港のふ頭につないだ大きな船の上に、遊園地の乗り物やレストランや宿舎を載せて営業するとき、消防法の上では、なにとして扱うのでしょうか。
また、船の側面が広く開いていれば、スプリンクラーヘッドや感知器を付けなくてよい「外部の気流が流通する場所」になるのでしょうか。
消防庁は昭和60年と昭和62年に、そうした船の上の施設についての疑問へ回答しており、その回答は消防予第120号と消防予第84号で各都道府県へ示されています。
この記事では、その質疑を、現行の令別表第一と規則に照らして読みます。五つの問いと答えを順に確かめます。
船の上の施設も、消防法の対象になるんですか。
消防法第2条第2項は、防火対象物に「ふ頭に繋留された船舶」を挙げています。
どの項に入るかで、必要な消防用設備等が変わります。
その質疑には、どんな問いが載っているんですか。
海上レジャーランドについての三つの問いと、サーカス船についての二つの問いです。
順に、現行の令別表第一と規則に見比べます。
- 遊戯施設・飲食店・従業員宿舎を載せた海上レジャーランドは、令別表第一の(2)項ロ、(3)項ロ及び(5)項ロの複合用途で(16)項イに当たるという見込みを、お見込みのとおりと答えています
- 主デッキの両舷に常時開放の開口部があっても、スプリンクラーヘッドを設けなくてよい「外部の気流が流通する場所」とは解されないと答えています
- 感知器の設置についても、その答えの2によられたいと答えています
- はしけを改装したサーカス船は、令別表第一の(1)項イ及び(5)項ロの複合用途で(16)項イとして取り扱うことを、お見込みのとおりと答えています
- スプリンクラー設備と避難器具について、条件を満たすことを前提に令第32条を適用してさしつかえないと答え、消防法第8条の防火管理も必要と述べています
▼

目次
遊園地の乗り物と飲食店と宿舎を載せた船は、何項の防火対象物なのか

(消防庁予防救急課長から山口県総務部長あての回答・昭和60年6月18日・消防予第78号。昭和61年8月28日消防予第120号「5」で示されたもの)
照会は、この三つの用途を(2)項ロ、(3)項ロ、(5)項ロと見て、複合用途の(16)項イとして扱ってよいかと尋ね、答えは「お見込みのとおり」です。(16)項イは、(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項、(9)項イのいずれかの用途を一部に含む複合用途をいいます。この船には(2)項ロと(3)項ロが含まれますので、(16)項イと読めます。
主デッキの飲食部は、他の施設と管理権原者が異なり、利用者も利用時間も違うと、照会は述べていました。答えは、そのことをどう見たのかという理由は述べていません。
船の上でも、建物と同じ項の考え方なんですね。
答えは、お見込みのとおり(16)項イです。
理由までは述べていません。
両舷に開口部がある主デッキは、スプリンクラーヘッドを省ける場所なのか

(消防庁予防救急課長から山口県総務部長あての回答・昭和60年6月18日・消防予第78号。昭和61年8月28日消防予第120号「5」で示されたもの)
照会は、開口部が両舷に一対ずつ、間隔1.5メートルで常時開放されていることを理由に、除外の場所に当たると考えて尋ねています。答えは、その考えをとらず、主デッキの当該部分は「外部の気流が流通する場所」とは解されないと答えました。
なぜ解されないのかという理由や、どの程度の開放なら当たるのかという線引きは、答えは述べていません。開口部が広ければ省けるとは、この答えから言えません。
側面が開いていれば、ヘッドは要らないと思ってました。
この質疑では、常時開放の開口部があっても除外できないという答えです。
線引きまでは述べていません。
同じ開口部のある部分は、感知器を付けなくてもよい場所なのか

