危険物施設のまわりに高圧ガスの施設があると、消防法の規則で保安距離を確保しなければなりません。
この保安距離を求められる施設の範囲が、令和6年11月に消防庁の通知でひとつ広がりました。
脱炭素社会に向けた新しい法律で経済産業大臣の承認を受けて水素を製造する施設も、対象に加わったのです。
この記事では対象が広がった理由と、危険物の規制に関する規則第12条がどう変わったのかを解説します。
水素を扱う施設が近くにできたんですが、うちの保安距離に関係あるんでしょうか。
施設の種類によります。
令和6年11月に、水素等供給等促進法に基づく施設も保安距離の対象に加わりました。
うちは危険物の製造所なので、近くに高圧ガスの施設があると距離を取らないといけないんです。
経済産業大臣の承認を受けた水素製造施設も、今回の改正で同じ扱いになりました。
- 消防危第321号(令和6年11月29日)により、危険物の規制に関する規則第12条の保安距離の対象施設が広がりました
- 新しく対象になったのは、水素等供給等促進法に基づき経済産業大臣の承認を受けた高圧低炭素水素等ガスの製造施設です
- 保安距離の数値そのものは変わらず、対象施設の範囲が広がっただけです
- 水圧試験の基準(規則第20条の5の2)も、同じ水素製造施設に適用されます
- 改正省令は公布日(令和6年11月29日)から即日施行で、経過措置はありません
▼

目次
危険物施設の保安距離はなぜ水素の新しい法律に関係するのか

これまでこの規則が対象にしていたのは、高圧ガス保安法の許可を受けた施設だけでした。
令和6年5月に、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律(水素等供給等促進法)が制定されました。
この法律は、経済産業大臣の認定を受けた事業者が計画にそって水素を製造する場合、高圧ガス保安法の都道府県知事許可に代えて経済産業大臣の承認で足りる仕組みを新設しています。
しかし規則第12条はそれまで高圧ガス保安法の許可施設だけを対象にしていたため、承認施設は距離の規定から抜け落ちるおそれがありました。
そこで消防危第321号により、承認施設も高圧ガス保安法の施設と同程度の危険性を持つとして、規則第12条の対象に加えられました。
法律が違うだけで、危険性は同じということなんですね。
はい。
危険性に着目して、規則の対象施設が追いつくよう改正されました。
保安距離の対象施設として新しく加わったのはどこか

今回の改正で、この号の中に水素等供給等促進法に基づく施設がそのまま書き加えられました。
水素等供給等促進法第12条第1項は、認定を受けた事業者が事業所ごとに経済産業大臣の承認を受けられると定めています。
承認を受けた施設は、同法第16条第1項により高圧ガス保安法の完成検査などの規定も準用され、都道府県知事許可の施設と同じ水準の規制がかかります。
つまり法律上の窓口は経済産業大臣でも、規制の中身は高圧ガス保安法の許可施設とそろえられている施設ということです。
自分の施設の近くにこの種の水素製造施設がないかは、まず事業者への確認が必要です。
経済産業大臣の承認だから、都道府県知事の許可とは別物だと思っていました。
窓口は違いますが、規制の中身はそろえられています。
具体的にどんな基準が同じように適用されるのか

あわせて水圧試験の基準にも、同じ水素製造施設が組み込まれています。
規則第12条が定める保安距離の数値表そのものに変更はなく、施設の種類や規模ごとの距離は従来どおりです。
これに加えて、規則第20条の5の2の水圧試験の基準も見直され、水素等供給等促進法に基づく施設の圧力タンクが対象に組み込まれました。
水圧試験は高圧ガス保安法の完成検査に準じた方法で行うことになり、一般の高圧ガス施設と同じ基準がそのまま当てはまります。
距離と試験の両方で、水素製造施設が既存の高圧ガス施設と同列に扱われる形になったということです。
距離の数字自体は変わっていないなら、計算し直す必要はないんですね。
はい。
変わったのは対象施設の範囲だけです。
施行日や適用範囲で見落としやすいのはどこか

この2つは施行日が異なるので、混同しないよう注意が必要です。
今回取り上げた保安距離と水圧試験の見直し(改正省令の「第一の1」)は、令和6年11月29日の公布日から即日施行で、経過措置はありません。
一方、同じ消防危第321号にある避雷設備の日本産業規格の切替え(「第一の2」)だけは、令和7年4月1日からの施行と定められています。
また、規則第12条の除外規定により、対象施設と危険物施設が同一の敷地内にある配管部分は保安距離の計算から除かれる点も見落としやすいところです。
「水素だから」「高圧ガス保安法の許可じゃないから」といった思い込みだけで対象外と判断しないことが大切です。
避雷設備の話と混同していました。
うちは水素施設が近くにあるので、もう対象になっているんですね。
はい。
水素関連の改正はすでに施行済みです。
明日からなにを確認すればよいのか

対象になる場合は、規則第12条の距離基準に沿って図面を見直します。
経済産業大臣の承認を受けた高圧低炭素水素等ガスの製造施設が近くにある場合は、規則第12条の距離基準に沿って自施設との距離を図面で確かめます。
配管のうち製造所の存する敷地と同一の敷地内にある部分は距離の計算から除かれるので、まず敷地の境界を図面上で整理します。
距離が基準に届かない、あるいは判断に迷う場合は、着工前に所轄の消防機関または㈱防災屋のような専門業者へ相談するのが確実です。
すでに稼働している施設でも、近隣で新しく水素製造施設の計画が持ち上がった際には、早めに保安距離の再確認をしておくと安心です。
近くに水素の施設ができる話があるので、まず図面で距離を確認してみます。
敷地の境界と距離の基準を、先に整理しておくと安心です。
よくある質問
まとめ
水素の施設が対象に加わった理由がよく分かりました。
近くの施設を確認してみます!
距離や試験の基準で迷ったら、いつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防危第321号「危険物の規制に関する規則等の一部を改正する省令の公布について」(令和6年11月29日 消防庁次長)
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第12条・第20条の5の2
- 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律(令和6年法律第37号)第12条第1項・第16条第1項
- 高圧ガス保安法(昭和26年法律第204号)第5条第1項・第20条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





