危険物を保管したり取り扱ったりするには、消防法に基づく許可や届出の手続が定められています。
しかし、その手続を踏まずに危険物を置いている施設から、実際に火災が起きています。
令和8年3月、消防庁はこうした無許可・無届の施設での火災を踏まえ、重点的な指導を各消防本部に求めました。
この記事では、無許可施設と無届施設の違いと、現場でなにを確認すればよいのかを解説します。
うちの倉庫に少し灯油を置いているだけですが、それも届出が必要なんでしょうか。
量や施設の種類によっては、許可や届出が必要になります。
消防庁が令和8年3月、実際の事故を踏まえて注意を呼びかけています。
届出を忘れていると、どんな問題が起きるのですか。
実際に無許可・無届の施設で火災が起きています。
順番に見ていきましょう。
- 令和7年度、無許可施設や少量危険物等の無届施設で火災が5件発生し、私鉄路線が10時間以上運行を停止するなど地域に大きな影響を及ぼしました。
- 製造所・貯蔵所・取扱所を設置するには、消防法第十一条第一項に基づく許可が必要です。
- 指定数量未満の少量危険物も、消防法第九条の四に基づく市町村条例により届出が必要です。
- 消防危第55号「危険物等に係る事故防止対策の推進について」は、こうした無許可・無届の施設への指導強化を令和8年度の重点事項としています。
- 危険物は工場や倉庫だけでなく、学校や祭礼の模擬店のような身近な場所にも置かれています。
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目次
危険物の無許可施設や無届施設での火災はなぜ消防庁の重点対策になったのか

危険物を保管するには、消防法に基づく許可や届出の手続が必要です。
しかし、その手続を踏まずに危険物を置いている施設で、実際に火災が起きています。
令和7年度は、無許可・無届の施設の火災だけで5件が発生しました。
東京消防庁の報告によれば、このうち私鉄路線に隣接した工事現場での火災は、10時間以上にわたって電車の運行を停止させました。
危険物による火災そのものの被害だけでなく、周辺の交通やくらしにまで影響が広がったことになります。
これを受け、消防庁は「危険物等に係る事故防止対策の推進について」(消防危第55号)の令和8年度版で、無許可・無届の施設への対応を重点事項の一つに位置づけました。
この通知は、危険物等事故防止対策情報連絡会が平成28年3月に定めた枠組みに基づき、毎年度改定されているものです。
無許可の施設から火災が起きると、電車まで止まってしまうんですか。
はい、実際に10時間以上の運行停止につながった例があります。
まず無許可施設と無届施設がそれぞれ何を指すのか確認しましょう。
無許可施設と無届施設はそれぞれどの危険物施設を指すのか

無許可と無届は、どちらも危険物を扱う手続を欠いた状態を指しますが、根拠になる条文は別です。
施設の規模によって、必要な手続が許可なのか届出なのかが変わります。
指定数量以上の危険物を扱う施設は、許可を受けなければ設置できません。
製造所・貯蔵所・取扱所を新しく設置したり、位置や構造を変更したりするときは、消防法第十一条第一項に基づき、市町村長等の許可を受ける必要があります。
一方、指定数量に届かない少量危険物は、消防法第九条の四に基づいて市町村条例が技術上の基準と届出の手続を定めます。
東京消防庁が指摘した「無許可施設」は前者の許可を欠いた状態、「少量危険物等の無届施設」は後者の届出を欠いた状態を指します。
扱う量が少ないからといって、手続そのものが不要になるわけではありません。
少量なら届出も要らないと思っていました。
量が少なくても、条例で定められた届出は必要です。
次は実施要領が具体的に何を求めているか見てみましょう。
令和8年度の実施要領は何を求めているのか

消防庁は毎年度、関係機関と協力して「危険物等事故防止対策実施要領」をまとめています。
令和8年度版では、無許可・無届の施設への指導強化が重点項目の一つに挙げられました。
令和8年度は、立入検査などあらゆる機会を使った指導が重点事項になりました。
東京消防庁は、建築工事の事前相談や、倉庫・工場への立入検査を通じて、危険物の申請や届出、適正な取扱いについて指導すると示しています。
立入検査そのものは、消防法第四条第一項が消防長・消防署長に認めている権限です。
つまり、工事を始める前の相談の段階からすでに、無許可・無届を防ぐ取組みが始まっているということです。
後から指摘されるより、計画の段階で消防本部に確認するほうが手間も少なく済みます。
工事の前に消防に相談するというのは、具体的にどんな場面を指しますか。
建築工事の計画段階での事前相談です。
次は見落としやすい場所を確認します。
危険物施設に見えない場所ではなにが見落とされやすいのか

危険物の無許可・無届は、工場や倉庫だけで起きるわけではありません。
実施要領は、学校や祭礼のような身近な場所でも危険物の扱いが問題になった事例を挙げています。
危険物は工場だけでなく、学校や祭礼の模擬店にもあります。
学園祭の模擬店では、発電機用のガソリンが灯油用のポリエチレン容器に入れたまま、発電機のすぐ脇に保管されていた事案が確認されました。
高等学校などでも、実験で使った後の亜鉛粉の取扱いを誤り、火災になった事案が複数発生しています。
どちらも「危険物を扱っている施設」という意識が薄いまま危険物に接している場面です。
工場や倉庫の立入検査だけでなく、学校行事や地域の祭礼でも同じ注意が必要だということです。
学校の実験や祭りの模擬店まで対象になるとは思っていませんでした。
危険物という意識が薄い場所ほど、事故につながりやすいんです。
最後に、明日からの確認事項をまとめます。
明日からなにを確認すればよいのか

自分の施設や行事が無許可・無届の状態になっていないかは、量と手続を確認すればわかります。
判断に迷うときは、計画の段階で消防本部に相談するのが確実です。
まず、危険物の量と施設の種類を確認します。
指定数量以上を扱う施設は消防法第十一条第一項の許可が必要で、違反すると同法第四十二条により罰則の対象になります。
指定数量未満でも、市町村条例が定める基準を超える少量危険物には届出が必要です。
倉庫や工場だけでなく、学校行事や地域の祭礼で危険物を使う予定があるときも、同じ基準に当てはまるか確認します。
判断に迷ったら、工事や行事の計画段階で消防本部に事前相談するのが確実です。
今度の行事の前に、一度消防に確認してみます。
それが無許可・無届を防ぐいちばん確実な一歩です。
最後によくある質問を確認しておきましょう。
よくある質問
まとめ
さっそく自分の施設の許可と届出から確認します!
それが重大事故を防ぐいちばん確実な一歩になります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防危第55号「危険物等に係る事故防止対策の推進について」(令和8年3月30日、消防庁危険物保安室長)
- 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第四条・第九条の四・第十一条・第四十二条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





