防火管理者として既存の建物を管理していると、増築や大規模の修繕を計画する際に、増築しない既存部分まで今の基準に合わせなければならないのか気になる場面があります。
建築基準法第28条の2第3号はホルムアルデヒド対策(シックハウス対策)を、第35条は廊下の幅や非常用の照明装置、非常用の進入口の技術的基準を定めています。
既存不適格としてこれらの規定の適用を受けていない建物でも、増築等をすると原則としてこの基準が及びます。
この記事では、建築基準法施行令第137条の15が定める、増築等をする部分以外の部分に及ばない基準の範囲を整理します。
うちのビル、廊下の幅もシックハウス対策も今の基準を満たしていないんですが、増築するとなると建物全体を直さないといけないんでしょうか。
必ずしもそうとは限りません。
増築等をする部分以外の部分については、一定の基準の適用を免れます。
どの基準が対象になるのか、詳しく教えてください。
施行令第137条の15が対象になる基準を定めています。
順番に確認していきましょう。
- 既存不適格建築物が増築等をする場合、施行令第137条の15が定める範囲では、増築等をする部分以外の部分に一定の基準の適用は及びません(法第86条の7第3項)。
- 対象になるのは法第28条の2第3号(シックハウス対策)のうち政令で定める部分と、法第35条のうち廊下・非常用の照明装置・非常用の進入口に関する政令で定める部分の適用を受けていない建築物です。
- 免れるのは、ホルムアルデヒドに関する施行令第20条の7から第20条の9までの技術的基準と、廊下の幅(第119条)・非常用の照明装置(第126条の4・第126条の5)・非常用の進入口(第126条の6・第126条の7)の技術的基準です。
- 石綿の添加禁止など法第28条の2第1号・第2号の基準はこの緩和の対象外で、増築等の有無にかかわらず適用され続けます。
- 免れるのは増築等をする部分以外の部分だけで、増築等をする部分そのものには現行基準がそのまま適用されます。
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目次
増築しても増築しない部分はなぜ現行基準に合わせなくてよいのか

ただし一定の要件のもとでは、増築等をする部分以外の部分は現行基準を免れられます。
対象になる規定は、法第28条の2(シックハウス対策)・第35条(廊下・非常用の照明装置・非常用の進入口)など複数の条文にまたがっています。
条文にある「増築等」とは、増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替の4つを指します。
どの規定が対象になり、どの建物がこの緩和を使えるのかを、次章から順番に見ていきます。
増築しない部分は基準を免れるんですね。
うちの建物みたいに廊下の幅が古い基準のままでも対象になりますか。
廊下の幅も対象に含まれます。
次の章で、対象になる建築物の条件を確認しましょう。
どんな既存不適格建築物が施行令第137条の15の対象になるのか

この緩和で問題になる規定は、大きく2つのグループに分かれます。
石綿等の添加を禁じる第1号・第2号は対象外で、対象になるのは第3号のうち政令で定める部分だけです。
2つ目のグループは、法第35条のうち廊下並びに非常用の照明装置及び進入口に関する政令で定める技術的基準(廊下等に関する技術的基準)です。
避難階段や排煙設備に関する技術的基準はこのグループに含まれず、別の緩和規定(施行令第137条の14)が担当します。
次章で、それぞれの技術的基準の中身を確認します。
石綿そのものの規制は対象外なんですね。
具体的にどの条文が緩和されるのか知りたいです。
施行令第137条の15が、具体的な条文番号まで挙げて定めています。
次に見ていきましょう。
具体的にどの基準が適用されなくなるのか

第1項がシックハウス対策、第2項が廊下・非常用の照明装置・非常用の進入口の基準です。
施行令第20条の7(建築材料)・第20条の8(換気設備)・第20条の9(特例)の3か条が該当します。
第2項が指すのは、廊下の幅を定める第119条、非常用の照明装置の設置・構造を定める第五章第四節(第126条の4・第126条の5)、非常用の進入口の設置・構造を定める第五節(第126条の6・第126条の7)です。
いずれも数値や構造方法まで細かく定められた技術的基準で、増築等をする部分以外ではこれらへの適合を新たに求められません。
廊下の幅も非常用進入口も、条文番号まで具体的に決まっているんですね。
気をつけるべき点はありますか。
はい、増築する部分の扱いを取り違えやすいので注意が必要です。
次の章で見落としやすいポイントを説明します。
増築する部分自体はどう扱われるのか

増築等をする部分そのものは、この緩和の対象になりません。
つまり増築する範囲の廊下やシックハウス対策は現行基準に適合させたうえで計画する必要があり、免除の対象になるのは既存のまま残る部分だけです。
似た仕組みに施行令第137条の14(独立部分の緩和)がありますが、あちらは建物を2以上の「独立部分」に区分し、増築等をしない独立部分だけ適用除外を維持する仕組みです。
第137条の15にはこの独立部分という区分がなく、増築等をする部分とそれ以外の部分という単純な2区分で判断します。廊下の幅(第119条)は第137条の14の対象から明示的に除かれているため、廊下の緩和を考えるときは第137条の15を確認する必要があります。
独立部分の緩和と混同しないよう気をつけます。
最後に、計画時の確認手順を教えてください。
最後に増築計画を立てるときの確認手順をまとめます。
増築を計画するときはなにを確認すればよいか

判断に迷う部分は、早めに特定行政庁や専門家へ相談するのが安全です。
- 自分の建物が法第28条の2第3号(シックハウス対策)と法第35条(廊下等)のどちらの既存不適格に当たるかを確認する
- 免除の対象は増築等をする部分以外の部分に限られ、増築等をする部分そのものには現行基準が及ぶことを前提に計画する
- 石綿の添加禁止(法第28条の2第1号・第2号)はこの緩和の対象外であることを踏まえて計画する
- 施行令第137条の14(独立部分の緩和)と混同せず、廊下の幅は第137条の15で扱われることを確認する
- 増築等の着工前に特定行政庁または指定確認検査機関へ適用関係を相談する
着工後に対象範囲を誤っていたと分かると、設計の見直しや工期の遅れにつながります。
対象になる規定を先に確認して、増築計画に反映します。
次はよくある質問も見てみます。
はい、あわせてご確認ください。
次によくある質問をまとめました。
よくある質問
まとめ
増築を計画するときは、対象になる規定と免れる範囲を先に確認します!
建築物の増築や改築をお考えの際は、いつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第3条・第28条の2・第35条・第86条の7
- 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第20条の7・第20条の8・第20条の9・第119条・第126条の4・第126条の5・第126条の6・第126条の7・第137条の14・第137条の15
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の建物における該当性は、構造や規模、周辺の状況によって異なります。具体的な判断は所轄の特定行政庁または専門家にご確認ください。





