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危険物の許可が要らなくなった部分がある工場の消防用設備等はどう見直すのか|自動火災報知設備とボイラー室の消火設備など五つの質疑を現行の条文と照らして解説

危険物の許可が要らなくなった工場のボイラー室と消火器を確かめる

昔から使っている工場の一角に、危険物の一般取扱所として許可を受けていた部分があるとします。
ある日、危険物の品名や数量のきまりが改正されて、その部分が許可を要しなくなりました。
すると、消防法の消防用設備等は、その工場全体でどう見直すのでしょうか。平成4年に消防庁が示した質疑応答には、自動火災報知設備とボイラー室の消火設備について、5つの問いと答えが残っています。
この記事では、その質疑を、現行の条文に照らして読みます。許可が要らなくなった部分がある建物の見直し方を順に確かめます。

許可が要らなくなったら、消防用設備等も関係なくなるんですか。

いいえ。
質疑は、工場全体の設備をどうするかを尋ねています。

その質疑には、どんな問いが載っているんですか。

自動火災報知設備とボイラー室の消火設備を尋ねた、5つの問いです。
順に、現行の条文と見比べます。

この記事の結論
  • 許可を要しなくなった一般取扱所の部分は、工場の部分に対して増築したものとして取り扱い、工場の部分を含め現行の技術上の基準で自動火災報知設備を設置すると答えています
  • そのとき、工場の部分に既にある古い自動火災報知設備は、令第32条を適用して現状で支障ないと答えています
  • 工場の部分にあるガスボイラー室は、原則は現行の基準に適合させるものの、大型消火器を設置する等の措置で令第32条を適用して差し支えないと答えています
  • ボイラー室そのものが、灯油ボイラーからガスボイラーに替わって許可を要しなくなった場合は、水噴霧消火設備等の設置は不要と答えています
  • 平成2年7月に新築工事に着手した工場は、許可を要する部分があっても、工場の部分の自動火災報知設備は設置を要すると答えています

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許可不要になった後の五題として、増築として扱い現行基準で設置する、古い感知器は特例で現状のまま、ガスボイラー室は大型消火器で特例、灯油からガスへ替えたボイラー室は設置不要、許可を要する部分がある新築は設置を要する、を並べた図解

許可が要らなくなった部分がある工場は、自動火災報知設備をどう設置するのか

薄ベージュの大きな工場の建物の側面に、低い小さな建物が付いているイメージ
最初の質疑の建物は、昭和40年に建築された工場で、消防法施行令別表第一の(12)項イ(工場又は作業場)に当たります。図では、一般取扱所であったA部分が200平方メートル、工場のB部分が400平方メートルでした。従来は、A部分も含めた面積で消防法第17条を適用し、自動火災報知設備をB部分に設置していました。そこへ危険物の品名と数量の改正があり、A部分が一般取扱所として許可を要しなくなりました。照会は、自動火災報知設備を次のどれにするかを尋ねています。
問(要旨) 自動火災報知設備の設置は、次のいずれによればよいか。
(1) A部分を含めた面積算定により法第17条を適用していたことから、法第17条の2の適用を受け、昭和40年当時の技術上の基準により、A部分に増設すれば足りる。
(2) A部分をB部分に対して増築したものとして取り扱い、B部分を含み現行の技術上の基準により設置する。
(3) A部分については現行の技術上の基準により設置し、B部分については従前どおりとする。
答(要旨) (2)お見込みのとおり。
(消防庁の質疑応答・平成4年5月22日・消防予第108号)
A部分を増築として取り扱い、B部分を含めて現行の基準で設置する、という(2)を選んでいます。
現行の消防法第17条の2の5第1項は、基準が改正されたときに、現に存する防火対象物の設備が新しい基準に適合しなくても、従前の規定を適用すると定めています。質疑の(1)は、この考え方に立つものです。
ただし、同条第2項第2号は、政令で定める増築、改築等には、この従前の規定の扱いを適用しないと定めています。令第34条の2は、その増築を、床面積の合計が1000平方メートル以上となるもの、又は基準時の延べ面積の2分の1以上となるものと定めています。
図の数字では、A部分の200平方メートルがB部分の400平方メートルのちょうど2分の1です。答えは、この増築の考え方に沿ったものと読めますが、質疑そのものには根拠条文が書かれていないため、断定はできません。

