屋内消火栓のノズルの先端の放水圧力には、消防法施行令の下限と、消防法施行規則の0.7MPaという上限があります。
ただ、上限を超えないための措置をどの方法で講じるかは、国の条文には書かれていません。
埼玉県央広域消防本部(鴻巣市・桶川市・北本市)の審査基準は方法を4つ挙げ、ポンプの締切揚程が170m以上なら中継ポンプで直列運転とするよう定めています。
埼玉県央広域の基準を軸に、鈴鹿市・四日市市・津市・堺市・大阪市の書き方を比べます。
鴻巣市で高層の事務所ビルを計画していて、屋内消火栓のポンプの話が出てきました。
下の階ほど水の勢いが強くなりすぎると聞いたのですが、本当ですか。
そのために国は上限を超えない措置を求めています。
まずは国の条文から見ていきましょう。
抑える方法は、どの市でも同じなのですか。
挙げている方法の数と条件が消防本部ごとに違います。
6つの本部の基準を順に比べます。
- 消防法施行規則第12条第1項第7号ホは、加圧送水装置に放水圧力が0.7MPaを超えないための措置を講じるよう求めるだけで、方法は書いていない
- 埼玉県央広域は、配管の別系統・中継ポンプ・減圧アダプター・一次圧力調整弁及び減圧弁の4つの方法を挙げている(●=法令基準に行政指導を加えた基準)
- 埼玉県央広域と鈴鹿市は、ポンプの締切揚程が170m以上なら中継ポンプを設けて直列運転とし、中継ポンプの位置で10m以上の圧力水頭を残すとしている
- 四日市市は減圧弁を最下階から3階層以内に限り、堺市はインバータ方式の制御盤まで方法に入れている
- 津市は高架水槽や中間ポンプを含む4つの方式、大阪市は5つの方式(◆)を挙げ、中間水槽の量を本部ごとに決めている
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目次
屋内消火栓の放水圧力にはなぜ上限と下限が決められているのか

上限のほうは「措置を講じること」とだけ書かれています。
ニ 屋内消火栓設備は、いずれの階においても、当該階のすべての屋内消火栓(設置個数が二を超えるときは、二個の屋内消火栓とする。)を同時に使用した場合に、それぞれのノズルの先端において、放水圧力が〇・一七メガパスカル以上で、かつ、放水量が百三十リットル毎分以上の性能のものとすること。
消防法施行規則 第12条第1項第7号ホ
ホ 加圧送水装置には、当該屋内消火栓設備のノズルの先端における放水圧力が〇・七メガパスカルを超えないための措置を講じること。
1号消火栓は、どの階でも2個を同時に使ったときに0.17MPa以上・130L/min以上を出す性能が求められます(2号消火栓は0.25MPa以上・60L/min以上)。
埼玉県央広域の基準は、ポンプの全揚程を「ホースの摩擦損失+配管の摩擦損失+落差+17m(1号消火栓の場合)」以上として、最も遠い消火栓を基準に計算する図を載せています。
最も遠い消火栓で下限を満たすようにポンプを選ぶので、ポンプに近い階ほど圧力に余裕が出て、規則の0.7MPaを超えないかが問題になります。
規則第12条第1項第7号ホは措置を講じるよう求めるだけで、どの方法を使うかは各消防本部の審査基準に書かれています。
明日やることは、建物の階数とポンプ室の位置、消火栓の種類を竣工図で確かめることです。
上の階に届くように強くすると、下の階では強すぎるということですね。
そうです。
その差を埋める方法を、各市の基準が具体的に挙げています。
鴻巣市では圧力を抑える方法として何が認められるのか

減圧弁を使うときの付け方も、あわせて書いています。
⑷ 放水圧力が0.7MPaを超えないための措置
省令第12条第1項第7号ホに規定する「放水圧力が0.7MPaを超えないための措置」は、次によること。●
