小規模な福祉施設では、居室を壁と床で区画すると、スプリンクラー設備を設置することを要しない構造として扱われる場合があります。
鴻巣市を所管する埼玉県央広域消防本部の審査基準は、この区画を図で示し、2つの階を一つの区画にする例まで載せています。
一方、堺市の基準は、区画が2以上の階にわたらないことを明記しています。
埼玉県央広域の読み方を軸に、居室の数え方と配管や風道の始末まで、鈴鹿市・堺市・四日市市の書き方と順にたどります。
二階建ての施設で、廊下と階段が2つの階につながっています。
区画は階ごとに分けなければいけないのですか。
埼玉県央広域の基準は、階をまたぐ区画の例を図で示しています。
ただし堺市のように、またがないと書く本部もあります。
居室の数え方も、本部で違うのでしょうか。
埼玉県央広域は、食堂や機能訓練室を居室に数えます。
通路に付随する談話コーナーは数えません。
- 埼玉県央広域の基準は、第9-12図で、廊下・階段・便所などの区画が1階と2階にわたり、合計100㎡以下になる例を示している
- 同じ基準の第9 1 ⑷が「2以上の階にわたらないこと」と書くのは13条区画で、12条の2区画について同じ文は第9の本文には見当たらない
- 居室は、食堂・厨房と機能訓練室を数え、住居や病室の中の便所・風呂・収納庫は一の居室、通路に付随する談話コーナーは含めない
- 鈴鹿市は県央広域とほぼ同じ文と図、堺市は12条の2の区画も2以上の階にわたらないと書き、四日市市は規則第13条第1項の区画について書いている
- 設計図では、区画の範囲、居室の数、配管のすき間と風道の防火ダンパーを確かめ、屋内消火栓設備が要るかも見る
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目次
スプリンクラー設備を設置することを要しない区画を、国の規則はどう決めているのか

もとになるのは消防法施行規則第12条の2なので、まず条文の骨組みを確かめます。
令別表第一(六)項イ(1)及び(2)並びにロ、(十六)項イ並びに(十六の二)項に掲げる防火対象物(略)で、基準面積(略)が千平方メートル未満のもの 次に定めるところにより設置される区画を有するものであること。
イ 当該防火対象物又はその部分の居室を準耐火構造の壁及び床で区画したものであること。
ロ 壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを地上に通ずる主たる廊下その他の通路にあつては準不燃材料で、その他の部分にあつては難燃材料でしたものであること。(略)
ハ 区画する壁及び床の開口部の面積の合計が八平方メートル以下であり、かつ、一の開口部の面積が四平方メートル以下であること。
ニ ハの開口部には、防火戸(略)で、随時開くことができる自動閉鎖装置付きのもの又は次に定める構造のものを設けたものであること。(略)
ホ 区画された部分すべての床の面積が百平方メートル以下であり、かつ、区画された部分すべてが四以上の居室を含まないこと。
基準面積が1,000㎡未満のものは第1号、1,000㎡以上のものは第2号が定めています。
第1号は、イからホまでの五つを満たす区画を求めていて、数えると次のとおりです。
- イ:居室を準耐火構造の壁及び床で区画する
- ロ:壁と天井の仕上げは、主たる廊下は準不燃材料、その他の部分は難燃材料
- ハ:区画する壁と床の開口部は合計8㎡以下、一つの開口部は4㎡以下
- ニ:開口部の防火戸は、随時開くことができる自動閉鎖装置付きなど
- ホ:区画された部分すべての床の面積が100㎡以下で、4以上の居室を含まない
埼玉県央広域の基準は、さらに第9 1 ⑴で、対象になる部分の全部を区画する必要があると書いています。
居室Bだけが区画を持っても、その部分がスプリンクラー設備を設置することを要しない構造にはならない、という例を図で示しています(第9-1図)。
最初に、施設の基準面積が1,000㎡未満か以上かを確かめましょう。
居室を一つだけ区画しても、スプリンクラーは免除にならないのですか。
埼玉県央広域の基準は、対象になる部分の全部を区画する必要があるとしています。
一部だけでは足りません。
埼玉県央広域の基準では、どの部屋が居室に数えられるのか