許可が要らなくなった部分は、増築として扱うんですね。

はい。
質疑は、B部分を含めて現行の基準で設置すると答えています。

増築として扱うと、既にある古い自動火災報知設備は取り替えなのか

薄ベージュの工場の廊下の断面に、天井の小さな丸い感知器と、壁の小さな灰色の盤が付いているイメージ
前の質疑で、B部分を含めて現行の基準で設置することになると、次の問題が出ます。B部分にある自動火災報知設備は、建設当時の基準で設置されたもので、廊下や階段等に煙感知器がありません。感知器と受信機は、型式が失効していて、特例期間も終わっています。照会は、これをすべて取り替えるのかを尋ねました。
問(要旨) 前の問の(2)の取扱いとなる場合、現在B部分にある自動火災報知設備は、建設当時の基準で設置されており、廊下、階段等に煙感知器がなく、感知器及び受信機は型式失効している。次のいずれによればよいか。なお、A部分については運用通知に示された令第32条の適用を受け、自動火災報知設備の設置は省略する。
(1) 現行基準に適合するよう廊下、階段等に煙感知器を設置し、感知器及び受信機を取り替える。
(2) 従前の経過を踏まえて令第32条を適用し、現状で支障ないものとする。
(3) 従前の経過を踏まえて感知器及び受信機については、機能に支障がない限りにおいて令第32条を適用し、現状で支障ないものとする(感知器の設置基準については、現行の法令基準に適合するもの)。
答(要旨) (2)お見込みのとおり。
(消防庁の質疑応答・平成4年5月22日・消防予第108号)
従前の経過を踏まえ、令第32条を適用して現状で支障ないと、(2)を選んでいます。
令第32条は、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して、この節の基準によらなくても、火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、火災等の災害による被害を最少限度に止めることができると認めるときは、この節の規定を適用しないと定めています。
自動火災報知設備そのものの設置基準は、現行の令第21条第1項第4号が、別表第一の(12)項の防火対象物で延べ面積500平方メートル以上のものに設置を求めています。図の数字は、A部分とB部分を合わせて600平方メートルです。
質疑は、古い設備を全部取り替えさせる形ではなく、経過を見て現状のまま認める形を選んでいます。ただし、この認定をするのは、条文にあるとおり消防長又は消防署長です。

古い感知器も、特例で今のままで済むことがあるんですね。

はい。
質疑は、令第32条を適用して現状で支障ないと答えています。

工場にあるガスボイラー室には、消火設備が要るのか

薄ベージュのボイラー室の断面に、灰色の円筒形のボイラーと配管があり、横に赤い車輪付きの大きな消火器が置かれているイメージ
次は、消火設備の質疑です。昭和48年に建築された工場で、A部分の700平方メートルが従来の一般取扱所、B部分の1,000平方メートルが工場です。B部分には、従来から設けているガスボイラー室が250平方メートルあり、図には消費熱量30万キロカロリー以上と書かれています。A部分が許可を要しなくなった場合に、このガスボイラー室に水噴霧消火設備等が要るかが問われました。
問(要旨) A部分が一般取扱所としての許可を要しなくなった場合、B部分に従来から設けているボイラー室の水噴霧消火設備等の設置は、次のいずれによればよいか。
(1) 不要である。
(2) 設置を要する。
(3) 従前の経過を踏まえて、大型消火器を設置する等の措置を講じることにより、令第32条を適用し支障ないものとする。
答(要旨) 前の問の答えの考え方により、ガスボイラー室にあっても現行の技術上の基準に適合することを原則とするが、その考え方を踏まえ、(3)によることで差し支えない。
(消防庁の質疑応答・平成4年5月22日・消防予第108号)
原則は現行の基準に適合させるが、(3)の大型消火器等の措置で令第32条を適用して差し支えないと答えています。
現行の令第13条第1項の表は、別表第一に掲げる防火対象物の、鍛造場、ボイラー室、乾燥室その他多量の火気を使用する部分で、床面積が200平方メートル以上のものに、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備のいずれかを求めています。質疑は水噴霧消火設備等で問うていますが、現行の表に水噴霧消火設備は入っていません。
質疑の当時と現行で、設備の種類の書き方が違う点に気をつけてください。250平方メートルのボイラー室は、現行の表の床面積の基準を超えるため、現行の条文でも、原則の設備か、令第32条による代替の判断が必要になります。

原則の設備でなくても、大型消火器で認められることがあるんですね。

はい。
ただし、令第32条の適用は、消防長又は消防署長が判断します。

灯油ボイラーからガスボイラーに替えた部分は、消火設備が不要になるのか

薄ベージュの小さなボイラー室の建物に、細い灰色のガス管と小さな灰色のガスメーターが付いているイメージ
4つ目は、ボイラー室そのものが変わった質疑です。昭和48年に建築された工場で、A部分の200平方メートルは、従来、灯油ボイラーを使う一般取扱所として許可を受けていました。それを都市ガスを燃料とするボイラーに変更したところ、一般取扱所としての許可を要しなくなりました。B部分の工場は500平方メートルで、図には消費熱量30万キロカロリー以上と書かれています。
問(要旨) A部分が、灯油ボイラーからガスボイラーに変更されて一般取扱所としての許可を要しなくなった場合、水噴霧消火設備等の設置は、次のいずれによればよいか。
(1) 不要である。
(2) 設置を要する。
答(要旨) (1)お見込みのとおり。
(消防庁の質疑応答・平成4年5月22日・消防予第108号)
設置は不要と、(1)を選んでいます。
前の質疑との違いは、ボイラー室がどちらの部分にあるかです。前の質疑のボイラー室は、もともと工場側にありました。この質疑のボイラー室は、一般取扱所だった部分そのものです。
質疑には理由が書かれていません。ただ、消防法第17条の2の5第1項の従前の規定を適用する考え方は、基準が改正された時に既にある設備を、従前の基準で見るものです。許可を要しなくなったからといって、現行の基準を新たに当てはめない、という整理と読めます。
現行の令第13条第1項の表には、200平方メートル以上のボイラー室があります。今、同じ改修を考えるときは、この質疑の答えをそのまま使わずに、所轄の消防署に確かめてください。