ア ポンプ揚程を考慮し、配管を別系統にする方法
イ 中継ポンプを設ける方法
ウ 減圧装置を内蔵する消火栓弁又は媒介金具(以下「減圧アダプター」という。)を使用する方法
エ 一次圧力調整弁及び減圧弁(以下「減圧弁等」という。)を用いる方法
減圧弁等を用いる場合は、次によること。
(ア) 減圧弁等は、金属製管継手及びバルブ類の基準(平成20年消防庁告示第31号)に適合するもの若しくは認定品のものとすること。●
(イ) 減圧弁等は、減圧措置のための専用の弁とすること。
(ウ) 減圧弁等の接続口径は、取付部分の管口径と同等以上のものであること。
(エ) 設置位置は、消火栓弁等の直近の枝管ごとに、点検に便利な位置とすること。
アは高層用ポンプと低層用ポンプを分けて配管を別系統にする方法で、イは途中の階に中継ポンプを置いて高層部分へ送る方法です。
ウの減圧アダプターは減圧装置を内蔵した消火栓弁や媒介金具を使う方法、エは一次圧力調整弁や減圧弁を配管に入れる方法です。
減圧弁等は、告示第31号に適合するもの又は認定品とし、専用の弁で、消火栓弁等の直近の枝管ごとに点検しやすい位置に付けます。
⑷の見出しには●(法令基準に行政指導を加えた基準)が付き、(ア)にも●が付いていることを画像で確かめました(凡例は審査基準の第1章)。
明日やることは、竣工図か設備業者の資料で、今の建物がアからエのどの方法を使っているかを確かめることです。
減圧弁を使う場合は、消火栓ごとに近くの枝管へ付けるのですね。
点検しやすい位置というのも条件です。
改修のときに弁の場所が隠れないよう気をつけましょう。
ポンプの締切揚程が170m以上になると何が求められるのか

超えたときに置く中継ポンプの条件も細かく決めています。
イ 高層建築物等
高層建築物等において、ポンプの締切揚程(一次圧力調整弁を設けるものは、その設定圧力水頭)が170m以上となる場合にあっては、中継ポンプを設け直列運転とすること。
この場合のポンプの定格全揚程は、中継ポンプの位置において、中継ポンプの定格吐出量時に10m以上の圧力水頭を保有すること。
締切揚程は、ポンプを締切運転(吐出量を0とした運転。津市の基準の定義)したときの揚程で、一次圧力調整弁を付けるものはその設定圧力水頭で数えます。
170m以上になるときは、低層部分のポンプと高層部分の中継ポンプを配管で直列につなぎ、中継ポンプの位置で定格吐出量のときに10m以上の圧力水頭を残すよう求めています(この項に▲や●の印が付いていないことを画像で確かめました)。
中継ポンプそのものにも、3⑵ウで下の表の条件が付いていて、中間水槽の量は中継ポンプの定格吐出量の3倍以上です。
鈴鹿市の審査基準(第4章 第2 2⑶イ)も同じ文で170m以上なら中継ポンプで直列運転とし、10m以上の圧力水頭を求めています(無印)。
明日やることは、高層の計画なら、設計者にポンプの締切揚程と一次圧力調整弁の設定値を聞いておくことです。
| 中継ポンプの条件(埼玉県央広域 3⑵ウ) | 内容 | 記号 |
|---|---|---|
| 位置 | 中継ポンプで送水するすべての屋内消火栓で所定の放水圧力が得られる位置 | 無印 |
| ポンプ | 加圧送水装置告示に適合するもの又は認定品 | ● |
| 押込圧力 | 中継ポンプの許容押込圧力の範囲以内 | 無印 |
| 中間水槽 | 吸込側に設け、有効水量はポンプの定格吐出量の3倍以上 | ▲ |
| 0.7MPaを超える消火栓 | 一次圧力調整弁を設けるなどの措置 | ● |
| 配管 | 逆止弁付きのバイパス配管・性能試験用の止水弁・中間水槽の吸水管の逆止弁 | ▲ |
| 起動 | 低層のポンプからの水圧で起動し、防災センター等から遠隔起動でき、起動を防災センター等で確認できる | ▲ |