埼玉県央広域の基準は、第3章 第9 1 ⑸で居室の判断を書いています。
省令第12条の2第1項及び第2項に規定する「居室」とは、建基法第2条第4号に規定する居室のほか、各用途の取り扱いは、次によること。なお、居室の判断は、使用実態を考慮し、決定すること。
ア 住居又は病室の用に供する居室内に便所、風呂、洗面所、収納庫等が存する場合は、一の居室として取り扱う。
イ エントランス、廊下その他の通路に付随する談話コーナー(集会、娯楽の目的で、継続的に使用する室形態のものを除く。)は、居室に含まれないものとする。
ウ 浴室及び脱衣室は、多数の入所者が継続的に使用する場合は、居室として取り扱う。
エ 食堂及び厨房は、居室として取り扱う。
オ 機能訓練室は、居室として取り扱う。
居室 居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室をいう。
国の規則12条の2は「居室」を定義していないので、埼玉県央広域の基準が、建築基準法第2条第4号の居室に用途ごとの扱いを足している形です。
県央広域の⑸に書かれた扱いを、番号順に並べます。
- ア:住居や病室の中の便所・風呂・洗面所・収納庫は、一の居室として取り扱う(第9-3図)
- イ:エントランスや廊下に付随する談話コーナーは、居室に含まれない
- ウ:浴室と脱衣室は、多数の入所者が継続的に使用する場合は居室
- エ:食堂と厨房は居室
- オ:機能訓練室は居室
同じ第9-4図では、事務室にも居室の印が付いています。
居室の判断は使用実態を考慮して決めるとされているので、図面には、各室を何に使うのかを書き添えておきましょう。
鈴鹿市の審査基準には同じ文言の⑸と同じ図があり、堺市の12条の2の区画の項には、居室の判断は見当たりません。
つまり、食堂や機能訓練室も居室として数えて、区画の中の居室が4つ以上にならないかを見るのですね。
はい、埼玉県央広域は食堂・厨房と機能訓練室を居室として取り扱います。
まず部屋の使い方を図面に書きましょう。
スプリンクラーを免除する区画は、2つの階にまたがってよいのか

原文を順に見ます。
13条区画は、2以上の階にわたらないこと。
(オ) 区画された部分すべての床の面積が100㎡以下であり、かつ、区画された部分すべてが4以上の居室を含まないこと。
(2の階を一の12条の2区画する場合の例)
1F 居室A+B+C≦100㎡、食堂・台所≦100㎡
2F 居室D+E+F≦100㎡、居室G+H≦100㎡
1F(廊下+階段+倉庫+便所+洗面所・風呂)+2F(階段+廊下+便所)≦100㎡
第9-12図の例では、居室のまとまりは各階で100㎡以下に収め、廊下・階段・便所などは、階段を通じて1階と2階にわたる一つの区画として合計100㎡以下にしています。
一方、⑷が「2以上の階にわたらないこと」と書いているのは、13条区画です。
12条の2区画について同じ文は、確認した範囲で第9の本文には見当たりません。
省令第12条の2第1号及び同条第2号に規定する区画(以下この項において「区画」という。)については、それぞれ次によること。
(2) 区画は2以上の階にわたらないこと。
同じ第6の4は、規則第13条の区画について、この(2)を準用するとしています。
四日市市の審査基準は、第1章 第6 5で、規則第13条第1項の区画について「区画は2以上の階にわたらないこと」と書き、この文に下線が引かれています。
鈴鹿市は県央広域と同じ構成で、第9-13図に同じ例を載せ、⑷で13条区画の階またぎを書いています。
二階建ての施設で廊下と階段を一つの区画にするときは、所在地の基準を開いて、階をまたぐ区画を描いてよいかを確かめましょう。
同じ二階建てでも、本部が違うと区画の描き方が変わるのですか。
はい、埼玉県央広域は階をまたぐ例を示し、堺市は2以上の階にわたらないと書いています。
施設の所在地の基準で確かめてください。
区画を貫く配管や風道は、どう始末するのか

埼玉県央広域の基準の⑹と⑺は、区画を貫く部分の始末を書いています。
⑹ 12条の2区画又は13条区画された部分に給水管、配電管その他の管が、当該区画の壁又は床を貫通する場合においては、当該管と区画とのすき間をモルタルその他の不燃材料で埋めること。
⑺ 12条の2区画又は13条区画された部分に換気、暖房又は冷房の設備の風道が、当該区画の壁又は床を貫通する場合は、当該貫通する部分又はこれに近接する部分に、防火ダンパーを設けること。
県央広域の⑹と⑺は、12条の2区画と13条区画の両方に効く書き方で、鈴鹿市の⑹と⑺も同じ文です。
堺市は、もう少し細かく書いています。
(3) 区画を配管が貫通する場合は、次によること。★
ア 配管は、建基政令第129条の2の4第1項第7号イ、ロ、又はハの規定の例により措置すること。(略)
イ 区画貫通部分は、モルタル等の不燃材料により完全に埋め戻す等の措置を講じること。
(4) 区画を風道が貫通する場合は、次によること。★
ア 区画貫通部又はその直近の箇所には、煙感知器の作動と連動して閉鎖する構造の防火ダンパーが設けられていること。(略)
防火ダンパーは煙感知器と連動して閉鎖する構造と書き、どちらの(3)(4)にも★が付いています。
四日市市の基準は、規則第13条第1項の区画について、配管等の貫通を建基政令の規定を準用すると書き、風道のダンパーは煙感知器と連動して閉鎖するものに限るとしています。
四日市市の本文の条番号「第129条の2の2」は、現行の令では別の建築物とみなす部分の条で、配管の貫通を定める現行の条文は第129条の2の4です。
設計図や協議の資料に旧い番号が出てきたら、現行の条文に読み替えて確かめましょう。
配管や換気ダクトが区画の壁を通るときは、どうすればよいのですか。
埼玉県央広域は、すき間をモルタルなどの不燃材料で埋めるよう求めています。
風道には、貫通部かその近くに防火ダンパーです。
免除の区画があれば屋内消火栓も要らないのか、設計図では何を確かめるのか