(消防庁予防救急課長から山口県総務部長あての回答・昭和60年6月18日・消防予第78号。昭和61年8月28日消防予第120号「5」で示されたもの)
答えは「2によられたい」とだけで、感知器の除外の条件(感知器によっては有効に感知できないか)を当てはめた説明はしていません。したがって、感知器を外してよいという答えではなく、二つ目の答えと同じく、当該部分を「外部の気流が流通する場所」とは解さないという答えです。
スプリンクラーも感知器も、同じ答えなんですね。
答えは「2によられたい」で、同じ扱いです。
感知器の条件の説明までは述べていません。
はしけを改装したサーカス船は、何項の防火対象物なのか

(消防庁予防課長から兵庫県生活文化部長あての回答・昭和62年6月2日・消防予第83号。昭和62年6月18日消防予第84号で示されたもの)
照会は、観覧施設を(1)項イ、寄宿施設を(5)項ロと見て、複合用途の(16)項イとして取り扱ってよいかと尋ね、答えは「お見込みのとおり」です。一つ目の質疑の海上レジャーランドと同じく、船の上の施設でも、用途ごとに項を当てはめて複合用途にまとめる答えです。
答えは、テント幕構造の観覧施設を(1)項イと見てよい理由までは述べていません。
テントの観覧席でも、(1)項イなんですね。
答えは、お見込みのとおり(16)項イです。
テントの扱いの理由までは述べていません。
サーカス船では、令第32条でスプリンクラー設備と避難器具を免除できるのか

ア 舞台部の上部に災害時、有効に開放される自然排煙口を設置する。イ 全体の消火設備として、いずれの部分へも2線放水が可能で、かつ10個同時開放ができるポンプ性能を有する屋内及び屋外消火栓設備を有効に配置する。ウ 観覧・宿泊の各施設は、それぞれ鋼構造で区画し、かつ内装材を不燃材又は準不燃材以上のもので行い、延焼拡大防止を図る。エ 火気使用設備は、厨房等の場所(ガス設備がなく電子レンジ等による再加熱)に限定するとともに、施設内における可燃物についても制限する。オ 会場内通路は、条例で定める基準以上の避難経路を確保する。カ 観覧・宿泊の各施設の周囲には避難上有効な屋外バルコニーを設置し、バルコニーには直接避難階(甲板上)に通ずる避難上有効な外部階段(鉄骨)を複数適正に配置する。キ 海側への避難は救命具を設置させるとともに、曳船を常時待機させ支援体制をとる。ク 各地での開催にあたっての、消火・通報及び避難などの自衛消防訓練等の実施方法、公演中における警備要員の配置等、実効性のある消防計画を作成する。
(消防庁予防課長から兵庫県生活文化部長あての回答・昭和62年6月2日・消防予第83号。昭和62年6月18日消防予第84号で示されたもの)
答えは、まず、法第17条第1項によって消防用設備等の設置は必要だと述べます。そのうえで、防火対象物の特殊性を考え、設問のとおり令第32条を適用してさしつかえないとしました。免除の対象は、照会が尋ねたスプリンクラー設備と避難器具で、条件は、自然排煙口、消火栓設備、区画と内装、火気の制限、避難経路、屋外バルコニーと外部階段、曳船の待機、消防計画のとおりです。
さらに、「消防法第8条の規定に基づく防火管理が必要」と念のため申し添えています。条件が満たされているかどうかを誰がどう確かめるのかという点は、答えは述べていません。
設備を免除する代わりに、条件がたくさん付くんですね。
答えは、条件のとおりなら令第32条を適用してさしつかえないというものです。
防火管理は別に必要です。
よくある質問
まとめ
船の上の施設も、質疑の答えが手がかりになるんですね。
まずは、うちの施設の開口部の使い方を見直してみます!
進める前に、所轄の消防署へ確かめておくのが安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第2条、第8条、第17条、消防法施行令第32条、別表第一、消防法施行規則第13条、第23条
- 消防庁の消防用設備等に係る質疑応答(予防行政の通知)
※本記事は公表されている法令および通知に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や言葉づかい等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄の消防署にご確認ください。





