平成18年10月6日、消防庁危険物保安室長が消防危第207号を出しました。
石油会社の複数の事業所で、消防法の許可を受けない無許可の変更工事が行われていたことが判明したためです。
通知は、都道府県に、変更許可申請等の実施の徹底の指導と、迅速な違反処理を求めています。
この記事では、通知の中身と、現行の消防法で確かめられる点を解説します。
事業所で設備を直すことがあります。
変更のたびに許可が要るのでしょうか。
位置、構造、設備を変えるときは、変更の許可が要ります。
まず、通知の中身を確かめましょう。
通知は、どんな場面で出されたのですか。
無許可の変更工事が見つかった場面です。
順に見ていきます。
- 消防危第207号(平成18年10月6日、消防庁危険物保安室長)は、危険物施設の無許可の変更工事を受けて出された通知です。
- 通知は、都道府県に、事業所への変更許可申請等の実施の徹底について指導するよう求めています。
- 無許可による変更工事を把握したときは、迅速な違反処理を求め、認定事業所の認定取消し等を含むと述べています。
- 別紙は、三つの事業所で無許可の変更工事があったことと、うち二つの事業所が認定事業所の認定の取消し処分を受けたことを述べています。
- 現行の消防法では、変更許可を受けずに変更したとき、許可の取消し又は使用停止命令の対象になります。
▼
目次
危険物施設の無許可の変更工事はなぜ消防庁の通知が出るまでになったのか

まず、通知の冒頭を確かめます。
危険物施設において変更工事を行う場合については、消防法(昭和23年法律第186号)第11条の規定により、市町村長等の許可等を受ける必要がありますが、今般、別紙のとおり(略)の複数の事業所において無許可で変更工事が行われていたことが判明いたしました。
製造所、貯蔵所又は取扱所を設置しようとする者は、(略)許可を受けなければならない。製造所、貯蔵所又は取扱所の位置、構造又は設備を変更しようとする者も、同様とする。
現行の消防法第11条第1項は、製造所、貯蔵所又は取扱所の位置、構造又は設備を変更しようとする者も、許可を受けなければならないと定めています。
通知は、市町村長等の許可等を受ける必要があると述べたうえで、無許可の事例を別紙で示しています。
別紙が示した事業所と施設、調査期間は、次の表のとおりです。
| 事業所の所在地 | 無許可の変更工事を行った施設 | 違反の調査期間 |
|---|---|---|
| 千葉県市原市 | 製造所、屋外タンク貯蔵所、一般取扱所、移送取扱所 | 平成7年1月から平成18年8月まで |
| 大阪府堺市 | 製造所、移送取扱所 | 平成9年4月から平成18年8月まで |
| 香川県坂出市 | 移送取扱所 | 平成9年4月から平成18年8月まで |
通知は、無許可の変更工事が行われた期間を、違反の調査期間として示しています。
この期間の長さも、通知が出された背景の一つとして読み取ることができます。
現行の条文で確かめられる範囲は、次の章から順に見ていきます。
調査期間が11年以上に及ぶのですね。
驚きました。
はい、通知は無許可の変更工事の事例を別紙で示しています。
次に、通知が誰に何を求めているかを見ましょう。
通知は誰に向けて何を周知するよう求めているのか

まず、都道府県に向けた部分を確かめます。
また、各都道府県におかれましては、貴都道府県内の市町村に対してもこの旨周知していただくようお願いします。
宛先は、各都道府県の消防防災主管部長と、東京消防庁・各指定都市消防長です。
通知は、都道府県に対して、管内の市町村への周知も求めています。
次に、業界団体に向けた部分を確かめます。
危険物施設の安全確保のためには、市町村長等が、変更工事の内容が消防法令の定める技術基準に適合しているものであることを確認することが必要ですので、各団体におかれましては、加盟各社に対して、消防法令に基づく変更許可申請等の適切な実施について周知徹底されるようお願いします。
別添の通知の宛先は、五つの業界団体の会長です。
事業者に直接向けた通知ではなく、団体を通じて加盟各社へ周知する形が取られています。
ただし、変更の許可を受ける義務は、通知ではなく消防法第11条が事業者に定めています。
私の会社は、これらの団体の加盟社ではありません。
それでも関係ありますか。
変更の許可は、通知ではなく消防法第11条が定めています。
次に、通知が都道府県に求めた対応を見ましょう。
変更許可申請等の実施の徹底とは何を求める通知なのか