同じボイラー室でも、どの部分にあるかで答えが違うんですね。

はい。
質疑は、一般取扱所だった部分そのものなら設置は不要と答えています。

新築のときは、許可を要する部分があっても自動火災報知設備は要るのか

薄ベージュの新しい工場の建物に小さな別棟が付き、開いた扉の奥に橙色のドラム缶が三つ積まれているイメージ
最後は、新築の質疑です。平成2年7月に新築工事に着手した工場で、A部分は一般取扱所としての許可を要する部分の200平方メートル、B部分は工場の400平方メートルです。B部分の自動火災報知設備が要るかが問われました。
問(要旨) 平成2年7月に新築工事に着手した防火対象物(別表第一(12)項イ)のB部分の自動火災報知設備の設置は、次のいずれによればよいか。
(1) 不要である。
(2) 設置を要する。
答(要旨) (2)お見込みのとおり。
(消防庁の質疑応答・平成4年5月22日・消防予第108号)
設置を要すると、(2)を選んでいます。
面積を見てください。A部分を除くとB部分は400平方メートルで、令第21条第1項第4号の500平方メートル未満です。A部分を含めると600平方メートルで、500平方メートル以上になります。答えが設置を要するということは、許可を要する部分も延べ面積に数えることが前提だと読めます。
また、この建物は新築です。消防法第17条の2の5第1項は、基準の施行の時に「現に存する」防火対象物の設備に従前の規定を適用するものですから、新築には当てはまりません。着工した時点の基準で、はじめから設置する形と読めます。
危険物施設の設備そのものは、消防法第10条第4項に基づく政令の基準で決まります。工場の部分は、消防法第17条の基準です。同じ建物の中で、部分ごとに根拠が違う点を、覚えておいてください。

許可が必要な部分も、面積には数えるんですね。

はい。
質疑の答えは、A部分の面積を含めた延べ面積を前提にしていると読めます。

よくある質問

Q危険物の許可が要らなくなったら、その部分の消防用設備等はどうなりますか?
A質疑は、その部分を工場の部分に対して増築したものとして取り扱い、現行の技術上の基準で自動火災報知設備を設置すると答えています。実際の扱いは、所轄の消防署が判断します。
Q古い自動火災報知設備は、必ず全部取り替えですか?
A質疑は、従前の経過を踏まえて、令第32条を適用し現状で支障ないと答えています。ただし、この適用を認めるのは消防長又は消防署長です。
Qボイラーをガスに替えたら、ボイラー室の消火設備は要らなくなりますか?
A質疑は、一般取扱所だった部分そのものなら不要と答えています。ただし現行の令第13条第1項の表には、床面積200平方メートル以上のボイラー室があるため、必ず所轄の消防署に確かめてください。
Q質疑の回答は、今もそのまま使えますか?
A質疑の通知や設備の名前は、当時のものです。現行の令第13条や令第21条などは、当時と書き方が違うため、所轄の消防署に確かめてください。

まとめ

✔許可を要しなくなった部分は、質疑では工場の部分への増築として取り扱い、現行の基準で自動火災報知設備を設置する
✔令第34条の2は、増築の床面積が1000平方メートル以上、又は基準時の延べ面積の2分の1以上のとき全体に現行の基準を求める
✔既にある古い自動火災報知設備は、令第32条で現状で支障ないとされた
✔工場側のガスボイラー室は、大型消火器等の措置で令第32条を適用する形が認められた
✔一般取扱所だった部分そのものが、灯油からガスに替わった場合は、質疑では設置が不要とされた
✔新築のときは、許可を要する部分も延べ面積に数えて、自動火災報知設備が必要になることがある
✔質疑の回答は当時のもの。現行の令第13条と令第21条を、所轄の消防署に確かめる

許可が要らなくなっても、建物全体の設備は見直すんですね。
まずは、うちの工場の図面で、部分ごとの面積を確かめてみます!

進める前に、所轄の消防署へ確かめておくのが安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第10条、第17条、第17条の2の5、消防法施行令第13条、第21条、第32条、第34条の2、別表第一
  • 消防庁の消防用設備等に係る質疑応答(予防行政の通知)

※本記事は公表されている法令および通知に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や言葉づかい等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄の消防署にご確認ください。

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