高さ70mを超えるビルの連結送水管には、消防車から送った水の圧力を途中で押し上げるブースターポンプが据え付けられます。
国の規則が決めているのはポンプの能力や起動装置までで、ポンプの手前の中間水槽や送水口の表示灯までは書かれていません。
そこを埋めているのが各消防本部の審査基準で、四日市市は配管や連絡装置まで細かく定めています。
この記事では四日市市の基準をたどり、鈴鹿市・津市・埼玉県央広域・大阪市・堺市・東大阪市と中身を比べます。
四日市市で高さ80mほどのオフィスビルを管理しています。
連結送水管のポンプには、国の決まりのほかにも守ることがあるのですか。
四日市市の審査基準は、ポンプまわりの配管や連絡装置まで定めています。
中間水槽の容量も、本部によって3㎥と8㎥に分かれます。
同じ設備でも地域で中身が違うのですね。
そうです。
設計や改修の前に管轄の基準を確かめるのが近道です。
- 消防法施行規則第31条第6号イにより、高さ70mを超える建築物の連結送水管は湿式とし、加圧送水装置を設けます
- 四日市市はポンプの置き場所・直列運転・バイパス配管・起動方法・連絡装置まで審査基準で定めています
- 中間水槽は鈴鹿市・埼玉県央広域・津市が3㎥以上、大阪市・堺市・東大阪市が8㎥以上です
- 四日市市は本文に中間水槽の容量を書かず、配管例の図に「概ね5㎥とする」と書き込んでいます
- 送水口の表示灯・3か所をつなぐ連絡装置・送水圧力の表示は、多くの本部が求めています
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目次
ブースターポンプが要るのはどんな高さのビルなのか

e-Govの現行の消防法施行令第29条第2項第4号と、消防法施行規則第31条第6号イを読みます。
地階を除く階数が十一以上の建築物に設置する連結送水管については、次のイからハまでに定めるところによること。
ロ 総務省令で定めるところにより、非常電源を附置した加圧送水装置を設けること。(略)
消防法施行規則 第31条第6号イ
高さ七十メートルを超える建築物にあつては、連結送水管を湿式とし、かつ、加圧送水装置を(略)設けること。
(ハ)起動装置は、直接操作できるものであり、かつ、送水口の直近又は中央管理室に設けられた操作部から遠隔操作できるものであること。
(ニ)加圧送水装置は、火災等の災害による被害を受けるおそれが少ない箇所に、送水上支障のないように設けること。
地階を除く階数が11以上の建築物の連結送水管には、施行令が非常電源付きの加圧送水装置を求め、その中身を施行規則に任せています。
施行規則は高さ70mを超える建築物について、配管を湿式にし、ポンプの吐出量・全揚程・起動装置・設置場所を定めています。
このポンプを各本部の基準は「中継ポンプ」「ブースターポンプ」と呼び、国の規則に書かれていない中間水槽や送水口まわりの設備を上乗せしています。
鈴鹿市と埼玉県央広域は、高さ70m以下でも送水口の設計送水圧力が1.6MPaを超えるものにはポンプを設けると書いているので、高さだけで判断しないことが大切です。
うちのビルは70mに届かないので、ポンプは関係ないと思っていました。
国の規則だけなら、そう読めます。
ただ送水圧力でポンプを求める本部もあるので、管轄の基準も見てください。
四日市市はポンプの置き場所と配管に何を求めているのか