一つは事業所への指導、もう一つは違反への処理です。
危険物施設の安全確保のためには、市町村長等が、変更工事の内容が消防法令の定める技術基準に適合しているものであることを確認することが必要ですので、各都道府県におきましては、危険物施設を有する事業所に対して変更許可申請等の実施の徹底について指導するとともに、無許可による変更工事を把握した場合には、迅速な違反処理(「危険物施設の変更工事に係る完成検査等について」(平成11年3月17日付け消防危第22号消防庁危険物規制課長通知)に基づく認定事業所の認定取消し等を含む。)を実施していただくようお願いします。
第一項の規定による許可を受けた者は、製造所、貯蔵所若しくは取扱所を設置したとき又は製造所、貯蔵所若しくは取扱所の位置、構造若しくは設備を変更したときは、当該製造所、貯蔵所又は取扱所につき市町村長等が行う完成検査を受け、これらが前条第四項の技術上の基準に適合していると認められた後でなければ、これを使用してはならない。(ただし書は略)
指導は、危険物施設を有する事業所に対する変更許可申請等の実施の徹底です。
違反処理は、無許可の変更工事を把握したときに、迅速に行うものと述べています。
現行の消防法第11条第5項は、変更したときは、市町村長等が行う完成検査を受け、技術上の基準に適合すると認められた後でなければ使用してはならないと定めています。
通知の「変更許可申請等」の「等」が何を指すかは、通知には書かれていません。
許可を受けるだけでなく、検査を受けて使うまでが決まりなのですね。
はい、完成検査に合格する前に使ってはならないと、条文は定めています。
次に、認定事業所との関係を確かめましょう。
無許可の変更工事は認定事業所でも認定取消しにつながるのか

まず、別紙の注を確かめます。
注1)(略)堺製油所は、9月13日、堺市高石市消防組合消防本部において認定事業所の認定の取消し処分を受けている。
注2)(略)坂出製油所は、9月20日、坂出市消防本部において認定事業所の認定の取消し処分を受けている。
市町村長等は、製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者が次の各号の一に該当するときは、当該製造所、貯蔵所又は取扱所について、第十一条第一項の許可を取り消し、又は期間を定めてその使用の停止を命ずることができる。(略)第十一条第一項後段の規定による許可を受けないで、製造所、貯蔵所又は取扱所の位置、構造又は設備を変更したとき。
通知は、違反処理に、平成11年の消防危第22号に基づく認定事業所の認定取消し等を含むと述べています。
別紙の注は、二つの事業所が、9月13日と9月20日に認定の取消し処分を受けたと述べています。
認定事業所の制度そのものは、別の記事で解説しています。
現行の消防法第12条の2第1項第1号は、変更許可を受けずに変更したとき、市町村長等が許可の取消しか使用停止命令を行えると定めています。
| 読み違えやすい点 | 通知や条文から言えること |
|---|---|
| 認定事業所なら、変更許可は要らないのか | 通知は、無許可の変更工事を違反処理の対象とし、認定事業所の認定取消し等を含むと述べています |
| 品名や数量を変えるだけでも、変更許可が要るのか | 位置、構造、設備を変えずに品名、数量、指定数量の倍数を変えるときは、消防法第11条の4が、変更しようとする日の10日前までの届出を定めています |
| 工事が終われば、すぐ使い始めてよいのか | 消防法第11条第5項は、完成検査を受けて技術上の基準に適合すると認められた後でなければ使用してはならないと定めています。ただし書で、工事に係る部分以外は市町村長等の承認を受けたときに、仮に使える場合があります |
| 無許可の変更に、罰則はあるのか | 現行の消防法第42条第1項は、第11条第1項に違反した者を、六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金としています |
| この通知は、今の運用も示しているのか | 通知は平成18年10月6日付けです。現行の運用は、この通知だけでは分かりません |
変更許可の義務は、通知ではなく消防法第11条が定めています。
上の表は、通知と現行の条文をあわせた、この記事の整理です。
個別の判断は、許可権者である市町村長等の窓口で確かめる必要があります。
認定を受けている事業所でも、許可は別に必要なのですね。
はい、通知は無許可の変更工事を違反処理の対象としています。
最後に、確認する手順をまとめます。
明日から何を確認すればよいのか

次に挙げる確認は、通知が事業者に求めたものではなく、この記事の整理です。
- 設備や配管を変える計画が出たら、工事の前に、位置、構造又は設備の変更にあたるかを市町村長等の窓口で確かめる
- 変更にあたるときは、変更の許可を受けてから工事に入る
- 工事が終わったら、完成検査に合格するまで、変更した部分を使わない
- 品名、数量、指定数量の倍数だけを変えるときは、変更しようとする日の10日前までに届出をする
- 工事を担当する社内外の人にも、許可の要否を工事の前に確かめる手順を共有しておく
許可の窓口は、施設の所在地によって、市町村長、都道府県知事、総務大臣に分かれます。
この区分は、現行の消防法第11条第1項が定めています。
迷ったときは、工事の前に許可の窓口へ相談するのが確実です。
工事の計画が出たら、まず窓口に確かめます。
まず、許可の要否を、工事の前に確かめましょう。
迷ったときは、許可の窓口に相談します。
よくある質問
まとめ
許可の要否を、工事の前に確かめます!
変更工事の手続きは、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防危第207号「危険物施設における変更許可申請等の適切な実施について」(平成18年10月6日 消防庁危険物保安室長)
- 「危険物施設の変更工事に係る完成検査等について」(平成11年3月17日 消防危第22号 消防庁危険物規制課長)※消防危第207号が引く通知
- 消防法(昭和23年法律第186号)第11条、第11条の4、第12条の2、第42条 e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