中継ポンプにすると、途中の階に水槽とポンプの置き場所が要るということですね。
そのとおりです。
平面計画の早い段階で中間階の機械室を確保しておくと安心です。
鈴鹿市や四日市市や堺市では認められる方法がどう違うのか

いちばん多く挙げているのは堺市です。
(4) 放水圧力が規定圧力を超えないための措置★
放水圧力が0.7MPaを超えないための措置は、次のいずれかの方法によること。
ア 高架水槽の設置高さを考慮して設ける方法
イ ポンプ揚程を考慮し、配管を別系統にする方法
ウ 中継ポンプを設ける方法
エ 消火栓開閉弁に減圧機構付の認定品を使用する方法
オ 性能評定品、日本消防検定協会の評価を受けたもの又はこれらと同等以上の減圧弁(一次圧力調整弁を含む。)を使用する方法
(略)
カ インバータ方式の制御盤を設ける方法
堺市は6つを挙げ、ほかの本部に無いインバータ方式の制御盤を入れています(見出しの★=堺市独自の指導の印を画像で確かめました)。
四日市市(第2章 第2 2(3))は、昭和50年の消防安第55号によるほか、中継用の加圧送水装置・減圧機構を内蔵する消火栓(認定品)・減圧弁又はオリフィス等の3つを挙げ、減圧弁の設置階を最下階から3階層(地階を含む)以内としています(下線なしを画像で確かめました)。
津市(5-2 5)は高架水槽・高層階用と低層階用のポンプ・中間ポンプ・減圧機構付の消火栓開閉弁や減圧弁などの方式を挙げ、大阪市(第4 3)は5つの方式に「同等以上の確実性を有する方式」を加えています(◆=大阪市の行政指導)。
170mの数字は、埼玉県央広域と鈴鹿市の屋内消火栓の節にだけあり、ほかの4本部の屋内消火栓の節には見当たりませんでした。
明日やることは、建物のある市の基準で、使っている方法が挙げられているかを確かめることです。
| 消防本部 | 挙げている方法 | 170mの定め | 目立つ条件 | 記号 |
|---|---|---|---|---|
| 埼玉県央広域(鴻巣市など) | 別系統・中継ポンプ・減圧アダプター・減圧弁等の4つ(3⑷) | 締切揚程170m以上で中継ポンプの直列運転(3⑶イ) | 減圧弁等は告示第31号適合か認定品・枝管ごと | ● |
| 鈴鹿市 | 埼玉県央広域と同じ4つ(第4章 第2 2⑷) | 同じ文(2⑶イ) | 減圧弁等に減圧弁である旨の標識 | 無印 |
| 四日市市 | 中継用の加圧送水装置・減圧機構内蔵の消火栓・減圧弁又はオリフィス等の3つ+消防安第55号 | 屋内消火栓の節には無い | 減圧弁は最下階から3階層以内・着工届に仕様書等を添付 | 下線なし |
| 津市 | 高架水槽・高層階用と低層階用のポンプ・中間ポンプ・減圧機構付開閉弁や減圧弁又はオリフィス等(5-2 5) | 無い | 中間ポンプの中間水槽は3㎥以上で自動給水装置付き(2⑾) | 凡例なし |
| 大阪市 | 別系統・中間水槽と中継ポンプ・高層は加圧送水装置で低層は高架水槽・認定の一次圧力調整弁又は減圧弁・開閉弁に組み込んだ圧力調整装置の5つ(第4 3) | 節内に見当たらない | 中間水槽は規定水量の25%以上・同等以上の確実性の方式も可 | ◆ |
| 堺市 | 高架水槽の高さ・別系統・中継ポンプ・減圧機構付開閉弁・減圧弁等・インバータ方式の制御盤の6つ(Ⅱ 1(4)) | 節内に見当たらない | 性能評定品は着工届に評定書の写しを添付 | ★ |
四日市市だと、上の階に減圧弁を付ける形は使いにくいのですね。
文の上では3階層までと読めます。
中継ポンプの受けもつ階にも当てはめるとしているので、図面で確かめましょう。
ポンプの交換や改修のときは何を確かめればよいのか

埼玉県央広域の基準は、その注意点も書いています。