ポンプ本体・配管・起動方法の段落には、四日市市が行政指導を示すアンダーラインが付いています。
ア 加圧送水装置の設置場所
(略)送水口における設計送水圧力を低く抑え、規定のノズル先端における放水圧力が得られるような位置とすること。この場合、加圧送水装置を屋上に設置し、消火水を流下する方式とすることもできる。
イ(イ)ポンプの締切揚程に押込揚程を加えた値が170m以上となる場合にあっては、複数のポンプを直列に設けること。
イ(エ)c ポンプ周りの配管には、一次側には放水口を、二次側には送水口又は放水口を設けること。
置き場所は送水口の設計送水圧力を低く抑えられる位置とし、ポンプを屋上に置いて水を流し下ろす方式も認めています。
配管は、ポンプを迂回するバイパスと逆止弁、立上り管が2本以上なら合流部を呼称150A以上、一次側の放水口と二次側の送水口又は放水口を求めています。
一次側と二次側の口について、鈴鹿市と埼玉県央広域は、ポンプで送れなくなったときに可搬ポンプ等で送水するためのものと書いています。
起動方法は、防災センターからの遠隔操作・送水口の直近からの遠隔操作・流水検知装置又は圧力検知装置のいずれかとし、送水口の直近と防災センター等で始動を確かめられるようにします。
津市は直列にする目安を160m超とし、高さ100m以上のビルにはポンプの吸水側と吐出側に双口形の口を求めています。
ポンプのまわりに弁や口がたくさん付いているのは、そのためなのですね。
そうです。
ポンプが止まっても上の階へ水を送れる道を残す考え方です。
中間水槽は何立方メートル用意すればよいのか

四日市市は本文に容量を書かず、配管例の図に書き込みを残しています。
(1) 中間水槽を次により設けること
ア 水源の水位が中継ポンプの位置以上となるように設け、当該ポンプの一次側に専用の配管をもって接続すること
イ 自動給水装置を設け、かつ、有効水量は8立方メートル以上とすること
| 消防本部 | 中間水槽の有効水量 | あわせて求めること | 記号 |
|---|---|---|---|
| 四日市市 | 本文に定めなし(配管例の図に「概ね5㎥とする」) | ― | ― |
| 鈴鹿市 | 3㎥以上 | 構造は屋内消火栓設備の例による | ▲ |
| 埼玉県央広域 | 3㎥以上 | 構造は屋内消火栓設備の例による | ▲ |
| 津市 | 3㎥以上 | 自動給水装置・中間水槽側に仕切弁・ポンプ側に逆止弁 | 凡例の記号なし |
| 大阪市 | 8㎥以上 | 自動給水装置・水源の水位をポンプ以上に | ◆ |
| 堺市 | 8㎥以上 | 自動給水装置・水源の水位をポンプ以上に | ★ |
| 東大阪市 | 8㎥以上 | 自動給水装置・水槽の底に15cm以上の沈殿物の溜まり | ▲ |
鈴鹿市・埼玉県央広域・津市は有効水量を3㎥以上とし、大阪市・堺市・東大阪市は8㎥以上と倍以上の量を求めています。
大阪府の3市は、水源の水位がポンプより高くなるように置いて、ポンプの一次側へ専用の配管でつなぐことも書いています。
四日市市は本文に容量の定めがなく、配管例の図にだけ「中間層タンク(概ね5㎥とする)」と書き込みがあります。
記号の意味は本部ごとに違い、鈴鹿市・埼玉県央広域の▲は行政指導、東大阪市の▲は法令の基準に行政指導を加えたもの、堺市の★は市独自の指導です。
同じ高さのビルでも、地域で水槽の大きさが倍以上違うのですね。
はい、数字の差はかなり大きいです。
設計の早い段階で管轄の基準を確かめておきましょう。
送水口に着いた消防隊のために何を付けておくのか