埼玉県央広域の基準の第9 1 ⒂が、屋内消火栓設備について書いています。
政令第12条第1項各号に規定するスプリンクラー設備の設置を要する防火対象物において、省令第12条の2並びに省令第13条第1項及び第2項に掲げる方法で区画し、スプリンクラー設備を設けない部分について、当該防火対象物が政令第11条第1項に該当する場合は、屋内消火栓設備を設置する必要があること。
埼玉県央広域の基準は、令第11条第1項に該当するときは屋内消火栓設備が必要だとしています。
また⑶は、12条の2区画は地階と無窓階にも適用できるとし、⑵は、13条区画から地階と無窓階を除いています。
四つの基準を、この記事で見た項目で並べます。
| 基準 | 12条の2区画の階またぎ | 13条区画の階またぎ | 居室の判断 | 貫通部 |
|---|---|---|---|---|
| 埼玉県央広域(第3章 第9) | 2つの階を一の区画にする例あり(第9-12図) | 「2以上の階にわたらないこと」(⑷) | ⑸ア〜オ | ⑹すき間をモルタル等で埋める/⑺防火ダンパー |
| 鈴鹿市(第3章 第9) | 同じ例あり(第9-13図) | 同文(⑷) | 同文の⑸と同じ図 | 同文の⑹と⑺ |
| 堺市(第6 3・4) | 「2以上の階にわたらないこと」(3(2)) | 4で3(2)(4)を準用 | 12条の2の項には見当たらない。13条第1項第1号の区画は住戸の単位で足りる(4(2)) | 配管は建基政令の例で20分/1時間・モルタル等で完全に埋め戻す★。風道は煙感知器連動の防火ダンパー★ |
| 四日市市(第1章 第6 5) | 12条の2区画の項は見当たらない | 規則第13条第1項の区画は「2以上の階にわたらないこと」(下線) | 見当たらない | 配管等は建基政令を準用、風道のダンパーは煙感知器連動に限る(下線) |
物件の所在地の基準を開いたら、次の順に設計図と突き合わせましょう。
- 基準面積:1,000㎡未満か以上か(第1号か第2号か)
- 区画の範囲:階をまたぐ区画を描いてよい本部か、所在地の基準で確かめる
- 居室の数:食堂・機能訓練室などを数えて、区画ごとに4未満か
- 貫通部:配管のすき間のモルタルと、風道の防火ダンパー
- ほかの設備:区画した部分に屋内消火栓設備が要るか
つまり、区画があっても、階のまたぎ方や屋内消火栓まで、所在地の基準で確かめるのですね。
はい、図面に区画の範囲を描いて、所轄の消防署に見てもらうのが近道です。
迷う点は早めに相談しましょう。
よくある質問
まとめ
埼玉県央広域の物件では、区画の範囲と居室の数を最初に確かめます!
階をまたぐかどうかは、所在地の基準で確かめましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則 第12条の2・第13条(e-Gov法令検索)
- 建築基準法 第2条第4号、建築基準法施行令 第129条の2の4(e-Gov法令検索)
- 埼玉県央広域消防本部「消防用設備等に関する審査基準」第3章 第9 スプリンクラー設備を設置することを要しない構造の取り扱い(埼玉県央広域消防本部)
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第3章 第9 スプリンクラー設備を設置することを要しない構造の取り扱い(鈴鹿市消防本部)
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第6 政令第8条等に規定する区画等の取扱い 3・4(堺市消防局)
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」第1章 第6 政令第8条等に規定する区画等の取扱い 5(四日市市消防本部)
※本記事は各消防本部が公表している基準等と、消防法令に基づく一般的な解説です。表は要旨を自分の言葉でまとめたもので、「見当たらない」としたものは公表資料を確認した範囲の結果です。津市・大阪市・東大阪市・行田市・羽生市は今回の比較に含めていません。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