(イ) 設置後の改修等におけるポンプ、電動機又は付属装置等の交換は、同一仕様又は同一性能のものを設けること。▲
なお、従来の電動機からJIS C4213(低圧三相かご形誘導電動機-低圧トップランナーモータ)(以下この項において「トップランナー対応電動機」という。)へ取り替える場合は、次の事項に留意すること。
(略)
d 電動機の回転速度が上がることにより、加圧送水装置のポンプの吐出量や揚程が増加することがあるので、消防用設備等に係る基準値(例 スプリンクラー設備の放水圧力)が規定の範囲内にあることを確認すること。
埼玉県央広域は、改修のときのポンプや電動機の交換を同一仕様又は同一性能とするよう求めています(▲=行政指導)。
トップランナー対応電動機に替えると回転速度が上がって吐出量や揚程が増えることがあり、基準値が範囲内か確かめるよう書いています(例として挙げているのはスプリンクラー設備の放水圧力です)。
屋内消火栓なら、規則の0.7MPaの上限も確かめる対象になると読めます。
基準値を超えたときの対策として、ポンプの羽根車の径を縮小する方法などがあることも同じ項に書かれています。
明日やることは、ポンプや電動機の更新を見積もるときに、業者へ交換後の放水圧力の確認方法を聞くことです。
- 竣工図で、圧力を抑える方法(別系統・中継ポンプ・減圧アダプター・減圧弁等)がどれかを確かめる
- 高層の計画なら、ポンプの締切揚程と一次圧力調整弁の設定値を設計者に聞く(埼玉県央広域と鈴鹿市は170m以上で中継ポンプ)
- 減圧弁を使うなら、付ける階と枝管の位置が市の基準に合うかを見る(四日市市は最下階から3階層以内)
- ポンプや電動機を替えるときは、交換後の放水圧力が0.7MPaを超えないかを確かめる
- 迷ったら計画の段階で所轄の消防署へ図面を持って相談する
省エネのモーターに替えるだけでも、圧力が変わることがあるのですね。
基準もそこを注意しています。
交換後の放水試験の結果まで受け取っておきましょう。
よくある質問
まとめ
まずは設計者に締切揚程と圧力を抑える方法を聞いてみます!
鴻巣市なら4つの方法のどれを使うかを図面に残しておくと、改修のときにも迷いません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第11条第3項(e-Gov法令検索)
- 消防法施行規則 第12条第1項第7号(e-Gov法令検索)
- 埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準 第3章 第2 屋内消火栓設備 3(埼玉県央広域消防本部)
- 鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準 第4章 第2 屋内消火栓設備 2(鈴鹿市消防本部)
- 四日市市消防同意事務審査基準 第2章 第2 屋内消火栓設備 2・3(四日市市消防本部)
- 四日市市消防同意事務審査基準 第2章 第20 連結送水管(四日市市消防本部)
- 津市予防事務審査検査基準 5-2 屋内消火栓設備 2・5(津市消防本部)
- 堺市消防同意・消防用設備等審査基準 第3章 第1節 第2 屋内消火栓設備 Ⅱ 1(堺市消防局)
- 消防用設備等の設置に係る運用基準 第1章 第2節 屋内消火栓設備 第4(大阪市消防局)
※本記事は各消防本部が公表している審査基準・運用基準と、消防法施行令・施行規則に基づく一般的な解説です。170mの定めが「見当たらない」としたものは、各本部の屋内消火栓の節を検索した範囲の結果で、別の資料に定めがある可能性はあります。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