そこで各本部は、表示灯・連絡装置・送水圧力の表示を送水口のまわりに求めています。
イ(カ)加圧送水装置を設置した機械室若しくはその直近部分、送水口の直近及び防災センターに相互に連絡できる装置(インターホン等)を設置すること。
ウ(ウ)(略)送水口の直近において加圧送水装置の始動が確認できるものとして、(略)赤色の表示灯を設けること。この場合において、点滅装置を附置するとともに、(略)
| 消防本部 | 送水口の表示灯 | 連絡装置 | 送水口まわりの表示 |
|---|---|---|---|
| 四日市市 | 赤色の表示灯と点滅装置(下線なし) | 機械室・送水口・防災センター(下線あり) | 設計送水圧力(下線なし) |
| 鈴鹿市 | 点滅ランプ等▲ | ポンプの設置場所・送水口・防災センター等▲ | 設計送水圧力を赤地に白文字・短辺7cm以上・長辺20cm以上▲ |
| 埼玉県央広域 | 点滅ランプ等▲ | ポンプの設置場所・送水口・防災センター等▲ | 設計送水圧力を赤地に白文字・短辺7cm以上・長辺20cm以上▲ |
| 津市 | 起動が確認できる灯火(防災センター等と送水口付近) | 送水口付近に起動装置を置けないときは直通電話装置 | 標識板にポンプの設置階・送水される階・送水許容圧力(運転時と停止時) |
| 大阪市 | 屋内消火栓設備の基準を準用◆ | 制御盤・二次側の放水口・送水口の各直近と防災センター等◆ | 設置室の出入口に中継ポンプの標識◆ |
| 堺市 | 点滅ランプ等★ | 機械室又は直近・送水口・防災センター等★ | 運転が必要な階層と送水圧力範囲★ |
| 東大阪市 | 起動時に点滅▲ | 加圧送水装置・送水口・防災センター等▲ | 設計送水圧力・ポンプの設置階・送水する階・起動方法▲ |
四日市市は連絡装置の段落にだけ行政指導の下線を付け、表示灯と設計送水圧力の表示には下線を付けていません。
鈴鹿市と埼玉県央広域は、設計送水圧力を赤地に白文字で短辺7cm以上・長辺20cm以上の標識に示すよう求めています。
津市は消防車からの送水許容圧力をポンプの運転時と停止時の2つ書かせ、堺市は運転が必要な階層と送水圧力範囲を表示させます。
大阪市は連絡装置を中継ポンプの二次側の放水口の直近にも置かせ、非常放送の通話装置と場所が同じなら兼用できるとしています。
送水口の上の赤いランプが何のためにあるのか、初めて知りました。
ポンプが動いたことを消防隊に知らせる合図です。
点検のときに点滅するかを確かめてもらいましょう。
自分のビルでは明日から何を確かめればよいのか

防災センターの図面やポンプ室の表示も、各本部が求めています。
(ア) 防災センター等には、配管系統、止水弁等及びポンプ設置位置を明示した図面等を備えておくこと。▲(略)
(イ) ポンプの設置場所には、当該ポンプによる送水が不能となった場合の措置を明示したポンプ回りの配管図等を掲出すること。▲
防災センター等に配管系統・止水弁・ポンプの位置を示した図面があるかを確かめます(鈴鹿市・埼玉県央広域・堺市が求めています)。
四日市市のビルなら、機械室の扉に「連結送水管用ブースターポンプ」、ポンプ一次側の止水弁に「連結送水管用止水弁」の表示があるかを見ます。
点検のときには、3か所の連絡装置で通話ができるか、送水口の表示灯が点滅するかを点検業者と一緒に確かめます。
受水槽や機械室を改修するときは、中間水槽の容量や配管が管轄の基準を下回らないかを予防課に相談します。
防災センターに配管の図面があるか、まず探してみます。
改修で配管が変わっていれば、図面も最新にしておきましょう。
よくある質問
まとめ
まずは送水口の表示灯と、防災センターの図面を確かめてみます!
ポンプまわりを管轄の基準どおりに整えておけば検査でも慌てません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第29条第2項第4号(e-Gov法令検索)
- 消防法施行規則 第31条第6号イ(e-Gov法令検索)
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」凡例、第20 連結送水管 5(6) 消火活動上必要な施設のPDF
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第1章 凡例、第4章 第20 連結送水管 3⑹ 第4章 第20のPDF
- 埼玉県央広域消防本部「消防用設備等に関する審査基準」第1章 凡例、第4章 第20 連結送水管 第20 連結送水管のPDF
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」5-21 連結送水管 6 5-21のPDF
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第3節 連結送水管 第6 加圧送水装置等 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」総則(凡例)、第22 連結送水管 Ⅱ 2(3) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 東大阪市消防局「連結送水管の設置に係る運用基準」凡例、Ⅱ 細目 5 加圧送水装置 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
※本記事は各消防本部が公開している審査基準・運用基準と国の法令に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認してください。各本部の資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。行田市・羽生市は審査基準を公開していないため比較に含めていません。個々の建物のポンプや中間水槽の仕様は、所轄の消防署にご確認ください。





