等に係る執務資料の送付について」(平成22年3月31日 消防庁予防課設備係)別添1・別添2
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)別表第一(2)項ニ e-Gov法令検索
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第23条第5項第3号の2・第24条第5号イ e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





